缶飲料の上部は、少しすぼんでいる。
つまり、横から見ると、缶の上部は、
┌───────┐
ではなくて、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
となっている。それは、なぜか?
──
この話題は、実は、先の「富士山をどう動かしますか?」の項目にある話題だ。つまり、マイクロソフトの入社試験の問題だ。
そこでは、原文では、次のようになっていたが、同じことだ。
「ジュースの缶の上下が細くなっているのはなぜでしょう?」
( ※ この文章だと、意味がわかりにくいので、本項では書き換えた。)
マイクロソフトによる正解は、下記のページに示してある。
→ 解説ページ
つまり、「面積を小さくするため」だという。それによってコストを下げるためだという。
しかし、それはおかしい。もし「面積を小さくするため」であれば、直径を1センチぐらい小さくするのでは足りず、直径を半分ぐらいにすればいい。
つまり、横から見ると、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
ではなく、サントリーの デカビタ
( ※ この場合、小さな円形を丸ごとはずしてしまうようにすればいい。カンヅメと同じような構造だ。)
──
要するに、「面積を小さくする」という方針であれば、デカビタみたいな形になるはずだ。しかし、実際には、そうではない。ゆえに、「面積を小さくする」というのは、誤答である。
では、正答は?
私の回答は、こうだ。
「構造を強化するため。それによって、蓋がはずれる事故をなくす」
仮に、上部がすぼんでいなかったなら、次のような形になる。
┌───────┐
この場合、側面を握ると、側面がたわんでしまう。側面がたわむと、上部と側面との接合部が、ハズレてしまいやすい。そうなると、蓋が飛んでしまうという事故が起こりやすい。このような事故を防ぐために、側面の歪みをなくしたい。そこで、すぼむ形にしているのだ。
──
以上は、私の推定だ。この推定を確認するために、「昔の缶ビールはどうだったか?」と調べてみた。下記に画像がある。
純生1 , 純生2 , 本生1 , 本生2
かなり昔のビールだが、いずれも、上部には蛇腹状の起伏がある。これはまさしく、強度を得るためだろう。
昔は、そのような形の缶だった。現在ではそうではなく、単に斜めの形状となっている。なぜか? たぶん、加工技術が発達したからだろう。そのことで、急激に形状をすぼませることができるようになった。(昔は上下に3センチぐらいを要したが、今では上下に1センチぐらいしか要さない。)
なお、現在の缶は、すぼんでいる部分の形状が、
/ \
のような単純な形ではなく、ゆるやかな S 字状の形になっている。下記の写真を参照。
→ のどごし生
──
まとめて言うと、次のようになる。
缶の上部は、すぼんでいる。その理由は、
・ 蓋がはずれないように、側面の強度を得るため。
・ 昔はなだらかな蛇腹状だったが、現在では急激にすぼむ形状になっている。
・ その理由は、(たぶん)加工技術が進歩したから。
なお、「蓋の材料のコストを減らすため」というのは、明らかに間違いだ。もしそれが正しければ、蓋の直径はもっとずっと小さくなっているはずだからだ。
どちらかと言えば、「側面の金属を薄くして、側面の金属のコストを減らすため」であろう。実際、最近の缶飲料の側面は、昔に比べて、ずっと薄くなっている。からになったあとで、ちょっと握るだけで、すぐに歪む。この点では、昔の缶の方が、ずっと丈夫だった。金属が厚かった。(……その分、コストはかかっていた。)
( ※ だいたい、直径を1cm ぐらい小さくしても、材料のコストはたいして変わらない。むしろ加工の手間賃の方が余計にかかる。一方、この部分の側面部を強化するためであれば、直径はまさしく 1cm ぐらいだけ小さくする必要があり、それより大きくても小さくてもいけない。)
( ※ なお、直径を 1cm ぐらい小さくすることだけが目的であれば、胴体を 1cm ぐらい蓋よりも太くする必要はなく、蓋と同じ直径のまま、細長い胴体にしてもいいはずだ。……ただし、そういう「ずん胴」タイプの場合、側面部が歪むことで、蓋がはずれやすくなる。だから、「ずん胴」タイプにはしないのだ。)
