2009年09月14日

◆ フェアトレードは逆効果(中進国で)

 フェアトレードは逆効果である。特に、中進国と取引するフェアトレードは、そうだ。フェアトレードをやればやるほど、かえって後進国の状況を悪化させる。狙いとは逆に。 ──

 前項(フェアトレードは無効)でも述べたが、通常のフェアトレードは、(生産者組合のある)中進国の商品を扱う。たとえば、無印良品のフェアトレード商品は、グアテマラ,インドネシア,インド,メキシコなどの商品だ。また、無印良品以外の商品では、ボリビアという例もあるが、ここも中進国だ。(ボリビアの国民所得は 4330ドル。)
 通常のフェアトレードは、これらの中進国から農産物を輸入する。そのことで、中進国の農民に多額の金を与える。(市場価格を大幅に上回る価格を与える。)
 しかし、このようなことをしても、中進国の農民が儲かるだけであって、後進国であるアフリカの農民が儲かるわけではない。その意味で、フェアトレードは無効である。(ここまでは前項で述べたとおり。)

 さて。本項では、もっと強く言える。このように中進国の農民に多額の金を与えることは、後進国の農民をかえって苦しめることになる。フェアトレードをやればやるほど、アフリカの子供たちはかえって苦しむ。そのわけを示す。

 ──

 そもそも、中進国を相手にするフェアトレードというのは、不公正(アンフェア)なことである。なぜかと言えば、それは、市場原理を歪めるからだ。それは「政府の介入によって市場を歪める」というのに似ている。経済学的な悪がある。
 もう少し正確に言おう。ここでは、「市場原理が最善だ」と述べているのではない。「市場原理を歪めるのが悪だ」と述べている。

 実は、フェアトレードというのは、「補助金の投入」というのと同じである。「市場価格では食えないから、市場価格よりも高い金を与えてやる」というのが、フェアトレードの趣旨だ。しかしそれは、先進国における農業補助金と同じである。
 そして、農業補助金というのは、(必要悪であることもあるが)常に悪である。農業補助金は、福祉としては必要かもしれないが、経済学的には、「採算に乗らない事業を、政府の税金であえて継続させる」ということであるから、まったくの無駄なのだ。そのような産業は、なるべく廃止するのがベストである。(失業という福祉的な問題を別とすれば。)

 もっとわかりやすく言おう。日本において産業として成立しない農業がある。たとえば、麦とか、サトウキビとか、大豆とかだ。これらの農業生産は、外国産品にはまったく太刀打ちできない。そこで、政府の補助金によって、かろうじて生きながらえている。
 たとえば、輸入小麦に多額の課税をして、その課税で得た金を、国産小麦に補助金として回す。そのことで、まったく非効率な国産小麦の生産を継続する。(悪名高い食料安定供給特別会計。)

 フェアトレードも、これと同じだ。「産業としては成立しない非効率な農業生産を、かろうじて補助金によって成立させる」ということだからだ。

 ──

 このような補助金は、市場を歪める。こういうふうに市場を歪めるということは、次の3点で悪である。
  ・ 消費者から余分の金を奪う
  ・ あえて非効率な産業を存続させる
  ・ 外国の生産者が当然取るべき利益を奪う


 特に、三番目が問題だ。ここでは、補助金を得た人々がシェアを得るが、その分、外国の生産者が本来の利益を得られなくなる。
 そして、フェアトレードの場合には、損をするのは、フェアトレードの取引対象とならない後進国の人々だ。具体的には、アフリカのコーヒー豆農園であり、また、そこにいる子供たちなどだ。

 ──

 以上をまとめてわかりやすく言うと、次のようになる。
 フェアトレードをやると、中進国の農民は、先進国のフェアトレード団体からの金をもらう。それは、補助金である。その補助金で、中進国の農民は、市場価格を上回る過剰な金を不当に得る。
 その一方、アフリカのコーヒー豆農園は、豆が売れなくなるせいで、シェアを失い、市場価格が下がってしまう。そのせいで、もともと「価格の 0.9%」しか得られない金が、ますます減ってしまう。

 つまり、日本の人々が無印良品のフェアトレードでコーヒー豆を買えば買うほど、中進国の人々は不当に豊かになるが、その一方で、アフリカの子供たちはどんどん貧しくなる。彼らは、今のところは、食物ぐらいは得られているようだが、そのうち、食物もまともに得られなくなり、餓死してしまうかもしれない。そして、そうなったとしたら、日本などの先進国の人々が、アフリカのコーヒー豆を買わないからだ。人々がフェアトレードの商品を買えば買うほど、アフリカの子供たちはかえって苦しくなる。

 ──

 では、どうすればいいか? 簡単だ。フェアトレードをやめればいい。できれば先進国の人々は、安いコーヒーを買って、浮いた金をユニセフに回すといい。ただし、たとえユニセフに金を回さなくても、単にフェアトレードをやめるだけでも、アフリカの子供たちにとっては利益になる。フェアトレードのような悪は、やらないことが最大の援助なのだ。

