2009年11月24日

◆ スパコン開発の是非

 スパコン開発は、是か非か? 「是である」という見解が世間には多い。だが、よく調べると、単純に結論を出せるわけでもない。じっくり考察してみよう。 ──

 スパコン開発は、民主党の事業仕分けで凍結と判定されたあとで、世論の反発を受けて、見直しされることになった。……ここまではご存じの通り。ただし、詳しく見ると、もうちょっと細かな事情がある。

 ──

 まず、政府の計画は、1230億円の支出である。これは膨大な額だ。だから、それについてじっくり吟味するのは当然だ。
 ここで、財務省あたりが「ばっさり切ってしまえ」という腹案(アンチョコ)を、民主党の新人議員に示したらしい。それに乗って、新人議員は、調子に乗りまくったようだ。

 ただし、ネットで調べると、「スパコンなんか無駄だ」という先鋭な意見もあるようだ。特に、池田信夫がそうだという。
  → Wikipedia「スーパーコンピュータ
 
 そこで、池田信夫のサイトに行ってみた。( → 池田信夫 blog
 引用しよう。
 こうした情報から考えると、この「京速計算機」というのは、悪評高い「日の丸検索エンジン」を上回る、まさに戦艦大和級のプロジェクトのようだ。
 要するに、これはスパコンの名を借りた公共事業であり、世界市場で敗退したITゼネコンが税金を食い物にして生き延びるためのプロジェクトなのだ。米政府がスパコンを国家プロジェクトでつくるのは、軍事用だから当然である(Blue Gene/Lの目的は核実験のシミュレーション)。調査会も指摘するように、京速計算機で目的としてあげられているような一般的な科学技術計算に国費を投じる意味はない。むしろ東工大のTSUBAME(わずか20億円で、性能は地球シミュレータを上回った)のように、各研究機関がその目的にあわせて中規模の並列計算機を借りればよいのである。
 最大の問題は、税金の無駄づかいよりも、ただでさえ経営の悪化している日本のITゼネコンが、こういう時代錯誤の大艦巨砲プロジェクトに莫大な人的・物的資源を投じることによって、世界の市場から決定的に取り残されることだ。1980年代のPC革命の中で、通産省が「第5世代コンピュータ」などの大規模プロジェクトに巨費を投じた結果、日本のIT産業を壊滅させた失敗を、今度は文科省が繰り返そうというのだろうか。
 しかし、このような見解に従えば、今回、世論で指摘されたような結果になりかねない。
  ・ 日本はスパコンを自力開発できない。
  ・ 中国にさえも遅れる。
  ・ 米国や中国の後追いとなり、自国の情報が米国や中国に漏れる。
  ・ 常に最先端の研究から遅れてしまう。


 では、話をどう整理すればいいのか? 

 ──

 そもそも、池田信夫は、コンピュータの専門家ではない。ブログ記事の冒頭で述べているように、彼の反対論は、池田信夫の個人的な信念ではない。自分の記事のコメント欄に寄せられた多くの意見を鵜呑みにして、それをまとめて自分の意見(のフリ)としただけだ。

 そこで、ITについて池田信夫よりも詳しい私の立場から、池田信夫の見解の難点を示してみよう。
 まず、「戦艦大和のような時代遅れの大艦巨砲主義」とか、「IT公共事業」とか、そういう批判ならば、私も前に語ったことはある。それは、「(現在のシリコン型の)太陽電池を補助金で大量生産する」という、太陽光発電の推進事業への批判だ。
 だから、池田信夫がどうせそういう批判をするのであれば、太陽電池への莫大な補助金を批判すればよかった。それならば、私も賛成しただろう。
( ※ 現実には、彼はそういう批判をしていない。太陽電池を補助金への批判として、彼のブログにあるのは、読者のコメント欄にある批判だけだ。読者の方が賢明だ、ということ。)

 一方、池田信夫は、「第五世代コンピュータ」を批判してきた。実は、第五世代コンピュータについては、私もかなり批判的だった。「考えるコンピュータができる」なんていうのは、嘘八百だ、と最初から批判してきた。
 ただし、その批判は、「大ボラだ」という批判であり、「研究をやめてしまえ」という批判ではない。「第五世代コンピュータ」というのは、しょせんは人間の研究に金をかけることだから、いくら金をかけても、大したことはないのだ。ただの研究費。それによって日本のIT関係の技術が進んだのだから、それで特に問題はないはずだ。(私は人工知能学会の会員だったから、その研究会にも出ていた。皆さん、結構頑張っていましたね。池田信夫が第五世代コンピュータや人工知能の論文の一つでも読んだとは思えないが。)

 要するに、「戦艦大和のような時代遅れの大艦巨砲主義」とか、「IT公共事業」とか、そういう批判は、スパコン開発に当てはめるには、あまり適切な表現ではない。というのは、ここには、きちんとした「研究開発」があるからだ。
 それは、何の研究開発もしないそこらの土建企業が、下請けを使って事業をするために、穴を掘って埋める、というのとは、全然違う。下らない公共事業とは全然違う。なのに、IT公共事業と呼ぶなんて、不適切も甚だしい。池田信夫は、スパコンのことなんか、何もわかっていないのである。また、研究開発とは何かも、全然わかっていないのである。

  ────────────

 では、スパコン開発の事情は、どうなっているか? このあとは、技術的なことを述べよう。(理系の人向け。)

