2010年09月20日

◆ 鳥類は爬虫類か?

 「鳥類は爬虫類だ」という見解がある。なるほど、系統に従えば、鳥類は爬虫類だろう。
 だが、分類は系統に従う必要はない。鳥類と爬虫類とは、別の分類項目(綱)でいい。
 「鳥類は爬虫類を先祖にもつが、鳥類は爬虫類ではない」と言える。 ──

 鳥類は爬虫類から分岐した。では、このことで、爬虫類と並ぶような大きな分類(綱)をなすか?
 よく考えると、鳥類と恐竜との差は、有胎盤類に対する単孔類や有袋類との差と同じぐらいだ。とすれば、分類では、「綱」ではなく、その下の「亜綱」(単孔類との差)か、さらにその下の「下綱」(有袋類との差)ぐらいの差だ。
 その意味では、「鳥類は爬虫類(爬虫綱)だ」という説は、成立する。(一応は。)
 
 ──
 
 しかし、である。
 「爬虫類」という言葉は、現生生物では、鳥類を含まない爬虫類を意味する。これは分類学上の「爬虫類」だ。
 一方、上に述べたように、「鳥類は爬虫類だ」という発想に従えば、「爬虫類」には鳥類が含まれることになる。これは進化論上の「爬虫類」だ。

 以上のように、二通りの解釈ができる。では、どちらを取るべきか?

 ──

 ここで、第3の案として、次のような考え方もある。
 “ 鳥類と爬虫類をまとめて、新しく一つの綱をつくる。その綱のもとで、鳥類と爬虫類を、「鳥亜綱」と「爬虫亜綱」とに分ける。”


 これはこれで一案だ。ただし、既存の分類項目を一ランクずつ下げる必要が出てくる。そうなると、一番下の「種」は、もはやそれ以上下げられないので、困ったことになる。  (^^);
 また、このような分類をしても、何かメリットがあるかと言えば、単に「鳥類と爬虫類とを一つの綱にまとめる」ということ以外にはメリットはない。系統学者の顔を立てることぐらいの意味しかない。
 それだったら、現状のように、「爬虫綱」「鳥綱」というふうに別の綱に分けたままの方が、まだマシだろう。面倒が少ないので。

 ──

 では、現状のように、「爬虫綱」「鳥綱」というふうに別の綱に分けることに、何かデメリットはあるのか?
 系統学者はこう言うだろう。
 「鳥類は、獣脚類のマニラプトル類(たぶんオビラプトル類)から分岐したのだから、鳥類はここに分類されるべきだ」
 なるほど、それはそれで理屈だ。だが、それには根本的な難点がある。

 第1に、そういう分類をしたら、鳥綱の全分類が、獣脚類の小さな分類に収まることになり、既存の鳥綱の分類が滅茶苦茶になる。鳥綱の分類は、綱レベルから、あれこれ下がって、目や科や属などの分類があるが、そのすべてが滅茶苦茶になる。(獣脚類のマニラプトル類の下に収まるので。)……つまり、分類が滅茶苦茶になる。

 第2に、分類は、系統に従う必要はない。
 そもそも、「分類は系統に従うべきだ」という発想は、絶対的ではない。その発想が成立するのは、細かな分類レベルだけの話だ。
 一方、大きな分類については、系統に従う必要はない。大分類(綱レベル)では、系統関係がいったん断絶するのが普通だ。
 たとえば、両生類は、魚類のうちの肉鰭類から進化したことがわかっている。だからといって、両生類を「魚類の肉鰭類の一部だ」と見なすことはない。同様に、爬虫類や哺乳類を「肉鰭類の一部」に分類することもない。また、爬虫類は、両生類を先祖にもつが、爬虫類を両生類の一部に分類することはない。同様に、哺乳類を両生類の一部に分類することもない。
 巨大な進化が起こったときには、分類は系統を離れて新項目を立てるのが原則だ。このことは、鳥類にも当てはめていい。つまり、鳥類について「鳥綱」を立てるのは、十分に成立する。
 ただ、鳥類の分岐は、他の巨大な分岐に比べて比較的新しい。そのせいもあって、規模も哺乳類の亜綱か下綱レベルの規模にすぎない。しかし、それはまた、別の話だ。鳥類は、地上から空へと、棲息環境を変えたことで、肉体を大幅に進化させた。250キログラムぐらいある恐鳥から、小さなスズメぐらいの大きさまで。また、前肢のない形から、翼をもつ形へ。……こういう大幅な進化をなし遂げて、多様な種を含むようになった。とすれば、それは、綱レベルの新しい分類項目を立てるに値する。水中から陸上へ移った両生類が、新たな綱をもつように、陸上から空へ移った鳥類が、新たな綱をもつとしても、十分に合理的だ。(新たな綱をなすだけの、十分な適応放散をなし遂げたから。)
 ともあれ、分類において大切なことは、系統関係をたどることではない。少なくとも綱のレベルでは、その必要はない。系統関係については、別に注釈しておくだけでいい。

