日本には多大な杉林がある。これは主に木造建築のために植林したものだ。
ところがこのたび、「木造建築を実質禁止してしまえ」(新築禁止)という方針がなされた。狂気の国家方針。 ──
多大な杉林は、戦後、木造建築のために植林したものだ。それが、半世紀以上を経て、いよいよ建材として利用される時期になってきている。(杉の標準伐期は 60年程度なので。)
とすれば、この杉をどんどん利用して、木造建築を作ればいいはずだ。(伐採したあとで広葉樹を植えてもいい。)
ところが、である。このたび、「木造建築を実質禁止してしまえ」(新築禁止)という方針がなされた。せっかく収穫期になったのに、その果実を全部捨ててしまえ、という狂気の方針だ。
これは、具体的には、
「新築の木造建築には巨額の火災保険料を徴収する」
という形で現れている。詳しくは下記。
→ 火災保険料区分の変更
名目は「保険料区分の簡素化」であるが、現実には簡素化などはしていない。単に4区分から3区分へと、1区分を減らしているだけだ。簡素化とは呼べない。ただの1項目削除にすぎない。
で、その1項目とは何かというと、「木造耐火建築」である。この項目を削除することで、「木造耐火建築」は「木造建築」(非耐火建築)と同じ扱いになる。結果的に、木造耐火建築の保険料は大幅アップとなる。(8割アップ。)
わかりやすく言おう。
現代では、木造建築は、大部分が木造耐火建築である。(東京都などでは耐火になっていない木造建築は許可されていないので。)
具体的には外壁が、モルタルだったり、耐火パネルだったり、軽量コンクリートだったりする。こうして木造耐火建築ができる。これは、柱は木造だが、外壁は耐火構造だから、耐火性はかなり高い。延焼の恐れはほとんどない。
ところが、こういう木造耐火建築が、外壁も木であるような、単なる木造建築(非耐火建築)と同じ扱いになる。……それが今回の保険料改定の意味だ。
もっとも、新築のほとんどすべてが木造耐火建築ならば、保険料の算定では木造耐火建築ばかりが基準となる……と思えそうだ。ところが、そうではない。
保険料の算出に当たっては、昔からずっとある木造建築も含まれる。新築の分だけでなく、昔の分も含まれる。そこでは木造建築がたくさんある。結果的に、「燃えやすくて危険」と判定される分とごっちゃになるせいで、危険な非耐火建築の分の保険料を、安全な木造耐火建築の分から、まかなうことになる。だから、木造耐火建築の保険料が大幅に高くなる。
結局、「木造耐火建築と木造建築の保険料率を同じにする」という新方針により、木造耐火建築は、今後、大幅に不利となり、撲滅の道を進む。個人住宅は今後、大手のプレハブ会社の鉄骨系ばかりになるだろう。また、木質プレハブ住宅の会社は大打撃を受けるだろう。大工などの技術継承者も職を失うだろう。
木造耐火建築は、十分に合理性のある建築法だ。日本間にヒノキの柱があるのはとても美しい。また、耐火性も十分だ。そのことは、今日の木造耐火建築の保険料率を見ればわかる。
なのに、そういう伝統的かつ合理的な建築方法を廃棄させてしまう。玉も石も一緒くたにして、「どっちも似たようなものさ」と言って、せっかくの玉を捨ててしまう。狂気の方針。
そして、それとともに、用途を失った杉林は、放置されることになる。杉林は手入れされずに荒廃し、莫大な花粉をまき散らすことになる。……スギ・ウォーズ。杉林の復讎。
日本人はどこまで馬鹿なんだか。宝を手放し、ゴミを漁り、自分で自分を攻撃して、苦しむハメになる。
[ 付記 ]
なお、この方針は、政府の方針ではない。民間の保険会社の方針だ。その理由は、記事にあるとおり。つまり、火災保険の保険料をはじくための参考データをまとめている「損害保険料率算出機構」という団体が新区分を打ち出したことだ。この団体は、民間のもの。
頭の悪い保険屋たちが、勝手なことをするから、国民が迷惑をこうむる、という図。
2009年12月21日
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