2010年09月20日

◆ 鳥の翼と羽毛

 鳥の特徴は翼と羽毛だ、と見なす立場がある。
 では、翼や羽毛は、鳥の進化においてどれほどの意味があるのか? ── 

 翼

 翼は、前肢羽毛からなる。
 羽毛については後述するので、まずは前肢についてだけ述べよう。
 鳥類の前肢は、爬虫類や哺乳類の前肢と、構造的にはたいして違いはない。次の図を参照。
  → 人と鳥の前肢
  
 違いがあるとすれば、指の数が5本か3本か、というぐらいの違いだ。この違いは、中指以外が退化した馬と比べれば、たいした違いではない。外形的には指というものが見えずにヒレになってしまった水生哺乳類(アシカやクジラ)と比べても、たいして違いはない。
 とにかく、鳥の前肢は、爬虫類や哺乳類の前肢と、構造的にはたいして違いはない。つまり、鳥の特徴として、前肢にはたいして特徴はない。

 羽毛の形

 同じような翼をもつ翼竜やコウモリと比べると、羽毛があるという点で、鳥類は大幅に異なる。
 それゆえ、羽毛(羽根)は、鳥類に特徴的なものだと思われている。羽毛こそが鳥類の翼の本体だとも思われている。前肢の方は、羽毛を支えるための構造材にすぎないとも思われている。
 しかしながら、進化の面で見ると、羽毛というのは、たいした違いではない。そのことは、ヒヨコを見るとわかる。ヒヨコの体表を覆っている羽毛は、哺乳類の獣毛とたいして違いはない。それが、成長するにともなって、羽根になるだけだ。鳥の羽は、本質的には、獣毛と大差がない。だからこそ「羽毛」という言葉には「毛」という文字が入っているのだ。

 羽毛が備わっていた恐竜は、マニュラプトル形類だ。それに含まれるものには、オビラプトル類、トロオドン類、ドロマエオサウルス類、始祖鳥、孔子鳥などがすべて含まれる。この全体は、ジュラ紀中期に分岐したらしい。
   → 羽毛恐竜
  
 羽毛そのものは、最初は綿毛みたいなものだ。それが発達して、風切り羽になる。

feather.png

  《 羽毛の発達史 》( Wikipedia から。)


 そして、羽毛が風切り羽になると、翼ができる。翼と羽毛は、そういう関係にある。翼の有無は、羽毛の形の違いだと言える。それだけのことにすぎない。
 当然ながら、羽毛がもともとあれば、そこから翼ができることは、そう難しい突然変異ではない。

 羽毛の有無


 いったん羽毛があれば、そこから翼(≒ 風切り羽)が生じることは容易だ。(上記)
 では、羽毛そのものは、どうか? 羽毛は、容易に突然変異で生じるとは言えないが、二度出現した可能性があるようだ。
 二度目は、前述のように、羽毛恐竜のマニュラプトル形類だ。
 一度目は、プロトアビスだ。詳しくは、別項で述べる。
   → プロトアビスと鳥類
 
 ただし、プロトアビスという種が実在したかどうかは、議論がある。実際はその化石は本物ではない可能性が高い。(上記項目で追記したとおり。)
 その場合は、プロトアビスという種については無視して構わない。
 
 ──

 とはいえ、プロトアビスという種が実在したとしても、特に不思議ではない。そのことを説明する。

 実は、羽毛は皮膚の角質が変化したものである。( → 解説
 角質が変化したという点では、次のものと同類だ。( → 解説
    毛・羽毛・爪・蹄
(ひづめ)
 さらに、次のものも角質が変化したものだ。
    牛や鹿などの偶蹄類の角
(ツノ)
 いずれも角質が変化したものだ。見た目は大きく異なるが、そこには「角質の遺伝子が少し変化した」というぐらいの意味しかない。見た目の差は大きくとも、遺伝子の違いは小さい。

 ではなぜ、遺伝子の違いは小さいかというと、(ヘッケルなどの)反復説の概念からわかる。Wikipedia から引用しよう。
 フォン=ベーアはさらにそれを以下の四原則にをまとめて見せた。これは一般にベーアの法則と呼ばれる。
  1. 大きな動物群に共通な形質は、特殊なものより先に形成される。
  2. 形態的に一般的なものからより特殊なものが形成される。
  3. 一定の動物形に属する胚は、一定の諸形態を経過すると言うより、むしろそれから離れてゆく。
  4. 高等な動物の胚はほかの動物に似ているのではなく、その胚に似ている。
 これをわかりやすく言うと、「内臓などの基本的なものが先にできて、手足などはあとにできて、皮膚などは最後にできる」ということだ。
 そして、最後にできる皮膚については、遺伝子が働くのは個体発生の最後の段階だから、比較的容易に変異が起こる。(それ以前の基本的な部分で変異が起こると、以後の部分が全部影響を受けるので、簡単には変異が起こらない。しかし、皮膚ならば、たとえ体毛の遺伝子が全部消失しても、体毛がなくなること以外には影響がないから、変異が比較的容易に起こる。「容易」とは言い切れないが、二度起こることはある。)

