2010年01月17日

◆ 暗黒物質はヒッグス粒子?

 暗黒物質の正体は何か? これについて、新たな仮説が提唱された。「ヒッグス粒子と暗黒物質は同じだ」という説。細谷裕の理論。
 しかしながら、私の考えでは、これは妥当ではないと思う。 ──

 ヒッグス粒子と暗黒物質は同じだ、という仮説が提唱された。
 ヒッグスは現在の「標準理論」ではすぐに壊れるとされており、新理論はこれまでの定説を覆す。
 細谷教授は、宇宙が時間と空間の4次元ではなく、5次元以上であると考え、様々な粒子が力を及ぼしあう理論を考えた。その結果「ヒッグスは崩壊せず、電荷を持たない安定した存在」となった。
 欧州にある世界最大の加速器(LHC)では最大の課題としてヒッグスの検出実験が行われる。ヒッグスが不安定なら、崩壊時に観測が可能だが、細谷理論のように安定だと観測できない。ただ、新たな実験手法で検証は可能という。
( → 読売新聞 2010-01-04
 この記事では、次の二点が重要だ。
  ・ 崩壊では観測されない
  ・ 安定的である


 なお、細谷理論によると、ヒッグス粒子の質量も決まるという。
 ゲージ・ヒッグス統合モデルでは自然にヒッグスボソンが絶対的に安定になり、宇宙の暗黒物質になる。WMAPのデータからヒッグス粒子の質量は 70 GeV と決められる。
( → 細谷教授のページ
 参考として、ヒッグス粒子については、次のページで解説されている。
  → ヒッグス粒子と質量
  → Open ブログ 「ヒッグス粒子」

 ──

 さて。このあと、私の見解を述べよう。
 私としては、このアイデアに否定的である。理由は、いくつかある。

 第1に、暗黒物質の濃度は、ものすごく稀薄であることだ。空気中1リットルに1個ぐらいの割合でしかない。( → 後述 ) こんなに稀薄では、ヒッグス場を形成するのに、不足する。

 第2に、相対論との関係だ。ヒッグス場という普遍的なものを形成する粒子が暗黒物質のような物質だとしたら、ヒッグス場がエーテルと同様の効果をもち、宇宙に「絶対静止の場」(=ヒッグス粒子の場)が形成されてしまう。しかし、相対論は「絶対静止の場」を認めない。
 もう少し詳しく言おう。光子ならば質量がゼロで高速で走れるから、絶対静止という概念の外に出られる。しかし、ヒッグス粒子は質量がゼロでないから、絶対静止という概念の外に出られない。しかるに、ヒッグス場という場があり、ヒッグス粒子という粒子があれば、それは絶対静止の場を形成してしまう。これはおかしい。

 以上のことから、ヒッグス粒子は普通の意味での物質ではありえない。ヒッグス粒子は、物質と相互に作用することはあるが、ヒッグス粒子そのものは(普通の意味の)物質ではありえないのだ。
 したがってヒッグス粒子は、暗黒物質のような物質であるとは考えられない。

 ──

 では、暗黒物質の正体は何か? これについて、読売新聞に興味深い記事が掲載された。( 2010-01-17 朝刊)

 あらましは、次の通り。
  1. 普通の物質は宇宙全体の質量の4%。23%は暗黒物質。(73%は暗黒エネルギー。)
  2. 暗黒物質が見えないのは、他の粒子とほとんど衝突したり反応したりせず、通常の方法では観測できないためだ。
  3. 暗黒物質は私たちの周囲にもわずかに漂っているらしい。その量は空気1リットル中に1個程度。
  4. 暗黒物質は「衝突や反応をしにくい」「重い」という特徴をあわせもつ粒子(その頭文字を取って WIMP と呼ばれる)であるらしい。「ニュートラリーノ」がその有力候補。
  5. WIMP でないとしたら、「アクシオン」や「ヒッグス粒子」も暗黒物質の候補である。
 ここで示されているとおり、WIMP と呼ばれるものが有力候補だ。私もそうだと思う。強く確信しているというよりは、WIMP であれば不自然でないとして容認できる。一方、ヒッグス粒子は容認できない。

