2010年03月16日

◆ 眉毛は何のため?

 眉毛は何のためにあるのか? 「目に汗が入らないため」「日除けのため」という説明がある。しかしむしろ、「脳が拡大したから」と説明できる。 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2010-03-29 です。)


 眉毛については、「目に汗が入らないため」「日除けのため」という説明がある。(ネットのあちこちに見つかる。)
 しかし、である。それなら、他の動物も、同様に眉毛があっていいはずだ。しかしながら、あらゆる生物のなかで、眉毛があるのは人間だけだ。他の動物は、眉毛をもたない。

  ※ 漫画では勝手に眉毛を書き加えることもあるが、嘘っぱちだ。
     → ジャングル大帝

 ──

 では、他の動物では、どうなっているか? (顔が体毛に覆われている動物は別として) 特に霊長類に着目すると、次のことがわかる。
 「目の上に、骨の盛り上がりがある」

 このことは、画像で確認できる。

  → チンパンジー
  → ゴリラ
  → マントヒヒ

 同様のことは、現生人類の前の、ネアンデルタール人や、ハイデルベルク人にも当てはまる。化石で確認できる。

  → ネアンデルタール人の化石とホモ・サピエンスの化石
  → ハイデルベルク人の化石

 ──

 要するに、現生人類よりも前の人類や、大型類人猿では、目の上の骨が盛り上がっている。それは何のためかといえば、「目に汗が入らないため」「日除けのため」であろう。そして、それと同じ役割を、眉毛はになっている。

 換言すれば、こう言える。
 「眉毛は、同じ目的のために、目の上の骨が盛り上がっているのを、なくさせる」
 
 上の ネアンデルタール人の化石とホモ・サピエンスの化石 を見ればわかるように、ホモ・サピエンスでは、目の上の骨の盛り上がりがない。それはどうしてか? 目の上の盛り上がった部分が平坦になっているからか? いや、目の上の盛り上がった部分よりももっと上の部分(額の部分)が大きくふくらんでいるせいで、目の上の盛り上がった部分が目立たなくなっているのだ。
 そして、額の部分が大きくふくらんでいるということは、脳(特に前脳)が大きいということだ。
 要するに、現生人類(ホモ・サピエンス)は、脳(前脳)の拡大にともなって、額が前にふくらんだので、目の上の盛り上がった部分が目立たなくなった。その役割が実質的に消失した。それを補うために、眉毛が生じた。
 換言すれば、眉毛があるのは、脳(前脳)が拡大したからだ。眉毛がある理由は、「何のため」という目的論で語るべきではなく、「何ゆえに」という原因論で語るべきなのだ。
 そして、「何ゆえに」という原因論で語れば、「脳(前脳)が拡大したから」と答えることができる。そして、このことが、人間だけが眉毛をもつことの理由となる。

 結論。

 現生人類だけが眉毛をもつのは、現生人類の脳(前脳)が拡大したからである。

( ※ 前脳というのは、「思考する脳」と言える。これが発達しているのは現生人類だけであり、それだからこそ現生人類だけが高度な知性をもつ。)

 ──

 同じ理由から、次のことも推定できる。
 「ホモ・サピエンスよりも前の、ネアンデルタール人やハイデルベルク人は、眉毛をもたなかったはずだ。その理由は、目の上の盛り上がった部分だ。これがあるので、ネアンデルタール人やハイデルベルク人は、眉毛がなかったと推定できる」

 世の中には、「ネアンデルタール人の復元図」や、「ハイデルベルク人の復元図」という想像画がある。いずれも、「眉毛がある」という形で想像されている。
 しかし、本項の話を読めば、「ネアンデルタール人やハイデルベルク人は、眉毛をもたなかったはずだ」とわかるだろう。



 [ 付記1 ]
 ついでに言えば、ネアンデルタール人の特徴は、目の位置がかなり高いことだ。(前脳が小さくて、顎が大きいから、目の位置が高くなる。)
 この違いは、上記の化石からわかる。
 先の復元図では、ネアンデルタール人はまるでホモ・サピエンスみたいな感じで想像されていたが、全然違うはずだ。ネアンデルタール人の目の位置は、顔の中央よりも、ずっと高いところにあるのだ。
 ( ※漫画で言えば、これ だ。)
 
 [ 付記2 ]
 ネアンデルタール人の後頭部は、大きくふくらんでいる、と見なされる。しかしこれも、「後脳が発達している」というよりも、「前脳が未発達」と見なした方がいい。前頭部が小さいから、後頭部が大きく見える。
 ただ、ネアンデルタール人の脳容積そのものは、現生人類よりも大きい。これはどうしてかというと、大脳が発達しているからというよりは、小脳が発達しているからだろう。後頭部が大きいのも、それが理由だろう。(小脳は、後頭部の下方にある。小脳が大きいと、後頭部が大きくなる。)
 実は、ホモ・サピエンスの小脳は、他の動物と比べても、あまり発達していない。犬やライオンなどの方が、人間よりも敏捷に動ける。「ホモ・サピエンスとは、小脳を犠牲にすることで、大脳を発達させた生物」とも見なせる。
 だから、脳の発達を見るのなら、単に脳の容量を見るよりは、大脳(特に前脳)の容量を見る方がいい。そうすれば、「ネアンデルタール人は後脳が発達していた」というような認識ミスをせず、「ネアンデルタール人は前脳があまり発達せず、小脳が発達していた」という正しい認識ができるはずだ。
   


