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ヘッケルの反復説とは、
「個体発生は系統発生を繰り返す」
というもの。有名ですね。
これを「間違いだ」「捏造だ」というふうに非難するページが、ネット上にあふれている。
→ 検索 「ヘッケル 系統発生」
しかし Wikipedia によると、これらの疑惑は否定された。
1874年、ヘッケルが発生学のテキストAnthropogenieを発刊して、しばらくすると、掲載された図解に、ヘッケルが意図的に改ざんを行ったとのではないかという訴えがWilhelm Hisらによって出される。ヘッケルは改ざんの事実を否定する。
最近の研究 (Richardson 1998, Richardson and Keuck 2002) によって、ヘッケルの正当性は確かめられ、当時の論議が、純粋な科学的な問題ではなく、当時、進化論を認めなかったカトリック教会および、反進化論者による政治的攻撃だったことが分かっている。
( → Wikipedia )
ネット上で探したところ、次の比較図があった。(上はヘッケルの図で、下は実物の写真……らしい。)
→ http://www.answersingenesis.org/images/embryo4.jpg
この図を掲載しているページは、下記。
→ http://www.genesismission.4t.com/Evolution/Embreology.html
そのページでは、「ヘッケルの図はインチキだ」と述べている。
しかし、まるきりのインチキでもなさそうだ。特に、右側の四つはよく似ている。
ただ、まるきりのインチキではないとしても、捏造したという証拠は挙がっている。次の PDF に図が記してある。
→ http://www.tcc-keihan.org/anndo/shinkaronnnomujyun/heltekerunohannpukusetu.pdf
なお、英語などの参考サイトとしては、下記がある。
→ http://transact.seesaa.net/article/23097466.html
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さらに調べたところ、よいまとめがあった。
《 反復説の評価 》
×:反復説は間違いであること周知の事実であるにもかかわらず、依然として進化論の傍証に使うのはおかしい。
○:反復説は必ずしもヘッケルの独創ではないし、ヘッケルに捏造があったからといって反復説の考え方そのものまでが間違っていたわけではない。現在の反復説は形態的な類似よりもむしろ発生関連遺伝子(ホメオボックスなど)が種を超えて共通していることを指している。ヘッケルの反復説が過ちであっても反復説そのものが過ちというわけではない。
( → 該当サイト )
この趣旨で、もっと詳しい話は、下記にある。
→ Wikipedia
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私はこれ以上、詳しく調べていないので、特に述べることはない。(詳しい情報を知っている人がいたら、コメント欄に記してください。)
[ 付記 ]
しかし、進化論の世界というのは、どうなっているんでしょうねえ。「ヘッケルの嘘つきめ!」と詰る人がたくさんいる。どうしてこういう変人が多いのか。
ついでだが、次のように述べる人もいる。
進化した高等動物は、そうでない下等動物よりも優れているという考えは、転職回数の多い人の方が、そうでない人よりも優れているという考えと同様に、ナンセンスである。何をいきり立っているんだか。
( → 該当サイト )
高等動物と下等動物との差は、優れているかどうかではなくて、進化の順序だ。「転職回数(突然変異)が多いか少ないか」ではなくて、「蓄積が多いか少ないか」だ。比喩で言うなら、「小学校の上に中学、中学の上に高校、高校の上に大学」というような順序だ。下の蓄積なしには、上に進めない。
これを「転校回数の大小」というふうにたとえるのは、お門違いと言うしかない。
こういう勘違いをするのも、進化を「突然変異と自然淘汰」とだけ考えているからだ。そこには「大きな分岐の蓄積」という発想が抜けている。つまり、「大進化」という発想が抜けている。「小進化」(突然変異)という発想しかない。
現代の進化論(通説)は、小進化の理論だ。だから、上記のようにいきり立つ人もいる。
そして、いきり立つあまり、「ヘッケルなんて嘘つきだ」と批判するのだろう。
進化論の世界って、性格的に攻撃体質の人が多いようだ。
《 注 》
すぐ上で、こう述べた。
「小学校の上に中学、中学の上に高校、高校の上に大学」というような順序だ。下の蓄積なしには、上に進めない。
このことを説明するのが、ヘッケルの図(の考え方)だ。
魚類や両生類の段階の上に、爬虫類の段階がある。
逆に、爬虫類の段階の上に両生類がある、ということはありえない。
進化にはこのような順序関係がある。それというのも、蓄積の有無があるからだ。
進化において蓄積がいかに大切であるかを、ヘッケルの図の考え方は教えてくれる。
