( ※ 本項の実際の掲載日は 2010-08-11 です。)
あらゆる病原微生物に対して、ワクチンなしで免疫作用を強める、という方法が開発された。以下、引用。
免疫反応(抗原抗体反応)では、リンパ球の一種のB細胞が、病原体(抗原)ごとに抗体を作って攻撃する。初めての病原体に反応したB細胞が大量の抗体を作るまでに1〜2週間かかるが、B細胞の一部が抗体の作り方を記憶。同じ病原体が再度入ってきた時には、大量の抗体を2、3日で作ることができる。──
鍔田教授らは、B細胞表面の「CD22」という膜たんぱく質が、初めての病原体に反応した時に作られる抗体の量を抑制していることを突き止めた。
遺伝子操作でCD22をなくしたマウスに病原体を注入すると、初めての病原体なのに素早く大量の抗体ができた=図=。自分自身の正常な細胞まで攻撃してしまう自己免疫疾患やアレルギーなどの異常は見られなかった。
CD22 の働きを妨げる化合物も合成し、国内、国際特許を申請した。
( → 読売新聞・夕刊 2010-08-11 )
CD22をなくすことで、大量の抗体をすばやく作ることができる。一見、うまい話に見える。
しかしこれは、「動物の本来の機能を停止する」ということでなされるのだ。そして、動物の本来の機能とは、動物が長い生命の歴史でようやく獲得した、非常に有利な形質である。それをストップすることで、何らかのメリットが生じるとしても、そのことが本質的に有益であるはずがない。……このことは、進化論的に言えば、当然だ。
CD22は、何のために獲得されたのか? それが問題となる。私が推測すれば、次のことだろう。
「 CD22 がなければ、やたらと抗体が大量生産されてしまう。すると、ちょっとした病原体が侵入しただけで、体内にはやたらと多種多様の抗体だらけになってしまう。それでは動物としてまともに機能できない。そこで、どうしても必要となる抗体だけを大量生産するようにする。つまり、ひとたび大量生産したものだけを記憶するようにする」
したがって、CD22 で治療効果を得るとしたら、次のようにすればいい。
「初めてインフルエンザに感染して、発熱した直後に、CD22 阻害薬を服用する。それ以外の場合には、CD22 阻害薬を服用しない」
この薬は、かなり慎重に処方する必要があると思う。乱用は危険だ。下手をすると、人命に関わる。インフルエンザで死ぬことは稀だが、CD22 阻害薬を誤用(乱用)したせいで死ぬことは、かなりありそうに思える。
( ※ 例。軽い病気の病原体に対して、過剰に CD22 阻害薬を乱用する。そのせいで、何度も何度も大量の抗体を作りすぎたので、いざというときに、必要な抗体を作成する能力が減退してしまう。そのせいで、豚インフルエンザが来たときに、肺に膿が溜まって、呼吸困難となり、死んでしまう。……これは現実でなく、推定モデルだが。)
この薬は、毒にも薬にもならないものではなく、強力な薬にもなるが、毒薬にもなる薬だ。私はそう考える。あまり甘い夢は見ない方がいいと思う。
とりあえず、ここで、警鐘を鳴らしておこう。
( ※ というのも、「万能の薬ができた、万歳!」と思って、やたらと予防のために乱用する馬鹿が出てきそうだからだ。記事にしても、そんな印象がある。物事はもっと慎重に考えた方がいい。)