2009年10月10日

◆《 余談 》 火と人類

 「言葉と人類」の話にからめて、「火と人類」という話をする。
 人類の進化の歴史において、火は重要だったか? 火そのものよりも、火を扱う能力が大切だった。つまり、脳の能力が。 ──

 すでに「言葉と人類」や「道具と人間」や「直立二足歩行と人類」という話をした。そして、「言葉も直立歩行も道具も、いずれも人類の特徴とは言えない」と結論した。
 ついでに、本項では、「火」を扱う。火についてもやはり、「火は人類の特徴とは言えない」と結論できる。
 
 火については、先に下記で述べた。
  → ネアンデルタール人の滅亡

 再掲すれば、次の通り。
 火の使用は意外にもかなり早く、ホモ・エレクトス(原人)の段階である。50万年以上前に、北京原人などが火の使用をしていた、ということを示す遺跡が複数ある。しかも、自然発火の火でなく、人工的に継続的に火を使用していたらしい。
 → Gigazine
 ここで述べたように、ホモ・エレクトスは「火の使用」が可能だった。そして、ホモ・エレクトス(原人)は、人類の仲間のうちの最初のものである。(それ以前の猿人は、人類ではなく、類人猿の一種だ、というのが私の見解だ。)

 では、人類であるホモ・エレクトスが「火の使用」が可能だったことから、「火の使用は人類の特徴である」と言えるか?
 いや、言えない。なぜなら、初めのころのホモ・エレクトスは、火の使用をしなかったが、それでもやはり人類であるからだ。(火の使用をしたとたんに人類になったわけではない。)(ついでに言えば、現生人類だって、コンピュータを使い出したとたんに、急に新種の人間になったわけではない。)

 ──

 人類であるか否かは、火の使用があったかどうかによるではなく、火の使用が可能となる能力があったかどうかによる。
 それはつまり、「脳の発達」が十分にあったかどうかだ。

 要するに、人類の特徴は、「発達した脳」なのである。いろいろと考えることのできる能力だ。そして、「発達した脳」は、どんな環境であれ、その環境で生き延びるのに圧倒的な有利さをもたらす。その一例が、道具の使用や、火の使用であったのだ。
 ここでは、次の因果関係があった。
   発達した脳 ⇒ 道具の使用や、火の使用、言葉の使用




 このような因果関係を正しく理解しよう。 
 現代の進化論学者は、「直立二足歩行」や「道具の使用」や「言葉の使用」を、進化の理由と見なす。つまり、そのような行動が「淘汰圧」となって「脳の発達」を促した、と見なす。
 しかし、私はそうは考えない。特定の行動が「淘汰圧」になるとは思えない。どのような環境であれ、「発達した脳」は常に有利な形質なのである。なぜなら、どのような環境であれ、その環境に応じて可塑的に行動を変える能力こそが、脳の能力であるからだ。

 「首が長い」「ヒレがある」というような形質は、特定の環境に最適化されているが、「脳が発達している」という形質は、どのような環境であっても有利である。
 換言すれば、「脳が発達していることが有利である環境」とは、すべての環境である。裏側から言えば、「脳が発達していないことが有利である環境」は、ありえない。
 だから、何らかの特定の行動が脳の発達をもたらした、ということはありえない。それを言うなら、道具を使うカラスが人間のように利口になってもいいはずだが、そんなことはありえない。
 
 ──

 発達した脳は、あらゆる生物で有利である。では、あらゆる生物で脳の発達が起こるか? 実は、そういう淘汰圧は働いているだろうが、現実には脳の発達はなかなか起こらない。なぜなら、脳の発達は、生物学的に非常に難しいからだ。
 過去の人類だってそうだった。言語の使用が有利であるとわかっていても、言語の使用をするだけの脳の発達はとても難しかった。その難しさが、「進化には長大な時間がかかる」という歴史的事実をもたらした。それは人類にとっては数百万年もの時間だった。
 
