2010年01月08日

◆ スペインの風力・太陽光発電

 スペインでは風力・太陽光発電が盛んだから、日本でもそれを真似するべし、というキャンペーン記事を朝日が掲載した。しかし、まるきりのデタラメだ。 ──

 朝日にまたしても煽動記事が掲載された。
 「スペインでは風力・太陽光発電が盛んだから、日本でもそれを真似するべし」
 という趣旨。しかし、この話は、まったくのデタラメだ。

 そもそも、記事の体裁からして、ひどすぎる。この記事は、ただの個人的見解(もしくは朝日の社としての見解)であるにすぎないのに、事実報道であるかのごとく「記事」という体裁を取る。マスコミとしての最低限のルールを破っている。
 「事実報道と主張とは区別して書く。主張は、署名を入れて、文責をはっきりさせる」
 というのが、最低限のルールだ。しかるに、署名は最初に示さず、最後に付け足しで「署名記事」にしているだけだ。特にひどいのは、「事実報道と主張との区別」を記していないことだ。「私はこう思う」という主張であるにすぎないのに、あたかも事実報道であるかのごとく記す。
 なお、似たようなことは、私の本ブログでもやっているが、私の場合は、最初から最後まで「個人の見解」であることは明白だ。本ブログを見て、「事実に対する報道記事である」と見なす人はいないだろう。(ときどきそういう勘違いをする人もいるが。)
 私の場合は、事実報道については、引用元を示して、報道である旨をきちんと示す。また、私自身の報道の部分は、もともと皆無である。(私は足で調べる記者じゃないから。)
 ところが、朝日の場合は、全体を事実報道である紙面としながら、特定の箇所にときどき主義主張をまぎれこませる。自分の主義主張を、あたかも事実報道であるかのごとく示す。
 朝日は報道倫理を逸脱している。(前から何度も書いているが。特に、太陽光発電の分野ではひどい。)

 ──

 具体的に示す。次の文面がある。(朝日・朝刊・1面 2010-01-08。事実報道ではなくて、朝日の主義主張なので、ネットにはない。)
 スペインでは昨年1〜10月の発電力のうち風力が 13%、太陽光が 3%。一方、日本は風力が 0.3%、太陽光が 0.2%。ほど。技術の差ではなく、政策の差だ。
 最後の「技術の差ではなく、政策の差だ」というのは、事実報道ではなく、朝日の主張にすぎない。なのに、そのことを示さず、あたかも事実報道である「技術の差ではなく、政策の差だ」というのは、かのように記す。
 そもそも、どこから出てくるのか? 記事によれば、「政府が補助金を出さない」というのを理屈にしているようだ。また、2005年には日本のシェアが圧倒的だったのに、近年には急速に下がったのは、日本の技術が優れていることの証左だ、と思っているようだ。しかし、これはまったく違う。
 ちなみに、液晶パネルと見るといい。液晶パネルも、かつては日本が圧倒的にシェアを得ていたが、近年は韓国のサムスンに圧倒されていて、シェアを大幅に失った。これは、「日本の技術が優れているのに、政府が補助金を出さなかったから」か? 違う。日本の技術そのものが圧倒的な優位を示せなくなったからだ。むしろ、コストを下げる技術では、サムスンに大幅に負けているからだ。(だからソニーはサムスンと提携した。)同様のことは、半導体のステッパーにも当てはまる。( → ステッパーの敗北
 「日本の技術は圧倒的に優れている」と思うのは、過去の夢だ。液晶でもステッパーでも、日本の技術は世界からどんどん落ちこぼれつつある。それが事実だ。
 太陽光発電でも同様だ。記事を見ればわかるとおり、太陽光発電でも風力でも、他の国には世界規模の大きな企業がある。これらの企業は、日本の企業よりも優れている面が多々ある。つまり、日本の企業の技術水準は、世界トップレベルを保持していない。……政策ないし補助金のせいではない。技術そのものが落後しつつあるのだ。それが真実だ。(自己の愚かさを直視できないで「おれは利口だ」と自惚れていりう用では駄目だ。)

 ──

 ただし、それでも、日本の企業がかなり劣っているわけではない。十分に世界レベルで戦える水準にある。
 ではなぜ、日本はスペインほどの太陽光発電・風力発電ができないのか? 技術でもなく、政府の施策でもないとしたら、理由は何か? その答えは、すでに記した。
  → 風力発電(地理・気候)
 つまり、地理・気候の差だ。これが理由だ。

 朝日の記事(上記)によれば、スペインでは日本に比べて10倍程度の風力・太陽光発電がなされているという。
 「だから日本でも同様にできるはずだ。技術はあるのだから、政府が補助金を出せばいい」
 というのが朝日の主張だ。しかし、朝日が見失っているものがある。地理・気候の差だ。
  ・ 気候の差 …… 日照量の差、風の差
  ・ 地理の差 …… 平野面積の差

 こういう違いがある。風力発電(地理・気候)の再掲になるが、改めて示そう。

 気候の差としては、まず、日照量の差がある。スペインはやや乾燥した地域だが、日本はモンスーン地帯にあり、雨天の日が多い。特に、梅雨がある。冬には、日本海側では、降雪が激しい。太陽光発電のための日照量は十分ではない。また、風の差もある。日本には台風が押し寄せるので、風力発電のための風車は次々と壊れてしまう。
 地理の差としては、平野面積の差がある。Google の地図(衛星写真)を見ればわかるように、スペインの国土のほとんどは平野部だ。それというのも、森林を伐採して開墾したからだ。残された森林部分はほとんどない。一方、日本は、森林部分がとても多い。大きな平野部は、関西と関東にあるだけだ。あと、宮城のあたりにもある。名古屋や福岡の平野部は大きくない。……ただし、日本にも、大きな平野部が存在する箇所もある。それは、北海道の釧路と帯広のあたりだ。このあたりは、森林を大幅に伐採したので、バリカンで虎刈りをしたように、森林が無残に破壊されて、畑や牧畜の地帯となっている。
 そして、そのような地域が大幅にあるのが、スペイン(を含む欧州)だ。そういうふうに自然を大幅に破壊した地域では、風力発電でも太陽光発電でも、十分に実施できる。

