2009年12月04日

◆ 池田信夫の新見解

 池田信夫が新たに見解を出したが、話はますます混迷を深めている。ほとんど滅茶苦茶。 ──
   ( ※ 本項の実際の掲載日は 2009-12-11 です。)


 池田信夫が新たに見解を出している。
  → 池田信夫ブログ

 しかしこの話は、自己矛盾をしており、統一されていない。
 「(世界で年間数十台しか売れない)特殊なコンピュータにすぎない。」
 と述べる一方で、
 「 役所がITゼネコンに税金をばらまいてもイノベーションは生まれない。」
 とも述べている。

 この両者は矛盾する。
 前者が正しければ、もともと商売にはならない。商売にならなければ、スパコンに開発には、国の補助金が必要だ。(米国も日本もそうしている。)
 後者が正しければ、税金を出すことを否定しているので、補助金を出してはいけないことになる。
 この両者をともに満たす唯一の策は、「作らず、買うだけ」という方針だ。そして、前回までは、その方針で統一されていた。それはそれで、矛盾はない。

 しかしながら、今回は、「作らず、買うだけ」という方針をやめて、「作る」という方針になったらしい。ただし、民間で。しかし、民間でやるなら、(市場がないのだから)補助金が必要となる。実際、米国政府だって、さんざん補助金を出している。

 ──

 いったい、どうなんです?
  ・ スパコンを、作るのか、買うだけか? 
  ・ 作るなら、補助金を出すのか、出さないのか?

 前回は、「作らず、買うだけ」で、「補助金は出さない」だった。これはこれで統一されている。
 今回は、「作る」でありながら、「補助金は出さない」らしい。それなら、市場がないゆえに、民間ではできない(採算性がない)のだから、「作る」という方針は破綻する。
 前回は、曲がりなりにも、論理が完結していたが、今回は、論理が破綻している。
( ※ 特に、スパコンみたいに、民間の市場がろくにない場合には。また、米国でさえ政府が支援しているような状況では。)

 ──
 
 たぶん、池田信夫は、こう思っているのだろう。
 「国が補助金を出さなくても、民間企業だけで、自立的にスパコンができる」
 
 しかしこれは夢想にすぎない。たとえば、次のようなことを夢想するようなものだ。
 「 国が補助金を出さなければ、日本の民間企業は、次のものを作れる。
  ・ 世界最高レベルのスパコン
  ・ 世界最高レベルの宇宙ロケット
  ・ 世界最高レベルの戦闘機   」


 しかし、そんなことはありえない。仮に、そんなことがあるのならば、政府が何も支援しない欧州でも、スパコンや戦闘機で、米国製品並みのものができたはずだ。現実には、そうなっていない。つまり、放置するだけでは、駄目なのだ。
( ※ ロケットと戦闘機の場合は、政府支援によって、欧州製のロケットや戦闘機もある。だが、民間のものではない。)

 「放置すれば市場原理 or 自然淘汰で、自動的にうまく行く」
 というのは、ダーウィニズムと同じで、理論的に破綻しているのだ。それは「魚が陸に上がれば魚に足が生える」というのと同じで、ただのご都合主義にすぎない。
 いい加減、そのご都合主義の理屈(市場原理主義)を、捨ててもらいたいものだ。

 ──

 また、PS3 だの、イノベーションだの、またしても視野の狭い見識を述べているが、この件は何度か述べたので、繰り返さない。彼の知識の貧弱さがわかるだけだ。
 せっかくこのブログで教えて上げたのだから、ちゃんと理解すればいいのに。いまだに、PS3 がすばらしいだの、イノベーションだの、知ったかぶりをしている。自分のよく知らないことについては語らなければいいのに。

 だいたい、CPU を並列に使う方式のスパコンがあるということぐらい、スパコンの研究者ならば誰だって知っているイロハですよ。経済学者なら需給曲線があるのを誰もが知っているのと同じ。そんなイロハを、いちいち知ったかぶりで、教えてくれなくてもいいのだ。利口ぶるのはやめてほしい。何も知らないくせに。

