2010年08月24日

◆ ホメオパシーは非科学か反科学か

 「ホメオパシーは非科学であるから医療の場から排除するべきだ」という見解を、日本学術会議会長が示した。しかしこれは、ピンボケだ。 ──

 この見解は、日本学術会議会長が示した。部分引用すると、次の通り。
 「科学の無視」
 「科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません。」
 「ホメオパシーが非科学的である」
 「ホメオパシーのような非科学を排除して正しい科学を広める」


 以上をまとめると、「科学ではない(非科学だ)から、排除するべきだ」となる。
 しかし、その説が正しいとすれば、以下のものはすべて、科学ではないがゆえに、排除されることになる。
  ・ 恋愛
  ・ 文学
  ・ 美術
  ・ 音楽


 さらには、科学性が疑われているものとして、下記のものも排除される必要がある。
  ・ 気象の長期予報
  ・ 経済学
  ・ 地震学 地震予知

 
 ついでに言えば、近代科学だって、初期のころはあやふやだったのだから、初期の近代科学もまた、「そんなものは駄目だ」と否定されかねない。

 要するに、「科学だけが偉い」というような「科学王様主義」は、学術会議会長の尊大な自惚れにすぎない。彼は「科学には届かない領域がたくさんある」ということを、理解できないのだ。そのせいで、「科学でないものは人にあらず」というような、威張り腐った主張をするわけだ。

 ──

 この点は、実は、「トンデモマニア」と共通する。
 トンデモマニアは、ホメオパシーを見て、「トンデモだ」「偽科学だ」と主張する。それもまた、「ホメオパシーは非科学だ」と主張している点で、学術会議会長の立場と同じなのである。
 というか、学術会議会長は、トンデモマニアと同じレベルにすぎない。少なくとも、科学者のレベルになっていない。

 ──

 では、科学者のレベルとは? 次のようになる。

 「科学はこの世のすべてを解決できるわけではない」
 という謙虚な自覚が必要だ。この自覚が、科学的な態度だ。(「科学は万能だ」という非科学的な態度とは正反対。)

 その上で、
 「非科学的なもの(科学の領域外)については、科学は何も言えない」
 とわきまえて、口を閉じるべきだ。
 たとえば、「恋愛」「文学」「美術」「音楽」などは、科学の対象外なのだから、それらを「科学的でないから駄目だ」などとは罵らず、「科学ではわかりません」と察して、口を閉じるべきだ。

 その一方、科学の領域内では、科学に反する言説を否定するべきだ。これを簡単に言えば、次のように言える。
 「反科学を否定する」


 ここで、反科学とは、科学の分野において科学に反する言説だ。簡単に言えば、オカルトだ。「水の記憶」というのも、その一例である。
 このような反科学(オカルト)は、科学の分野内で、科学に反することを主張する。それゆえ、それは否定されねばならない。
 なぜか? 科学の分野内で、科学を否定するのであれば、それもまた、科学の方法(科学主義)に従う必要があるからだ。つまり、科学を否定するものもまた科学である必要がある。(古い科学を新しい科学が否定する。)……これが原則だ。
 しかしながら、反科学は、そうではない。反科学は、科学の方法(科学主義)に従っていない。かわりに、迷信のようなものを持ち出す。水の記憶など。……それが反科学(オカルト)だ。

 この点で、トンデモないし偽科学は、全然異なる。これらは科学の方法(科学主義)に従っている。その意味で、反科学ではない。
 一例として、ホメオパシーを科学的だと信じた人(ベンヴェニスト)がいる。彼はホメオパシーが正しいことを科学的に証明しようとした。そして笑いものになった。……この点では、彼はまさしく「トンデモ」「偽科学」と言える。(科学的にふるまったので。)
 しかしながら、彼を利用してホメオパシーを商売にしようとした人々(詐欺師集団)は、違う。これら強欲な人々は、ホメオパシーが正しいことを科学的に示そうとはせず、単に宣伝によって客を洗脳しようとした。その宣伝の典型が「水の記憶」である。……これはもはや科学ではなく、反科学(オカルト)となっている。

 ──

 以上を整理すると、次のようになる。

    科学

     ↑
     ↓

  ・ 非科学(科学の範囲外) …… 科学はそれについて何も言えない
  ・ 反科学(科学の範囲内) …… 科学はそれを明白に否定する
  ・ 偽科学(科学の範囲内) …… 本人だけはそれが正しいと信じる

 科学に反するものは、「非科学」と「反科学」(オカルト)と偽科学とがある。
 そして、ホメオパシーが該当するのは、「非科学」や「偽科学」ではなく、「反科学」(オカルト)である。

 したがって、ホメオパシーを批判するのであれば、「科学的でないから」という理由は、ちっとも理由になっていない。科学的でないこと自体は、ちっとも悪いことではないのだ。たとえば、赤ん坊がにっこり笑うことは、ちっとも悪くない。(赤ん坊は科学的ではないが。)

 ホメオパシーを批判するのであれば、「科学に反することを科学的に語るから」(反科学的であるから)というふうに理由を示すべきだ。ホメオパシーは、科学的な治療効果などはないのに、科学的な治療効果があるかのように見せかける。このような業者の欺瞞が悪なのである。
 
 ──

 その一方で、科学とは別のところで、気分のためにホメオパシーのレメディを服用することは、悪でも何でもない。煙草を「有害だから」という理由で禁止することは科学的だが、レメディを「有害でないが」と禁止することは非科学的だ。その程度のことは利用者の自由裁量とするのが、科学的な態度だ。(ただの倫理でやみくもに禁止するのは、科学ではなくて、行き過ぎた倫理主義だ。)(ただし、高額販売することは詐欺なので、悪だ。)