[ 付記 ]
サントリーの金麦は、当初は(上記の純生や本生と同じように)蛇腹みたいな段々のついた形状だったが、リニューアルして、なめらかな形状になった。
検索すると、両方の画像が見つかる。
→ Google の画像検索 「金麦」
これからもわかるように、つい最近まで、蛇腹状の缶は生産され続けた。(今でも一部では生産されているだろう。)
一方、昔の缶飲料は、蛇腹状の缶が大部分であったようだ。このことは、歴代の缶を集めているコレクターの写真からわかる。
→ 歴代の缶のデザイン
【 追記1 】
サントリーのペンギン缶ビールは、1985〜87年に発売され、蓋が小さいのと大きいのと、どちらもある。
→ http://www.geocities.jp/penguin0943/penguin.htm
これを見るとわかるように、次のことが言える。
「缶の蓋は、胴体よりも細くなっているのではない。缶の蓋は同じ大きさのまま、胴体の方が太くなったのだ」
細いとか太いとかいうのは、マイクロソフトの認識そのものが間違っていたことになる。マイクロソフトは「蓋が胴よりも細い」と思ったが、実はそうではなくて、「胴が蓋よりも太い」というのが正しい。(蓋の直径は小さくなっていないから。)
結局、缶の蓋を小さくしてコストを下げた、という事実はない。昔も今も、缶の蓋のサイズは、ほぼ同じである。それというのも、蓋の部分の大きさは「飲みやすさ」によって決まるからだ。(小さくしすぎれば、飲みにくくなる。だから、直径は、変えようがない。実際、容量はいろいろあるが、どの容量でも、蓋の直径はほぼ同じである。ここでは蓋の直径が先に決まっているのだ。勝手に小さくすることはできない。)
一方、缶の胴体の大きさは、途中から太くなった。なぜ? ── それが、本項で述べた理由だろう。つまり、「丈夫にして、蓋がはずれないようにするため」であるが、その前提として、「側面部の金属を薄くしても」ということが来る。つまり、
「側面部の金属を薄くしても、蓋がはずれないようにするため」
である。これが、「胴体を太くしたこと」の理由である。
ただし、胴体の太さそのものが理由なのではなく、
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という強化構造をもつことが理由だ。(その強化構造は、初期には、なだらかな蛇腹状だった。途中で、急激にすぼむ形状に変更された。……以上が歴史的事実。)
【 追記2 】
「蓋に使うアルミの量を減らすためではない」
ということを実証する証拠が、別にある。「蓋を小さくしていない」という事実だ。
仮に、「蓋に使うアルミの量を減らすために、蓋を小さくする」というのであれば、本当に蓋を小さくしていたはずだ。たとえば、次の缶飲料のように。
→ 190グラムのトマトジュース缶
この場合、直径は4センチぐらいだから、胴体の直径7センチに比べて、ほぼ半分ぐらいの直径しかないことになる。このことは、先にも次のように述べた。
もし「面積を小さくするため」であれば、直径を1センチぐらい小さくするのでは足りず、直径を半分ぐらいにすればいい。そのようにすることが可能であるのだから、そのようにするはずなのだ。もし「アルミの量を減らすため」であれば。
しかし、直径が4センチぐらいになると、使いにくさもさることながら、上部(蓋の周囲)の強度が不足してしまう。胴体が歪むせいで、蓋と胴体がはずれやすくなる。その問題を回避するには、昔の缶ビールのように、蛇腹上の段々付ける必要がある。また、デカピタみたいな、不格好な形になる。そのせいで、縦方向の長さが大きくなり、ケースにたくさん入れにくい。また、上下二段積みすることもできなくなる。
というわけで、さまざまな要因によって、「蓋の直径は、胴体の直径よりも、1センチ小さい」というのが最適なのだ。強度の点でも、他の点でも。
一方、「アルミの量を減らすため」であれば、「蓋の直径は、胴体の直径よりも、3センチ小さい」というふうになるはずだが、その方法は、他の美点を殺してしまうから、却下される。
それゆえ、蓋の直径は、昔からほとんど変わっていないのである。ただし、胴体の直径だけは、昔に比べて1センチ増えた。