 だから、朝日が本当に風力発電や太陽光発電を推進したいのであれば、次のように主張するのが正しい。
 「日本の森林を大幅に伐採せよ。北海道の原生林をすべて伐採して丸裸にしてしまえ。本州の森林もすべて伐採して、山を削ってしまえ。山を削って平地にしたあとで、その土で海面を埋めて、平野部を拡大せよ」
 つまり、
 「大幅に自然破壊せよ。緑をことごとく削ってしまえ」
 という自然破壊主義だ。それを推進するべきだ。なぜか? 欧州はまさしくそうしてきたからだ。朝日のように「欧州の真似をするのが正しい」というのであれば、まさしく欧州の真似をして、大幅に自然破壊をすればいいのだ。そして、そうする以外にはない。日本が太陽光発電や風力発電を伸ばすためには。(差もなくばと地代だけで金がかかりすぎてしまう。)

 そもそも、朝日の記事からわかるとおり、日本ではスペインの10分の1の規模で太陽光発電や風力発電を実現している。これは、国土の差を考えれば、非常に大きな量である。
  ・ 日本の人口は、スペインの3倍以上ある。
  ・ 日本の産業規模は、スペインよりも高い。(必要なエネルギーも多い。)
  ・ 日本の国土面積は、スペインの7割しかない。
  ・ 日本の平野部の面積は、スペインの 10分の1ぐらいしかない。

 これらの点を勘案すれば、太陽光発電や風力発電の量は、日本はスペインの 30分の1ぐらいが妥当であろう。気候の差も勘案すれば、百分の1でもいい。なのに、現実には、10分の1もある。これだったら、「日本はよくやっている」と言えるだろう。

 ──

 結論。

 朝日の記事は、物事の本質を見失っている。
 太陽光発電や風力発電の量は、日本ではスペインほど多くはない。その理由は、地理・気候の差が理由だ。(人口も要因となる。人口が多ければ必要となる発電総量も大きくなる。)
 また、日本企業が近年、世界のトップレベルを落ちつつあるのは、政府の補助金が理由ではなく、技術水準そのものが世界トップレベルから転げ落ちつつあるからだ。
 とすれば、日本がなすべきことは、政府がやたらと(消費者向けの)補助金を出すことではなくて、日本企業が技術開発をできるように、(企業向けの)技術支援をすることだ。
 しかしながら、現実には、政府は「科学大虐殺」のように、技術関係の支援を削減しつつある。こういう技術軽視をこそ改めるべきだし、技術重視に方針転換するべきなのだ。(補助金優先から。)……朝日はそこのところを、根本的に間違えている。

( ※ 朝日新聞・朝刊・科学面 2010-01-08 によると、例の事業仕分けで、科学技術予算は大幅に削られるはずだった。それは中止になったが、大幅ではなく小幅に削られることになった。4000億円の予算から 3割ぐらい減らすつもりだったが、そうはならなくても、300億円削られたという。……規模は小さくても、科学技術予算の削減という方向性は、維持された。科学大虐殺が、科学賞虐殺になっただけで、科学を軽視するという方針そのものは維持されている。)
( ※ とにかく、技術開発を軽視して、風土や人口の違いも無視して、単に「補助金を出せ」とばかり主張する朝日みたいなのは、あまりにも滅茶苦茶だ。)
( ※ 朝日は、太陽光発電や風力発電のキャンペーンをして、緑豊かな国土を虎刈りにしようとしている。というか、国土を丸裸にしようとしている。困ったことだ。)



 [ 付記 ]
 もう一つ。とても重要なことがある。それは、若者の知的レベルの大幅な低下だ。この件は、次項で。

 → 若者の学力低下

 ともあれ、朝日がキャンペーンを張るべきことがあるとしたら、それは、「若者の知的レベルを止めよ」ということだ。なのに、それをしないで、太陽光発電や風力発電のキャンペーンばかりをやっている。それも、報道倫理を逸脱した形で。報道倫理さえもわきまえていない。最低。




 【 関連項目 】

  → 開墾による森林消失
posted by 管理人 at 18:19 | Comment(2) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。

 「洋上風力発電」とか、「スマートグリッド」「スーパーグリッド」についてのご意見も是非。
 尚、日本の排他的経済水域の広さは、世界6〜7位であるそうです。

 それと、台風についてですが。
 強風が来たら、風車の支柱を倒してやり過ごす仕組みが実用化されています。
 また、北海道には、台風は、ほとんど来ませんね。

 太陽光発電よりは、太陽熱発電の方が、より実用的で有る由です。
 日本は、自然エネルギーについては太陽光に傾斜しているそうで、これは、合理的ではないかも知れません。
Posted by ポポイ at 2011年03月18日 14:54
「洋上風力発電」や「スマートグリッド」や、支柱を倒して強風をやり過ごす風車や、太陽熱発電については、言及されておいでですね。
 失礼致しました。

 実例について不勉強でおいでだなと感じた部分も有りましたが、参考にもなりましてございます。

 火力発電を全否定せず、原発も、危険だからといっていきなり全廃を唱えるのでなく、漸進的に、原子力への依存を減らしていけたら(そしてCO2もボチボチ削減していけたら)良いという考えの者です。
 諸々、巧くいったら良いですね。
Posted by ポポイ at 2011年03月18日 15:27
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