 まず、スカラー型とベクトル型、という区別があるが、これは考慮しなくていい。今回のスパコンは、当初はスカラー型とベクトル型の混合の予定だったが、その後、スカラー型に変更された。従って、この点は論点とならない。
( ※ NEC が脱落したことの結果かも。)

 次に、今回、富士通が開発するものは、SPARC64 VIIIfx というプロセッサを使うもので、独自のプロセッサを利用するするものだ。これは、市販のインテルや AMD の汎用 CPU を大量に使うグリッドコンピューティング(大規模並列型コンピュータシステム)ふうのタイプに対比されるものだ。
 この点が、かなり問題となっている。独自のプロセッサを使うものは、グリッドコンピューティングふうのタイプに比べると、著しくコストパフォーマンスが悪いからだ。商売としてみれば、全然成立しないだろう。そして、その点が、池田信夫の論拠ともなっている。

 しかし、である。コストパフォーマンスのよいグリッドコンピューティングタイプのものは、スパコンのなかでも、低級品ばかりだ。一方、高性能の高級品は、独自のプロセッサを使う IBM が圧倒している。
  → 100位中 71台が IBM
  → IBM の超高速スパコン
 そして、これへの対抗馬をめざすのが、今回の富士通のスパコンだ。
 一方、低級品への対抗馬は、NEC がインテルと組んで、グリッドコンピューティングタイプのものを開発している。NEC は、スパコン開発から完全に脱落したわけではない。グリッドコンピューティングタイプの低級品は、ちゃんと開発しているのだ。そして、それは、コストパフォーマンスがいいので、きちんとシェアを得ることができるはずだ。

 ──

 以上をまとめると、次のように言える。
  ・ 高級品 …… 独自 CPU で高性能。
  ・ 低級品 …… 汎用 CPU で低性能。(グリッドコンピューティングタイプ)


 このうち、商売になるのは、コストパフォーマンスのいい低級品だけだ。ただし、低級品だけを開発していては、世界の研究開発から取り残されてしまう。軍事用だけでなく、さまざまな技術開発でも後れを取ってしまう。
 このように、両者を区別することが必要だ。その上で、次の判断が必要となる。
  ・ 高級品 …… 開発費が膨大で、国費投入が必要。
  ・ 低級品 …… 開発費が少なくて、民間で自力開発可能。


 米国だって高級品には国費が投入されている。ここで日本が「国費投入は馬鹿らしい」と思えば、日本は高級品の開発レースから取り残されて、中国にも負けてしまう。
 一方、池田信夫のような見解だと、「低級品ならばコストパフォーマンスがいいので、低級品だけを自助努力で開発せよ」という発想になる。ここでは、高級品と低級品の区別ができていないわけだ。

 ──

 池田信夫は、どうしてこういうふうに勘違いをしているのか? それは、次のことによる。
 「研究開発と産業とを区別できない」


 彼の発想は徹頭徹尾、「市場原理主義」である。「市場原理で産業は最適化する」という発想だ。
  → 池田信夫の反論(スパコン投資は儲からない、という趣旨)
 しかしながら、研究開発というものは、(特に学術分野では)「市場原理主義」ではカタが付かない。「金にならない研究はやめてしまえ」という発想をすると、あらゆる学術研究は消滅してしまうだろう。また、科学技術も同様だ。
 池田信夫の発想からすれば、ケネディのアポロ計画を初め、宇宙開発や人工衛星など、いずれも「金にならないからやめてしまえ」となるだろう。しかしながら、昔の人々が、金にならない研究をたくさんやってくれたから、今になって、われわれは、人工衛星を使った多様な恩恵を受けている。GPS のみならず、衛星放送もそうだ。また、気象衛星もある。…… 昔の人が「金にならない研究なんかやめてしまえ」と思わなかったからこそ、人類は進歩することができて、われわれはその恩恵を受けている。

 要するに、長期的な成果を狙う研究開発と、目先の金を追う産業とは、まったく別のものなのだ。なのに、産業の効率化を狙う「市場原理」を建前にして、研究開発の予算を削ってしまえば、人類は停滞することになる。
 池田信夫の発想は、古典派経済学だ。その原理は「エゴイズムで社会は最適化する」という発想だ。しかしながら、人類は、もっと賢明だった。目先のエゴイズムで、自分の富を増やそうとするかわりに、人類全体の富を増やそうとして、将来の人々のために研究開発を続けてきた。たとえ自分自身はその恩恵を受けられないとしても。……そして、そういう賢明な人々の歴史的な蓄積があったから、今日の発達した科学技術の恩恵を、われわれは受けることができる。
 「世の中すべて、金儲け」
 という発想を捨てた方がいいだろう。池田信夫のような拝金主義者は。



 [ 付記1 ]
 「グリッドコンピューティングタイプと、独自プロセッサの、どちらがいいか?」
 という質問があるなら、私としては、「グリッドコンピューティングタイプの方がいい」と答える。こちらの方が筋がいい。コスト的に優れているだけでなく、別の意味もある。
 そもそも、スパコンの用途のほとんどは、シミュレーションだ。そして、シミュレーションというのは、ほとんどが並列計算なのだ。(たとえば、格子点の数を何億個にも増やす、という場合では、計算単位が何億かになる。これは並列処理に適している。)
 ただし、そちらの方が筋がいいことはわかっているから、莫大な数の企業がすでに参入している。いちいち国が補助金を出すほどではない。だから、この分野についてならば、池田信夫の言うように、「スパコンには補助金なし」という発想でもいいだろう。
 ただし、研究開発というものは、安全パイばかりを狙っていては、画期的な研究成果をあげることはできない。その意味で、リスクをともなう研究開発に、国家資金を投じるのは、十分に合理性があるのだ。もともと金儲けのためじゃないんだから。