 どこかの素人が、経済学を学び始めて、需給曲線というものを学んだ。ケインズが需給曲線だけでは物事は解決しない、と主張して、マクロ経済学を創出した。すると素人が得々として、ケインズに教えた。
 「経済学には、需給曲線というものがあるんです。曲線の交点が均衡点なんです。わかりましたか?」
 自分が利口になったつもりで、ケインズに需給曲線を教えて上げる馬鹿。誰もが知っていることを、いかにも自分だけが知っているつもりになって、専門家に得々として教える馬鹿。……こういう素人と同じことをする人が、スパコン分野でも、日本にもいますね。よほどスパコンについて詳しいつもりらしい。知ったかぶり。(手に負えない、というべきか。恥知らず、というべきか。「無知の知」さえもない輩。)

 ──

 彼にはせめて、経済の金額ぐらいは、ちゃんと数えられるようにしてもらいたいものだ。
 「1200億円もの税金をつぎこんで「世界一」高価なハコモノをつくる」

 だって。前にも書いたが、いまだにわからないらしい。1200億円でハコモノしか作れないのならば、あとは開発費も部品代もなしで、スパコンができることになる。そんなすばらしいこと(無から有を生み出すこと)ができるのであれば、これに勝ることはないはずだ。
 
 「220億円もあれば、理研のスパコンと同じ性能が実現できるのだ」

 なんてことも書いているが、富士通方式ならば、ハコモノ代以外は1円もかけずに技術開発と装置配備ができる。これほどすばらしいことはないはずだ。  (^^); 
 まったくひどい計算だ。経済観念がゼロ。

 おまけに、上の「220億円もあれば」という試算には、研究開発費が入っていない。ここでもあそこでも、研究開発費のことが、すっかり失念されている。研究開発に金をかけるという発想が、根源的に欠落しているらしい。
( ※ 彼は 220億円という数字をムーアの法則から算定しているが、それは市場価格である。つまり、アメリカの会社が販売するときの価格。それは別に、日本がスパコンを開発するときの費用じゃない。……ここでは、買い手として買うときの価格と、作り手として開発するときの価格が、ゴッチャになっている。買うことと作ることの区別さえできないらしい。……彼には、「スパコンのことを理解せよ」と言っても無駄だろうが、せめて「販売価格とコストの区別」ぐらいは、してほしいものだ。市場価格が 200円だとしても、それを必ずしも 200円のコストで作れるとは限らない、と理解するべきだ。)

 彼は研究開発費というものを無視している。
 仮に、彼が企業の社長になったとしたら、最初にやることは、「研究開発予算をすべてカットすること」であろう。それをもって「コストカットに成功した」と主張するわけ。
( ※ 日産のゴーンがそれをやった。ハイブリッドの開発費をゼロ同然にしてしまった。そのせいで、日産のハイブリッド開発はトヨタやホンダに比べて、大幅に遅れた。……池田信夫がゴーンに教えて上げたのかな? 「研究開発費は無駄だからコスト・カットしなさい」と。)

 ──

 池田信夫の発想は、要するに、目に見える「物」だけなのである。スパコンという物をいかに安く入手できるか、ということだけを考える。
 その一方で、目に見えない「技術」というものは、まるきり無視する。というか、目に入らない。技術の大切さがわかっていないのだ。
 たとえば、政府が 1200億円を払ったと言えば、それを「ハコモノ代」としてだけ認識して、「技術開発費」をまるきり理解できない。また、220億円で開発できると言うときには、そのための技術開発費がかかるということも理解できない。さらには、秋葉原で部品を買い集めるだけで、スパコンが自動的にできてしまうと思っている。
 彼は技術開発の大切さというものを、まったく理解していない。単に「物」だけが手に入ればいいと思っている。彼の頭にあるのは、ソロバン勘定だけであって、創造的活動というものは、まったく念頭にないのだ。
 秋葉原、じゃない、呆れた。



 [ 付記1 ]
 彼は「買えばいい」と唱える。しかし、そうは言っても、アメリカが売ってくれるとは限らない。
 たとえば、F22 という戦闘機は、日本がいくら金を出すといっても、アメリカは売らない。
 スパコンだって同様だろう。日本に開発技術がないとなれば、アメリカはスパコンを日本に売らないはずだ。売るとしても、認証にわざと1年位をかけて、常に1年前の旧スペックのスパコンのみを輸出可能とするはずだ。
 金さえ払えば売ってもらえる、と思うのは、早計だ。