 なお、暗黒物質に関しては、最後の関連サイトを参照。私の説明よりは、これらの説明の方が詳しい。

( ※ 本項の趣旨は、「暗黒物質の正体はヒッグス粒子でない」という判断だ。暗黒物質の正体が何であるかについては、特に言及しない。)
( ※ ヒッグス粒子については、「ヒッグス粒子」の項目を参照。)
 


 【 補説 】
 暗黒物質とは何かということを、私なりにまとめてみよう。
 読売の記事にあるように、暗黒物質というのは、非常に稀薄にしか分布していない。なのにどうしてそれが宇宙の大半を占めるのか……と考えると、次のことがわかる。

 「宇宙はもともとほとんどが真空である。ただし局所的に、原子や分子が集積する。それが星という場所だ。恒星、惑星、彗星、小惑星など。これらの場所では、物質が集積しているが、それ以外のほとんどの場所は真空であって、物質は存在しない。だから、(星など)局所的には密度は高くとも、平均的には密度はとても小さい。それが普通の物質の分布だ」
 「暗黒物質はその逆だ。局所的に原子や分子が集積することがない。だから星においても暗黒物質はほとんど見出されない。それでも、広大な真空中には少しずつ広く分布するから、宇宙の全体では暗黒物質の総量は多くなる」
 「暗黒物質はが星に集積されない。そのことは、暗黒物質には重力が作用しないということを意味する」


 イメージ的に言おう。
 宇宙は「暗黒の空間に、ぽつぽつと白い点が存在する」というふうに思われていたのだが、実は、そうではなかった。「暗黒の空間」と思われていたのは、「薄い灰色の空間」であったのだ。そして、白い点の明るさの総量よりも、薄い灰色の明るさの総量の方が、ずっと多かったのだ。なぜなら、白い点は局所的にいくら明るくても、その面積はあまりにも小さいからだ。
 もし宇宙に弱い灰色があれば、白い点にすべて吸収されるだろう……とこれまでは思われてきた。しかし現実には、そうではなかったのだ。なぜなら、弱い灰色のうちには、白い点に吸収されない成分が残っていたからだ。多くのものは白い点に吸収されていったのだが、何の影響も受けずに、白い点に吸収されずにいたものがあった。それが薄い灰色となって分布している。

 物質というものにはすべて重力が作用すると思われたのだが、実は、重力の作用しない物質というものがあるとわかった。それは物質でない物質とも言える。それが暗黒物質だ。
 暗黒物質は「重力の影響を受けないのに質量があるもの」というふうに定義していいかもしれない。逆に言えば、こうだ。「それ自体は重力の影響を受けないが、それのもつ質量によって他の物質に重力の影響を及ぼすもの」
 


 【 追記 】
 「暗黒物質とヒッグス粒子は同じだ」
 という説は成立しないと思うが、
 「暗黒エネルギーとヒッグス粒子は(ほぼ)同じだ」
 という説は成立すると思う。この件は、次項の最後を参照。



 【 関連サイト 】

  → 宇宙の謎「暗黒物質」とらえた?(読売新聞)
  → asahi.com:宇宙の「暗黒物質」検出?
  → 暗黒物質を検出する新装置 | WIRED VISION
  → 宇宙の謎「暗黒物質」、具体的計測の段階へ | WIRED VISION
  → 暗黒物質の証拠、南極上空で発見? - ナショナルジオグラフィック
posted by 管理人 at 19:23| Comment(3) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 補説 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2010年01月17日 22:52
暗黒物質については「超対称理論」による「超対称粒子」が有力だという。
 読売新聞・夕刊 2012/04/05 に、村山斉についての記事がある。
Posted by 管理人 at 2012年04月05日 19:26
ヒッグス粒子が発見(確認)された。2012/07/04 の報道。

 この際、「ヒッグス粒子の寿命はきわめて短い」ことが確認された。
 このことから、「暗黒物質はヒッグス粒子だ」という本項の仮説は否定されたことになる。なぜなら、冒頭に記したように、この仮説は次のことを結論するからだ。

> ヒッグスは崩壊せず、電荷を持たない安定した存在」となった。
> ヒッグスが不安定なら、崩壊時に観測が可能だが、細谷理論のように安定だと観測できない。

 これは今回の実験結果に矛盾する。ゆえに、細谷理論は不成立である。
 また、「細谷理論は不成立だ」と指摘した本項の話(私の解説)は、当たっていたことになる。
Posted by 管理人 at 2012年07月05日 01:09
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