太陽光発電や風力発電のコストを示すとき、「 1KWh あたり **円」というふうに示される。しかし、このような表示は、妥当でない。 ──
自然エネルギー発電(太陽光発電や風力発電)のコストを示すとき、「 1KWh あたり **円」というふうに示される。そのような表示の例としては、次のような解説がある。
→ Wikipedia
→ NEDO
この表示法に基づいて、
「太陽光発電や風力発電の発電コストは、火力発電の2倍ぐらいだが、将来的には火力発電と同程度になるだろう」
というふうに言われる。
しかし、以上のようなコスト算出は、まったく妥当でない。(インチキである。)
──
なぜか?
人々にとって大切なのは、発電量(発電の総量)ではないからだ。では何が大切かというと、「安定電力」である。
たとえば、普通の家庭では、100ボルトで 20〜 50アンペアぐらいをいつでも得られることが必要だ。仮にそうでなくて、ときどき電力供給が減ったら、どうなるか? 次のようなことが起こる。
・ パソコンの電源が突然落ちる。文書データの消失。
・ 夏の暑いときに、エアコンが止まる。
・ 冷蔵庫が切れる。冷凍食品がみんな腐る。
・ IH調理器が切れたあと、放置しておくと、電源が入り、超過熱。火事。
電力が止まると、こういう問題が起こる。だから、電力が止まることは、可能な限り、あってはならないのだ。
その一方で、過剰な電力があっても、無駄に消えるだけだ。たとえば、深夜に風力発電で莫大な発電量が得られたとしても、その電力は無駄に捨てられるだけだ。
──
結局、電力にとって大切なのは、発電量の総量ではなくて、安定的な電力なのである。典型的に言えば、次の2種類だ。
・ 常に 50 KWh の安定供給
・ あるときはゼロで、あるときは 200 KWh の不安定供給
この両者で、どちらも1日の発電総量が同じだとしても、その意味合いはまったく異なる。
はっきり言って、必要なときにゼロになることもあるような発電装置は、あっても意味がないのである。そんなものに頼る人はいないからだ。
──
こうしてわかるだろう。電力にとって大切なのは、発電量の総量ではない。とすれば、発電量あたりのコストをいくら計算しても、何の意味もない。それは無意味な計算である。
どちらかといえば、発電量ではなく、最低発電量(発電の最低保証量)を基準とするべきだ。その量は、太陽光発電や風力発電では、ほとんどゼロとなる。とすれば、コストはほとんど無限大となる。……これが真のコストだ。
──
この問題は、ある程度は解決がつく。「スマートグリッド」という形で、多くの発電装置を束ねることで、個々の発電書の変動をいくらか吸収できる。
しかし、いくらかは変動を吸収できるとしても、完全に吸収することはできない。たとえば、大型台風が来れば、日本中の風力発電は大半がストップする。日本が梅雨入りすれば、北海道と沖縄を除く地域は、太陽光発電の量が激減する。(ゼロではないが。)
この問題を避けるには、バックアップとしての火力発電が欠かせない。そして、バックアップとしての火力発電の設置コスト(運用コストではない)の分を考慮すると、太陽光発電や風力発電のコストはものすごく高くなってしまうのだ。
この件は、前に、下記でも述べた。
→ 太陽光発電のコスト計算
──
とにかく、太陽光発電や風力発電のコストとして、「 1KWh あたり **円」というふうに示される数値は、インチキである。それは最良の条件のとき(晴れているときや風邪のあるとき)だけの値であるにすぎない。最悪の場合には、発電量がゼロになるので、発電コストは無限大となる。というか、必要とされる電力を出力できないので、コスト云々の前に「契約違反」となる。
太陽光発電や風力発電を、むやみやたらと導入すると、日本の電力事情は非常に不安定になる。しょっちゅう停電して、家庭や企業が大混乱になる。(北朝鮮みたいですね。)
スマートグリッドというものが、いくらかでも意味を持つには、アメリカやヨーロッパのように、広大な大陸を必要とする。(それならば気象の変動を、ある程度吸収できる。)
しかるに、日本のように狭い島国では、一国全体がほぼ同じ気象となる。また、隣の国から電力を買おうにも、海に囲まれているので、送電線は存在しない。
アメリカや欧州では太陽光発電や風力発電が増えつつあるからといって、日本でもそれを真似ようとすると、バナナの皮にすべって頭を打つ猿になるだけだ。
【 関連項目 】
→ 太陽光発電のコスト計算
→ 太陽光発電と電力安定
※ いずれも、本項と似た話題。内容は、一部、ダブっている。
2010年08月08日
この記事へのコメント
コメントを書く
過去ログ