 学術会議会長の見解は、科学的であろうとするあまり、かえって非科学的になってしまっている。「おまえは非科学的だ」と主張しながら、自分自身が非科学的になってしまっている。あまりにも踏み込みすぎて、勇み足になって、自分で勝手に土俵を割ってしまっている。

 今回の発表のあと、「学術会議会長が批判したから、ホメオパシーは間違っている」と批判する烏合の衆が、イナゴの大群のように湧き起こるだろう。しかし、そういう権威主義は、ホメオパシー信者がホメオパシー医学協会の権威を信じるのと、五十歩百歩である。

 学術会議会長の批判はピンボケである。その批判を信じるべきではない。
 正しくは? ホメオパシーは、非科学(トンデモ)ではなく、反科学(オカルト)である。……そう理解した上で、ホメオパシーを否定するのが正しい。
 また、レメディの摂取は、現代医療を否定せず、無料である限り、禁止するべきではない。
  → 無料ホメオパシー

 [ 付記1 ]
 学術会議会長の見解は、妥当な点もある。引用しよう。
  「は科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません。」
  「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています」

 ここでは、ホメオパシーを反科学と見なしていることになる。これらの点では、妥当である。
 つまり、このくらい厳しい批判をすれば、妥当になる、ということ。他の箇所は、舌鋒が甘いので、妥当さに欠ける。(もっと厳しくやれ、と叱咤したい。)
  
 [ 付記2 ]
 また、次の記述は問題だ。
 「治療に使用することは厳に慎むべき行為です」

 この記述は、二つの点で問題がある。(両面価値的。)
 第1に、治療の際に、患者が自主的に補助的に使うだけなら、問題ない。患者がプラセボ効果を期待しても、それを阻止する必要はない。
 第2に、ホメオパシーを、治療として用いるのであれば、それは、医師法違反である。( 医師法第17条「 医師でなければ、医業をなしてはならない。」) また、薬効のある食品として販売するのであれば、特保としての認可が必要で、その認可を得ていないのであれば、薬事法違反である。……このような場合には、犯罪となるのだから、「慎むべき行為です」と語るよりは、「犯罪行為です」と語るべきだ。……ここでも、甘すぎる。(もっと厳しくやれ、と叱咤したい。)



 [ 余談 ]
 学術会議会長の話は、朝日が Twitter で実況中継した。下記にまとめがある。

  → http://togetter.com/li/44398

 学術会議会長談話は、公表資料PDFがある。
   → http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d8.pdf
posted by 管理人 at 21:49| Comment(6) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本サイトの立場に同意して、簡単にまとめた感じのページ。

 → http://33616.diarynote.jp/201008242132232502/
Posted by 管理人 at 2010年08月24日 22:18
日本医師会と日本医学会は、明日(25日)、共同記者会見の予定。
Posted by 管理人 at 2010年08月24日 23:12
朝日の記事が出た。(朝刊 )1面トップと、3面の大半を費やしている。要旨は、
  ・ ホメオパシーを治療に使うのは駄目。
  ・ 個人が勝手に利用するのは自由。(この件、会長談話)
  ・ 自然派志向の女性に受け入れられがち。
  ・ 宗教性があり、洗脳される。
  ・ 現代医療を遠ざけるように言われる。
  ・ 莫大な金を払わされる(例ではレメディに毎月1.5万円を半年間、
   授業料は2年300万円)
  ・ 厚労省は、医師法・薬事法の観点から情報収集している。

 以上、申し分ない。100点満点だ。完璧と言える。朝日の記事でこれほど完璧な記事を見たことがない。
 本サイトを「参考にします」と Twitter に書いていただけあって、本サイトの観点から見ても、まったく問題がない。長野・岡崎 両氏の仕事を称えたい。

 ま、欲を言えば、「無料ホメオパシー」の紹介があればもっといいのだが、それを書くのは(私の手前ミソふうだし)記事には無理だろう。そこまでは要求しません。
 ともあれ、良くできた記事だった。

( ※ 「トンデモ」とか「偽科学」とかいう言葉がないのも、良かった。「カルト」という言葉はないが、それは特に必要ない。記事は批評ではなく事実報道だから。)
Posted by 管理人 at 2010年08月25日 06:22
こんにちは。

>さらには、科学性が疑われているものとして、下記のものも排除される必要がある。
  ・ 気象の長期予報
  ・ 経済学
  ・ 地震学

地震学がどうして科学性が疑われるのか教えて下さい。地震予知ならわかりますが。。。
Posted by つりきち at 2010年08月25日 09:27
日本医師会のウェブサイトに、本日発表された見解がPDFで掲載された。

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100825_1.pdf
Posted by 管理人 at 2010年08月25日 17:57
朝日・アピタルに、新しい項目が掲載された。

https://aspara.asahi.com/blog/kochiraapital/entry/QfTCsj3As7

 学術会議会長の談話は、ホメオパシーへの対処としては不十分だとして、もっと踏み込んだ対処を求めている。

 偉い! そんなことを書いた記者は、この人(長野記者)が、史上初めてだろう。よくまあ、それだけのことを言えたものだ。
 拍手喝采。

 なお、今後の報道への期待としては、「嘘・虚偽」よりも、「金儲け主義」「詐欺」に重点を置いた報道を期待したい。その点では、「2年300万円」という報道は、非常に優れていた。このことは、私も指摘したことがないからだ。
 
 なお、「金儲け主義」が重要なのは、そのことが「現代医療を受けさせないこと」の理由となっているからだ。
Posted by 管理人 at 2010年08月26日 21:29
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