2009年11月27日

◆ 各種スパコンの評価

 スパコン開発について、専門家の評価が見出されたので、紹介して解説しておく。簡単に言うと、今回の富士通のスパコンは、抜群ではないにせよ、悪くない。 ──

 スパコン開発について、あちこちで評価がなされているが、どれもこれも素人による評価だ。実は、私だって素人だ。(スパコン開発のプロではない。)
 ところが、ネットを見ていたら、専門家の見解を見出した。そこで、以下で紹介する。

 まず、私がざっとこのページを見たときは、「ずいぶん頭がいい人だ」と思った。日本語の文章は滅茶苦茶だし、ページは無味乾燥だが、理系の脳ミソが抜群だ。
 書いたのは誰かと思って、トップページに行ったら、牧野淳一郎という名前。
  → Wikipedia
 上記の経歴を見ればわかるように、プロ中のプロだ。評価するには最適の能力の持主だろう。

 というわけで、「あとは当人の記述を読みください」と言いたいところだが、いかんせん、文章がわかりにくい。読んでもピンと来ない人が大半だろう。そこで、私がわかりやすく解説しておく。
 なお、原文は、下記にある。
  → 「仕分け」雑感 (2009/11/25)

 ──

 このプロジェクトは、迷走したりして、褒められたものではないが、着実に成果を挙げてきた。特に、富士通はちゃんとやってきた。
 
 今回のプロジェクトがもくろみ通りに完成したとしても、とうてい世界一にはなれない。価格性能比で、2倍ぐらい劣る。全然劣る。
 しかし、現状では、10倍ぐらい劣る。それが2倍ぐらいにまでギャップを縮めることができるのならば、そう悪い話ではない。
 かける費用は 1200億で、かける時間は3年弱。その結果としてできる性能向上は、演算性能で20倍近くになる。なかなかたいしたものだ。めざましい成果と言える。

 では、これをやらなければ、どうなるか? Xeon や Opteron のような X86 系の CPU を使えばいいか? なるほど、現状なら、そう言える。しかし、将来的には、それは成立しない。
 Xeon や Opteron のような X86 系の CPU をスパコンに使って価格性能比が高いのは、それの構造がデスクトップ用の CPU と共通しているからだ。現在では、この共通性ゆえに、Xeon や Opteron のような X86 系の CPU をスパコンに使って価格性能比が良くなっている。
 しかし、今後は違う。デスクトップ用のコアは6コアに留まる(かわりに GPU を内蔵する)が、サーバ用は 8-12 コアとなり、両者の共通性は失われる。したがって、サーバ用は価格が大幅に上昇しそうだ。となると、現在の価格的な優位性は失われそうだ。
 そこでインテルは、Larrabee という GPU を開発して、これにスパコン対応能力をつけている。( ※ インテルはこの技術開発のために莫大な資金を投入した。 → Wikipedia
 しかし Larrabee は、GPU としてはともかく、スパコン用途には向かない。市場がスパコンだけならば、生産量が少なすぎて、コストが高くなりすぎる。かといって、一般デスクトップ用の GPU として売ろうにも、一般のデスクトップは GPU を内蔵するタイプになるので、後付けの GPU を必要としなくなる。( GPU の市場は、統合チップセットや CPU との統合によって縮小・消滅しつつある。) Larrabee は売れそうにないし、コストが下がりそうにもない。
 
 以上のように、富士通のスパコンのライバルと目されているものは、いずれもお先が真っ暗だ。それらは、もしかしたら成功するかもしれないが、成功する見通しは全然立っていない。
 というわけで、富士通のスパコンは、そんなに悪くない。富士通のスパコンが最善だと言い切れるわけではないが、他のものだって、お先が真っ暗なのだし、どれか一つが有望だということはない。
 ただ、富士通のパソコンが市場をもつためには、回路の配線幅が 45nm なのが痛い。これでは量産能力・コストともに限界がある。早急に 28nm 程度に移行する必要があるだろう。ここさえクリアすれば、結構何とかなりそうだ。

  ────────────

 以上で、紹介を終える。このあとは、私の感想。
 私の見解は、「どのタイプのスパコンもすべてやれ」というものであったが、この私の見解に、上記の解説は、なかなか合致するだろう。
 もしかしたら、富士通のタイプは、他のスパコンを大きくしのげるかもしれない。そうなる可能性も、なくはない。今のところ、先の見通しは、はっきりとしていない状況だ。この時点では、「せっかく蓄積してきた研究成果を、あっさり捨ててしまう」というのは、馬鹿らしい。

 なお、どうしても捨ててしまいたいのであれば、「中国に売却せよ」というのが、私の主張だ。(前項などで示したとおり。)
 中国が日本の素晴らしい研究成果を、あっさりと買収して、それで中国が世界に冠たるスパコン先進国になれば、日本にとって良い教訓となるだろう。「高速道路を無料化するために、せっかくのスパコン技術を売却したせいで、国家を衰退させた」という教訓ができれば、後世に残る教訓となる。ここは、後世に残るぐらいの大失敗をして、子孫に大きな教訓を与えるべきなのかもしれない。
( …… 皮肉ですよ。念のため。   (^^); )
 
( ※ ちょっと悔しい話もある。回路の幅の話があったが、私もこれには気づいていた。ただし、たくさん書くうちに、これについては書くのを忘れてしまっていた。ちぇっ。書いておけばよかった。そうすれば、専門家との一致性をうまく示せたのに。残念。今からでは証文の出し遅れ。悔しい。   (^^); )



