2009年06月12日

◆ サイトカイン・ストームと薬

 インフルエンザで死をもたらす過剰免疫は、「サイトカイン・ストーム」と呼ばれる。サイトカインという物質が嵐のように過剰に生じる現象。 ──

 前々項では、「インフルエンザで重症化や死をもたらす原因は過剰免疫である」とで述べた。

 前項では、その対策として、アレルギーを抑制するという目的で「抗ヒスタミン剤」を提案したが、これはピンボケで、「当たらずといえども遠からず」ふうだった。
 ぴたりと的を射るのは、「抗ヒスタミン剤」でなく、「抗アレルギー剤」である。それも、特に「サイトカイン阻害薬」という抗アレルギー剤だ。
 というのは、この問題の原因は、「サイトカイン・ストーム」という過剰免疫であるからだ。

 ──

 以下では、詳しく説明するが、ネット上のサイトから一部抜粋の形で示す。より詳しい話は、それぞれのリンク先を見てほしい。(何カ所かある。)

 スペインかぜは、H1N1のインフルエンザウイルスによって起こったものであるが、H5N1やH5N2によって引き起こされるトリインフルエンザと類似性が見られる。H5N1と同様に、全身にサイトカイン・ストームを引き起こすため、致死率が高かったと考えられている。
( → Wikipedia

 サイトカインの過剰産生(サイトカイン・ストームと呼ばれる)は致死的であり、スペイン風邪やトリインフルエンザによる死亡原因と考えられている。この場合サイトカインは免疫系による感染症への防御反応として産生されるのだが、それが過剰なレベルになると気道閉塞や多臓器不全を引き起こす(アレルギー反応と似ている)。これらの疾患では、免疫系の活発な反応がサイトカインの過剰産生につながるため、若くて健康な人がかえって罹患しやすいと考えられる。
( → Wikipedia

 サイトカインストームは、こういったサイトカインの調節がうまくいかなくなる状態のことです。つまり、どんどん迎撃しろという命令がでたまま、それが撤回されないので、体は一生懸命、発熱して、全身で炎症反応を起こし、白血球を増やします。そして、こういった制御不能になった防御機構が、体じゅうの血管や臓器、神経にまでダメージを与えてしまうのです。
( → 知恵袋

 肺は酸素を取り込み二酸化炭素を排出する為の臓器です。その機能を実現する為に肺の中は極めて細かい部屋(肺胞)に分かれており、その壁は血管が密集しています。要するにガス交換の効率を上げるために血管と大気が殆ど直に接触しており、しかもその表面積を増す為に内側が細かく仕切られているのです。
 このような構造のところに急性炎症が起きますと、肺胞の内側に水分だとか、好中球そのものや好中球の死骸などが溜まります。当然その部位ではガス交換が出来なくなります。これが、通常の「肺炎」と呼ばれる状態であり、細菌性肺炎などが代表的です。
 サイトカイン・ストームの際にはこの状態が更に強く起こり、かつ収める為のメカニズムがうまく働きません。つまり呼吸機能はますます悪化し、例えるならば「内側から窒息する」ような状態になり、最悪の場合は死に至る訳です。
( → 説明

 More research is necessary before any conclusions may be made regarding the efficacy of TNF-alpha blockers at reducing the effects of a cytokine storm in hospitalized flu patients.
( → Wikipedia 英語版 Cytokine storm


 以上で、説明はわかるだろう。まとめて言えば、最初に述べたとおりとなる。

 なお、結論は、「サイトカイン・ストームを止める薬を使えばいい」となる。
 その薬は、「サイトカイン阻害薬」ないし「サイトカイン・ブロッカー」と呼ばれる。通常、次の用途で用いられる。
  ・ 関節リウマチの薬
  ・ 花粉症の抗アレルギー薬。


 詳しくは、次のサイトに説明がある。
  → サイトカイン・ブロッカー
  → サイトカイン阻害薬

 これらの薬を使えば、冒頭の狙い(インフルエンザによる重症化や死をもたらす過剰免疫を抑止できる)ということが、実現しそうだ。
 そして、そのことは、前々項における研究が示したとおりだ。
 ただし、動物実験を越えて人体実験でどうなるかは、まだはっきりとしていない。上記のサイトでも示されているが、実用化にはまだ困難なレベルにある。(そのなかでは、Glaxo SmithKline が先頭を切っているらしいが。)

 とりあえず使ってもよさそうなのは、前項でも述べた抗ヒスタミン剤だ。ただ、これは危険性の面では安心できそうだが、効果の面でははっきりしたことは言えないようだ。(「抗ヒスタミン剤とサイトカイン・ストーム」という論文もあるのだが、どうもはっきりとしていないらしい。)