 【 追記 】
  
 以下では、骨の盛り上がりについて、原因は「脳(前脳)の未発達」という点では同じだが、目的は「日除け」「汗よけ」ではなく、別の目的になっている。それは、「正面を見るため」という目的だ。


 目の上の盛り上がりは、眼窩上隆起(がんかじょうりゅうき)と呼ばれる。
 これの役割については、「咀嚼のため」という説明がある。
 眼窩上隆起について比較します。「火を使って、食物をやわらかく消化しやすい形に調理する」ヒトの食生活は、頭骨の他の部分も変化させました。その代表が、眼窩上隆起です。眼窩上隆起は眼窩の上にできる隆起です。咀嚼のさい歯に加わる強い力を受け止め、顔面を強固にする必要から生まれました。
 ヒトの眼窩上隆起は、発達しません。その理由は、ヒトは、食物をやわらかくしてから、口に入れるため、咀嚼のさいに歯に強い力がかかりません。そのため、頭骨を強固にする眼窩上隆起が必要ないのです。このように、ヒトの食生活の変化は、咀嚼器以外の部分も変化させています。
( → 出典
 頭骨の目の部分は穴があいているが、そのままだと、穴の周辺部は歪みやすい。そこで、目の周辺に盛り上がりを付けることで、歪みにくくするように強化するわけだ。そして、その理由が、強い咀嚼だ。
 ただ、それだけが理由であれば、犬のような(硬い骨を食べる)肉食動物では、眼窩上隆起が発達しているはずだし、初期の原人に比べて知性の発達したハイデルベルク人やネアンデルタール人は、眼窩上隆起がいくらか縮退してもいいはずだ。また、肉食ではない(硬い骨を食べない)チンパンジーやゴリラでは、眼窩上隆起が小さくてもいいはずだ。しかし、現実にはそうなっていない。
 ということで、咀嚼だけで説明することは、ちょっと無理がある。(咀嚼もいくらかは関係しているだろうが、主たる要因ではない。)

 一方、上記サイトに添えられている パワーポイント・ファイルサムネイル)を見ると、チンパンジーの眼窩上隆起がよくわかる。これから推定できることとして、次のことも言えそうだ。
 「チンパンジーでは、前頭部が斜めになっている。もし眼窩上隆起がなければ、目は、正面を向かず、斜め上を向いてしまう。それでは正面を見るのに不便だ。だから、正面を見ることができるように、目の穴を垂直状にする必要がある。そのために、眼窩上隆起がある」
 このことは、前頭部が斜めになった生物に当てはまる。(ネアンデルタール人以前の人類はみんなそうだ。) そして、前頭部が斜めになっていることと、脳(前脳)が未発達であることは、等価である。
 というわけで、「現生人類は、脳(前脳)が発達したから、眼窩上隆起がない」というふうに言える。これは先の本文中の説明と同じだ。(ただし、「汗よけ」や「日除け」ということでなく、「正面を見るため」ということに、目的が代わっている。)
 そして、眼窩上隆起には、副次的な効果として、「汗よけ」や「日除け」の効果もあった。ところが、脳の発達にともなって、眼窩上隆起がなくなると、「汗よけ」や「日除け」という副次的な効果が消えてしまった。そこで、ホモ・サピエンスでは、眉毛が出現したのだ。

  ( ※  ※ パワーポイント・ファイルを見るには、パワーポイント Viewer で。)
   


 【 関連項目 】

  → 鼻の下の溝(人中)は何のため?

 鼻の下の溝も、同様だ。これは言葉をうまく話すためにあるのだから、「ネアンデルタール人やハイデルベルク人は、鼻の下の溝をもたなかったはずだ」とわかるだろう。ネアンデルタール人の場合、喉もまだ十分に発達していないので、発音は上手ではない。当然、鼻の下の溝を必要とする段階に達していない。
 実を言うと、現生人類でさえ、言葉をまとも使うようになったのは、6万年ぐらい前からだと推定される。とすれば、初期のホモ・サピエンス(20万年前〜6万年前)もまた、鼻の下の溝をもたなかった可能性がある。鼻の下の溝は、小進化レベルで生じたのかもしれない。

 ただし、眉毛は、骨の形と密接に結びつくから、初期のホモ・サピエンスの段階で、すでに眉毛は生じていたはずだ。



 《 参考 》
 なお、人類と言語の関係については、下記項目で。
  → 土器と言語(言語の発生)
posted by 管理人 at 19:00| Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2010年03月30日 12:31
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