2009年11月27日

◆ 第4のスパコン

 スパコン開発には、第4の道がある。それは、GPUを並列で使うもの。ゴードン・ベル賞を受賞した、浜田剛がうまく実現している。ソフトの開発が鍵。 ──

 この件は、下記のように報道されている。
  長崎大工学部の浜田剛助教(35)のグループは26日、国内最速のスーパーコンピューターを開発し、米電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」(価格性能部門)を受賞した、と発表した。同賞はスーパーコンピューター分野のノーベル賞といわれ、市販の画像処理装置(GPU)を使って安価に高速計算を実現したのが受賞理由。
 浜田助教らのスーパーコンピューターはGPUを760個並列につなげたもの。1秒間に158兆回の計算ができ、国内最速の「地球シミュレータ2」の同122兆回を上回ったという。
 GPUを大量につなげられるプログラムの開発が成功のカギとなり、数百億円規模が必要とされる開発費用を3800万円に抑えたという。
( → 西日本新聞 2009-11-27
 これはこれで、とても筋がいい。私が前項で述べた「第3のスパコン」という方針に似ている。GPUというのは、画像処理装置だが、Cell も似たようなものだからだ。
 というわけで、この「第4のスパコン」についても、研究開発や実用化を推進するべきだ。幸い、こちらはたいして金がかからない。
 ただし、事業仕分けの人にかかると、これも「駄目だ! 廃止!」と仕分けされそうだが。  (^^); 
 とにかく、私としては、「あれもこれも開発せよ」という方針を唱えたい。スパコン分野では、あれこれ研究した方がいいのだ。



 【 参考 】
 関連情報を示す。有益。

  → http://www.atmarkit.co.jp/news/200802/21/sgi.html
 GPU を利用するスパコンの概論。

  → http://www.atmarkit.co.jp/news/200803/06/cuda.html
 開発の状況。

 GPU を利用するタイプは、条件分岐などはできず、幅広い範囲の用途には向かない。向き・不向きがあって、単純なタイプの並列処理にのみ適しているようだ。それでも、物理的なシミュレーションやグラフィックなどでは、群を抜いて高性能となる。
 ともあれ、コストパフォーマンスの点では、このタイプがベストだとわかる。(スパコンの用途のうち、一定範囲内で。)



 [ 付記1 ]
 Xeon や Opteron を使うタイプよりも、本項の GPU タイプの方が、はるかにコストパフォーマンスが優れている。
 Cell は、両者の中間みたいなものだろう。
 これらをまとめると、以下のように整理できる。

  ・ 第1のタイプ …… 独自 CPU
  ・ 第2のタイプ …… サーバー用 CPU( Xeon や Opteron)
  ・ 第3のタイプ …… Cell
  ・ 第4のタイプ …… GPU

 第2のタイプと第4のタイプの中間が、第3のタイプ。

 [ 付記2 ]
 第4のスパコンは、とても有望だ。
 では、あまり筋の良くない富士通の方式は、無駄であるのか? 研究開発をやめるべきか? 
 私としては、継続する方がいいと思う。しかし、どうしても継続をやめたいのであれば、次のことを提案したい。(前々項で述べたが。)
 「富士通のスパコン部門を、中国に売却する」

 実を言うと、現在の富士通のスパコンには、すでに開発費が 400億円以上投入されて、あとは実用化を待つだけだ。種をまいて、水をかけて、果実が出るのを待っている段階だ。……そこで、これを丸ごと、中国に売却すればいい。研究員ごと。
 すると、どうなるか? 日本側としては、それを 1000億円ぐらいで売却できるから、 1000億円ぐらいの黒字になる。そのまま開発中止するよりも、 1000億円ぐらい得をする。また、スパコン開発の担当者をリストラするための費用も浮く。あらゆる意味で、金儲けになる。だから、金儲けの算段で言うなら、単につぶしてしまうよりは、売却する方が、よほど利口である。(一種の売国政策。)
 一方、中国は最先端のスパコン技術を、1000億円ぐらいで入手できる。これまで日本が何十年もかけてなしとげた世界第2のスパコン技術を、たったの 1000億円ぐらいで入手できる。中国は大喜びだろう。
 かくて、世界最先端のトップクラスのパソコンは、米国と中国の独占となる。
 では、日本は? 「第4のスパコン」という、安上がりのスパコンだけを自主開発する。それは、ある範囲内では抜群に高性能だが、日本だけがやるわけじゃなくて世界中がやるから、特に日本だけが有利になるわけではない。一方、「第1のスパコン」という分野では、米国と中国が世界最先端となる。ここで差がつくわけだ。
 それにしても、今年の分の予算は、たったの 267億円だ。これっぽっちの金も払えなくて、スパコン開発を中止したがるとはね。呆れる。貧すれば鈍す、ということか。哀れ。
 
( ※ なお、以上は、「売国政策」と言える。ただし、「売国政策」は、「廃国政策」よりはマシだ。日本の技術をそのままドブに捨ててしまえば、廃国政策となり、米国の完全な独占状態となる。それは最悪だ。その点、中国に売却すれば、人類に貢献するし、金も手に入る)