 結局、羽毛というものは、角質の変化したものであるから、角質遺伝子だけの変異によって生じる形質だ。それは、容易ではないとして、困難ではない。だから、長い歴史の上では二度起こったとしても、別に不思議ではない。

 結論

 翼を構成する前肢と羽毛に着目する限り、そこには、たいして意味がない。翼の有無など、生物にとっては大きな意味をなさないのだ。羽毛の発生であれ、羽毛の形の変化であれ、特に難しい突然変異ではないからだ。
 それゆえ、鳥類のなかで、翼をもたない鳥類(恐鳥類・走鳥類)があったとしても、それは不思議ではない。
 また、翼をもつ古鳥類やプロトアビスが、鳥類でなく爬虫類に分類されるとしても、それは不思議ではない。翼の有無はどうでもいいからだ。
 鳥類の本質において、翼の有無はどうでもいいのだ。鳥類の本質は、別のところにある。
 そのことが、反復説を理解することで、よくわかる。

 [ 付記 ]
 羽毛は、鳥類の独自の形質として規定するほどの重要性を帯びない。
 仮に、羽毛を理由として「鳥類」という独自の分類項目を立てるとしたら、おかしなことになる。たとえば、角をもつ偶蹄類は哺乳類から分離するべきだし、毛がない水生哺乳類も哺乳類から分離するべきだ。しかし、たかが毛の有無ぐらいで、別の生物群と見なすのは、馬鹿げている。(ハゲの差別だ…… というのは冗談だが。)

( ※ なお、皮膚の遺伝子の変異に比べて、内臓の遺伝子の変異は、ずっと大規模だ。内臓の遺伝子が少し変わるだけで、それ以後の個体発生はすべて影響を受けるからだ。角質だけにしか影響しない角質の遺伝子とは、全然異なる。)
( ※ 例として、恒温性がある。もし恒温性が成立すれば、それにともなって体内の代謝系もまた大幅に変更されるだろう。爬虫類の代謝系と、鳥類や哺乳類の代謝系は、かなり大幅に違っているからだ。*
  


 【 関連項目 】
 
 → 鳥類の本質
   ( ※ 鳥類の本質は、半恒温性・恒温性と、前肢がいったんなくなったことだ。)
posted by 管理人 at 12:34| Comment(2) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
始祖鳥について馬鹿げた話があるので、紹介する。(孫引き)

  ──
> 始祖鳥が現代の鳥類の祖先だというのは間違いだ。しかし、始祖鳥が中間形態ではないと言うのも間違いだ。始祖鳥は間違いなく恐竜と現代の鳥類の中間である。なので、中間化石であり、恐竜と鳥類の関係を示す証拠となる。
http://www24.atwiki.jp/kumicit/pages/355.html
 ──

 これは「恐竜」という言葉が曖昧すぎる。
 「恐竜」を「ジュラ紀以前の恐竜」と見なすのであれば、上記の説は正しい。
 「恐竜」を「白亜紀後期の恐竜」と見なすのであれば、上記の説は正しい。それはいわば、「一代目は、二代目と三代目の中間だ」というふうな説であり、時間的な順序を破壊している。(始祖鳥はジュラ紀の生物だからだ。)
 もうちょっと、論理というものをもってほしいものだ。
Posted by 管理人 at 2010年09月20日 20:17
始祖鳥について興味深い記事があるので、紹介する。

 ──
鳥類の祖先である始祖鳥は、羽ばたいて飛べなかったとする論文を、
英国などの研究チームが14日付の米科学誌サイエンスに発表した。

始祖鳥の推定体重と、化石に残された羽根の軸の太さなどから、始祖鳥の翼では
体重を支えきれず、木の枝から地面へ滑空するしかできなかったと結論付けている。
 ──
 
 これは一部抜粋だ。より詳しくは、引用元へ。
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1273790437/
Posted by 管理人 at 2010年09月20日 20:19
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