2010年04月11日

◆ ホモ・フロレシエンシス

 ホモ・フロレシエンシス(ホモ・フローレシエンシス)Homo floresiensis という小型人類が1万年ほど前まで生存していた。これについて仮説を示す。 ──

 ホモ・フロレシエンシスについて説明する記事が、読売新聞 2010-04-11 に掲載された。(ネット上の新聞にはない。)
 同種の記事は、次のサイトにも見られる。
  → Wikipedia
  → AFPBB
  → http://kisosuu.cocolog-nifty.com/zakki/2004/10/18000.html
  → http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0504/kobito.html
  → http://mainichi.jp/select/world/news/20100330ddm016040140000c.html
  → 化石の写真

 ──

 各サイトの話をまとめると、次の通り。
  ・ 1.2万年前まで存在した。
  ・ 小型で、身長は1メートル程度で、脳容量は 380cc程度。
  ・ 石器からして、知能はかなりあったらしい。
  ・ 骨の形からして、明らかに猿人ではない。
  ・ 旧人の分布状況からして、旧人ではありえない。
  ・ 原人の仲間か、新人の仲間かは、判然としない。
  ・ まったくの新種か、原人 or 新人が小形化したかは、仮説段階。
  ・ 小形化の理由は、「島嶼化」(島における生物の縮小化)か?


 ──

 私なりに見解を出そう。(仮説として)
  ・ 基本的には、原人(ホモ・エレクトス)の仲間と見なせる。
  ・ 新人(ホモ・サピエンス)の一種ではない。
   (新人ならば、そこまで極端に脳が縮小するはずがない。)
  ・ 縮小の直接的な理由は、島嶼化でなく、成長ホルモンの分泌停止。
   (つまり、小人症の一部と同じ理由。一種の奇形。)
   (このことからして、完全な新種ではなく、既存種の仲間。亜種ふう。)
  ・ 多数の個体が残ったわけは、環境への適応。(森林への適応


 ──

 以上のうち、最後の「森林への適応」というのが、私の仮説の眼目だ。

 人類(ホモ・サピエンス)の進化の理由の一つとして、「草原説(サバンナ説)」というのがある。
 「人類は草原に進出したから、直立して、進化した」

 という説だ。今日ではこれは否定されている。( ∵ 草原に進出する前の森林においてすでに人類は直立していた。 → 最古の人類(ラミダス猿人)
 ( ※ なお、私としては、「草原に進出したから直立して進化した」のではなく、「直立して進化したから、草原に進出した」と考える。ただしこれは、別の話題。)

 さて。草原説の裏返しで、次の仮説が考えられる。
 「地上に出た人類は、森林に戻ることで、猿に進化する」

 これは奇妙なようだが、ダーウィン説に従えば、奇妙ではない。
  「人類も猿もトカゲも細菌も、すべては同じように進化しているのだ。それぞれの生物は、住んでいる環境が異なるだけで、どれも同程度に進化しているのである。したがって、高等な生物とか下等な生物とかいう区別は成立しない。」
 ( → 下等生物/高等生物
 私はこの見解を批判したが、ともあれ、こういう見解はある。
 そして、この見解に従えば、次の主張が出る。
 「人類は、森林に進出すれば、猿に進化する」


 さすがに私はこんな馬鹿げたことは主張しないが、これに似たことは主張できる。次のように。
 「人類は、森林に進出すれば、森林に適応した形に進化する。特に、体が小形化する。体が小さい子供は、木の枝の上などを自由に動けるが、体の大きな大人は、とてもそうはできない」
(自分が子供だったころのことを思い出してほしい。私は子供のころに猿のように木の枝の上を動き回った。)


 ここでは、栄養状態(食物の不足)はあまり関係なく、樹上を動くということが重要だった。樹上を動くといっても、樹上で生活するわけではなく、単に地上の障害物を乗り越えるとか、スマトラ虎 のような猛獣に襲われたときに樹上に退避するとか、そういうことのための身軽さが重要となる。
 この身軽さをもった個体のみが、猛獣のいる密林で(猿のように)生き抜くことができた。一方、この身軽さをもたない個体は、猛獣のいる密林で(猿のように)生き抜くことができなかった