 ──
 
 結論。

 鳥類は爬虫類から進化した。しかし、そのことをもって、「鳥類は爬虫類の一部だ」とか「鳥類は爬虫類だ」とかいう説は、成立しない。
 鳥類は、新たな環境へ進出したことで、大幅な進化をなし遂げ、大幅な適応放散をなし遂げた。とすれば、これを一つの綱とすることには、合理的な理由がある。
 鳥類は、分類としては、綱というレベルでいいだろう。ただ、「系統的には、爬虫類から分岐した」という点に留意しておくといい。また、「爬虫類との形質の差もあまり大きくない」という点にも留意しておくといい。
 この二点に留意しておけば、綱レベルで鳥類を鳥綱と分類して差し支えない。

 これが結論だ。
 この結論に従えば、「鳥類は爬虫類だ」という主張は妥当ではない、とわかるだろう。仮にその主張が成立するなら、「両生類は肉鰭類だ」とか「人間は肉鰭類の魚だ」という主張が成立してしまうからだ。

( ※ Wikipedia には、その間違った記述が記してある。どうせなら「同様に、両生類も魚類の肉鰭類に含まれる」と書けばいいのに。  (^^); ま、Wikipedia の発想に従えば、人間も魚なのだから、魚並みの知能のせいで、間違いがわからないのだろう。  (^^); )



 [ 付記1 ]
 次のことに注意しておくといい。
 「鳥類は、現生の爬虫類の子孫ではない


 つまり、鳥類は、ワニやトカゲや亀の子孫ではない。このことは、系統分類からも明らかになる。
  → Wikipedia 「爬虫類」

 これを見ればわかるように、恐竜と鳥類は一つのグループ(恐竜のグループ)をなしているが、それに最も近い爬虫類(恐竜を除く)は、ワニの仲間である。

 鳥類は、恐竜(という爬虫類)の系統には属するが、現生の爬虫類の系統には属しない。ゆえに、「爬虫類」という言葉を、(化石種を含まない)現生の爬虫類というふうに解釈すれば、「鳥類は爬虫類だ」というような主張は成立しない。
 「鳥類は爬虫類だ」という主張は、そこを混同させかねないので、注意を要する。
 ともあれ、「鳥類は爬虫類だ」というような言い方は、やめた方がいいだろう。それは分類と系統とを、混同した言い方だ。むしろ、「鳥類は爬虫類の恐竜から進化した」と言うだけでいい。つまり、普通の表現を取るだけでいい。「鳥類は爬虫類だ」というような、人を驚かすのを目的とした言い方は、やめた方がいい。それは詐欺的な、人をだます表現だ。

