その系統樹を紹介する。 ──
鳥類の系統樹については、1990年代にも一応の系統樹は示されていたのだが、当時の技術上の制約から、不正確な点もあった。( シブリー・アールキスト鳥類分類 )
しかし 2008年には、新しい研究成果が出た。それを下図に示す。
原典 機械翻訳(見なくてもよい。)
クリックして拡大
各名称の和訳は、下記。 ( 別のウィンドウで開いてください。)
→ 対訳(鳥類の系統樹)
《 出典 》 ( この和訳は、こちら の転載です。 )
( 左上図の出典は、ここ。右上図は、Google 機械翻訳。)
──
拡大した図を見ればわかるように、左下が最も原始的だ。
つまり、最も原始的なのは、
Rhea レア
Struthio ダチョウ
である。
というわけで、分子生物学的に見ても、「ダチョウ類は最も原始的だ」ということがわかる。
( ※ 正確に言えば、ダチョウ類は、他の鳥類の祖先に当たるわけではなくて、共通祖先から分岐したあとの進化の量が最も少ない、ということ。ここでは、「進化の量が少ない」ということが大事だ。そのことから、「進化の量が少ないと、翼を生やさない」とわかる。)
( ※ 「進化の量が少ない」というのは、「共通祖先の形質を最もよく残している」とも言える。したがって、一般の鳥類も、その共通祖先は、ダチョウに似た姿をしていたと推定される。つまり、ダチョウに似て非なるものだ。 → 走鳥類の位置づけ[再修正] )
【 出典 】
本項の図及び記述は、すべて、次の出典に依拠している。詳しくは、そちらを参照。
→ http://www3.luc.edu/biology/reddy/hackett2008.pdf
この研究についての説明は、下記のニュースを参照。
→ AFPBB 通信 ニュース
[ 付記 ]
上の PDF を見ると、文字を検索できて、便利。
この PDF の系統樹を見ると、次のことがわかる。
(1) 身体の形状や大きさは、進化の過程でいくらでも変化する。同じグループ内でも、形状や大きさが異なるものがたくさんある。
(2) 水生の鳥類は、一群をなす。肉食性の鳥類も、一群をなす。このように、食性という形質は、外形ではなく内臓に依拠する形質であるがゆえに、進化の過程でも大きく変動することがない。
一例を挙げると、次のようなものだ。
・ ペリカン,アホウドリ,ペンギン …… いずれも水生動物で近縁。
・ フクロウ,ワシ,カワセミ …… いずれも肉食。(カワセミはやや遠縁)
・ フラミンゴ,カイツブリ …… いずれも湿原や浅瀬にあるものを食べる。
※ 「進化において、肉体の形状の変化はたいして意味を持たない」
という前出の話を思い出してほしい。
→ 分岐と進化
以上のように、系統図を見ると、興味深い判断がいろいろと可能になる。
【 参考 】
ハヤブサは、ワシやタカとは、グループが違う。だが、その上のグループは共通する。したがって、ハヤブサ、ワシ、タカは、その祖先種が肉食性であったと推定される。
ただし、ハヤブサの系統は、ハヤブサと分岐した兄弟種[インコなど]が、雑食性になった。すると、兄弟種の方は、雑食性になったことで、食糧に苦労しなくなり、小形化と相まって、急激に種や個体数を増やしたのだろう。と同時に、大幅な進化にともなって、祖先種からは大きく隔たった形や姿になったのだろう。
その一方、ハヤブサの仲間は、肉食性であるせいで、食糧に苦労し、肉体は大きいままで、なかなか種や個体数を増やせなかったのだろう。そのせいで、ハヤブサは祖先種の形質をかなり残しており、ワシ、タカともいくらか似ているのだろう。
[ 余談 ]
ともあれ、分子生物学的に系統関係を考えれば、本サイトの見解(翼のない走鳥類のあとで、翼のある一般の鳥類が出現した)という説が正しい、とわかるだろう。
分子生物学的な系統関係も理解しないで、本サイトの見解を批判する人もいるが、困ったことだ。
( ※ ただし、「走鳥類」というものと「ダチョウ類」というものとを同一視すると、矛盾が生じてしまう。この件は、先に「走鳥類」の意味を修正したとおり。 → 該当項目 )
【 追記 】
鳥類の系統樹を見ると、面白いことに気づく。
「進化した種ほど、小型化する、という傾向がある」
ことだ。
これは、哺乳類とは逆だ。哺乳類では、
「進化した種ほど、大型化する、という傾向がある」
と言えるからだ。たとえば、類人猿では、
「初期の原猿類はとても小さく、後期の類人猿は大型だ」
という傾向がある。
ところが、鳥類では、その逆なのだ。
理由は、「小形化したほど、空を飛びやすい」ということだろう。また、大型になると、必要なエネルギー量が多くなり、簡単に餌を取りきれない、という事情もありそうだ。
(小型のスズメならば、あちこちにある木の実を取ることが可能だが、大型の肉食の鳥だと、獲物を捕らえるのが大変だ。かといって、肉食で大型化したあとで小型化すれば、小動物を捕食することができなくなる。)
こういう面白い話題にも気づく。
この件は、後日、あらためて考察した。下記の 関連項目 で示したリンク先を参照。
【 関連項目 】
この系統樹をどう読み取るか、という点については、次に解説文がある。
→ 鳥の祖先種は大型だ
系統樹を読み取ることで、鳥類は収斂進化した、ということがわかる。
これを逆に言えば、祖先種ほど収斂進化していない、ということになる。そのことを上記項目で説明する。