( ※ ちなみに、中国やロシアには、スパコンを絶対に売らないだろう。スパコンは軍事転用される先端技術商品として、輸出禁制品となっている。)

 なお、彼が「買えばいい」と思っているのは「スパコンなんて簡単にできる」と思っているからだろう。
 「研究開発なんか不要だ。秋葉原で部品を買うだけでスパコンはできる」
 つまり、技術のことを何も知らなければ、技術開発の大切さもわからない、ということだ。

 [ 付記2 ]
 富士通のスパコンでは 1200億円かかるが、実はもっと巨額の無駄がある。次の二点だ。
  ・ ミサイル防衛網 …… 1兆円
  ・ 偵察衛星  ………… 7000億円
 どうせならこっちに着目するべきだろうに。
( ※ この件、詳しくは → 別項

 [ 余談 ]
 ところで、前項で書いたことには、何の回答もなかったようですね。つまり、「科学技術会議によるスパコン復活」という方針への見解。賛否のいずれも示されていない。
 ま、彼の今回の話を読む限りは、「スパコン関係者はみんな馬鹿だ。スパコンのことを一番よく知っているのはおれ様だ」ということなのだろう。それで、「並列 CPU 方式にしなさい」「ゲーム機の CPU でもスパコンができますよ」と教えて上げているつもりなのだろう。大いばりで、鼻高々。
 苦笑。
posted by 管理人 at 19:00| Comment(3) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読売・朝刊 2009-12-12 経済面に、富士通の会長へのインタビューが掲載されている。
 技術開発の重要性を強調している。その意味で、私の主張と同じ。
 スパコンの意義は、コストを下げることではなく、技術を高めることなのだ。その意義を理解してもらいたいものだ。
 まあ、専門家ならばわかるが、素人だとコストをちょっと下げることしか考えない。情けないというか。
Posted by 管理人 at 2009年12月12日 11:55
「池田信夫の新見解」と述べたが、その基盤にある「並列型 CPU 」という主張は、かなり前から見られる。そして、その発想が見当違いであることは、ずっと前から専門家によって指摘されている。
 → http://www.artcompsci.org/~makino/articles/future_sc/note058.html

 たぶん池田信夫は、ここに書いてある説明を読んでも理解できなかったのだろう。だから相も変わらず、同じトンチンカンを繰り返しているのだろう。
 自分が無知であるスパコン分野については、無知をさらけだして、トンチンカンなことを語るのはやめてほしい。口をつぐんでいてほしい。そうすれば、恥をかかずに済みますよ。
 せめて、「無知の知」については、知ってほしいものだが。自分が文系でしかないということすら気づかないのだろうか?
 だいたい、池田信夫の作ったのプログラムというものが、この世に一つでもあるのだろうか?
Posted by 管理人 at 2009年12月12日 21:23
池田信夫の Twitter
「業界紙の記者が「理研のスパコンの筋が悪いことはみんな知っているが、富士通では利益が出るのは官公需しかなくなっているので切るに切れない」といっていた。」
http://twitter.com/ikedanob/status/6553091179

 業界紙の記者の話? 自分が業界紙の記者以下のレベルだと自認しているのか? 情けない。
 しかも、話の内容がひどい。「筋が悪い」だって。そりゃまあ、筋が一番いいのはどれかと言えば、池田信夫のお薦めの「並列型 CPU 」だろう。私もそれを認めている。前出。
 しかし、筋がいいかどうかが問題なのではない。「どれか一つなのか、複数やるのか」というのが、問題なのだ。
 また、「並列型 CPU 」にしたって、NEC みたいに CPU の開発から取り組まなくては、最先端にはなれない。
 池田信夫の発想は、最初から最後まで「安上がり」ということだけで、「最先端の技術」という発想は、すっぽり抜けている。
Posted by 管理人 at 2009年12月12日 22:05
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
過去ログ