 [ 付記2 ]
 「今回の富士通のスパコンは、失敗する可能性がある。そうすれば千億円以上が無駄になりかねない」
 という評価もある。これは正しい。ただし、あらゆる研究というのは、そういうものだ。研究というのはもともと、失敗する可能性があるものだ。それが当然なのだ。そして、それだからこそ、国が補助する必要がある。
 一方、「成功するのが確実」なのであれば、国が補助金を出す必要はない。勝手に企業が自分でやればいい。そして、その例が、NEC のスパコンだ。

 なお、千億円が無駄になるとしても、それは仕方ないと思う。逆に、長期的には、数千億円もの成功につながる可能性もあるからだ。だいたい、「成功する保証がないからやめてしまえ」なんて言い出したら、トヨタや日産やホンダだって、今ごろは存在していなかったはずだ。そんな発想では、日本はいまだに途上国だっただろう。アフリカの各国みたいに。あるいは、アジアの途上国のように、アジアの先進国の属国みたいな扱いになっていただろう。

 ちなみに、どうせ無駄なら、もっとひどい無駄はいっぱいある。
 (1) 高速道路無料化
 (2) 太陽光発電の補助金
 (3) 三菱 MRJ への補助金 ( → 該当項目

 以上については、私はこれまで何度も言及してきた。どうせ「無駄遣いの廃止」を唱えるなら、上記の三つを唱えるべきだ。特に、(2)(3) は、産業政策として、最低だ。
 一方、池田信夫みたいに、「研究開発をつぶしてしまえ」ということを述べて、その論拠に「市場原理主義」を持ち出すのは、お門違いも甚だしい。

 なお、もう一つ、ものすごい無駄がある。
 「アフガンへの補助金 5000億円」
 自衛隊の給油(8年230億円)を廃止する代償として、民生支援で5年5000億円を浪費する。こっちの事業仕分けは、どうなっているんですかね? (詳しい数字はこちら。 → 出典
 また、高速道路の無料化に至っては、1年 5000億円らしい。

 こういう馬鹿げた浪費をどんどんやっていながら、スパコン開発という研究開発費を凍結したがるとは、まさしく、「学術音痴」としか言いようがない。
 
 池田信夫は「金とエゴイズムで最適化」と主張して、スパコン開発凍結を主張した。鳩山は「友愛政治」を主張して、スパコン開発凍結を一時的に誘導した。ま、「エゴイズム」を尊重する人も、「友愛」を尊重する人も、何もわかっていない、ということなのだろう。
 学問の大切さを理解しない俗人は、エゴイズムと友愛しか見えなくなるのである。(前者は真実よりも金。後者は真実よりも友愛。いずれも真実なんかほったらかし。)
 
 [ 付記3 ]
 池田信夫は、野依教授の反論を「筋違いだ」と批判している。 ( → 該当ページ
 ということは、科学者の声明も批判しているのだろう。( → 該当記事参考記事
 しかし、先端にいる科学者の判断を「筋違い」と批判するとしたら、池田信夫は、科学についてどれほどよく理解しているのか? どれほど科学について学び、どれほど業績を上げたのか? 実は、ほぼ皆無である。(ただの文系の人だ。東大経済学部卒で、もとはNHKの職員。NHKでやっていた仕事は、時代遅れのアナログハイビジョンのプロジェクトメンバー。→ Wikipedia
 科学を知らない人間が、科学を勝手に評価する。その傲慢さがどこから来るのか、まったく不思議だ。
( ※ 科学を知らない文系の人でも、科学のすばらしさを紹介するのはいい。しかし、科学をろくに知りもしないくせに、知ったかぶりをして、「こんな科学なんか不要だ」と唱えるのは、理解しがたい。しかも、その論拠が、「この科学は経済的合理性がない」というに至っては、噴飯ものだ。そんな論拠では、あらゆる科学が否定されてしまうだろう。)
( ※ これはまあ、トンデモマニアと同じですね。人の言うことを聞かず、自分の誤読による勘違いだけを「正しい」と主張する。こうして、ノーベル賞学者の科学観を、「間違いだ」と批判する。「自分が正しいから、おまえは間違いだ」という理屈。…… 池田信夫には、イグ・ノーベル賞を進呈したい。)
 
 なお、池田信夫は上記ページで、「スパコンは道具にすぎない」と述べている。これは正しい。ただし、「道具は買えばいい」というのは間違いだ。ノーベル賞級の研究成果は、たいてい、道具を自作することでなされる。中村修二の青色 LED であれ、何であれ、たいていがそうだ。一方、市販の道具を使う研究者はたくさんいるが、市販品を使う限りは独創的な研究はできないものだ。道具が市販品なら、研究成果も市販品レベルになる。
 独創的な研究者は、そういうことを知っているから、道具を自作する。「道具は市販品を買えばいい」という発想は、池田信夫が研究者としては二流の発想しかできない、ということを意味する。研究の現場のことを何も知らないくせに、「市販品で安上がりに済ませろ」というのは、おこがましいにもほどがある。研究のことを知らなければ、口を閉じていればいいのであって、研究の邪魔をするのはやめてもらいたいものだ。彼の主張に従えば、日本では独創的な研究は何もできなくなる。
( ※ ついでだが、中村修二も、同じくひどい目にあった。研究のことを何も知らない二代目の馬鹿社長が、「研究費を減らせ」とさんざん口を挟んで、中村修二の研究を邪魔したそうだ。池田信夫にそっくり。帳簿のコスト減らしのことばかり考えている。)