 なお、次の問題が出るかもしれない。
 「フェアトレードをやめたら、ボリビアやメキシコなどのコーヒー豆の農業労働者はどうなる?」

 もちろん、フェアトレードをやめたら、それらの農業労働者はクビになる。そして、それこそが、望ましいことなのだ。
 どうも、NPO の人々は勘違いしているようだが、アフリカの子供たちを救うことと、ボリビアやメキシコの農業労働者を救うこととは、全然別のことである。ボリビアやメキシコは、もともとかなり豊かな国だ。かなり豊かな国の農業労働者を救っても、意味はない。それは、日本の農業労働者を救うために補助金を出すのと、同様である。馬鹿げている。そのような農業労働者は、補助金をもらって農業生産をすればいいのではなく、農業生産そのものをやめるのが正しい。
 たとえば、日本では、農業補助金をもらって小麦を生産するよりは、農業をさっさとやめる方が正しい。非効率な小麦生産をするために補助金を出すほど無駄なことはない。
 フェアトレードも同様だ。ボリビアやメキシコは、もともとかなり豊かな国だ。そんな国では、無駄な農業生産を続ける必要はない。特に、コーヒー豆の生産などをする必要はない。では、どうするべきか? もともとかなり豊かな国なのだから、都会に出て、都会の労働者として働けばいいのだ。
 そして、その点は、日本の農業労働者と同様である。日本の(非効率な)農業労働者は、補助金を百万円ぐらいもらって農業をするよりは、都会に出て働くべきなのだ。それが正しい経済政策だ。このことは、日本でも当てはまるし、メキシコやボリビアでも当てはまる。

 ──

 もっと経済学的に言おう。
 コーヒー豆の国際価格(市場価格)は、もともと非常に低い。
 たとえば、私の飲むインスタントコーヒーは、スーパーで売っている詰め替え品(袋入りのもの)だが、500円ぐらいだ。50杯飲めるとしたら、1杯 10円だ。安すぎる。
 つまり、コーヒー豆の相場はあまりにも低すぎる。としたら、ここでは、補助金を出して生産を続けるよりは、世界中で過剰生産するのをやめる方がいい。
 たとえば、メキシコやボリビアなどの中進国では、コーヒー豆の農業生産をやめる方がいい。そして、アフリカなどの途上国の一部だけでやればいい。そうすれば、生産量が減って、市場価格が上昇する。そうすれば、アフリカの子供たちも、いくらか報われるようになるだろう。

 現実にやっているのは、その反対だ。フェアトレードの団体は、フェアトレードを推進することで、補助金つきの農業生産をどんどん推進している。そのせいで、供給過剰となり、市場価格は低迷する。かくて、補助金をもらえないアフリカの農業生産者はますます苦しくなり、そこにいる子供たちもますます苦しくなる。
 フェアトレードを推進すればするほど、かえって逆効果になる。



 [ 付記1 ]
 ここでは、物事の本質を見ることが大切だ。本質とは、次のことだ。
 「フェアトレードとは、恵まれた中進国に対する農業補助金である」
 
 なお、一般的には、次の点が見失われている。このことにも気づくようにしよう。
 「フェアトレードをいくら推進しても、アフリカの子供たちは救われない」
 (……これは、前項で述べた通り。)

 [ 付記2 ]
 「じゃ、いったいどうすればいいのか?」
 という質問には、次のように答えよう。

 第1に、中進国の人々に対しは、「コーヒー豆なんか作らないで、都会で働け」と言うべきだ。その点は、先進国の農業従事者の場合と同様だ。自立できるような立派な農業生産者は別だが、自立できない劣悪な農業生産者は、補助金なんか当てにしないで、都会に行けばいいのだ。(中進国の国民所得は、何千ドルもあるのだから、それが可能だ。)

 第2に、後進国の人々のためには、先進国の人々が援助すればいい。確かに、市場価格というのは不当なことがあり、後進国の人々は不当に虐げられてしまう。しかし、それなら、後進国の人々に金を返せばいい。援助という形で。(ユニセフ経由で。…… NPO経由ではなく。)

 [ 付記3 ]
 とにかく、フェアトレードをやる先進国の人々は、自分が何をしているのか、きちんと理解するといい。「後進国の人々がかわいそうだから、中進国の人々に補助金を出す」というのでは、全然、理屈になっていないのだ。そして、そういう滅茶苦茶なことをやっているのが、フェアトレードの関係者だ。
 彼らは、「困っている相手のために何をするか」という発想がない。「自分たちが汚いことをしなければいい」と思っているだけだ。だから、自分の手を働かせて、せっせとフェアトレードの事業をやる。やればやるほど、真に困った人々はますます困ってしまうのだが、そういうことも気づかずに、逆効果のことを熱心にやる。有り難迷惑。
 頭の悪い人々というのは、こういうふうに本末転倒のことをしてしまうものだ。そして、自分で自分の間違いに気づかない。教えられても、理解できない。せめて「善意ゆえの悪」という概念を理解してくれるといいのだが。