 [ 余談 ]
 蛇足としての情報を加えておく。

 東大の平木教授が評価をした。スパコン開発は当然だが、建物に費用をかけすぎたという無駄もある、という指摘。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091127_331927.html

 たしかに、建物に費用をかけすぎたという無駄はある。しかし、これは、自民党政権では必要悪なのだ。建物に費用をかけることで、土建業者に金が回る。そのうちのいくらかが、自民党に回る。……これが自民党政権の利権システムだ。この利権システムを拒否すれば、スパコンプロジェクト全体が大幅縮小されかねない。
 つまり、建物を建てるから、スパコンプロジェクトが可能となった。それが自民党の利権政治なのだ。
 だから、「無駄だった」というふうに批判しても、仕方ない。日本の政治はそういうふうに汚れていたからだ。
 「あの無駄はやめるべきだった」
 というのは、民主党政権だからこそ言えることだ。当然だが、当時のスパコン関係者を批判することはできない。批判するなら、相手は自民党だ。

 ま、建物という無駄はあったにせよ、スパコン開発推進を認めた自民党は、マシだった。ひるがえって、建物の無駄をなくすために、スパコン開発そのものをつぶしてしまえ、という民主党(仕分け人)は、最悪だ。
 
    白川の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき

 清ければいいというものではないのだ。
posted by 管理人 at 22:00| Comment(6) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
牧野さん ゴードン・ベル賞何度も受賞のオーソリティというか
神のような人です。

それからたしかSPARCってSUNがオープンにしちゃった
やつを富士通が命令セット追加したりで使っていて
売るとなると製造設備とかがメインになってくるのであまり
大した値段にならないんじゃないかと。

SPARCのライセンスは詳しくわかりませんのでなんですが。
Posted by さ) at 2009年11月27日 22:42
> 売るとなると製造設備とかがメインになってくるのであまり大した値段にならないんじゃないかと。

そうです。だからこそ、少なくとも最初は、国家による補助金が必要なのです。最初から商売が成立するなら、補助金は必要ない。
Posted by 管理人 at 2009年11月27日 22:53
米国でもスパコンには補助金を出している。どのくらいの額かは、うまく調べることができなかったのだが、次の記述が見出せた。

 ──

07年(?)にIBMとCrayに対して計500億円注入して今から5年後に当時の100倍の速度のスパコンを完成させろと言っている
名前はどっちがどっちのメーカーか忘れたけどSequoiaとDown
そこから年間1500億円出して新製品買っては研究所の設置してる
年間1500億円出してるよ
それまでは05年以降コンピュータ関連予算は年間予算1000億円超だった

http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1259298826/

 ──

 これは、2ちゃんねるの記述。信頼性はほとんどない。だけど、間違いとも言い切れない。とりあえず、参考のために転載しておきます。
Posted by 管理人 at 2009年11月28日 09:18
http://wiredvision.jp/news/200911/2009111823.html
からの引用。
 ──
 米Cray社製の『Cray XT5』(名称『Jaguar』)が、世界最速スーパーコンピューターの『TOP500』最新ランキングで首位に立った。
 2000万ドルの支援を受け、プロセッサーを4コアから6コアにアップグレードした。
 Roadrunnerが主に核爆発のモデリングなどを行なっているのに対し、Jaguarは地球の気候など、多量の演算を要する科学分野の研究に用いられている。
 「スパコンを用いたモデリングやシミュレーションは科学の様相を変え、米国の競争力を高めつつある。オークリッジをはじめとするエネルギー省の各国立研究所は、エネルギーや気候に関する主要問題を解決し、米国をクリーンエネルギーの未来へ導く手助けを行なっている」と、エネルギー省長官のSteven Chu氏は述べている。
 ──
 
 まとめ。
 米国は、さまざまなタイプのスパコンを並行的に開発している。
 補助金も出している。
 トップ(長官)は、スパコンの意義や重要性をよく理解している。

 ────────────────
 《 参考 》 ひるがえって、日本の現状は? 

 日本は、1種類のスパコンにほぼ専念している。
 補助金を出しているのは1つだけ。(あとはごく小額かゼロ。)
 トップ(民主党)は、スパコンの意義や重要性をまったく理解していない。
Posted by 管理人 at 2009年11月28日 15:43
IBMのスパコンがSequoiaですね。

米国と同様に日本のスパコンベンダーといえる
NEC、日立、富士通に250億ずつ渡して開発させても
年1500億円出して新製品買うような需要がもともと
ないですから。
Posted by さ) at 2009年11月28日 15:51
「年間1500億円出して新製品買っては研究所の設置してる」

 という記述は、政府が年間1500億円出して、政府の研究所に設置している、という意味です。ロスアラモスとかね。

 また、
 「エネルギー省の各国立研究所」
 という記述も、上のコメントに見出せます。

 民間に 1500億円の需要があるという意味ではありません。その点は日本でも米国でも同じ。
 米国は 1500億円を出して、自国内に設置して、その金を米国のスパコンメーカーに渡す。

 いっぽう、自主開発反対派が主張しているのは、日本が 1000億円を出して、自国内に設置するが、ただし、その金を渡す先は、日本でなく米国のスパコンメーカーだ。
 米国のスパコンを振興するために、日本が 1000億円出しますか。
Posted by 管理人 at 2009年11月28日 16:36
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