2009年10月08日

◆ 道具と人間

 人間の特徴は何か? 「道具の使用だ」という説もある。しかし、猿だって道具を使う。 ──

 人間の特徴は何か? 「直立二足歩行」という説については、先に否定した。
  → 直立二足歩行は人類の特徴でない
 ( ※ 類人猿も、直立二足歩行をする。その例が、ラミダス猿人。)

 一方、「道具の使用」という説もある。しかし、これについては、かねて否定的な研究がなされている。動物だって道具を使うのだ。その典型が、最近のチンパンジーの研究だ。
 《 チンパンジーは要求あれば、見返りなしに手助け 》
 実験では、2つのブースにチンパンジーを1匹ずつ入れ、片方は、道具を使えばジュースを取れる状態、もう一方には、ステッキだけを渡した。 すると、ステッキがあればジュースが飲めると思ったチンパンジーが、「お願いだから貸して」と手を伸ばし、隣のチンパンジーは、「仕方ないなあ」と言わんばかりにステッキを手渡した。
 6つのペアで実験を繰り返したところ、ステッキを渡したケースのうち75%は、相手の要求に応じたもので、自発的に道具を渡すのは、ごくまれだったという。
 東京大学総合文化研究科の山本真也博士は「(チンパンジーは)自発的に助けるわけではなく、相手の要求に応じて助けるという行動が見られたということです。チンパンジーの手助け行動のメカニズムとしては、相手とのコミュニケーション、直接のコミュニケーションが非常に重要になってくるというふうに考えています」と語った。
( → FNNニュース [動画あり]
 ついでだが、ここでは、道具を使うだけでなく、身ぶりによるコミュニケーションもしていることになる。つまり、意思伝達もしている。これはかなり高度な行動である。チンパンジーは「道具の使用」よりも、もっと高度なことをしているのだ。

 ──

 上記の実験は一例だが、これ以外にも、道具の使用は、いろいろと見られる。
  • ハチミツなめ道具使用( → 出典
  • 道具を使って狩りを行うチンパンジー( → 出典ナショナルジオグラフィックの記事
  • 類人猿達が餌の確保の為や、移動の際に危険を確認する為に水の深さを測ったり する際に「道具」を実際に使っている( → 出典
  • 東アフリカや中央アフリカでは、チンパンジーが日常的な採食活動としてアリやシロアリの釣りをすることが知られている。ゴンベ(タンザニア)、ベリンガ (ガボン)のチンパンジーはシロアリの塚の穴に、蔓やイネ科草本の茎、細かく割かれた樹皮などを差し込み、咬みついた兵隊シロアリを釣りあげる。( → 出典
 これらはチンパンジーの例だが、他の動物にも、道具の使用の例はある。
  ・ ラッコは腹の上に石を置いて、貝を割る。
  ・ フサオマキザルは石を使い、ヤシの実を割る ( → 出典
  ・ エジプトハゲワシは石を使って、ダチョウの卵を割る ( → 出典

 ここでは、明らかに道具を使っている。石器だ。
 
 ──

 人類の歴史をたどってみると、石器の使用は意外にも早く、ホモ・ハビリスの段階で石器の使用が見られるという。
  → 検索

 ホモ・ハビリスは、原人と見なされることもあるが、しかし、手が長くて、頭が猿っぽくて、かなり類人猿的な形質を残す。類人猿と人間との境界上にいる種だ。そのホモ・ハビリスがすでに石器を使っていた。

 実を言うと、チンパンジーも石器を使う例があるらしい。
  → チンパンジーが作った石器・コートジボワールで発見

 要するに、石器という道具の使用ぐらいは、チンパンジーでもできる。だから、「道具の使用」をもって、人類の特徴と見なすことはできない。
 これが結論だ。

  ────────────

 《 注記 》

 これらの「道具の使用」にあたって、そこに意図的な知性はあるのか? ミツバチの8の字ダンスみたいに、ただの本能的な動作ではないのか? ……そういう疑問を抱く人もいるだろう。しかし、次の例を見れば、意図的な知性は明白に見出される。
 「カラスは自動車に、クルミの殻を割らせる」 ( → 出典1出典2
 この行動では、明らかに「狙っている」という意図が見出される。臨機応変で行動が変更されるからだ。また、「フェイント」という偽装行動まで見られるらしい。
 カラスに知性があるのは疑いようがない。まして、哺乳類では。



 [ 付記1 ]
 じゃ、何が人類の特徴か? 直立二足歩行でもなく、道具の使用でもないとしたら、何が人類の特徴か?
 その前に、そもそも、何が人類を進化させたのか? これまでの説は、こうだった。
 「直立二足歩行をしたことで、道具の使用が可能となり、脳が発達した」

 しかし、このような発想は、ラマルク主義である。何らかの行動を取ったから進化が起こった、なんていうのは、あまりにも非科学的な発想だ。

 現代進化論は、次の原理を取る。
 「進化を起こすのは、小進化の蓄積である。小進化は、環境によって起こる。何らかの環境の変化が、小進化をもたらす。環境の変化とは、新しい環境への進出だ。それは、たとえば、草原への進出だ。また、直立二足歩行や、道具の使用のような、自分自身の行動の変化も広い意味で環境の変化と見なされる」


 馬鹿馬鹿しい。直立二足歩行や、道具の使用なら、類人猿が行なう。しかし、類人猿がいくらそういうことをしても、類人猿は類人猿のままなのである。チンパンジーがどれほど道具の使用を繰り返しても、チンパンジーはいつまでたってもチンパンジーのままだ。なぜなら、チンパンジーが小進化によって脳を発達させることができる限界は、種としてもともと決まっているからだ。(せいぜい5%程度。)
 道具の使用を繰り返せばチンパンジーの脳が発達する、というのは、ラマルク主義である。そういう発想は成立しない。
 しかしながら、現代進化論は、ラマルク主義に染まっている。だからこそ、「小進化の蓄積で大進化が起こる」という非生物学的な発想をするのだ。

 [ 付記2 ]
 では、正しくは? 因果関係を逆にすればいい。つまり、こうだ。
 「脳の発達があったから、道具の使用もできたし、言葉も使えるようになった。脳の発達が最初だ。つまり、人類の特徴は、脳の発達だ」

 これが結論だ。そして、この結論を導くには、次のことが原理となる。
 「進化を起こすのは、大進化である。それは、(クラス交差やネオテニーなどの)生物学的な原理によって、偶発的に生じる」

 この原理によって、すべては解決がつく。詳しくは、下記。
      → クラス進化論

 とにかく、環境が進化を起こすのではない。環境は、進化が起こったあとで、(不利なものを滅ぼす)自然淘汰をもたらすだけだ。(有利なものを誕生させる)進化そのものをもたらすのは、生物学的な原理であって、環境ではないのだ。環境は、既存の種を滅ぼすことはできるが、新たな種を誕生させることはできない。
( ※ 魚が陸に上がっても両生類にならないし、恐竜が空にむかってジャンプしても鳥にはならないし、猿が草原に出ても人間にはならない。)
 
 また、小規模の突然変異は、確率的に少しずつ生じるが、そんなものがいくら積み重なっても、種を変えるほどの大規模な突然変異にはならない。
( ※ 何千もの遺伝子がいっせいに変化する、という突然変異は、確率的にはありえない。なのに、何千もの遺伝子がいっせいに変化する、という現象はある。とすれば、そこには、突然変異以外の原理が働いているのだ。その原理を見抜く必要がある。……詳しくは、クラス進化論の第2部。)
posted by 管理人 at 17:08| Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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