豚インフルエンザの流行が拡大しつつある。死者がチラホラと出ているし、感染者数も推定で6万人とのことだ。
新型インフルエンザの患者数の全数報告は累計で5000人を超えた7月24日以降、取りやめていたが、感染研は新型を含めたインフルエンザの患者数を従来の方法で推計。第32週(8月3〜9日)は全国で新たに約6万人が感染したと算出した。これを見て、政府(厚労省)は「しっかり対策すべし」という方針を打ち出した。
( → 日経 2009-08-19 )
舛添厚生労働相は19日、感染の拡大が続き、死者が相次ぐ新型インフルエンザについて、緊急の記者会見を開き、「本格的な流行が既に始まったと考えていい」と語り、秋以降に懸念される大流行に備えた感染予防の徹底を呼びかけた。記事の写真では、舛添厚労省が何やらガイダンスをしているが、ここでは、次の図を使っている。
( → 読売新聞 2009-08-19 )

( → 出典:厚労省「新型インフルへの基本的対処」 )
この説明は、妥当なように思えるが、実は、逆効果だ。
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この図で述べられている考え方は、それ自体は悪くない。ただし、そこには、次の前提がある。
「この感染は、冬季に流行する季節性インフルエンザである」
つまり、「秋に始まり春に終わる」という季節性インフルエンザの場合であれば、上記の発想は成立する。
しかしながら、今回の豚インフルエンザの場合は、夏季のうちに流行し始めたので、この発想は成立しない。理由は下記。
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夏季に流行し始めた豚インフルエンザの場合には、むしろ、次のことが成立するはずだ。
「冬になってから初めて感染するよりは、夏のうちに感染しておいた方がいい。その方が、冬になって重症化する危険性を免れる」
つまり、ここでは、感染者の数よりも、感染者の被害の方が重要なのだ。
厚労省の発想では、感染対策をすることで、感染の拡大を防ぎ、感染のピークを下げて、感染者総数を下げることができる。なるほど、そこまではいい。つまり、数の上では、厚労省の発想は成立する。
しかしながら、そこでは、重要なことが見失われている。数でなく、質だ。
「夏季に感染しないで、冬にいきなり感染すると、感染したときの被害が重症化しやすい」
今ならば、高温多湿の時期だ。だから、感染しても、重症化する度合いが低い。なぜか? ウイルスの大敵は、高温多湿だからだ。実際、マスクをして、喉を高温多湿に保つことで、ウイルスの感染する度合いを大幅に下げることができる。ここでは、免疫も大きく影響する。
高温多湿 + 免疫力 = ウイルス撲滅
というような図式が成立する。夏季には。
以上からわかるだろう。豚インフルエンザは、どうせ国民の全員がいつかは罹患するのだから、どうせ罹患するのであれば、夏のうちに感染しておいた方がいいのだ。そうすれば、冬になって初めて罹患して重症化する、という危険を避けることができる。
特に、今は夏休みの児童も多いから、彼らは今のうちに感染しておくのが一番被害が少なくて済む。一方、冬になって、入試や期末試験の最中に高熱を出したりするのは、最悪だろう。下手をすれば、人生を棒に振る。
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結論。
豚インフルエンザについては、感染者を少なくすることが大事なのではなく、被害を少なくすることが大事なのだ。あれこれと努力して感染者数を減らそうとするよりは、「どうせ全員がいつかは感染するのだ」という方針のもとで、被害を減らすように努力した方がいい。
そして、そのためには、「夏のうちに感染した方がマシだ」という指針を示すといい。といっても、「あえて感染すべし」という方針を取るわけにも行かないだろうから、政府としては「何もしないのがベスト」という方針を示すだけでいい。つまり、騒がなければいい。逆に言えば、騒げば騒ぐほど、被害は増える。
5月ごろでも、8月現在でも、政府は「感染者数を減らそう」という努力ばかりをする。困ったことだ。大事なのは、感染者を減らすことではなく、被害を減らすことなのだが。そして、被害を減らすためには、感染者を減らすのとは別のことが必要なのだ。
政府は「重症化しやすい健康虚弱者は注意」という方針を示している。これはこれでいい。私もかねてその方針を示してきた。ただし、健康な一般人は、やたらと騒がない方がいいのだ。
特に、騒ぎすぎによって、普通の健康な人々がむやみにタミフルの使いすぎをするのは、最悪だ。
舛添が大騒ぎしているのは、「次期党首」になるための、宣伝行為だろう。舛添が騒げば騒ぐほど、国民受けは良くなる。国民は彼の政治活動に利用されているだけだ。
【 関連項目 】
→ 豚インフルエンザを促進せよ(!?)
※ どうせ流行するなら、季節性インフルエンザより、豚インフルエンザの
方がいい。そのわけは、大量のタミフルがあり、タミフルが有効だから。
( 一方、本項は、「冬にかかるよりは夏にかかった方がいい」という趣旨だった。前述の通り。)
「収束(終息?)」の発表は混乱を収束させるためで、本気ではないと勘繰っていたのですが、その様なお考えではなかったようで・・・・
「見えないリスク、新しいウイルスへの警戒を解いてはいけない」って、再度混乱しなさいって事でしょうかね?
多くの方がこのサイトに訪れて冷静に正しい対処をしてくれることを願うばかりです。
通常のインフルエンザ並みの新型インフルエンザだから、重症化しないだけではないでしょうか。
表面抗原の型が変われば、既に一度感染した人も再感染するので、夏に感染したほうが良いとも言い切れないと思います。
誤読です。ちゃんと読んでください。図式のところを。
ウイルスでなく免疫力です。ウイルスそのものは夏も冬も同じです。
> 表面抗原の型が変われば、既に一度感染した人も再感染するので、
感染しないと言っているのではなく、感染しても比較的軽く済む、と言っているのです。理由は免疫。
下記参照。スペイン風邪の例だが、一度感染した人は二度目が軽く済むという話。
http://openblog.meblog.biz/article/1718452.html
> 夏に感染したほうが良いとも言い切れないと思います。
言い切れないけれど、そうであろうと強く推定できます。逆に、
「冬に感染したほうが良い」
と言い切れることはないでしょう。それは滅茶苦茶。
仮にそれが成立するなら、今の患者たちを全員、冷気と乾燥の病室に突っ込めばいい。……それは滅茶苦茶でしょ?
で、あなたが主張しているのは、その滅茶苦茶を支持する説です。
※ 本サイトを初めて読んだのでは? 他の項目も読んでください。
耐性菌は怖いし不安ですけどね。
真に必要な人だけにきちんと治療する、というのが、通常は最も効率的です。