2009年07月11日

◆ 太陽光発電と電力安定

 太陽光発電は、電力が安定しない。天候により出力が大きく変動するからだ。
 そこで、これを解決するために、スマート・グリッドという案がある。送電網で電力の変動を吸収しよう、という案だ。……しかし、そんなうまい話は成立しない。 ──
  ( ※ 本項の実際の掲載日は、2009-08-05 です。)


 太陽光発電は、天候により出力が大きく変動するので、電力が安定しない。この件は、前にも述べた。
   → 太陽光発電のコスト計算
( ※ ここでは、バックアップのコストがかかる、というコスト面から述べた。)

 さて。オバマ大統領がスマートグリッドを支持したことで、スマートグリッドという概念が一躍世界でも脚光を浴びた。これは、次のことを意味する。
 「送電網をIT技術で最適化することで、送電のロスを回避したり、電力のや不安定さを回避したりする。電力を安定化する。また、省エネも狙う」

 ま、その意図はいい。効果も少しはあるだろう。しかし、それに過大に期待するのは、ほとんど夢想である。うまい話が成立すると思ったら、夢の見過ぎだ。

 ──

 朝日の社説を引用しよう。
 太陽光や風力による発電は日照や風の強さに左右され、電気の周波数が安定しない。また、家庭の太陽光発電で余った電気が送電網に逆流して電圧が上がる恐れもある。このため、電力業界は「安定供給が脅かされる」と、大量の自然エネルギーの受け入れには及び腰だった。
 自然エネルギーを拡大するには、補助金や買い取り制度といった促進政策だけでなく、送電網の進化が必要だ。でないと、太陽光発電を「2020年に20倍」「30年には40倍」にするという政府目標の達成も難しい。
 欧州では、各国の送電網が密接に連携し、周波数や電圧の変動を吸収しやすい構造になっている。電力会社ごとにほぼ独立している日本の送電網をもっと連携させるなどの思い切った仕組みを開発したい。
 代表例に、オバマ米大統領がグリーン・ニューディール政策の柱にすえたスマートグリッド(賢い送電網)がある。情報技術を活用して末端の電気機器までも効率的に制御し、電力消費を抑えることを狙っている。
 その時々の電気料金に応じて家電を自動的にオン・オフする、地域内で電気を融通し合って無駄なく使う、全体の需給状況に応じて電力会社が家庭やビルの空調の設定温度を遠隔操作で上げ下げする……。
 新型計器のスマートメーターを家庭やオフィスに置き、電気の使用状況などを電力会社とリアルタイムでやりとりし、こうした制御を実現する。
( → 朝日・社説 2009-08-03
 こういうふうに述べて、「スマートグリッドで万事解決」と夢見ているようだ。しかし、それは夢想にすぎない。だいたい、新しいアイデアを一つ出したら、あらゆる問題が一挙に解決するなんて、そんなうまい話はあるはずがない。(朝日はやたらとこういう夢物語を持ち出すが、ほとんど詐欺的だ。)
 
 (1) かなり実現済み

 まず、朝日の提案の多くは、日本ではかなり実現済みである。実際、「夜間や深夜電力は安く、日中は高く」という電力プランを選択できるし、タイマーを使って夜間に機械を使うことも可能だ。
 たとえば、生ゴミ処理機(昔は微生物処理が主流だったが今では電気処理が普通)は、いくらか電力を食うので、夜間利用をするようにタイマーで設定できる。
 ただし、タイマーで簡単に使えるものぐらいはいいが、それ以上の高度な操作は必要ない。たとば、「発電所が電力需要に応じて、各戸の電力機器を勝手に ON・OFFの制御をする」なんて、明らかにやり過ぎだ。また、そんな機器を開発するのにもコストがかかりすぎる。
 アメリカの場合には、電力会社がバラバラだから、スマートグリッドという概念にもいくらか有効性がある。しかし日本では、電力会社間でもすでに電力の融通が(少しは)なされているのだ。スマートグリッドという概念を、いちいちおおげさに考える必要はない。