 [ 付記3 ]
 富士通のスパコンの開発が重要であるわけは、CPU 開発を通じて、最先端のハードウェア技術を養成できるからだ。この技術的な貢献が、一番重要であろう。
 CPU というのは、コンピュータの頭脳であり、これを設計するというのは、最も難度が高い。この部分で技術レベルを高めておけば、他の半導体設計でも有利に立てる。一方、「金が惜しいから外部のチップセットを買えばいい」という方針だと、最先端の技術レベルから落ちこぼれてしまう。
 今の日本は、落ちこぼれるか否かの、瀬戸際にある。「最先端の技術なんか開発しなくていい、部品を買うだけでいい」というのであれば、日本はこれからは中国や台湾みたいに「部品の組み立て産業」にでもなるしかあるまい。
 ま、どうしても金が惜しくて、日本の CPU 設計技術を捨てたいのであれば、単に捨てるよりは、中国に売却した方がいいだろう。そして日本は、中国製の CPU の組み立て産業をやっていればいい。

( ※ 一般に、研究開発というものは、「コストパフォーマンスが高いものだけやっていればいい」ということはない。研究開発というものは、多様に進めるべきなのだ。だからこそ私は、「あれもやれ、これもやれ」と唱えているわけだ。そして、それがいやなら、富士通のスパコン部門を、技術もろとも中国に売却しましょう。中国の属国になるために。  (^^);  ) 
 


 【 追記 】
 第4のパソコン(GPUタイプ)は、使える範囲が限られていると述べたが、専門家筋の情報を見ると、それはかなり極端に当てはまるらしい。

  ・ メモリがないので、ごく限られた範囲にしか使えない。
  ・ 使えるのは多体問題などだけ。
  ・ 多体問題では実効効率が20%ぐらいになったので、効果はあった。
  ・ それ以外では実効効率が2%ぐらいになることすらある。
 → http://slashdot.jp/articles/09/11/27/039234.shtml

 一般的なスパコン用途には向いていないようだ。
 ただ、チップ内にGPUを組み込んだタイプならば、かなり有望だ。

 結論。
 GPUタイプは、それなりに有望だが、それで万事OKというほど甘くはない。それぞれ長短があるので、あれこれと、いろいろな方式を開発する方がいいようだ。

 ──

 なお、Xeon や Opteron を使うタイプ(第2のパソコン)は、現時点では価格性能比優位性を保っているが、それはあくまで現時点でのことだ。このあともそうであるかというと、かなり疑わしいようだ。現時点における優位性は、将来的には失われるようだ。
 この件は、次項で示す。
posted by 管理人 at 18:54| Comment(1) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログを拝見しました。実に筋が通っていて見事です。いくつかPGの現場経験からいくつかフォローしたく思います。
CellもGPUも民生品を流用する点でコストパフォーマンスが良いという、経済的な側面から、有用なのは同意します。しかしながら、ソフト開発に際し、実際のコーディングの面からは、過去の資産や、ライブラリ(や経験)がどの程度活用できるのか、もしくはどの程度の改良を加えれば"使いもになるのか?”といった点が大きいのです。-だからこそx86が王者なんです。-
GPGPUも、最近はほぼC言語に近い開発言語の提供や、ようやっと倍精度もIEEEに準拠するようにしてきているのはその為です。Cellはその点からはお話になりません。SONYが出遅れたのもこうした開発環境やライブラリ整備が遅れた(難しすぎた?)点も大きいです。
ここで重要なのは、なぜライブラリの提供が遅れたか?です。Cellはカタログスペックこそ性能がありますが、メモリからデータを供給する箇所が致命的に細いのです。なのでライブラリ開発が難しい。Wiiは任天堂の社長がソフト開発の現場上がりの人であるため、この点を非常に重視しています。XboxもMicrosoftですから当然です。MSはVBが示すように非常にライブラリ開発に熱心な会社です。
スパコンの世界は、恐らくハードとともにソフトの開発が対になるものでしょう。それを活用する応用ソフト系の研究者の人は新規のアルゴリズムに専念すべきですが、ライブリ不足やハードのボトルネックがあるものでは実装に労力を割かれすぎてしまいます。なので、改良ベクトルコンピューティングともいえるGPGPUなどは、メモリバンド幅などの向上やスカラーCPUとの融合の方向から、今後とも研究開発はすすめるべきモノですけど、現時点ではライブラリ開発の研究やノウハウの蓄積としてならともかく、多種多様な汎用利用を目的とする超高速スパコンでは、PS3のようにソフト開発が追いつかないので、それこそ無用の長物になるとおもわれます。(NECとIntelの提携はむしろこのあたりの融合を狙ったものかもしれません。そういう意味では、スカラーとベクトルの融合を狙った大元のスパコンPJは、先を見据えていたかもしれません)
あと、宇宙線からのソフトエラーも超並列になればなるほど馬鹿に出来なくなります。その為、HPCも視野に入れたIntelの次期CPUのNehalem-EXではようやっとSRAMにECCがつきますが、まだ発売もしてもいません。この辺は高信頼性CPUのノウハウが多い、Powerや、SPARC64系が有利になります。
あとは、むしろノード間をつなぐネットワークについての考慮が必要で、たぶんスパコン開発はこっちも相当大変じゃないのかな?民生流用の10GイーサネットでのグリッドじゃCPUが空回りで極端に実行効率が落ちるだろうし。
Posted by しがない一プログラマー at 2009年12月01日 20:47
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