2009年12月01日

◆ NEC の国産スパコン撤退

 NEC が国産スパコンから撤退した。これについて、違約金を払ってもらいたい、という見解がある。しかし、道理が通らない。ベクトル型(混合)に逆戻りするべきではないからだ。 ──

 「撤退したなら違約金を払ってもらいたい」という(卑しい?)見解を述べているのは、例によって池田信夫。抜粋すると、下記だ。( ※ 出典はグーグルで調べてみるといい。)
 1200億円もの業務委託契約に違約金の条項がないため、これまで NECと日立に払った数百億円の税金は、国が損害賠償訴訟を起こさないと返ってこないのだ。
 つまり、違約金の条項がないのはけしからん、本来ならば違約金を取るべきだ、といきまいている。
 しかし、である。 NECと日立が撤退したのは、「経営上の理由」という名分もあるが、本当は、「ベクトル型が駄目だとわかったから」だろう。とすれば、この時点で撤退するのも、やむを得ない。
 むしろ、「事業継続」を続けて、「スカラーとベクトルの混合タイプ」なんてのを開発継続したら、そっちの方が有害だ。それを推進したがるのか? かえって泥沼に足を突っ込むようなものだろう。

 池田信夫は、「ベクトル型が駄目だということは昔からわかっていた」と述べるが、そんなことはない。タイプが全然違うからだ。地球シミュレータみたいなシミュレーションをするのには、ベクトル型はたしかに有用なのだ。そのことは昔から変わっていない。だから、ベクトル型も、スカラー型も、どちらにも存在意義はある。
 ただ、近年になって、別のタイプが出てきた。それは、GPU を使うタイプだ。ま、これが出たことで、ベクトル型のライバルとなったが、それでも、ベクトル型を脅かすほどではなかった。( GPU を使うタイプは、利用範囲が限られているからだ。)
 ところが、最近なって、次世代の CPU が計画されてきたが、そこでは、GPU 内蔵タイプの CPU が計画されつつある。これはどうも、ベクトル型と直接ぶつかりそうだ。そうなったら、ベクトル型の出番はなくなる。……そう思ったので、NECと日立が撤退したのだろう。
 そして、NEC はインテルと協力して、「 GPU 内蔵タイプの CPU をたくさん組み合わせたスパコン」というのを開発しようとしているのだろう。(ベクトル型のかわりに。)

 こういう時代の流れがある。とすれば、それに逆らう形で、「スカラー型とベクトル型の混合をしろ、さもなくば違約金」というのは、道理に反する。それでは、無駄を覚悟で、公金を払うことになる。まさしく「時代遅れの戦艦大和」だ。
 池田信夫は、「違約金を要求せよ」という形で、「時代遅れの戦艦大和をつくれ」とあえて要求していることになる。そんな大型公共事業みたいなことをして、どうする? 
 彼の言っていることは、支離滅裂だ。必要なスカラー型について「時代遅れの戦艦大和」と称する一方で、もはや必要のないベクトル型について「やらなければ違約金を請求せよ」と言って、強引にやらせようとする。強引にやらせて、どうするつもりなんだか。……できたころには、「 GPU 内蔵タイプの CPU をたくさん組み合わせたスパコン」に、あっさり負けてしまうだろうに。困った人ですね。
 ( ※ 自己矛盾に気づいていないらしい。)
 


 【 関連サイト 】
 読売の社説 2009-12-06 が、スパコンや科学技術について論じている。
 《 予算編成作業 科学・文化を衰退させるな 》
 科学技術や文化、教育などは、費用と手間がかかる割に成果がすぐには見えてこない分野だ。それを費用対効果で仕分けしてよいのだろうか。
 知的創造活動の基盤整備や人材の育成は、長期的視野から取り組むべき課題である。
 行政刷新会議の事業仕分けの結果、この分野の多くの事業が「廃止」や「縮減」と判定されたが、大胆に判定を見直して適切な予算措置をとることが必要だ。
 妥当な判断だ。特に読むべき話があるわけではないが、読みたい人は上記サイトで読むといいだろう。
   
  ──

 もう一つ、民主党のサイトに、「科学重視」というマニフェストがある。
  → 民主党のサイト
 読むと、笑ってしまうね。先の事業仕分けと正反対のことが書いてある。「科学の振興」というふうな。

 一方、鳩山は、事業仕分けを正当化している。
 鳩山総理は、「その基本的な考え方は崩すべきではないが、すべての予算が本当に必要なのかという点検を、国民の立場で行わなければならない」
( → 鳩山の見解
 つまり、「重要だが必要ではない」という予算をカットしてしまうわけだ。もちろん、科学というのは、「重要だが必要ではない」ものだから、すべて予算カットの対象となる。
 しかも、「国民の立場で」だって。科学のような重要なものを振興するかどうかは、「国民の立場で」決めるものじゃないでしょう。一国の理念で決めるものでしょう。
 鳩山の立派な所信表明も、民主党のマニフェストも、みんなただの絵に描いた餅にすぎなかったわけだ。民主党が「マニフェストを守る」というのは、「ガソリン税を下げる」というバラマキだけであり、「科学の振興」ということはまったく忘れられてしまっているわけだ。
 ペテン師。
posted by 管理人 at 16:58| Comment(0) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
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