2010年07月17日

◆ 杉林の転換(列状伐採)

 杉人工林は、間伐しないと、森林の荒廃になりかねない。しかしながら間伐は採算には乗らないので、ボランティアに頼るしかないという。このままだと、森林は、慢性的な赤字事業となる。どうすればいいか?

 ──

 杉人工林に、上記のような問題がある、ということは、かねて指摘されている。(知らない人は調べるといい。現代の常識。)

 これに対して、「間伐のボランティアを募る」という案もあるが、慢性的な赤字事業を継続するだけだ。意味がない。
 
 それよりは、広葉樹林に転換する方がいいだろう。それなら、放置すればいので、赤字は継続しない。
 では、杉人工林を広葉樹林に転換するには、どうすればいいか? 

 ──

 生物学の教科書には、「放置すれば、針葉樹林は広葉樹林になる」と書いてある。
  ・ 針葉樹(陽樹)が伸びる
  ・ 広葉樹(陰樹)が低く生える。
  ・ 広葉樹(陰樹)が高くなる
  ・ 針葉樹(陽樹)が枯れる

 という順の過程。

 たぶん、事実だから、数百年をかければ、そういうふうになる。しかし、時間がかかりすぎる。
 そして、その間、針葉樹林は、枯れ葉もないまま、保水力が低くて、洪水の原因となる。
( ※ だから、八ツ場ダムなどの貯水ダムが必要となる。それよりは、広葉樹林を増やすことで、「緑のダム」ができる、という構想もある。これは広葉樹林の保水力を利用して、雨水による洪水を防ぐ、という発想。)

 ──

 かつて新聞で、次のことが報道されたことがある。紹介しよう。

 「列状伐採」(列状間伐・一列伐採)

 普通の間伐は、針葉樹林のあちこちを、ぽつぽつと間引く。
 その代わりに、大きな1列の空間を作るように、連続的に広く間引く。幅 20メートルで、長さ数百メートルを間引く。
 そこには、廊下状の空間ができる。すると、そこを鳥が通れる。鳥が通れば、鳥が糞を落として、種子がもたらされる。
 その廊下状の空間には、光が射す。さまざまな草や花が生え、さまざまな樹木が生える。最終的には、日本の植生に適した樹木が生える。それはたぶん広葉樹だろう。
 
 具体的な写真と、説明は、下記にある。
 → 列状伐採画像

 ──

 なお、このようなことは、通常の間伐ではありえない。通常の間伐では、地面に光が射さないので、下草もろくに生えない。花だって生えない。通常の間伐を続ける限りは、針葉樹ばかりが伸びる。(仮に広葉樹が少し生えてきたら、刈り取られてしまう。決して広葉樹林にはならない。)

 というわけで、「列状伐採」により、自然への回帰がなされるわけだ。
 よく考えてみれば、これは、自然回帰の過程そのものを忠実に再現しているだけだ、とも言える。(上記の「列状伐採」の説明を再度読むといい。)

 本項では、一応、このような概念を紹介しておく。
   列状伐採をしたあとの廊下状の空間通る鳥としては、絶滅危惧種の鷲・鷹などもある。このことで、自然への好影響もある。鷲・鷹などは、杉林では生きることができない。植物に多様性がもたらされることで、自然の営みは回復する。(杉1種だけの人口林なんて、あまりにも反自然的である。)



 [ 付記1 ]
 列状伐採の目的は、杉を売却することではない。最終的には杉をすべて伐採する。そのあとは広葉樹林にする。そうすれば、その後の維持管理費はゼロになるので、赤字にはならない。
 現状では、杉林の維持に多大なコストがかり、林業は赤字である。この赤字をなくすことが目的。

 [ 付記2 ]
 林業保護の目的は?
 林業はもはや役目を終えたと言えるだろう。昔と違って、木造建築の時代ではないからだ。建材は、木材でなく、鉄などの人工物に変化してしまった。そちらの方が安価だ。木材はもはや対抗できない。時代が変わったのだ。林業の必要性は薄らいだ。
 林業は石炭産業のようなものだ。以前、時代は石炭から石油へかわって、石炭産業は不要になって炭坑は消滅した。林業も同様だ。大幅に縮小するべきだろう。人工林は不要だ。特に、杉の人工林は不要だ。完全に不要というほどではないが、往時ほどの必要性はない。一部で細々とやればいいのであり、日本中を杉林だらけにする必要はない。むしろ、杉林はあってはこまる。(花粉症の原因にもなる。その費用はあまりにも巨額であり、杉林の利益を上回りそうだ。)
 ともあれ、本来の広葉樹林へ回帰するべきだ。自然改造計画よりは、自然回帰の方が好ましい。

 [ 付記3 ]
 地球温暖化の問題もある。地球温暖化の問題で一番大切なのは、炭酸ガスの吸収力ではなくて、保水力だ。たとえば、雨が降ったあと、何日間も、湿った地面を保っていることだ。そしてまた、葉っぱからの水蒸気によって、気温を下げることだ。
 このことが、地球温暖化に好影響をもたらすし、また、保水力のアップを通じて、緑のダムという効果(洪水防止の効果)もある。
 
 [ 付記4 ]
 「自然保護のために、杉林の間伐をする無償ボランティア」という運動があるが、これは詐欺みたいなものだ。人々の労力を無償で奪う泥棒みたいなものだ。自分で赤字を生み出しながら、その赤字を人に尻ぬぐいさせるわけだ。ほとんど犯罪的だ。エコの名のもとで行なう詐欺的な泥棒行為。
 民間人は、自分の所有林でそんなことをするよりは、その杉林をすべて国家に無償供与するといい。そのあと、国家は、税金で保全費用をまかなえばいい。国家が責任をもって、針葉樹林を広葉樹林に作り替えるわけだ。それならいいだろう。国家の所有物だし。
 そして、広葉樹林になったあとは、自然公園として、国民に解放すればいい。

 [ 付記5 ]
 現状では、何がなされているか? 普通の間伐か? 
 実は、林野庁がやっているのは、「1本残らず、すべて伐採して、あとを丸裸のハゲ山にする」ということだ。
   → 天然林の消失

 コストの点から言えば、これが最もコスト的に有利だ。それで何をやっているかというと、林野庁の職員の人件費に充てている。こんな役所はつぶした方がいいのだが。
   → 事業仕分けと林野庁
posted by 管理人 at 23:54 | Comment(0) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
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