 ※ 以下は細かい話なので、特に読まなくてもよい。

 【 追記 】
 スパコンには、「効率」という概念がある。公称値(単純な計算量)が高くても、実際に発揮される性能が低いと、効率は低くなる。
 次項でも説明しているが、次のページを参照。
  → 中国のスパコンの効率の低さ
 中国のスパコンは、世界5位になっているが、効率が 50%を割っている。これでは「看板倒れ」だろう。
 その逆が、日本の「地球シミュレータ」だ。公称値では、TOP500のリストで 30位にも入っていないが、実効値は非常に高くて、現在でも世界トップレベルだ。
  → http://slashdot.jp/article.pl?sid=09/11/19/0347207
 また、富士通のスパコンの CPU でも、この効率を高める工夫がいっぱいしてある。( → 下記の 【 関連サイト 】)

 このように効率を高めるという点から言うと、独自 CPU を使うことはかなり有利だろう。単に公称値が高い、ということだけでは、性能を正しく評価できないのだ。
 
 効率の点では、Xeon や Opteron が不利で、IBM の Power や Cell が有利だ。
 PowerPC や Cell は、ゲーム機にも使われているが、これは、ゲーム機用の CPU をスパコンに使っているというよりは、スパコン用の CPU をゲーム機に使っていると考えた方がいい。 Cell はソニーや東芝が IBM と共同開発したという形を取っているが、IBM が作る CPU にソニーや東芝は部下として利用されているだけだろう。ついでに、大量生産の販路にもなっている。
 富士通の SPARC64 VIIIfx も似たようなもので、将来的にはサーバー用に外販されることが推定される。もともとは SPARC シリーズは富士通でなく Sun のサーバー用の CPU であったからだ。

 以上のことからわかるだろうが、本項における「独自 CPU 」というのは、「スパコン専用」という意味ではない。「スパコンにおける性能向上を最大目的とするが、ゲーム機やサーバー向けに外販されることもある」という意味だ。
 わかりやすく言うと、「 Xeon や Opteron ではない」というぐらいの意味だ。( Xeon や Opteron は、効率が低いので、駄目。公称値ばかりが上がり、本当の性能は高くならない。)(ただし、インテルが NEC と共同開発するスパコン用の Xeon では、効率も重視されることになりそうだ。このようなタイプは、独自 CPU に分類してもよさそうだ。)

 プレステ3の Cell は、本当は、ゲーム機向けの CPU としては、性能が過剰すぎた。そのせいで、価格がべらぼうに高くなり、高くて売れそうにないので、原価割れの販売となり、ソニーの業績は大幅に低迷した。つまり、「ゲーム機の不振のせいで巨額の赤字」というふうにもなってしまった。このようなことは、本来ならば、あってはならないはずだ。しかしながら、CPU の開発が IBM 主導でなされたために、「スパコン向けの CPU 」という性格が優先されて、やたらと過剰性能で高価格のものになってしまった。……価格がこなれるまでには、ずいぶん、時間を食ってしまった。その間に、Wii に市場を奪われてしまった。
 やっぱり、ソニーは IBM に利用されたようだ。自力で CPU を開発できない企業の運命、ということか。IBM の言いなりにしかならなかったわけ。哀れ。倒産しないだけマシだったかも。(しかし赤字になったあと、社長は外人になってしまった。  (^^); )

 まとめて言うと……
 IBM の Cell みたいな超並列タイプの CPU とか、富士通の SPARC64 VIIIfx みたいなスパコン用とか、地球シミュレータみたいなスパコン専用 CPU とか、そういうふうに「スパコン向け」というのを主目的とした CPU を使う高性能スパコンには、ちゃんと意義がある。
 もちろん、それ以外に、コストを重視してサーバー市場を奪うことを目的とした Xeon や Opteron を援用する、という方法もある。しかしそれでは、トップの座を得ることはできまい。その道は、コスト的にはかなり有利だが、性能的にはトップを得ることはできそうにない。
 アメリカ空軍は、軍用のスーパーコンピュータの研究開発のためにプレイステーション3 を 2200台発注するという。( → Wikipedia ) こういうふうに、Cell を使った(正真正銘の)グリッドコンピューティングの方がマシだ。 Xeon や Opteron を援用するよりは。どうせなら、日本でも、同じような研究をしてもらいたいものだ。

 ともあれ、私のお勧めの方針は、「二本立て」である。富士通のタイプと、汎用品をたくさん使うタイプ。どちらもやってほしいものだ。
 ただ、「プレイステーション3 を 2200台」というのは、私にはとても魅力的に見える。この方式は、前からずっと言われていた方式であり、目新しいことは何もないが、この道は日本では選択肢に入っていないのだろうか? これも考慮に入れてほしいですね。その場合、「三本立て」の研究となるが。