このアルミ缶の歴史の項をご覧下さい。
コストダウンのために1994年頃からビール缶の缶蓋縮径化(204径化)普及し始めているんですよ。
蓋の直径を小さくするとコストダウンになるのはなぜか、という点で、二つの説は異なります。
ちゃんと本文を読んでください。
タイムスタンプは 下記 ↓
しかし、すでに挙げられたPDF内に(http://www.aluminum.or.jp〜)
「最近では、アルミ缶の軽量化、材料コスト低減を図るために、缶胴、缶蓋は徐々に薄肉化してきました。(中略)海外では、缶蓋径を小さくしたり、形状を工夫するなどして、蓋に使用される素材の節減が図られています。」(上記PDFより引用)
とあります。蓋を小さくするのは素材節減の為とも(一応)記述されていますよ。
具体的なサイズは記していないが、たとえば、60mm なら 60mm という値は、ほとんど変わっていない。単に胴体が 60mm から 70mm に増えただけ。
PDF の文書が正しいという保証はない。PDF も勘違いしているのでしょう。
事実で数値を見なくては。
ついでに言えば、蓋がどれほど薄くなっても、それを「細くなった」「直径が小さくなった」とは表現しません。
──
あと、あなたは私の文章を根本的に誤読していますよ。「蓋コスト削減のためではない」という言葉は、「蓋コスト削減の効果がない」ということではありません。否定文において否定の箇所を誤読している。論理力がペケ。
──
ビール缶●飲み口側が底より狭くなっている理由
テーブルの上にビール缶を転がしても、カーブを描いたりはしない。だから、まだ気づいていない人もいるだろうが、ビールや発泡酒《はっぽうしゅ》の缶は、底にくらべて飲み口側がわずかに細くなっている。今度、缶をじっくりみれば、わかるはずである。
業界では、飲み口側をせまくすることを「口しぼり(ネッキング)」とよんでいる。その狙いは、消費者が飲みやすいようにといいたいところだが、最大の理由はほかにある。金属缶の製造コストを節約するためである。
飲み口側を細くしておけば、必要な金属の量がわずかでも減る。とくに、ビール缶のフタには、高価なアルミニウム合金がつかわれている。口をしぼってその面積を減らせば、底をしぼるよりも、大きくコストダウンできるのだ。 ビールの値段の半分は税金といわれるが、こうしたメーカーの細かな努力で、缶ビールをすこしは安く買えるというわけである。
出典:http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/indexp_cgi_AC=1-14996
──
しかし、現実には、蓋の部分の面積は、昔から減っていないのだ。単に胴体が太くなっただけだ。
→ 証拠写真(前出)
http://www.geocities.jp/penguin0943/penguin.htm
「口をしぼってその面積を減らせば、底をしぼるよりも、大きくコストダウンできるのだ。」
という主張が正しいとしたら、直径は小さくなっている必要がある。特に、従来のものに比べて、9割とか8割とか5割とか、大幅に小さくなっている必要がある。実際には、そうではない。10割のままである。ただし、胴体が太くなっている。
結局、「コストダウン」という説は正しいのだが、そのコストダウンは、蓋の直径を小さくすることによってなされるのではなく、胴体部分の肉厚を薄くすることによってなされた。この肉厚の薄さは、昔の缶ビールと比べると、はっきり認識できる。
ともあれ、「直径は小さくなっていない」という現実の事実を認識しないで、頭のなかの理屈ばかりをこねては、駄目だ。
特に、「胴体が太くなったから、蓋が小さくなったと見える」という相対的な認識ができないようだと、頭が理系になっていない。
そんなに難しく考えなくても・・・
飲むところの直径が小さくなってるのは、缶を地面にころがしても直接口に触れるところが汚れないからだと聞いてますが
昔のデザインだと絶対汚れるでしょ?
タイムスタンプは 下記 ↓
はい,アルミ缶蓋の軽量化に関する論文.
エンドの軽量化は割と重要な要求特性のひとつですよ,実際のところ.
