2009年08月09日

◆ 強毒性と致死率

 強毒性のパンデミックが将来的に危険視されている。ただし、「強毒性」とは、「強い毒性」のことではない。「強毒性」とは、「致死率が高い」ということだ。混同しないように。 ──

 強毒性のパンデミックというものが将来的に危険視されている。(鳥インフルエンザなど。)
 ただし、「強毒性」とは、文字通り、「強い毒性」のことだと思ってはならない。というのは、「強毒性」のインフルエンザには、毒性はないからだ。
 つまり、致死率は高いとしても、その理由は、毒性ではなく、別のことだ。では、それは? 

 具体的に言おう。スペイン風邪や鳥インフルエンザでは、死因は「過剰免疫」である。
  → スペイン風邪と過剰免疫サイトカイン・ストームと薬
 ここでは、インフルエンザのウイルスが毒素を出すのではない。インフルエンザにかかった人が、過剰免疫という形で、サイトカイン・ストームに襲われ、肺炎となる。それが死因だ。

 こういう話を聞くと、「どっちだって同じだろ。人が一定の割合で死ぬんだから」と思うかもしれない。しかし、違いに注意しよう。次の差がある。
  ・ 過剰免疫の場合は、その人の体質にしたがって生死が決まる。
  ・ 毒物の場合は、ほぼ確率的に生死が決まる。(個人的な体質は関係ない。)


 たとえば、スペイン風邪の場合なら、それにかかった人が確率的にどんどん死ぬわけではない。過剰免疫という形でサイトカイン・ストームに襲われた人だけが死ぬ。そういう体質の人だけが死ぬ。
 その比率は、人口の数%になるが、別に、多くの人がバッタバッタと死ぬわけじゃない。
 実際、スペイン風邪の場合、最初の年はかなり死亡率が高かったが、翌年以降は、死亡率は激減した。というのも、過剰免疫を起こすような人が死んでしまったあとは、(おおむね)病気に対する抵抗力のある人ばかりが残るようになったからだろう。
 これが毒物だったら、そういうことはないのだが、インフルエンザというのは、人間の側の免疫力の程度によって対処できる。……そして、その意味は、次のことだ。
 「強毒性のインフルエンザと言っても、人口の大部分の人にとっては、生死に影響しない」


 つまり、スペイン風邪がいくらひどいといっても、それで死ぬ人の割合はそう多くはない。人口の数パーセントが感染して死ぬことがあるとしても、たいていの人は感染しても発熱するだけで済む。
 だから、「スペイン風邪のようなパンデミックが到来したら、みんな次々と死ぬぞ」というようなことはない。たいていの人は、感染しても発熱するだけで済む。

 しかも、重要なことがある。現在では季節性インフルエンザと呼ばれるようになった「ソ連風邪」は、スペイン風邪の子孫だ(弱毒化したものだ)、ということだ。
 要するに、季節性インフルエンザに毎年かかっても死なずにいる人々は、ある種の免疫があるから、スペイン風邪のようなものが来ても、1世紀前のスペイン風邪の再来にはならない、ということだ。

 ま、スペイン風邪が再来したら、それはそれで、やはりかなり多くの死者は出るだろう。しかし、現在の医学水準からすれば、1世紀前のように多大な死者が出ることはありえない。だから、
 「鳥インフルエンザのような強毒性のパンデミックが発生したら、ものすごく大変だ」
 と思うほどのことはないのだ。(普通のインフルエンザよりはひどいとしても、人類全体が半減するようなことはない、ということ。ちまたで喧伝されているよりも、死者数ははるかに少ないはずだ。)

( ※ この件は、詳しい話が必要なので、翌日分以降で、改めて詳しく論じる。)



 [ 付記1 ]
 若い人は過剰免疫で死にやすい、という傾向がある。これは、逆に言うと、高齢者は過剰免疫で死ににくい、とも言える。
 一方、高齢者は、体力低下や免疫力低下で死ぬこともある。
 この両者は、死ぬにしても、理由は別だ。その意味でも、強毒性と致死率とは、区別した方がいい。

 [ 付記2 ]
 「強毒性」と「強い毒性」とは異なる。とすれば、「致死率が高い」というパンデミックの性質を表現するには、「強毒性」という言葉は不適切で、むしろ、「強い病原性」という方が適切だろう。
 ただし、もはや「強毒性」という言葉が普及してしまっているので、今さら変更しにくい。また、「強い病原性」という言葉は、ちょっと曖昧なところがあって、使いにくい。(感染力の強さと誤解されやすい。)
 そこで、これからも、「強毒性」という言葉を使うことにする。ただし、インフルエンザが「強毒性だ」というのは、「毒性が強い」ことではなくて、「致死率が高い」ことだ。「強毒性」という言葉の意味を誤解しないようにしてほしい。
 この点を、本項では説明した。



 [ 補足 ]
 本項の後半では、強毒性のインフルエンザについて、「過剰に危険視する必要はない」という趣旨で論じている。
 ただし注意。ここでは、「危険性がないから安心していい」という趣旨では論じていない。この点、混同しないように。(「真っ黒ではない」というのは、「真っ白だ」ということを意味しない。)

 実際、パンデミックか否かは別として、インフルエンザでは少数の死者は必ず発生する。特に、若者で。
  → 十代の健康な若者が肺を悪化させて死んだ例
 この例では、サイトカインストームで死んだと疑われる。豚インフルエンザであっても、重症化する人は少しはいるわけだ。(個体差みたいなものだが。)
 ここでは、強毒性のパンデミックでなければ安全だ、ということにはならない。
posted by 管理人 at 21:05| Comment(0) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
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