2009年12月05日

◆ 戦闘機の技術継承

 スパコンだけでなく、戦闘機もまた、技術継承の対象となる。ところがこのことを重視している人は多くない。 ──
   ( ※ 本項の実際の掲載日は 2009-12-11 です。)


 戦闘機についても、「買うか/作るか」という選択肢がある。
  ・ 買うならば、F-35 を買うことになる。安価で高性能のものを買える。
  ・ 作るならば、タイフーンを国内生産することになる。
   ( 完全な自主開発は不可能。心神は試作機以前のレベル。)


 (1) 買う?

 池田信夫ならば、「買えばいい」という結論を出すだろう。「安価で高性能のものを買えばいい」と。しかしその場合、綿々と培ってきた国産技術がすべて消えてしまう。これまで多額の予算をかけて維持してきた国産技術が、すべて海の藻屑と消えてしまう。宝をドブに捨てるのも同然だ。ひどい無駄。
 それでいて、「ミサイル防衛網」という超先端技術の開発・配備のためには、1兆円を上回る金を投入する。
 となると、ミサイル防衛網はあっても、戦闘機の技術すらないわけだ。あまりにもいびつだ。
 しかも、ミサイル防衛網の技術を、日本が取得するわけではない。技術はアメリカのものとなる。日本は金だけ払って、技術はアメリカのものとなる。この場合、技術開発で得をするのは米国だ。日本はアメリカののために莫大な金を分担する。

 (2) 作る

 私ならば、「作るべし」という結論を出す。タイフーンの方が低性能で、しかも自主生産のせいで高価だとしても、それでもタイフーンの方を選ぶべきだ、という結論を出す。
 なぜか? そもそも戦争をすることは考えられないからだ。今さら第三次世界大戦なんかを起こすべきではないし、起こるとも思えない。大事なのは、自主的な技術を持つことだけだ。そして、そのためには、価格が二倍であっても配備数を半分に減らす、という形で、自主開発を優先するべきだ。大切なのは、戦争を始めて勝つことではなく、戦争をしないで技術を維持することなのだ。
( ※ 池田信夫の発想だと、安上がりに戦争に勝つことが大切だろうが、私はそういう立場を取らない。)

 とにかく、ミサイル防衛網なんかに莫大な金をかけている現状を放置して、スパコン予算を減らしたり、戦闘機の開発予算を皆無にしたり、……というような技術軽視は、困ったことだ。大切なのはあくまでも技術開発だ。それが私の立場だ。
( ※ 太陽電池についても同様。普及ではなく技術開発に金をかけるべきだ、という立場。)



 [ 余談 ]
 余談だが、ミサイル防衛網というのは、それによって防げる被害額よりも、それを配備する金額の方が、ずっと多い。テポドンが日本に届いてもたいした被害にはならないが、ミサイル防衛網を配備すれば1兆円以上の費用がかかって莫大な損失となる。
 だいたい、北朝鮮が日本にミサイルを発射したのであれば、ミサイル防衛網で対処するよりは、北朝鮮を徹底的に空爆した方が、よほど効果がある。ミサイルの1発か2発による(万が一の)死者を心配するよりは、山手線で現実にしょっちゅう起こる自殺者を減らす方が、よほどためになる。

 まとめ。
 池田信夫は「スパコンつぶし」で、数百億円を減らしたがる。
 私は「ミサイル防衛網つぶし」で、1兆円を減らしたがる。
 どっちの経済観念が優れていますかね? 