→ http://openblog.meblog.biz/article/3358238.html
(恐竜と鳥の系統図)
タイムスタンプは 下記 ↓
http://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/56-1-133.pdf
> 進化の量が最も少ない、ということ。ここでは、「進化の量が少ない」ということが大事だ。そのことから、
> 「進化の量が少ないと、翼を生やさない」とわかる。)
分子生物学的研究による系統関係からは「進化の量」は分かりません
分かるのは共通祖先からの分岐の順序です
>これは、哺乳類とは逆だ。哺乳類では、
> 「進化した種ほど、大型化する、という傾向がある」
> と言えるからだ。たとえば、類人猿では、
> 「初期の原猿類はとても小さく、後期の類人猿は大型だ」
> という傾向がある。
生物の体サイズは環境によって変化したりしなかったりします
いわゆる「原猿類」は現生種は小型種が多いですけど、絶滅種の中には類人猿に匹敵する体サイズのものはいましたよ
(絶滅したジャイアントアイアイだって現生のアイアイよりはずっと大きい)
>巨大原猿「メガラダビス頭骨」レプリカ
> メガラダビス「Megaladapis edwarsi」は絶滅した大型原猿類の中で最大級の
>種で、体重が80kgもあったとされています。
http://www.nodai.ac.jp/rieb/past/data.html
>アメリカ自然史博物館の古生物部門では、E. デルソン教授に案内していただき、マダガスカルの
>絶滅大型原猿類の標本を観察し、予備的な計測を行った。大型類人猿に匹敵するサイズの肋骨が、
>断片的ながら同一サイトから複数個体分収集されていた。同定は難しいものの、大型で前肢が
>類人猿のように長い、コアラ型原猿メガラダピスあるいはナマケモノ型原猿パラエオプロピテクス
>の肋骨が含まれている可能性が高い。観察した肋骨は、湾曲が弱い点で類人猿とも現生の原猿類
>とも異なり、背腹に細長い胸郭形状であったことが推定される。原猿類と類人猿では、前肢の
>延長を伴う大型化の過程で、体幹のプロポーションが異なる形態進化を遂げ、前肢の運動性も
>異なる方向に適応が進んだようである。
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/mobile/sections/as-hope/reports/AS-22-032b-j.html
>アイアイの謎.島 泰三 (著) .どうぶつ社 (2002/04)
http://www.amazon.co.jp/dp/4886223176
> 分かるのは共通祖先からの分岐の順序です
それはそうですけど、ここでは分子生物学的研究とは別の観点から述べています。
たとえばダチョウ類は、原始的な形質をたくさん残しているので、「進化の量が少ない」と見なされます。
進化の量がどのくらいかは、分岐の図を見ればだいたいわかります。本項で示した図を参照。
→ http://openblog.meblog.biz/image/bird-tree.png
左下のもの(ダチョウなど)ほど、原始的な形質を多く残しており、右上のもの(スズメなど)ほど、いっそう進化した種だということがわかります。
原始的か否かは、竜骨突起や羽毛などからわかります。たとえば羽毛の進化。
→ http://openblog.meblog.biz/article/3341160.html
分子生物学的研究からわかるのは、遺伝子の突然変異の量だけであり、それは小進化の量ですから、基本的には、すべての種で同等です。
「進化 = 遺伝子変化」と見なす限りは、あらゆる種は同等に進化していることになります。
しかし私はそういう立場は取りません。「進化 = 小進化」ではなく、「進化 = 大進化 = 種の分岐をもたらす重大な遺伝子変化」というふうに見なしています。別項で述べたように。
>> 「初期の原猿類はとても小さく、後期の類人猿は大型だ」
>> という傾向がある。
> いわゆる「原猿類」は現生種は小型種が多いですけど、絶滅種の中には類人猿に匹敵する体サイズのものはいましたよ
私が述べたのは「原則」や「法則」ではなく、ただの「傾向」ですから、例外はたくさん存在するでしょう。例外を示したって、意味はありません。例外は最初から含意されています。
例。
「男性は女性よりも体が大きい傾向がある」…… *
→ 「それは間違いだ! 平均的な男性よりも体の大きな女性は、たくさんいるぞ! 180センチ以上の女性もたくさんいるぞ! ゆえに、命題 * は間違いである!」
この主張がどこが狂っているか、わかりますか?
「猫科の動物では、祖先種は小型であり、そこから大型の猫科動物が生まれた。一方、大型の猫科動物が進化して小型の猫科動物になった、という例は、あまりないようだ」
「ゾウでも鯨でもキリンでも、祖先種はあまり大型ではなかったが、進化の過程でひたすら巨大化する道をたどっていった」
こういうことが一般的にしばしば生じます。ただし、例外がないわけではない。
なお、本項で述べているのは、「鳥類が進化の過程で小型化していった」ということです。そのついでに哺乳類について少しばかり言及しただけであり、哺乳類がどうであったかは、本題とは関係ありません。
本項はあくまで鳥類について論じています。余談について語りたければ、また別の機会にしてください。