 [ 付記4 ]
 フェアトレードの事業者の話をよく読むと、奇妙なことに気づくはずだ。それは、「コーヒー豆やカカオ豆のような、嗜好品ばかりを扱っている」ということだ。
 実を言えば、コーヒー豆やカカオ豆のような嗜好品は、あってもなくてもいい。価格が暴騰しても構わない。そんなものは、小麦やイモのように、カロリーを取るための必需品とは違うのだ。
 だから、農民たちは、そんなものを生産するのを、さっさとやめてしまっていい。やめたところで、誰も困らない。困るとしたら、先進国の人々だけだ。(コーヒーやチョコレートの価格が少し上がって、ちょっと困る、というだけのことだ。生命には関係ない。)
 途上国の人々は、本来は、コーヒー豆やカカオ豆などを生産する必要はない。彼ら自身は、そんなものを必要としない。ただ、彼らは、金が欲しい。そこで、換金作物となる、コーヒー豆やカカオ豆などを生産する。……ここでは、あくまで金儲けが目的であって、生きるために農産物を生産しているのではない。
 その意味で、メキシコやボリビアの生産者を「かわいそう」と思う必要はさらさらない。彼らは「生きることを妨げられている」のではなく、「強欲な金儲けを妨げられている」だけだ。ほったらかしたところで、ちっとも構わないのだ。
 一方、アフリカの子供たちは違う。彼らは、奴隷状態となっている。彼らは、自分たちのために働いているのではなく、農園主の金儲けのために不当に奴隷状態にされている。
 とすれば、これらアフリカの子供たちを救おうとするのは、妥当なことである。しかし、そのために、中進国の強欲な農民たちの金儲けを助ける、というのでは、あまりにも本末転倒なのだ。
posted by 管理人 at 23:20 | Comment(4) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
生産品をコーヒー豆やチョコばかりに向けられているのには確かに反対だ。しかし、それが過剰になったからと言ってアフリカの子どもがしんどくなるかどうかは疑問だ。農園で働く子どもたちは、自分から働いているのではなく親に売られて農園で働かされている子が多いからだ。農園がぶっつぶれてくれたほうが、子ども達も売られることなく、他の産業ができるという可能性もある。また、新たな産業を確立し輸出できるようになるかは政府の力が必要不可欠だ。輸出促進、制限は政府が行っているからだ。アフリカの政治は腐敗しているところが多く、そのような機能が果たせる状況であるとはいえない。そのような一概の解決はできないと思う。
また、ユニセフのスタッフの給料の方が高いしプロジェクトのいいところばかりを報告する、同情に訴える広告をするという所はNGO、NPOと変わらないんじゃないですか?でもだから悪いと言うんじゃなくて、給料は働いてるんだからもらうべきものだし、広告も利用できるならすべきだ。全部が必要で、フェアトレードもユニセフも進化していかなきゃいけないと思う。
Posted by もり at 2011年02月26日 16:57
フェアトレードの経費、商品価格の内分は何を参照に書かれたのでしょうか?
Posted by ぺこ at 2011年08月15日 23:08
> フェアトレードの経費、商品価格の内分

 細かい内分は必要ありません。市場価格が適性価格であり、それを上回る分が不適正な上乗せ分です。その内分は、「コスト(経費)」と「利益」の総和です。コストが多いか、利益が多いかは、それぞれの団体ごとに異なります。大事なのは、次の値。

  販売価格 − 市場価格 = (不当な)上乗せ価格

 不当な分の差額は、本来は誰も負担しないはずです。(そんなものは誰も買わないので。)
 しかし、「これはフェアなんですよ」と嘘をつくと、だまされた人が買います。

 結果的には、悪徳業者と、ボリビアなどの中進国の豊かな農家が儲かります。
 そのせいで、アフリカのコーヒー豆は売れなくなり、アフリカ産のコーヒー豆の価格はどんどん下落します。結果的に、貧しいアフリカの子供たちは、フェアトレード制度のせいで、いっそう貧困化します。その一方で、フェアトレード業者は、濡れ手で粟で、馬鹿高い商品を売る利益を得ます。
 もしフェアトレード制度がなければ、どうなるか? 安価なアフリカ産のコーヒー豆を買う人が増えるので、アフリカ全体の手取り収入が増え、アフリカが発展します。そのせいで、貧しい子供たちも、少しずつ豊かになります。ただし、フェアトレード業者という詐欺師たちは、もはや詐欺を実行できないので、ボロ儲けができなくなります。
Posted by 管理人 at 2011年08月15日 23:19
> ユニセフのスタッフの給料の方が高いしプロジェクトのいいところばかりを報告する、同情に訴える広告をするという所はNGO、NPOと変わらないんじゃないですか?

 ユニセフの経費は 20%程度なので、これは合理的です。その程度の経費は認めるべきです。ボランティアじゃないんだから。

 一方、フェアトレードの経費は、90%ぐらいです。90%ならばいい方で、95%ぐらいが普通です。客が 2000円を払っても、5%の 100円ぐらいしか、途上国には行きません。ほとんど詐欺です。

 この両者を同じようなものだとして同列視するのは、大いに問題がありますね。もしかしてあなたも詐欺師の一味ですか?
Posted by 管理人 at 2012年03月28日 13:13
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