 (2) 規模

 仮に朝日の主張することがすべて実現したとしよう。それでも、問題はまったく解決しないのだ。なぜか?
 太陽光発電が4割普及したとして、それが曇りまたは雨のせいで、ほとんどゼロぐらいの発電量になったら、国全体で発電量が4割ぐらい減少する。
 そうなったら、電力供給の総量が大幅に減少するのだから、「最適配分で」という発想では解決しないのだ。「融通すればいい」という問題ではないからだ。
 この件は、以下でさらに詳しく述べる。

 (3) 総量の問題

 基本的には、総量の問題がある。供給不足があるときには、供給そのものを増やす必要があり、配分の是正では解決しないのだ。
 誰かが豊かで、誰かが貧しいのなら、豊かな人が余ったものを貧しい人に渡すことで、配分は是正される。しかし、誰もが貧しいときには、配分の変更では片付かない。配分の是正で万事OK、と思うのは、朝日みたいなお馬鹿(古典派?)の発想だ。
 なるほど、電力会社間で、融通をもっと増やした方がいい、とは言える。しかし、根源的には発電総量を増やすことの方が優先する。たとえば、日本中でクーラーが大規模に稼働しているときには、融通で問題が解決するわけではなく、発電総量を増やす以外に解決策はない。(または企業の需要を止める、という方策もあるが、これは供給でなく需要の方策なので、別の話。)
 東京で電力不足になったとき、「大阪の電力を回してもらえば解決する」というような発想では、物事は解決しない。そんな発想をすると、「東京だけで停電」というのが、「日本中で停電」というふうになりかねない。
 とにかく、供給不足があるときには、供給の総量を増やす必要があり、配分の是正では解決しないのだ。

 (4) 地域と天候

 日本とアメリカの国情の差にも留意するべきだ。
 アメリカや欧州は、領域が広い。当然、天候もさまざまになる。アメリカ東部とアメリカ西部ではまったく異なる天候だ、ということも多いだろう。

        晴れ     曇り     雨
      西海岸   中部   東海岸

 また、欧州も同様だ。
 しかし日本は、あまりにも狭い。北海道を除けば、本州の全体がほぼ同じ天候になる、ということは、かなり多い。こういうふうに狭い領域では、「太陽光発電の電力のやりとりをして、電力の融通をする」と言っても、たかが知れている。(どこもかもが雨ならば、どこでも太陽光発電はしていない。)
 電力の融通は、効果はなくはないが、狭い日本ではろくに期待できない。「スマートグリッドで太陽光発電の電力変動の問題がすっかり解決する」と思うのなら、期待のしすぎだ。夢見ているだけ。

 (5) ガソリン

 太陽光発電とスマートグリッドなんていう馬鹿げた方針を取るよりも、もっとまともな方法がある。それは、「自動車のガソリン消費を減らす」ということだ。
  ・ 太陽光発電とスマートグリッド …… コストは多大。効果は小。
  ・ ガソリン消費の抑制   …… コストはマイナス。効果は多大。


 ガソリンの場合には、「コストはマイナス」となる。次の意味で。
  ・ ガソリン税の減税をやめれば、税収が増える。
  ・ 高速道路の無料化をやめれば、税収が増える。
  ・ 省エネ車が普及すれば、ユーザーの支払額は減る。

 つまり、国としては、コストがかかるどころか、歳入が増える。その意味で、コストはマイナスだ。

( ※ なお、「税収が増える」というのは、国庫にとっては有益だが、ユーザーにとっては有害だ、と思えそうだ。しかし、そうではない。税収が増えれば、その税収は、政府を通じて国民全体に還元される。だから、税収が増えるかどうかは、国民にとって損得はない。ガソリン税が上がれば、消費税の引き上げが抑制されるので。)