 [ 付記2 ]
 原生の鳥類は爬虫類には含まれない。だが、昔の始祖鳥などの「古鳥類」は爬虫類に含まれるべきだ。
 現在の分類では、「鳥類」を(亜綱で)「古鳥類」と「新鳥類」とに分けて、どちらも含んでいるが、これは妥当でない。古鳥類は、爬虫類の仲間とされべきで、鳥類に分類されるべきではない。系統的にも形質的にも、まったく無関係だからだ。共通するのは、「翼をもつ」という点ぐらいだ。
 しかし、「翼をもつ」という点で鳥類を規定するのであれば、翼竜(これは恐竜ですらない)や、コウモリ(これは哺乳類)も、鳥類に分類されてしまう。また、ダチョウ類やペンギンは、鳥類から排除されてしまう。
 始祖鳥を含む古鳥類は、羽毛と翼という点を除けば、どこからどこまでも爬虫類だ。そして、羽毛や翼という点は、生物種にとって重要な形質ではない。(つるつるの皮膚とヒレをもつ水生の哺乳類が、哺乳類に留まるのと同様だ。そんな形質は重要ではない。)
 「鳥類は爬虫類だ」という説は、新鳥類については間違いだが、古鳥類についてはまったく当てはまる。
 特に、始祖鳥などが、適応放散を遂げておらず、その分岐があっさりと絶えてしまったことからしても、新たに綱を立てる価値がないことがわかる。また、仮に綱を立てるとしたら、古鳥綱と新鳥綱との双方を立てる必要がある。双方を含む「鳥綱」というのは、ナンセンスだ。
 結論としては、古鳥類は、爬虫類の一部と見なしていい。この点に限り、「鳥類は爬虫類だ」という説は完全に成立する。現在の分類は、改める必要があるだろう。
  
( ※ 現在は、始祖鳥は、古鳥亜綱・始祖鳥目・始祖鳥科・始祖鳥属・始祖鳥種となっている。一方、系統分類では、アンキオルニス始祖鳥は、トロオドンの近縁の系統に属するらしい。……私としては、トロオドンのあたりに、「古鳥属」を立てることを推奨したい。そこに、アンキオルニスや始祖鳥を含めればいい。そうすれば、上記のように、「始祖鳥目・始祖鳥科・始祖鳥属・始祖鳥種」なんていう冗漫な分類をしないで済む。)
  


 【 関連項目 】
 
  → 鳥の翼と羽毛

 鳥の翼も羽毛も、鳥の特徴とは言えない。古鳥類が本格的な翼をもっていたとしても、そのことをもって「爬虫類ではない」とは言えない。
posted by 管理人 at 12:45| Comment(5) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
鳥類と爬虫類を別々にするよりも、爬虫類を細分化してしまった方がいい。
現行の爬虫類は側系統群で、鳥類「だけ」が独立した状況だ。鳥類と恐竜は系統的に同じグループで、一緒にしないとおかしい。絶滅種を系統から外す訳にはいかないだろう。
魚類と両生類は極端な例であり、比べる対象にはならない。
植物のハスなんかは、全然似てないのにある種の樹木と同じグループだ。そして、良く似た睡蓮などとは遠い類縁であることが分かっている。
魚類の話に戻すと、魚類から分岐したグループにはひとつずつ別々の名前が与えられ、別のグループとして認められているため、分岐したグループは単系統群だが、爬虫類は鳥類のみが別物扱いされていて側系統群となっている。
分類はあくまでも系統的に正しくあるべきだ。
見た目ではなくゲノムでグループ分けすべきだろう。
Posted by ベル at 2011年08月14日 10:50
> 鳥類と恐竜は系統的に同じグループで、一緒にしないとおかしい。

 それだったら、哺乳類と爬虫類も、一緒にしないとおかしい。

> 魚類から分岐したグループにはひとつずつ別々の名前が与えられ、別のグループとして認められているため、分岐したグループは単系統群だが、

 まさか。哺乳類や爬虫類は、魚類から分岐したのではありません。

> 分類はあくまでも系統的に正しくあるべきだ。

だったら、鳥類は恐竜の子孫とは言えません。系統関係がはっきりしていないので。たとえば始祖鳥の位置づけがはっきりしていない。
鳥類の系統関係をきちんと示しているのは、私だけです。
 → http://openblog.meblog.biz/article/3358238.html