別にそれは私も否定していないし、認めていますよ。
私が述べているのは、「実際には缶蓋の大きさは小さくなっていない(胴体の方が太くなっているだけ)ということです。
ちゃんと説明を読んでください。写真を見てもわかるはずです。
「胴体の方が太くなったのだから、缶蓋の比率は小さくなった。比率が小さくなったのだから、アルミの使用量が減った」
という理屈は成立しません。わかりますか? 小学校で「比率と絶対量」というのを勉強してくださいね。
10年頃前まで、350mlで今のビールの蓋より小さい202径がありましたから。
ビール系飲料の蓋とその他飲料の蓋では現在も違っており、コストが原因であればどちらかに収斂するはずですがそうなっていません。
>「構造を強化するため。それによって、蓋がはずれる事故をなくす」
これでは不正解じゃないですか?4段ネックする理由がありません。Linkされているトマトジュースの1段ネックで十分です。
また段構造が必要と言うのであれば滑らかな形状である必要はないし、なおさら1段で十分です。
スムースネックに進化した理由が説明できません。
じゃあどうして4段にしたのか? それを考えてみてください。私に言うよりは、先に現実を見てください。
私が思うに、トマトジュースの金属は厚い。ビールの金属は薄い。4段にすれば薄くできるからでしょう。薄くすれば、4段にしないと、蓋がハズレる。
それは論理的な姿勢ではなく質問返しですね。
>蓋が外れる
は論理の飛躍があったと考えたほうが自然です。
正解はやはりコストです。
実は206から204にしても、メンコ(蓋の打ち抜き外径)はさほど変わっていません。
蓋の耐圧を上げるために飲み口の外側に設けられてある溝を深くしたからです。
蓋の径が小さくなれば内圧から受ける荷重が低くなります、=内圧×面積。
そしてどうなったか?蓋は薄くなりました。206は板厚が0.27t、204は0.23tです。缶胴はネックインの加工コストは上がりましたが蓋の原材料は11%合理化できています。
なぜ他社は追随しないか。
投資コストが大きいからです。あとは面子とか。
http://blog.goo.ne.jp/y-tech/e/d2b9b1ba17dcbbc80ca64a9e3ab0dd48
なぜもっと小さくならないか。
記事でもありましたが飲みにくいからです。実際にコカ・コーラ社では202径を採用していましたが廃止されました。
またボトル缶という方法もありますが、あれは缶胴の板厚がとても厚くなりコストアップです。
側面の形状がこうなっているのは、側面の厚さを薄くするためだ(薄くしても強度を得るためだ)、というのが本項の結論です。
「側面の厚さを薄くするため」
というのを否定するために、
「蓋の厚さを薄くするから」
と説明しても、否定になっていません。蓋の厚さは、側面の厚さとは別の話題です。
論理ゲームに戻ります。
>側面の形状がこうなっているのは、側面の厚さを薄くするためだ(薄くしても強度を得るためだ)、というのが本項の結論です。
そうであれば先ほど指摘したように4段ネックからスムースネックに移行した理由が説明できません。
スムースネック形状が理想形であって、その移行過程が4段ネックであるとすると、現状で問題があった4段ネックを商品化できた理由も説明できません。
ここからは業界人のつぶやき
そもそも論なのですが、209径の蓋の時代から要求仕様からスペックアップしていません。209で問題なかったのですが、コストダウンの要請を受けて変化してきています。blog主の論理だと、問題があって解決したと読み取れるのですがそうではないということです。
ちなみに211径の缶胴を204径や206径に縮径すると、当然ですが肉厚は厚くなります。
なのでblog主の説は業界人にとっては異論なのですが論理としては面白いと感じたわけです。
実物を見たら分かると思いますが、折り返し構造のため、折り返した部分が出っ張るわけです。
これがあると、搬入の際に出し入れで引っかかり邪魔なので、出っ張りをすぼめるために引っ込めてあるだけです。
みなさん深く考えすぎです。
缶を作る会社と飲料を投入してふたをする会社は別ですよね?
口がすぼめてあれば開口部があっても比較的剛性が保てるので、(ふたのない)缶を製造してから、輸送し、中身を入れるまでのあいだ変形するなどの不具合を回避できる効果があるように思いますが、いかかがでしょうか?