 ともあれ、ガソリンや石油を抑制すれば、コストをかけることなく、莫大な省エネが可能だ。
 その一方、スマートグリッドなんて、あちこちで莫大な投資を必要とする割には、効果はきわめて小さい。

 ──

 結論。

 スマートグリッドは、無意味ではないが、日本のような小さな国では、効果はあまり期待できない。また、低コストで可能なことについては、いちいち推進しなくても、すでになされている。
 「スマートグリッドで万事解決」というのは、「太陽光発電を普及しよう」という太陽光発電教の信者の夢想にすぎない。そんな夢想を信じるべきではない。
 それよりは、今すぐにもできることとして、ガソリン消費の抑制に努めるべきだ。換言すれば、民主党や自民党のガソリン消費拡大政策(減税や無料化などのバラマキ政策)に反対するべきだ。

 太陽光発電教の信者は、おのれの崇拝対象にとらわれるあまり、夢想ばかりをしている。それよりは、現実を見て、現実に可能なことをなすべきだ。

 【 注記 】

 本項は、「真実はこれこれだ」という話ではない。逆に、「嘘はこれこれだ」という話である。その上で、「嘘にだまされないようにしよう」というわけ。
 つまり、「太陽光発電は電力供給が不安定だ」という指摘に対して、朝日が「いや、大丈夫、スマートグリッドで万事解決」と吹聴するから、「そんな嘘に だまされるな」と警告するわけ。



  ※ 以下は読まなくてもいい。


 [ 付記1 ]
 要するに、朝日は、科学的・定量的な思考ができないのである。
 「スマートグリッドには効果がある」
 という話を聞くと、
 「それはちょっとは効果があるんだな。5%ぐらいは有効だな」
 というふうに定量的に思考することができない。かわりに、
 「スマートグリッドには効果がある。だから問題は全面解決だ」
 というふうに「効果 100%」だと理解してしまう。
 ま、これは、詐欺師に引っかかるタイプだ。「これを買うと効果がありますよ」という詐欺師の口車に乗ってしまう。「これを買うと《 少しは 》効果がありますよ」と理解せず、「これを買うと《 何もかも 》効果がありますよ。万事解決」と勘違いしてしまう。そして、そのために、莫大な金を支払おうとする。
 まったく、詐欺師に引っかかるやつというのは、度しがたい。

 [ 付記2 ]
 朝日は、自分がだまされるのは仕方ない。だが、社説に書いて、国民全体をだまそうとするのは、やめてもらいたいものだ。
 朝日は前にも「太陽電池キャンペーン」をして、「太陽電池の高値買い取り」という制度を実現させてしまった。「 46円で長期買い取り」という制度。これはまあ、国民の金を盗み取る詐欺みたいなものだ。
 読売はこの問題点を指摘しているが、朝日という浮かれた阿呆は、大喜びしている始末。詐欺師にだまされたあげく、詐欺師の片棒を担いでいる。
 かくて朝日のせいで、全国民は少しずつ金を奪われる。「毎月 500円ぐらいなら仕方ないな」と思いながら、1年で6千円、10年で6万円を奪われる。それが日本中になるのだから……この詐欺(太陽光発電の詐欺)がどのくらい大規模か、よくわかるだろう。

 [ 付記3 ]
 スマートグリッドで対処できるのは、せいぜい5%ぐらいの変動だ。一方、太陽光発電が3割ぐらいになったら、変動は3割ぐらいになる。それをスマートグリッドで解決することは、根源的に不可能だ。
( ※ 超伝導の電力蓄積装置というのは考えられているが、これもまた夢物語。詐欺師は夢ばかりを語る。)

 なお、「5%ぐらいの変動なら大丈夫なら、太陽光発電が5%までならOKだ」と思うかもしれない。しかし、そうも行かない。
 なるほど、理屈の上では、安定性は保たれるだろう。しかし、「5%の発電のために、5%の安定装置を作る」というのでは、安定装置があまりにも高額になる。太陽光発電のコストには、その安定装置のコストが降りかかることになる。
 これは、先に「太陽光発電のコスト計算」という項目で論じたとおり。
 要するに、連中はうまい話ばかりを吹聴するが、それはほとんど詐欺なのである。