   → 参考画像( 虎の子供をからかう猿 )

 結局、猛獣のいる密林という環境に適して、猿のようになった(進化した?)種(または亜種)が、ホモ・フロレシエンシスだ。

 ──

 読売の記事には、次の謎が掲げられていた。
 「人類の進化 = 脳の大型化」という常識が覆された。
 しかし、本項の立場を取れば、謎はない。
 ホモ・フロレシエンシスは、
 「原人よりも進化しているのに、原人よりも脳が小さい」
 というふうに見える。だが、そうではない。実は、
 「あくまで原人の一種である。原人よりも進化しているということはない。また、原人よりも脳が小さいということもない。脳は、原理的に小さいのではなくて、原理的には大きいのだが成長を途中で止めただけだ。」

 Wikipedia の「小人症」の項目に、エディー・ゲーデルなどの実例がいくつも示されている。これらの項目をたどって、写真を見ると、小人症の大人の脳容量が子供並みに小さいことがわかる。しかし、これらの人々は、新種の人類であるわけではない。単に成長を途中で止めただけだ。
 ホモ・フロレシエンシスも同様であろう。原人から進化した別種であるわけではない。あくまで原人の枠内に留まる。ただ、成長を途中で止めたのだ。そして、そういう集団ばかりが生き延びた理由は、「環境への適応」である。
 ただし、その「環境への適応」は、人類が進化の過程で通った道筋( 森林 → 草原 )ではなく、その逆( 森林 ← 草原 )であった。そのせいで、一見、進化の逆行(退化)のように見えるのだ。

 ──

 まとめ。

  ・ ホモ・フロレシエンシスはまったくの新種ではない。
  ・ 原人の一種だが、環境への適応で、成長を止めた。
  ・ 脳容量は縮小しているわけではない。成長しないだけだ。



 [ 参考 ]
 ホモ・フロレシエンシスが(猿のように)樹上生活に適しており、地上生活には適していない、ということについては、次の参考記事がある。
 その足には、土踏まずを構成するアーチ構造がないという。アーチ構造は2足歩行の際にバネの役割を果たす現生人類の重要な特徴であり、特に走る際には欠かせない。「現生人類のようには長い距離を走れなかっただろう」
 つま先がチンパンジーのようにずんぐりと丸まっていることや、現生人類と比べて足のサイズが異常に大きいことなど、ほかにも原始的な特徴が列挙されている。
 歩行の際には、(構造上)ももを大きく上げなければ足が地面から離れなかった。荒っぽくて不自然な足取りだったに違いない。ホビットの運動メカニズムはまだ完全には解明されていないが、現生人類より膝や股関節を大きく曲げ、より大きな動作で歩いていただろう。
( → ナショナルジオグラフィック



 [ 付記1 ]
 ホモ・フロレシエンシスがホモ・サピエンスの仲間だ、ということはありえない。脳容量が 380cc だとすれば、ホモ・サピエンスの赤ん坊の脳容量にも足りないくらいだ。ホモ・サピエンスが身長1メートルになった時点では、脳容量は 1000cc ぐらいになっているから、本項の趣旨とは合致しない。
 また、旧人(ネアンデルタール人)は、幼児のときにはホモ・サピエンスよりも脳容量が早く拡大するから、ホモ・フロレシエンシスが旧人の仲間だということもありえない。
 したがって、ホモ・フロレシエンシスは原人の仲間だということになる。それ以外にはありえない。(本項の趣旨に従えば。)

 なお、時期的にも、このことは証明される。ホモ・サピエンスは、6万年前にアフリカを出て、3万年前にアジアに到達した。一方、ホモ・フロレシエンシスは百万年前からすでにアジアに存在した。( → AFPBB )……となると、時期的に言って、ホモ・フロレシエンシスは原人でしかありえない。
 
