2009年06月20日

◆ チリの感染者数

 チリの感染者数が急増している。5000人を突破。ただし、注意。
 この数は「新型インフルエンザの感染者」と報じられているが、実は、季節性インフルエンザを含めた全体数と見なすべきらしい。 ──

 チリの感染者数が急増している。最新情報では、5000人を突破。ちょっと古い情報では、4000人を突破。
 とりあえず、朝日の記事を引用しよう。
 《 新型インフル、南米で感染者急増 チリやアルゼンチン 》
 南米で新型インフルエンザの感染者が急増している。チリでは6月に入り感染者が約14倍の4千人を突破した。
  チリ保健省は19日までに4315人が感染し、4人が死亡したと発表。感染者の64%が5〜19歳と若い世代に集中している。
( → 朝日新聞
 ──

 しかし、一読して、この記事は「おかしい」と感じられる。オーストラリアでは、豚インフルエンザを遺伝子検査するのが、1000人ぐらいでパンクした。日本でも、大阪は 300人ぐらいでパンクした。なのに、先進国でもないチリが、オーストラリアや大阪を圧倒的に上回る検査能力をもつのか?

 ──

 そこで、英文の情報を探ってみる。下記。
   → 英語でチリのニュース検索

 これでヒットしたページを探ってみると、次の二つがある。
 In Chile authorities reported the number of confirmed cases of the A(H1N1) virus had risen to 4,315, as the southern hemisphere country continues to battle through its winter flu season.
( → Flu spreads across S. America

 The decree, which was published today in the official gazette, gives extraordinary powers to Chilean health services. The decree establishes that the H1N1 A virus is now officially "an epidemic" and that for such reason, it is "essential to give Health Ministry extraordinary powers."
( → Chile declares state of sanitary emergency
 当局の声明を見る限りは、いずれにしても、患者の病気は 「A(H1N1) virus」または「H1N1 A virus」というウイルスによると示されている。そして、これは、豚インフルエンザのことでもあるし、ソ連風邪のことでもある。どちらであるとも言えるのだ。
( ※ ただ、記事の口調は、豚インフルエンザに限っているように読めなくもない。)

 字義通りに言うならば、「A(H1N1) virus」または「H1N1 A virus」というウイルスによる病気は、「豚インフルエンザとソ連風邪の双方」である。そして、この両者は、簡易検査だけで判明する。PCR検査を必要としない。とすれば、貧乏なチリでもちゃんと確認できる。
 チリの感染者は、「確認された」( confirmed )患者である。とすると、これは、遺伝子検査でなく簡易検査による検査だ、と見なしてよさそうだ。( PCR方による検査は、そんなに大量にはやりにくい。)
 
 念のため、「PCR」という語を、チリについて検索してみたら、……あらら。1件しかヒットしなかった。  (^^);
 どうやらチリでは、PCR 検査というもの自体が存在しないのかもしれない。ま、仕方ないですね。1台 400万円で、検査薬だって高額なのに、先進国でもない国が取りそろえられるはずがない。

 ──

 結論。

 チリの感染者数は、当局の公表したとおり、 A(H1N1) 型のインフルエンザの感染者数である。そして、それは、たぶん簡易検査によって判明したものであるから、豚インフルエンザとソ連風邪の双方の感染者が含まれるのだろう。
 とすれば、それを「豚インフルエンザの感染者数」として報道するのは、正しくない、ということになる。



 [ 付記 ]
 仮に、これが豚インフルエンザの感染者に絞った数字であるならば、「豚インフルエンザの感染者数」と「ソ連風邪の感染者数」を、ともに公表するはずだ。そして、その割合をも示すはずだ。( PCR 検査をするのであれば、その数字を出せる。)
 しかし、現実には、その数字を出していない。とすれば、やはり、これは簡易検査による数字なのだろう。
 チリにおける数字は、データとしては意味がないようだ。

 教訓。

 新聞記事を鵜呑みにするな。

 [ 注記 ]
 本項で記したことは、あくまで、私の推定である。情報不足のさなかにおける推定であるから、本当のところはどうであるかは、はっきりとしていない。ひょっとしたら、チリは日本やオーストラリアをしのぐ医療先進国であって、PCR 検査をどんどんやっているのかもしれない。……そういう可能性も、なきにしもあらず。信じがたいことではあるが、そういう可能性も否定しきれないので、一応、注記しておこう。

 実は、私がニュースを最初に聞いたときは、こう思った。
 「 PCR法とサンプル調査によって、感染者数を推定した」
 ところが英文記事によると、「確認した」とある。確認したとなると、「サンプル調査による推定」ということはありえない。となると、残るは、「簡易検査による全数検査」か、「PCR法による全数検査」か、いずれかになる。……さあ、どっちでしょう、というのが、本項の話題。
 


 【 参考 】

 次の新聞記事もある。
 《 チリ:インフル感染者の9割「新型」 》
 季節性インフルエンザの流行期を迎えている南米チリで27日、新型インフルエンザの感染者が前日より49人増えて168人になった。同国保健省によると、流行しているインフルエンザの9割が新型という。季節性インフルエンザの流行が遅れているか、「新型」が「季節性」に取って代わった可能性があるとしている。
( → 毎日新聞 2009-05-29 ) 
 これも相当に怪しい。「9割が新型」なんて、ありえおそうにない。やはり、チリでは、データが相当にいい加減であるようだ。混乱している。
posted by 管理人 at 19:49| Comment(1) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>9割が新型
数字はともかく、一般的に、新型インフルエンザウイルスが発生した場合、旧型ウイルスは新型にとってかわると言う記事を見た記憶があります(中日新聞のサンデー版図解だったと思いますが、出典元ははっきり覚えていません)。
ただし、Aソ連型とA香港型の共存のように、2種類以上のウイルスが共存する場合もある、ともありました。
これを信用するなら、今回のメキシコ型ウイルスの出現で、タイプの似ているソ連型は消滅した可能性が極めて高いことになります(タイプの異なる香港型がどうなるのかは分かりませんが)。そして、今年の冬に日本で発生するインフルエンザは、大半がメキシコ型になると考えた方がいいことになります。
メキシコ型ウイルスは感染力が強いので、ちょっと覚悟した方がいいかもしれませんね。あとは、毒性が現在のまま変わらない(もしくはさらに弱毒化する)ことを祈るのみです。
Posted by アルネチズン at 2009年06月23日 23:07
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