 この系統図を受け入れるのが先決です。その系統図を受け入れない限りは、「鳥は恐竜の子孫だ」というのは、あまりにも漠然としたおおまかな推定であって、科学にはなっていません。
 鳥と恐竜の系統関係がはっきりしていない以上、鳥類は恐竜の子孫とは断言できません。
Posted by 管理人 at 2011年08月14日 11:21
恐竜と鳥類はわけてはいけないだろう。
なぜ、恐竜を系統や体の作りが全く違うヘビやトカゲと同じ綱にし、鳥類から外すすのだろう。全く理解できない。
しかし、ワニは恐竜と同じ主竜類なのでわけにくい。
ただ、恐竜と有鱗目は別グループにすべきだ。
さらには、恐竜を有鱗目以上に遠縁な単弓類とまで同じグループにするのはもっとおかしい。
Posted by 青儀 亮介 at 2013年05月13日 10:35
系統樹というのは、もとは一つの根っこから、上の方で多様に別れていったものです。それを適当に区切るのが分類。分類と系統樹は同じではありません。
分類は現在の生物という観点から箱状に区別したもの。横の区別。
系統樹は時系列から見たもの。縦のつながり。
両者は別々のものですから、系統樹の観点から分類を批判するのはナンセンスです。分類を考えたあとで、系統樹の観点からつなぎ合わせればいい。つまり、「鳥類は爬虫類の一種の子孫である」と考えればいい。それだけ。
系統関係を言いだしたら、哺乳類は両生類の子孫だし、両生類は魚類の子孫だし……というふうになるから、分類そのものができなくなる。

> なぜ、恐竜を系統や体の作りが全く違うヘビやトカゲと同じ綱にし、鳥類から外すすのだろう。全く理解できない。

 系統関係でなく現在の生物の分類では、鳥類はまとめて一つのグループとして扱った方が自然である、という歴史的事情に従っています。生物学の基本は、遺伝子の差じゃなくて、見かけの形態上の差です。形態分類。それが生物学の歴史。
 遺伝子や系統をやたらと重視するのは、近年になって出てきた発想ですから、今になって分類を言い出しても仕方ない。また、遺伝子の差なんて、形態に比べると、人間にとって有益性がない。
 とにかく、形態という見かけを重視して分類してきたのが生物学の歴史だ、と理解するべき。歴史を否定しても仕方ない。あとで歴史を補完するだけでいい。

> 恐竜と有鱗目は別グループにすべきだ。

 鳥類には、爬虫類の間の違い(骨格や遺伝子の差)を越えた、大きな違いが見られます。それは、恒温性の有無です。それは脳の発達による。骨格なんかは関係ない。
 このことが、鳥類と恐竜の決定的な差となっている。だからこそ恐竜(および大半の爬虫類)は絶滅し、鳥類は繁栄した。現在繁栄しているものを一つの大項目にして、すでに滅びてしまったものは軽視する(下位レベルの項目にする)、というのは、生物学の歴史からすれば、当然です。昔は化石種なんて、ろくに知られていなかったんだから。

> 同じグループにするのはもっとおかしい。

この手の分類は、ただの名前だけの分類なんだから、「綱」よりも下のレベルで区別すれば十分。名前を「綱」にするか、下位区分にするか、という程度の名目上の問題にすぎない。
Posted by 管理人 at 2013年05月13日 20:33
> ただ、鳥類の分岐は、他の巨大な分岐に比べて比較的新しい。そのせいもあって、規模も哺乳類の亜綱か下綱レベルの規模にすぎない。しかし、それはまた、別の話だ。鳥類は、地上から空へと、棲息環境を変えたことで、肉体を大幅に進化させた。250キログラムぐらいある恐鳥から、小さなスズメぐらいの大きさまで。また、前肢のない形から、翼をもつ形へ。……こういう大幅な進化をなし遂げて、多様な種を含むようになった。とすれば、それは、綱レベルの新しい分類項目を立てるに値する。水中から陸上へ移った両生類が、新たな綱をもつように、陸上から空へ移った鳥類が、新たな綱をもつとしても、十分に合理的だ。(新たな綱をなすだけの、十分な適応放散をなし遂げたから。)

結局それが問題なんですよねー。一般に鳥類と呼ばれる種は新しすぎ、規模が小さすぎ、多様性もそれほどないから爬虫網に組み込まれてしまったのでしょう。
いくら大きさを変え、前肢を翼に変えたとはいえ、魚類と人間ほど大きくその生態を変えたわけではありませんから、学会のコンセンサスを得られなかったのでしょうね。
ま、しょせん分類は分類ですから、鳥が爬虫類だろうとなかろうと、あるいはヒトが魚類だろうとなかろうと、言葉遊び以上のものではないです。
Posted by なな at 2015年09月03日 02:15
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