 [ 付記 ]
 ミサイル防衛網とは別に、もう一つ、巨額の無駄がある。偵察衛星だ。抜粋しよう。( → 「泉の波立ち」12月09日 )
 政府の情報収集衛星が導入されたが、7千億円近くが使われ、さらに毎年600億円以上の予算がつぎ込まれるのに、ほとんど無駄になっているという。
 北朝鮮の調査のためには、情報不足で軍事的に役立たずなので、米国の軍事衛星のお世話になるしかない。その一方、民間への利用は、機密を理由に警察・外務・防衛のためにしか使われず、民生用には使われない。
 結局、軍事用にも民生用にも、何の役にも立たない7千億円の無駄。……という話。
 ここでは「 7000億円がまるまる無駄」となっている。こういうのをほったらかして、スパコンの技術開発という重要な技術開発ばかり目の敵にするとは、いったい、どういうつもりなんだか。



 【 追記 】
 もう一つ、巨額の無駄が見つかった。
 鳩山首相は、アフガン支援として、給油廃止のかわりに5年間 50億ドル( 5000億円程度)の民生支援を決定した。では、この巨額の金は、どうなるか?
 読売新聞(朝刊・1面 2009-12-13 )に、面白いコラムがあった。山内昌之・東大教授の見解。
 アフガンのカルザイ政権は、腐敗と汚職まみれである。清潔度は 180カ国中 179位だという指摘もある。5000億円もの金を贈っても、それはアフガン支援には役立たず、閣僚や軍閥の私腹を肥やす糧になりそうだという。
 米国のクリントン国防長官は、汚職まみれを批判し、腐敗構造を改善しない限りは民生支援を実施しないと明言した。
 (以上、コラムの紹介。)

 つまり、米国は「盗人に追銭」みたいなことはしないと決めたのだが、日本はそういう「やってはならないこと」をやっているのだ。
 これは、5000億円もの金をまるまる捨てる、というのと同様だ。何もしない方がまだましなくらいだ。とすれば、そういうことを中止させることの方が、先決だろう。
 なのに、池田信夫は、スパコン開発の金をケチろうとしている。今後やめたとしても、数百億円程度にすぎないのだが、それをケチってすべてをドブに捨てようとしている。

 「ダイエットすると言って、脳みそから減らしている」
 と言った女子高生の方がよほど賢い。彼女は、何を大切にし、何を捨てるべきか、ちゃんとわきまえている。



 【 関連項目 】
 戦闘機の選択については、前に詳しく述べた。そちらを参照。
  → 次期戦闘機は F-35 か?
 
( ※ 蛇足だが、「次期戦闘機は F-35 に決まった」という誤報が先日流れた。詳しくは → 紹介サイト
posted by 管理人 at 18:30| Comment(3) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 アフガンの腐敗政権に対する 5000億円の無駄、という話。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2009年12月13日 19:49
技術力維持のために次期戦闘機を国産するのは賛成だが、まともな要求仕様の提示ををお馬鹿さんたちに任せることになるのがとても心配。過大な要求仕様を背負った国産の新鋭機は重そうに飛んでいる。
日本航空を国産新型旅客機MRJで立ち直らせるほうが目的を航空機の生産技術の確保だけに限定すればれば余程筋が良い。
Posted by 海底油田 at 2009年12月14日 17:24
はじめまして、こんばんは。戦車不要論の記事も読みましたが、そのとおりと思いました。私も高いわりには、役立たずの戦車は要らないと思います。

戦闘機に金を掛けなければいけないのは、しかたがないでしょうけどもね。

F-35は、単価も維持費も、ものすごく高そうなので採用しないのが無難な気がします。特に維持費。

ユーロファイターなら改造すればそれなりに使えるでしょうね。

しかし、F-Xの採用自体の見送りの選択肢もあるべきと思います。

もし戦闘機の開発をするなら練習機や偵察機という名目で戦闘機と同じ速度や対ストール性を備えた機体を作って、ある程度の期間、練習機や偵察機として使用してノウハウをつんでからから、本格的な戦闘機を作るとしたほうが、信頼性の高い機体ができると思います。

どうせ空自は大量の戦闘機を装備できないのだから、戦闘機とは別な機体でノウハウを培えれば面白いと思います。
Posted by まえやま at 2009年12月18日 00:44
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