 【 関連サイト 】
  → 富士通のスパコン開発(紹介)
 単純な計算作業だけであれば、グリッドコンピューティングで代替えすることも可能だが、ある計算結果を集計し、その結果を反映させた再計算を行なうといった作業はグリッドコンピューティングで実行するのは難しい。スパコンがなければ計算できない領域はまだまだ大きい。



 【 関連項目 】
 本項には、続編がある。
 「スパコン開発をするか?」という問題に対して、専門家筋の興味深い評価があった。4つ後の項目で、それを紹介している。ぜひ読んでほしい。
  → 各種スパコンの評価
posted by 管理人 at 21:13| Comment(21) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は土木技術者の一人です。本題と直接関係がないかもしれませんが、
>何の研究開発もしない土木産業が、下請けを使って事業をするために、穴を掘って埋める
尊敬する南堂先生が建設技術に関しこのような偏見をお持ちのことに衝撃を覚えました。巷間差別意識を持って呼ばれる我々「土建屋」が開発する建設技術も、市民生活に密着した立派な科学技術であり、新技術開発も当然進められております。複雑な橋梁のような構造物はもとより、道端にあるブロックや側溝の蓋ですら、理系技術者の数学や力学の知識がなければ生まれません。

http://www.netis.mlit.go.jp/EvalNetis/EV_View_Search2.asp?TabType=6
政府系のサイトではありますが、土木屋の研究開発が紹介されています。決して何の努力もせず、生きているわけでないことも多少はご理解下さい。
Posted by space_lenseman at 2009年11月25日 04:07
土木技術者は何も悪くないですよ。一般に、技術者は、何ら経営判断をしないから、経営については何ら責任がない。悪いのは、賄賂を贈って無駄な事業を受注する経営者です。
 ただし、

> 何の研究開発もしない土木産業

というのは、産業自体を否定しているようで不適切なので、個別性を示すために、「土建企業」に書き改めました。表現がまずかったですね。
 なお、「土木産業は何の研究開発もしない」と主張しているわけではありません。
Posted by 管理人 at 2009年11月25日 07:37
最後に [ 付記3 ] を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2009年11月25日 07:38
ニュースの引用。
 ──
 政府の行政刷新会議の事業仕分けで科学技術関連予算の廃止や削減が相次いだことを受けて、日本の歴代のノーベル賞受賞者らが25日夜、記者会見し、「科学技術で世界をリードする新政権の方針とどういう整合性があるのか、まったく理解できない」などと述べ、事業仕分けのやり方を批判しました。
 記者会見したのは、ノーベル賞の受賞者の江崎玲於奈さん、利根川進さん、野依良治さん、小林誠さんと、数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞の受賞者の森重文さんのあわせて5人です。
 http://www.nhk.or.jp/news/k10014007231000.html
Posted by 管理人 at 2009年11月25日 20:40
なお、同じく科学研究費の投入でも、次のものには賛成できない。
 「リニアコライダーの誘致」
 これは日本の負担が 3000億円とも 5000億円とも言われている。総額はもっと上。
 これを日本に誘致しよう、という気運が、昨年盛り上がった。その理由は? 巨額の公共事業費を受注しよう、というもの。(そのために政府の莫大な金を奪い取ろう、というわけ。)

 こういうのこそ、「科学に名を借りた公共事業」というにふさわしい。池田信夫がこれを批判するのであれば、私は賛成したい。(というか、私が先に批判しているか。  (^^); )
 池田信夫は、リニアコライダーの誘致を批判しないで、スパコンの開発を批判している。矛の向け先を間違えている。
Posted by 管理人 at 2009年11月25日 21:23
こんにちは。

私は10年ちょっと前までスパコン含めた汎用機系の
エンジニアだったのですが(現在はネット系)

>>以上をまとめると、次のように言える。
>>  ・ 高級品 …… 独自 CPU で高性能。
>>  ・ 低級品 …… 汎用 CPU で低性能。(グリッドコンピューティング)

ということですが
現在1位のCRAYのJaguarはAMD Opteron 6core
ですから汎用CPUです。

2位はIBMのRoadrunner プレステ3にも使われているcell
とOpteron DCのハイブリッド、

3位もCRAYでOpteron

4位のIBM BlueJeanはPowerPCの組込用(これもゲーム機で
使われてますね)のFPU追加バージョン

5位の中国のはIntel Xeon

10位まで見て行くと独自のスパコン専用CPU搭載のようなものは
べスト10にはいません。

それからIBM機の設置台数が多いのは対応できる
体制というかリソースがあるからと思われます。

ハードウェアを売っておしまいのものではありませんから。

スパコン開発はやめろということではなく組込用の民生CPU
(ルネサスSHとか)をベースで開発した方がメーカー側も
元を取りやすいだろうと思ってます。

戦艦大和じゃなく飛行機と空母を作れってことですね。
Posted by さ) at 2009年11月26日 20:34
その点、突っ込まれそうな気がしていたんですよね。冷や汗。  (^^);

 明らかに記述不足なので、本項の最後に 【 追記 】 を加筆して、説明しておきました。

 要点は、二つ。
 独自 CPU というのは、スパコン専用という意味ではなくて、スパコン以外にも外販される。ただし最大目的はスパコン。

 ランキングは、本当の性能を意味しない。Xeon や Opteron を使うものは、効率が低い。だから、数値が高くても、上級ユーザーにはあまり売れない。上級ユーザーは名目数値なんかにだまされないから。
Posted by 管理人 at 2009年11月26日 22:08
もうひとつ危惧するのはパソコン用のCPUだとムーアの法則で
18ヶ月で2倍に処理能力が上がるといわれてますが
少なくとも同じペースで能力が上がっていかないと一時的に
トップになってもなということです。