 [ 付記2 ]
 「奇形としての亜種」というものは、犬の品種によく見られる。たとえば、ダックスフントやコーギーは足が短い。ブルドッグは鼻が短い。このように一部器官が矮小化した品種(亜種)というものが生じることもある。しかし、だからといって、犬ではない別の新種が誕生したわけではない。
 単純に言えば、ダックスフントの足が矮小化したように、ホモ・フロレシエンシスの身体は成長を止めた。そのときついでに、脳の容量も成長を止めた。ただし、脳の構造そのものが進化を止めた(原人以前の猿人の構造になった)わけではない。
 要するに、ここでは、脳の容量と進化の量とは比例しない。そして、その理由は、「成長ホルモンの分泌停止」である。
 
 [ 付記3 ]
 「島嶼化」は理由ではない。仮に「島嶼化」が理由だったら、他の島でも同様になっていたはずだ。特に、日本人もまた、身長1メートルになっていたはずだ。  (^^); 
( ※ フローレス島の面積は、日本の四国よりもいくらか小さい程度。)

 ただ、島嶼化とは別に、「ガラパゴス化」とも言うべきようなことはあるだろう。つまり、離島なので、そこだけ特殊な生物が存続した、ということだ。他の島では普通の原人が進出したのだろうが、フローレス島は離島なので、普通の原人の進出を免れた。このこともまた、未熟なホモ・フロレシエンシスが隔離されて存続できた理由となる。

 [ 付記4 ]
 ホモ・フロレシエンシスが高度な石器を使っていた、という説には疑わしい点がある。下記ページを参照。

  → http://sicambre.at.webry.info/200710/article_13.html



 【 追記 】
 成長ホルモン不足のせいで体も脳も小型化している人々が現代にもいる。
  → http://gigazine.net/news/20110220_growth_hormone/
 これらの人々は、脳容量も極端に小さいようだが、知能がひどく劣っている(子供並みである)ということはないようだ。
 同様のことは、ホモ・フロレシエンシスにも成立するだろう。



  【 関連サイト 】

  → 科学博物館・常設展 リニューアル

  → 書籍案内 「ホモ・フロレシエンシス (マイク・モーウッド他・著)」
posted by 管理人 at 13:14| Comment(4) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半に [ 参考 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓

 なお、参考画像として、チンパンジーの足を示す。
 http://www.photographersdirect.com/buyers/stockphoto.asp?imageid=1019571
Posted by 管理人 at 2010年04月11日 23:36
最小の人間、というニュースが出た。

   smallest man
 という語で検索すると、画像や英文ニュースの情報を得られる。
 下記に動画がある。
   → http://j.mp/kZ21jQ

 ──

 こういうのを見ると、ホモ・フロレシエンシスについても推測が付く。

 ※ 今回のニュースの小人は、ホモ・フロレシエンシスではない。ホモ・フロレシエンシスは、原人の一種である。混同しないように。
Posted by 管理人 at 2011年06月12日 17:14
★★★★★ 重 要 ★★★★★

 「ホモ・フロレシエンシスは、原人の一種である」
 という本項の結論を裏付ける研究成果が出た。
  → http://scienceportal.jp/news/daily/1304/1304181.html

 ※ 本項を書いたのは 2010年04月11日 だから、それから3年たって、研究成果が出たことになる。
 ※ 「脳の容量の小ささは、成長を途中で止めただけ」
  というのが私の結論だ。しかし今回の研究は、そこまでは踏み込んでいないようだ。私の方がまだ進んでいる。
Posted by 管理人 at 2013年04月26日 00:34
すぐ上の記事は、コピペだった。出典が示してないが、出典は下記だった。
 → http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=00020130418001
   (ナショナルジオグラフィック )
Posted by 管理人 at 2013年04月28日 18:53
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