 [ 付記4 ]
 念のために言っておくと、本項の主張は、次のことではない。
 「スマートグリッドは無意味だから、そんなことはやらなくていい」
 こういうふうに全面否定しているわけではない。実際、Google はスマートグリッドを推進している。( → 記事 )だが、私はそれに反対するわけではない。
 私が言っているのは、「スマートグリッドで万事解決、というような夢物語にだまされるな」ということだ。スマートグリッドは、少しぐらいは、世の中の役に立つ。しかし、それが世界に革命的な変化をもたらすわけじゃない。
 それはまあ、ひところの Web 2.0 と同じようなものだ。「 Web 2.0 は世界を変える」というふうに吹聴して、さんざん騒いで金をかすめ取った詐欺師がいた。しかし現実には、Web 2.0 なんて、大山鳴動ネズミ一匹である。世間でブログがいくら普及しても、ブログなんてちょっと便利な無料ホームページにすぎないし、世界が劇的に変わるわけじゃない。まして、ブログで大儲け、なんてことはありえない。(ブログ会社はみんな中小企業である。実質赤字のところもかなりある。)
 人々は、「IT」という言葉に弱い。「電力もIT化することで諸問題を一挙に解決する」というふうな話を聞くと、あっさり信じ込んでしまう人が多い。……そういうIT音痴の文系の人々のために、本項では「ITだからといって夢を見るな」と警告するわけだ。

 [ 余談 ]
 オマケで、余談を少々。
 Google がスマートグリッドをやるのは、そこにIT技術が適用できるから。そして、その目的は、世界を進歩させることというよりは、また何かITで金儲けしようとしているんだろう。「とにかく先んじて、市場を制覇してしまえ」というのが、連中の発想だ。
 なお、Google のために、私がビジネスモデルを教えてあげる。スマートグリッドで市場を制覇したら、家庭向けにスマートメーターのモニターを提供すればいい。人々は電気自動車向けの太陽光発電の蓄電状況などを、ケータイ電話でモニタリングする。そして、そこには、広告が表示される。その広告料金を、Google はちょうだいする。……こうして、スマートグリッドを通じて、Google は莫大な広告収入をちょうだいする。そして、そのために利用されるのが、朝日などだ。Google の使い走り。
posted by 管理人 at 19:21| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
太陽光発電の不安定さに対して、
 「エネルギーをメタノールや水素に変換することで蓄積できる」
 という反論がある。
 しかしこれはコスト的に成立しない。

 電気をそのまま使えば、電気エネルギーは100%使える。(送電ロスは別途。)
 一方、電気をいったんメタノールや水素に変換してから、メタノールや水素を燃やすと、その熱効率は 30%ぐらいだから、残りの 70%は無駄に消えてしまう。だから、電気をメタノールや水素に変換するというのは、ものすごい無駄なわけだ。(電気の 70%ぐらいを捨ててしまうのと同様だ。)

 コスト的にもひどいことになる。太陽光発電のコストは、火力発電のコストの、3倍ぐらいである。その上、メタノールや水素に変換してから、メタノールや水素を燃やして発電すると、さらにその3倍以上のコストになる。合計して、10倍だ。
 つまり、単純にメタノールや水素を得るのに比べて、太陽光発電をしてからメタノールや水素を得ると、コストが 10倍にもなる。
 たとえば、電気自動車を動かすための電気代が ガソリン車に比べて10倍になる。そんなものは、実用的には、まったく意味がない。
 ゆえに、
 「太陽光エネルギーをメタノールや水素に変換することで蓄積できる」
 という反論は、成立しないのである。
  ※ 太陽光エネルギー自体が効率が悪い。
    さらにメタノールや水素を経由することで
    効率がいっそう悪くなる。
Posted by 管理人 at 2012年10月06日 14:39
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