これは、マイクロソフトの入社試験の問題(前項参照)にあったという。
原題は、次の通り。
「IQの高い人が必ずしも成功しないのはなぜなのか?」
で、いきなり模範解答を示すと、次の通り。
「なぜかというと、IQが高くても成功しない人は、単にやる気がないということ。
やる気×知性=成功力
で、やる気がゼロなら話になりませんよ、ということ」
( → 解説ページ から引用 )
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これを読んで、唖然としましたね。何たる凡庸なる解答!
前項の 富士山をどう動かしますか? の模範解答(マイクロソフトによる)も ひどかったが、こっちの模範解答は輪をかけてひどい。
そこで、私なりに、本当の正解を示そう。
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IQの高くても成功しないのは、なぜか? その多くは、やる気がありすぎるからである。換言すれば、高望みしすぎるからだ。
比喩的に示そう。スポーツの得意な人がいる。この人は、そこいらのアマチュアチームに入れば、成功する。しかし、やる気がありすぎて、プロをめざすと、たいてい成功しない。
知能でも同様だ。「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉の通りだ。IQ の高い人が、やる気がないまま、愚か者の集団に飛び込めば、たいてい成功する。しかし、やる気がありすぎて、超秀才の集団に飛び込めば、たいてい失敗する。
( ※ 「鶏口となるも牛後となるなかれ」という譬えの通り。)
最近流行の iPad でもそうだし、IT分野一般もそうだ。ここには頭のいい人がわんさと集まってくる。こんなところに飛び込むと、たいていは失敗する。ま、1回か2回ぐらいは、そこそこの成功を収めることのできる人が多いだろうが、継続的に成功を収めることは、至難の業だ。
1回か2回の成功は、IQの勝負というよりは、感性で勝負するような場面だ。それなら、何とかなる。しかし、継続的に成功するには、頭の出来がものを言う。そうなると、最優秀の一人だけが勝者となり、他のすべては敗者となるのが普通だ。
( ※ それが顕著なのが、数学という学問分野だ。ごく少数の天才以外、他のほとんどは見捨てられる。)
とにかく、成功するか否かは、やる気の問題じゃない。やる気があったからといって問題が解決するほど、世の中は甘くないのだ。
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その点、逆のことを述べて、正しいものがある。早稲田大学の大学院(社会人コース)の最優秀論文となった桑田真澄の話(朝日新聞 2010-07-20 掲載)だ。原文はそちらを見るといいが、要約は下記にある。
→ 野球が好きになる7つのポイント
この記事の原文では、次の趣旨の話がある。
「指導者はやたらと厳しい指導をするが、それを真に受けると、練習のしすぎによる肉体の酷使のせいで、体を壊してしまう。真面目な生徒ほど、指導者のいうとおりにして、体を壊してしまいがちだ」
真面目にやればいいというものではないのだ。桑田の場合は、自発的に勝手にサボって、手を抜いた。それだからこそ、彼は体をこわすことなく、プロになれたのだ。
マイクロソフトのいう「やる気」主義なんて、昔の精神注入棒と同じで、あまりにも時代遅れでアナクロなのである。
( ※ だからマイクロソフトは、やたらと残業時間が多くて、そのくせ、Windows はバグだらけとなる。やる気で片付けようとするからだ。)
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ともあれ、成功するには、「やる気」なんかあっても駄目だ。どうせなら、「鶏口となるも牛後となるなかれ」という教訓の方が、ずっと役に立つ。
【 補説 】
マイクロソフトの方法を真似ても、成功することはできない。そこで、成功する方法を、私が教えよう。
IQ に関して、成功するコツを言うなら、こうだ。
「成功するには、自分の IQ が高い必要はない。IQ の高い人を使う経営力があればいい」
自分の IQ が高くても、自分一人で何もかもやることはできない。だったら、IQ の高い人をたくさん雇用して、それらの人に仕事をさせればいい。……これが成功のコツだ。
ゲイツやジョブズには、この能力があった。彼らのために、IQ の高い人々は奉仕した。IQ の高い人は、自ら成功するのではなく、ゲイツやジョブズのような経営力のある人が成功するために奉仕するのだ。……だからこそ、IQ の高い人々自身は、成功しない。
金儲けのコツは、IQ ではなく、経営力なのだ。
( ※ ただし成功のきっかけは、IQ であるかもしれない。高い IQ と高い経営力の双方をもつ人だけが、素晴らしい成功をなしえる、とも言える。「おれは頭がいい」とだけ思っている人は、自ら成功することはなく、他人の成功のために奉仕する運命にある。)
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IQ なんかなくても成功することは出来る。その実例を、朝日新聞・月曜版特集「グローブ」が示している。
→ 朝日グローブ の 該当ページ
ここで紹介されているのは、投資家の大根田勝美という人だ。中卒なのに、アメリカで一番成功した日本人だ。
彼はITなどの分野で、ものすごい大成功を収めた。では、どうやって? ものすごい知恵があったのか? 違う。ものすごい知恵のある人を捜し出してきて、彼らが事業を立ち上げるのを支援する。同時に、事業に出資する。彼らの事業が大成功を収めれば、出資した自分もまた大成功を収める。
つまり、ベンチャービジネスに出資するベンチャーキャピタルですね。
ここでは、自分自身がすごいアイデアをもつ必要はない。すごいアイデアをもつ人を支援するだけでいい。そして、誰がすごいアイデアをもつかを見抜く目は、自分自身ももたなくていい。見抜く目をもつ人を見抜いて、仲間(共同事業者)にすればいい。
結局、頭のいい人をいっぱい使いこなすから、そのことで、大成功を収めることが出来たのだ。自分自身は、たいして才能を必要としない。
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ここまで読めば、わかるだろう。頭の良し悪しと、金銭的な成功とは、あまり関係ない。「頭が良ければ金儲けが出来る」という発想を、捨てた方がいい。そもそも、「頭が良ければ金儲けが出来る」という発想は、頭のいい人の発想ではない。それは凡人の発想だ。
一般的に言えば、金銭的に成功するコツは、「わらしべ長者」である。
逆に、金銭的に成功しないコツは、「一攫千金」を狙うことだ。(起業を含む。)……この場合、たいていは失敗する。
[ 余談 ]
オマケで一言。
ものすごく IQ の高い人は、もともと「成功しよう」なんて思わない。アインシュタインだって、ニュートンだって、「金儲けして成功しよう」なんて思ったことは一度もないはずだ。(そう言えば、政治家では、菅直人は貧乏だな。 (^^); )
【 関連書籍 】
元になったネタは、マイクロソフトの面接試験。下記の書籍。( Amazon )
→ ビル・ゲイツの面接試験 ― 富士山をどう動かしますか?
高いか低いかしかわからないのではないのですかね、
頭いいと一口に言ってもいろいろなのではないでしょうか。
結局総合的な能力高い人(IQテストは低いかも知れない)が、
IQの高い人(情報処理能力だけ高い人)
をまるで、人間AIパソコンのようにこき使うてのも
ありでしょう。