この事業は各方面の思惑がうずまいていて箱モノ建設、
地域振興もセットです。

敷地内には関電の専用発電所が出来たりと簡単に
中止出来ないんですね。

純粋に処理能力世界一を目指すだけでなくよくいえばシナジー、
悪くいえばしがらみがつきまくってるのが現状なのかと。
Posted by さ) at 2009年11月26日 23:53
ムーアの法則って、近年は成立せず、伸びが鈍化気味なんですよね。マルチコアでゴマ化しているだけで、クロック数は頭打ち気味。
 その一方で、マシンとしてのスパコンは、急激に能力が向上している。単に CPU を組み合わせるだけじゃ駄目だ、ということでしょう。
Posted by 管理人 at 2009年11月27日 00:06
ムーアの法則は本来はチップの集積度の伸びで
たしかにマルチコア化でごまかしている現状だと
集積度自体は2年で2倍もいかないかもしれない。

AMD Opteronのデュアルコアリリースが2005年の春。
2011年には16コアも出て来るらしいのでコア数は
2年で2倍、1コアあたりの能力も向上してるはずだから
サチッて来ているわけでもないしコストパフォーマンスの
伸びを考えるとこんなのとまともに勝負してもなと
いうこともあります。

何しろ最初から次世代スパコンと開発費が桁違いなので。

次世代スパコン事業擁護派は単に買えばいいと
考えていると売ってくれない事態になると困るといいますが
Opteron6Coreは秋葉でも売ってるし16Coreになっても
それは同じでしょう。

どこでも買えるものを使って自分たちで作るのが現実的な
最適解のような気がします。

国防上アメちゃんのCPU依存はやばいというなら
AMDでも買収して押さえちゃってルネサスあたりで
ハイエンドの方を普段から作らせてもらうとか。

結局 核実験のシミュレーションとか用途が最初からある国と
『科学技術用』ということではっきりしないのでは
最適化もしにくいだろうし予算的にもつっこまれると苦しいかなと。
Posted by さ) at 2009年11月27日 12:13
> どこでも買えるものを使って自分たちで作るのが現実的な 最適解のような気がします。

 それはわかっているんですよ。だから私も NEC の方針を最も有望というふうに支持しているでしょう? 
 それをやめるわけじゃありません。それはそれでやる。一方、それとは別に、富士通タイプもやるか、ということ。というか、すでに巨額の資金を投入してきたものを、あっさり捨ててしまうのではもったいない、ということ。
 
 AMD の買収ができれば最善だとは思いますが、無理でしょう。売り手が売ってくれるはずがない。アメリカのGMがホンダを買収して子会社にしたいと思っても、無理なのと同じ。どこの国であれ、売国の方針を取る人はいません。やろうとしても、政府が邪魔するに決まっている。

 せっかく構築してきたトップクラスの技術を、数百億円の開発費用を節約するために、あっさり全部捨ててしまうのがいい、と思うのは、日本だけでしょう。
 しかも、その理屈が、「プラチナよりも金や銀の方がコストパフォーマンスがいい」という理由だとはね。コストパフォーマンスのいいものばかりを望んでいては、一流にはなれません。一流は必ず「両取り」です。
Posted by 管理人 at 2009年11月27日 12:57
>一方、高性能の高級品は、独自のプロセッサを使う IBM が圧倒している。
>100位中 71台が IBM

これは10年近く前のデータです。
しかも、ご自身で「本当の性能を意味しない」と断言したランキングのデータです。
最新のデータでは、IBMはスパコン製造でもプロセッサ製造でも100位中33台で、
Intel EM64T+AMD x86_64が100位中61台です。
よって、現在における高性能の高級品は、Intel+AMDが圧倒している…が正解です。

http://taste.sakura.ne.jp/index.cgi/%A5%B7%A5%E5%A5%EC%A1%BC%A5%C7%A5%A3%A5%F3%A5%AC%A1%BC%A4%CE%C7%AD%A1%CA%C3%A6%C0%FE%CF%C3%A1%CB
Posted by r at 2010年01月07日 23:29
今はちょうどIBMの開発が停滞している時期だから。IBMの次期スパコンの記事を読みましたか? 圧倒的な性能を狙っていますよ。
 自動車でもそうですけど、モデルチェンジの合間の時期では、他のものに負けることはあります。
 この程度のことで鬼の首を取ったかのように大騒ぎしないでください。部分的な粗探しをしても無意味。

 ついでに言えば、リンク先は、誤読と曲解のかたまり。たとえば「独自プロセッサ」というのは、「インテル製でもAMD製でもない」もしくは「秋葉原では売っていない」という程度の意味で使っているのは明らかなのに、「全部独自開発したプロセッサ」のことだと勝手に勘違いした上で、「全部独自開発ではないぞ」と批判している。勝手に妄想を築いて、その妄想を批判している。ドンキホーテそのもの。相手にするのも馬鹿らしい。
 時間の無駄。
Posted by 管理人 at 2010年01月07日 23:53
上のリンク先の人は、本サイトの趣旨を根本的に誤解しているようなので、基本を示しておく。
 本サイトの趣旨は、次のことではない。
  ・ 現時点では独自プロセッサの方が優秀だ。将来もそうだ。
  ・ 独自プロセッサの方が汎用プロセッサを使うよりも優秀だ。
  ・ だから独自プロセッサを開発するために 1200億円をかける価値がある。

