2010年08月26日

◆ 新常用漢字の「碍」の用例調査

 新常用漢字として「障碍」の「碍」という字を入れるかどうか、用例調査がなされている。しかしその統計的手法は、妥当でない。インチキな統計調査となっている。 ──

 新常用漢字は、今年秋頃に正式な内閣告示が予定されているが、1字だけ保留中のものがある。それは「碍」だ。
 この字は「障碍」「障碍者」などで使われるので、国民の追加希望の上位にあるのだが、文化審議会では、その要望に応えるかどうか未定だという。理由は、次の二点。
  ・ 書籍などの漢字の出現頻度では低い。( 約8600字中の 3461位 )
   しかも、使い方も「碍子」「融通無碍」などに限られている。
  ・ 内閣府が 9000人に行なったインターネット調査でも「障碍者」
   という表記を最善とする意見は 2.4% にすぎなかった。


 以上、朝日新聞・朝刊・社会面( 2010-08-26 )による。

 ──

 しかしながら、以上は、統計的調査の方法を誤っている。
 (1) 「障害」に代わる用法なのだから、「障害」「障害者」の用例を含めて計数する必要がある。(「碍」に限る用法ではないのだから、「碍子」「融通無碍」などの用例数だけを調べても意味がない。そんな限定的な調査は、馬を数えるべきときに、白馬だけを数えるようなものであり、無意味。)
 (2) インターネット調査では、限られた範囲内の母集団を相手にしても意味がない。Google で検索しなくては。(そんなこともできないのでは、ネットリテラシーが低すぎる。)

 
 ──

 以上の二点を考慮して、Google で検索すれば、次のようになる。
    ※ 冒頭に - という記号が付いた語句は、計数から除外される。

 《 しょうがい 》   
    障害 -障碍 -障がい …………… 38,100,000 件
    -障害 障碍 -障がい …………… 31,300,000 件
    -障害 -障碍 障がい ……………   639,000 件

 《 しょうがいしゃ 》    
    障害者 -障碍者 -障がい者 …… 11,200,000 件
    -障害者 障碍者 -障がい者 ……   867,000 件
    -障害者 -障碍者 障がい者 ……   554,000 件

 《 彙・鬱 》
    
    語彙 ………………………………… 14,300,000 件
    憂鬱 ………………………………… 45,600,000 件
    憂鬱 -ハルヒ ………………………  4,720,000 件
    鬱病 …………………………………  9,020,000 件

  
 ──

 「鬱」という字は、「涼宮ハルヒの憂鬱」という書籍名が圧倒的だから、これを排除して計数する。そうしてみると、「彙」「鬱」の用例数はあまり多くないのに、新常用漢字に採用されている。
 その一方、「障碍者」の用例数はあまり多くないが、「障碍」の用例数はとても多い。「障害」に匹敵するぐらい、すごく多い。なのに、文化審議会は「碍」の使用例の多さを認識できない。

 では、文化審議会の書籍調査と比べて、どうしてこれほどの差が出たのか? それは、次のように推定できる。
 「ネット上の文字は、インターネットの普及した 1996年以降の文書がほとんどであり、特に、2000年以降の文書が大半だ。このころには、『碍』という字を使おうという気運が盛り上がった。その一方、書籍の文書は、2000年以前の文書もたくさんある。それを書いたときには、『碍』という字を使おうという気運が盛り上がっていなかった」

 というわけで、Google の調査に従えば、こう結論できる。
 「昔の文書はともかく、今の文書では、『碍』という字は、是非とも必要だ。少なくとも、『彙』や『鬱』よりも、はるかに必要性が高い」


 ──

 結論。

 文化審議会は、統計調査の仕方を、わかっていない。調べるべき場所を間違えて調べている。そのせいで、正しい認識ができない。
 世間の大多数が「必要だ」と見なしている文字を、「自分たちの非科学的な調査では必要性が低い」と考えて、世間の意見を押しつぶそうとする。こういう非科学的な文化審議会(の該当部会)は、ホメオパシーと同様に、叩きつぶした方がいいだろう。



 [ 付記1 ]
 参考として、朝日新聞の記事における用例数の調査を示しておこう。

    障害 ……… 5200件
    障碍 ………   8件
    障がい ……  144件

 
 ※ 新聞では漢字制限がなされているから、このような結果は当然だろう。
  
 [ 付記2 ]
 文化審議会では
 「『障碍』と『障害』のどっちがいいか」
 という話題ばかりを考えているが、次の話題を忘れている。
 「『障碍』と『障がい』のどっちがいいか」
 政府の方針では、『障がい』なのだから、文化審議会では、「政府文書では『障がい』と書くことが好ましい」というふうに結論するべきだろう。彼らの頭は小学生並みなのだから、かな混じり文が適切だ。
 ついでに、自分たちの名称も、「文化しん議会」にすればいいのに。彼らの漢字レベルにはそれが適切だ。
  


  【 関連項目 】

 → 新常用漢字の基準は中国語か
posted by 管理人 at 19:08| Comment(1) |  文字規格 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本項に関連して、twitter で話題になっている。

> 今日まで「碍」を常用漢字に追加することでどのような社会的不利益が発生するのか納得の行く説明を誰からも聞いたことが無いのですが、どなたか御存知ありませんか?

 http://togetter.com/li/48028

 ──

 私が答えよう。この問題への解答は、下記にある。

 「新常用漢字の基準は中国語か」
 http://openblog.meblog.biz/article/1186550.html

 ──

 つまり、「(日本の)社会的不利益」は、もともと判断基準に入っていない。日本の社会のためにやっているのではないのだ。では何のためかというと、中国語のためだ。
 で、中国語を第1に考えると、「彙」「鬱」はとても大事な字だが、「碍」はあまり大事な文字ではない。
 というわけで、「中国語オタク」の観点から、「碍」の字は軽視されてしまうのである。

 ついでに言うと、「碍」の字だけを取り上げるのは、あまりにも偏狭すぎる。もっと大事な文字(小学生が日常的に使う単語の文字)が、大幅に欠落している。そのことは、前にも述べたとおり。
(「新常用漢字」でサイト内検索してほしい。左の検索欄を利用。)
Posted by 管理人 at 2010年09月06日 19:33
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