 本項では、医療レベルでは、特に何も結論しない。単に情報を提示するだけに留める。
 ただ、強いて何かを言うとしたら、「この方面の研究をもっと進めるべし」とだけは言える。

( ※ なお、研究の一端として、「ターメリック(ウコン)が役立つ」という情報もある。 → Google 検索(英文) )(ただ、根拠ははっきりとしないようだ。ひょっとして、俗説かも。)



 [ 補説 ]
 サイトカイン・ストームという現象について、素人向けに、わかりやすく説明しよう。
 まず、上記のように、次のことがある。
 「このような構造のところに急性炎症が起きますと、肺胞の内側に水分だとか、好中球そのものや好中球の死骸などが溜まります。当然その部位ではガス交換が出来なくなります。」
 これはいわば、「鼻づまり」のようなものだ。花粉症では、過剰免疫によって、鼻水や鼻クソが分泌されて、鼻づまりが起こる。本来は人体を守るための仕組みである免疫が、過剰になりすぎて、悪さをして、人間に困った状態をもたらす。
 風邪の場合も似ている。ちょっとだけ鼻水が出るのならばともかく、鼻水や鼻クソがやたらと大量に出過ぎて、呼吸困難になることもある。
 同様のことが、鼻でなく、肺で起こると、どうなるか? ……それが「肺炎」だ。鼻腔に鼻クソが溜まるかわりに、肺に膿のようなものが溜まる。そのせいで、肺の機能を損ねてしまう。結果は、呼吸困難による死。
 これはいわば、「ヤブ医者」のような状況だ。「病気を治しますが、患者を死なせます」というのを、文字通りにやっている。「鼻や肺の異物をやっつけますが、患者を窒息させます」というふうな。鼻や肺の異物をやっつけるために、スーパー兵器を繰り出したのはいいが、それで敵よりも味方を殺してしまった、ということだ。(元も子もない、というふうな。)
 これはまあ、「頭のイカレたガンダムの暴走」みたいな状況だ。そこで、こういうときには、(ガンダムを正常化させるのは無理だとしても)ガンダムを停止させればいい、という判断になる。そのために、サイトカイン阻害薬というものがあるわけだ。

( ※ 抗ヒスタミン剤がどうかというと、かなり微妙なところであるようだ。「無効だ」と言う人もいる。ただし、私の体験からするとは、抗ヒスタミン剤の噴霧薬は、確実に鼻水を減らす。風邪のときには、ときどきこれを使うようにしてから、かなり楽になった。……とすれば、同様の効果が肺において発揮されれば、肺炎にも効果はありそうだ、という推定は成立する。少なくとも、推定レベルでは。……現実にどうかは、肯定も否定もデータ不足であるようだが。)
( ※ なお、抗ヒスタミン剤を使うとしても、噴霧・吸入にするべきであって、内服はたぶん無効同然だろう。理由は、すぐ上のことからの類推。)

 ──

 [ 余談 ]
 政府は、豚インフルエンザの研究のために、7億円の支出をする。
  → 新型インフル 研究 約7億円配分

 しかし、どうせ研究するなら、豚インフルエンザそのものよりも、サイトカイン・ストームのために、研究費を出す方がいいだろう。
 サイトカイン阻害薬(ブロッカー)の開発は、実用化がかなり近いところにある。まだつかんではいないが、姿は見えてきている。ここで、多くの研究費を出せば、多くの人命を救えるようになる可能性は高い。
 ひるがえって、検疫、発熱外来、休業補償なんて、こんなことに莫大な金を投じるなんて、馬鹿馬鹿しすぎる。そんなことをやっても、ただの無駄だ。莫大な金の無駄遣い。それより、金を出すべきところは、別にある。……それを本項は示した。(と同時に、将来の実現可能な夢を示した。)
 
 《 例 》
 サイトカイン阻害薬をすでに服用しているリウマチ患者について、インフルエンザによる死亡率が高いか否かを、疫学的に調査することができるだろう。(次の秋冬以降。)(すでにリウマチ薬として認可されているものもある。 → 知恵袋
 つまり、特に人体実験ということもなく、サイトカイン阻害薬の効果を知ることができるわけだ。
( ※ 方法は:リウマチ患者のうち、サイトカイン阻害薬を処方された人と、処方されなかった人とを、疫学的に調査する。インフルエンザによる死者は、どっちが多いか?)
posted by 管理人 at 19:15| Comment(0) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
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