 以上のようなことは述べていない。本サイトの各項を読めばわかるように、次のことを示している。
  ・ 過去において独自プロセッサの方が優秀だったことがある。
   将来においてもそうなる可能性はある。
  ・ 独自プロセッサよりも汎用プロセッサの方が筋がいい。
   コストパフォーマンス的に、汎用プロセッサの方が好ましい。
  ・ だから独自プロセッサを開発するために 1200億円をかける価値はない。
   実際、富士通もNECも日立も、独力では開発できなかった。

 以上のことをわきまえた上で、次のことを述べている。
  ・ 汎用プロセッサの方がいいが、それとは別に、独自プロセッサ方式も
   副次的にあっても構わない。両にらみでOK。
  ・ 過去においては汎用プロセッサ方式を採らなかったのだから、今さら
   「過去において汎用プロセッサ方式にするべきだった」と言っても、
   手遅れである。過去には戻れない。
  ・ すでに独自プロセッサの技術開発は済んでいる。あとは生産するだけ。
   ここでわずかな金を惜しんですべてを捨てるのは馬鹿げている。
  ・ 独自プロセッサの開発は、商業的には成立しないが、国策としては
   十分に価値がある。日本が高度な CPU生産の技術を持てるからだ。
   それが可能なのは、米国以外には、日本しかない。商業的には
   採算に乗らなくても、国策としては技術を保有する価値はある。

 要するに、商業的には「 1200億円をかける価値はない」のだし、富士通やNEC が独自で 1200億円をかけるということは、ありえない。ただし、国策としては、高度な CPU生産の技術を持つことには、意味がある。それにはとうてい 1200億円の価値はないが、技術開発というのはそういうものなのだ。ロケット技術だって、かけた金の分だけの価値はないが、商業的には採算に乗らなくても、国家的にロケット技術を持つことはとても大切だ。スパコンも同様。スパコン開発に 1200億円の価値はないが、しかし、商業的には採算に乗らないからこそ、国家が補助金を出す必要がある。
 そして、それがわかっているから、米国だって数百億円もの補助金を出しているのだ。米国が莫大な補助金を出しているのは、出した金の分の価値があるからではない。出した金の価値がないから(商業ベースには乗らないから)こそ、かえって補助金を出すのだ。
 池田信夫は、技術開発を、「かけた金の価値があるか」という商業ベースで捉えている。上記サイトもまた同様。もしそれが正しければ、あらゆる科学技術の予算は消滅してしまう。牧野氏の GRAPE だって同様だ。かけた金の価値があるとは思えない。しかし、かけた金の価値がないからこそ、民間企業でなく国が補助金を出す必要があるし、その方針で開発がなされている。
 
 本サイトの趣旨は、「市場原理では片付かないような科学技術の開発にも金を出すべし」ということだ。それに対して、池田信夫などのように、「商業ベースには乗らないのはやめてしまえ」というような発想は、発想の仕方がまったく異なっているのである。
 
 以上が、本サイトの趣旨だ。これをわきまえないで、枝葉末節の粗探しをしても、見当違いの批判になるしかない。本サイトの趣旨を根本的に読み違えていることになる。
Posted by 管理人 at 2010年01月09日 11:40
スパコン施設の建設現場の写真
http://highsociety.at.webry.info/200912/article_21.html
http://www.nsc.riken.jp/site/panoramaC.html
http://www.nsc.riken.jp/site/panorama2.html
http://www.nsc.riken.jp/site/naibushashin.html

見ればわかるように、完成に近づいている。
ここで今さら予算を全額削っても、ビルが消えて金が戻るわけではない。造りかけのもの(ビルの残骸みたいなもの。建設ゴミ)が残るだけだ。

200億円余りをかけて世界最先端のスパコンを取るか。
それとも、その金を惜しんで、1000億円の建設ゴミを残すか。
その二者択一だ。

ところが、阿呆な人は、「200億円余りの金を出すのをやめれば、これまでの 1000億円がすべて戻ってくる」と考えている。おめでたすぎ。
Posted by 管理人 at 2010年01月09日 13:40
上記サイトの人は、根本的な勘違いをしているので、指摘しておく。
 上記サイトは「独自プロセッサよりも汎用プロセッサの方がいい」と主張している。しかし、これは成立しない。
 第1に、池田信夫の説は、「独自プロセッサよりも汎用プロセッサの方がいい」ということではなくて、「スパコン開発を一切やめよ。スパコンは米国製を購入せよ。(それが最もコストパフォーマンスが高い)」ということだ。それはそれで首尾一貫している。しかし、これは上記サイトとは異なる見解だ。
 第2に、上記サイトのように、「独自プロセッサよりも汎用プロセッサの方がいい」と主張するなら、数年前の時点で主張するべきだった。今さらそれを主張しても、手遅れだ。すでに独自プロセッサ方式が完成寸前だからだ。今になってできるのは、「完成寸前の独自プロセッサ方式をすべて廃棄するか、完成させるか」の二者択一でしかない。「昔の時点に戻って、汎用プロセッサ方式にする」という選択肢は、存在しない。過去に戻ることはできないからだ。