 さらにまた、初期の人類が誕生するまでには、何十億年もの時間がかかった。地球に最初の生物は 40億年前に誕生したが、そのあと初期の人類が誕生するまで 40億年という時間がかかった。そこからクロマニョン人が誕生するまでには、さらに数百万年の時間がかかった。
 とにかく、それだけの時間の蓄積が必要だったのであり、それだけの時間をかけた進化の蓄積が必要だったのである。

 その蓄積は、どんな蓄積だったか? それは時間をかけて少しずつ段階を踏む過程だった。それは決して、単なる突然変異だけで起こるのではない。
 たとえば、原初の細菌の遺伝子がものすごく突然変異をしたことで、人間の遺伝子になったのではない。進化は、突然変異と分岐によって起こるのではない。進化は、時間をかけた段階的な蓄積によって起こるのだ。そのために 40億年がかかった。

 現代の人間は、言葉を使い、知能が発達している。しかしそれは決して、「環境への適応」という形で起こったのではない。環境は昔からほとんど変わっていない。進化というものは、環境に適応するために起こるのではない。(環境への不適合は滅亡をもたらすが、環境に適合するために進化がどんどん起こるわけではない。)
 進化とは、「過去になし遂げた進化の蓄積に、もう一つ蓄積を重ねる」という形で起こる。つまり、下等なものから高等なものへと、順序を踏んで段階を上っていくことによって起こる。それは莫大な時間をかけた蓄積だ。

 ──

 進化とは何かを理解しよう。40億年かかった進化を、突然変異と環境適応という形で理解するべきではない。そんな生易しいことでは進化は起こらない。むしろ、40億年をかけた莫大な蓄積によって、ようやくなし遂げられたことなのだ、と理解するべきだ。

( ※ もしそれを理解できないのであれば、酵母菌を大量に培養して、酵母菌が魚かクジラに突然変異るのを、気長に待てばいいだろう。突然変異と環境適応という形で進化が起こるのであれば、あるとき突然、酵母菌が魚かクジラに変化することもありそうだ。ほんの少しの確率で。)
( ※ もちろん、それは馬鹿げた話だ。だが、現代進化論は、そういう馬鹿げたことを信じている。「環境への適応としての進化」というもので。……だからこそ進化の理由として、「草原への進出」「直立二足歩行」「道具の使用」などを理由として掲げるのだ。……実は、それが理由なら、リスやカラスだって脳が急激に発達していいはずなのだが。)
  


 【 関連項目 】

  → 進化の本質
    ※ 40億年をかけた多大な蓄積

  → ネアンデルタール人の滅亡
    ※ 火の使用が起こった時期(原人)
posted by 管理人 at 19:53| Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「人類はなぜアフリカで誕生したか?」
   http://openblog.meblog.biz/article/26409163.html
 という項目のコメント欄に、次の文章を書き足しました。(転載)

  ──

 原人の骨はアジアではほとんど見つかっていないので、原人にとってアジアは生存環境が厳しかったと思えます。やはり、冬の寒さがこたえる。特に、衣服がない裸の状態では、風邪を引いて感染死する確率が高い。

 アフリカでさえ、夜間に寝るときは、火をたかないと寒い。
  → https://youtu.be/8Ywl3QNyAFM?t=18m30s

 火をまともに使えない原人が、温帯の冬で生き残ることは、きわめて困難でしょう。数が圧倒的に少ないので、進化もまた起こらない。

 なお、ホモ・エレクトスの化石は、アフリカでも少ないが、ホモ・ハイデルベルゲンシスになると、温帯を含めてかなり多くの化石が見つかっている。
  → http://anthro.zool.kyoto-u.ac.jp/evo_anth/evo_anth/symp0011/narasaki.html
 とすれば、ホモ・エレクトスのあと、ホモ・ハイデルベルゲンシスになった時点で、火を自由に使う能力を獲得したとも推定できる。
Posted by 管理人 at 2015年10月15日 20:08
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