2009年11月28日

◆ 怠け蟻 … 無用の用

 働き蟻が働かないことがある。これは、役立たずのように見えて、実はとても有用だということがわかった。 ──

 働き蟻のなかには必ず、働かない蟻がいる。これを怠け蟻と称することにしよう。
 怠け蟻はなぜ存在するのか? 巣の集団全体にとっては邪魔な存在であるから、そんなものは滅びてしまっていいはずだ。ところが現実には、役立たずの怠け蟻が存在する。なぜか? ……これは進化論的に謎とも言える。
 この件について、新たな研究成果が出た。
 《 存在重要「怠けアリ」…「働きアリ」だけだと集団破滅 》
 働きアリを「よく働くアリ」「ほとんど働かないアリ」に分けて、それぞれの集団(コロニー)を作り直しても、一定の割合で「働き者」「怠け者」に分かれる。
 「よく働くアリ」「ほとんど働かないアリ」を取り出して、それぞれの集団を作り直した。その結果、どちらも元の集団同様「よく働くアリ」「ほとんど働かないアリ」に、ほぼ同じ割合で分かれた。
 働きアリも疲れて休息するが、「働かないアリ」がいるほうが、集団全体で「誰も仕事をしなくなる時間」が減ることがコンピューターの模擬実験でわかった。長谷川さんは「幼虫や卵の世話は少しでも中断すると集団全体の死につながる。そのため、わざわざ働き方に差がでるような仕組みをとっているのではないか」と話している。
( → 読売新聞・夕刊 2009-11-28
 ──

 興味深い研究成果だ。これはどこかで聞いた話だな、と思って考えたら、「無用の用」という言葉に合致する。元は荘子の言葉だ。
   → 荘子の「無用の用」

 大辞泉では次のように説明されている。
 「一見無用とされているものが、実は大切な役割を果たしていること」

 怠けているように見えるが、実は、休憩しているだけなのだ。そして、休憩しているのは、次に働くためなのだ。つまりは、待機時間である。
 待機しているものがいるからこそ、いざ、緊急の呼び出しがあったときに、対処することができる。仮に、待機している者がいなければ、緊急時に対応不可能となり、大変な厄災が起こる。

 病院の当直医だって同様だ。夜間にずっと待機しているが、何もしていないように見えて、実は、待機という仕事をしているわけだ。そして、いざ急患が来たら、きちんと対処する。
 というわけで、当直医には、待機時間にもきちんと給与が払われる。
( ※ ただし、ひどいタコ部屋病院では、実働時間だけに給与が払われる。……たぶん労基法違反。それでも昔は、そういうことがあったらしい。今でも、あるかも。)

 というわけで。
 怠けてダラダラしていることにも、立派に名分が立つのである。会社でグータラしているのも、立派な仕事なのだ。家でゴロ寝をしているのも、立派な仕事なのだ。文句を言われたら、「無用の用」と答えることにしよう。

 だからこそ、私は疲れたときには、酒を飲んで寝てしまうのだ。これこそ最も賢明な方法である。
 知的生産の方法とは、グータラすることなのだ。 (^^)v



 [ 付記 ]
 本項の話で興味深いのは、冗談ではなくて、物の見方だ。
 無駄なように見えて、実は、無駄でない。その理由は「待機」という仕事をしている、という点だ。ここでは、何もしていないように見えて、実はちゃんと仕事をしていることになる。何もやらないこと自体が仕事なのだ。
 目に見えるものだけを追っていると、大切な真実が見えなくなる。そのことを今回の事例は教えてくれる。
 思えば、教育であれ、研究であれ、すぐに目に見える成果だけを求めていては、本当に大切なことができなくなる。大きな成功をなすには、多くの試行錯誤が必要だが、そこでは、一つの成功の陰に、多大な失敗があるはずだ。そして、失敗を恐れていては、成功もまたできない。
 失敗という多量の無駄があるからこそ、一つの成功がある。研究というものは、そういうものだ。そして、研究に「効率性」というものを求めたら、独創的な研究などはできず、人真似しかできない。あるいは、大金を払って人の成果を買うしかない。
 戦後の日本は、海外の特許を買うために多額の金を払うしかなかった。だからこそ、「独自の研究の大切さ」というものが何度も唱えられた。先人はまともな頭をもっていた。
 ところが今になって、「研究には効率性を」とか「無駄をするな」とか言い出して、「独自の研究」や「独自の技術」の大切さがないがしろにされるようになった。(スパコンの事業仕分け。)
 日本人はどうやら、怠け蟻の知識さえもないようだ。怠け蟻を見て、「効率が万能ではない」ということを学ぶといいだろう。せめて蟻並みの知性を得てほしいものだ。
posted by 管理人 at 19:19| Comment(3) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2ちゃんねるで、ニートが怠け蟻みたいだ、という論議。

http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1259378712/
Posted by 管理人 at 2009年11月28日 19:33
そういえば、タイでは景気が悪くなると出家僧が増えて、景気が良くなると還俗して、労働供給が調整されているという話をどこかで読みました。
Posted by jiangmin at 2009年11月28日 21:07
本項の内容は、実験的に証明された。本日の下記記事にある。
  → http://mainichi.jp/articles/20160217/k00/00m/040/067000c

 ──

 なお、本項の続編は、下記にある。
  → http://openblog.meblog.biz/article/8016840.html
Posted by 管理人 at 2016年02月17日 12:53
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