 そもそも、今の時点になって、「汎用プロセッサ方式がいい」とか、「ベクトル方式でなくスカラー方式がいい」とか言い出しても、それは後出しジャンケンだ。昔の時点では、どちらがいいかは決着していなかったのだから、今になって昔の方針を批判しても仕方ない。
 「後出しジャンケンで過去を批判するな」
 というのが、上記サイトへの講評となる。
Posted by 管理人 at 2010年01月10日 13:59
数字についての修正と追加。

(1)修正
これまでに支出した分は 545億円で、今後の支出分は700億円だとのこと。
(2)追加情報
スパコンの経済効果は3.4兆円もある、とのこと。

いずれも出典は下記。(1)は5頁、(2)は7頁。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov13-am-shiryo/07.pdf

なお、支出停止を決めても、支出を免れるわけではない。来年度や再来年度の分は、すでに契約済みのものもあるから、契約破棄をすれば、ほぼ同額の違約金を払うハメになる。契約済みの分を考えれば、最初に述べたとおり、1000億円に近い金額が契約済みと見なしていいかもしれない。

 なお、仮に今後の分が 700億円だとして、700億円の支出をやめても、それで問題が解決するわけではない。700億円を使って、今から二年後に汎用プロセッサで京速スパコンが出来上がるわけではない。
 また、700億円を使って米国のスパコンを購入することは(金銭的には)可能だが、「購入するか自主開発するか」は、科学技術の方針だから、経済的な損得とは別次元の問題だ。
(実は、「購入する」という方針が必ずしも成立しないことはすでに述べたとおり。米国が売ってくれる保証はない。F22 と同様の問題が起こる。)
Posted by 管理人 at 2010年01月10日 21:17
勘違いをしてコメントを寄せる人がいるが、次の点を混同しないでほしい。
(1) スパコンで開発しているのは、Xeon のような汎用プロセッサではない。この分野に補助金を出すのであれば、私だって反対する。今回のプロセッサは、もともと商業ベースに乗らないスパコン分野に限ってのことだ。(もともと米国だって補助金で成立しているような小さな市場であるにすぎない。というか、そもそも、商業的な民生向けの市場ではない。)
(2) 日本のスパコンが米国に勝てる、とは述べていない。せいぜい世界2位として食い下がっているだけだ。それでも、落後するよりはマシだ、という話。
(3) 日本の開発費は 1000億円程度ではない。富士通の負担分も合わせれば、はるかに巨額になる。富士通の売上高はインテルとほぼ同程度だから、CPUなどの開発力が大きく劣るわけでもない。また、NECはインテルとの共同開発をするから、だいたい同レベルだと認められていることになる。あっさりと「開発なんかやめてしまえ」ということにはなるまい。
 ──
 いずれにせよ、この問題は、すでに決着が付いている。今さら予算に反対しても仕方ない。
 また、言うなら政府や理研に言うべし。私に言うのはお門違い。ネチネチと粘着して私に突っかかるのはやめてもらいたいものだ。
Posted by 管理人 at 2010年01月11日 00:05
Posted by 管理人 at 2010年01月11日 07:11
日本のスパコンと IBM のスパコン(どちらも開発中)を対比する記事がある。興味深い。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/01/03/supercomputer2010/index.html

※ Firefox ではなかなか表示されない。Google Chrome や MS-IE ならば大丈夫。
Posted by 管理人 at 2010年01月12日 21:20
いまだに勘違いし続けて私に文句を言ってくる人がいるが、いい加減、勘違いをやめてほしいものだ。
 国産パソコンは、世界1位ではなく2位であるし、商業ベースにも乗らない。私はもともとそう主張している。なのに、「世界1位じゃないぞ」「商業ベースでIBMに負けるぞ」「だから駄目だ、すべてつぶしてしまえ」と文句を言ってくる。
 自分では利口でいるつもりなのかもしれないが、そのひどい読解力を直してほしいものだ。日本語もまともに読めない(正反対に読み取る)ようでは、いくら理系の能力が立派でも何にもならない。

 ついでに言えば、当の本人すら、世界1位の人間ではないし、世界2位の人間でもないのだから、彼の理屈に従えば、彼自身に存在価値はない。2ch 型の人は本当に困る。
 
 なお、次のように述べる人もいる。
 「白紙の状態から、これまでとは全く異なるアーキテクチャで科学や技術の計算に特化した汎用のハードを、2つ以上のセンターで競争させながら開発やスパコン利用を行うべきだ。」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20091225/342666/?ST=system&P=2
 これは「国産パソコンを1種類でなく2種類作れ」という方針だ。しかし、どこでどう間違ったのか、これを「国産パソコンを一切やめてしまえ」というふうに誤読する人もいる。
 上記の提案は、2種類というだけでなく、「ゼロから開発」という途方もなく壮大な方針だ。たぶん1兆円ぐらいはかかる野望であろう。なるほど、それだけの金をかければ、確かに立派なものはできそうだ。しかし、そんな野望は、実現性が低い。千億円の金も出したがらない人が多いのに、1兆円の金を出せという提案は馬鹿げている。
(私が思うに、この人は、1兆円の金がかかるということがわからないのだろう。だから勝手に夢想している。話を読んでも、スパコンの技術開発のことを何も知らない、ペーパーレベルのソフト屋だということがわかる。)
Posted by 管理人 at 2010年01月13日 00:22
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