2009年06月10日

◆ これはパンデミックか?

 WHO は豚インフルエンザを、フェーズ6(パンデミック)に指定しかけている。では、豚インフルエンザは、パンデミックと言えるか?
 実は、パンデミックという言葉には、両義性がある。流行の範囲と、被害の大きさだ。この両者が混同されやすい。 ──

 WHO は豚インフルエンザを、フェーズ6(パンデミック)に指定しかけている。フェーズ6の要件である「世界的大流行」という条件を満たすからだ。
 以下、ニュースから。
 WHOは近く引き上げに踏み切る可能性がある。
 WHOのマーガレット・チャン事務局長は同日、AP通信などに「外見上、『フェーズ6』に入ったと思う」と語った。チャン事務局長は 10日、日本をはじめ各国の保健当局と電話会議を行う。
 事務局長が電話会議を踏まえ、引き上げの可否を決断するとみられる。
( → 読売新聞 2009-06-10

 現在の警戒水準の基準によると、フェーズ6への引き上げ要件は、すでに感染が広がっている米州地域以外の1カ国で「地域社会レベルの人から人への持続的感染」が確認されれば満たされる。フクダ氏は9日の会見で、豪州ビクトリア州でこれに該当する感染が起きているとの認識を示した。
( → 朝日新聞 2009-06-10
 ──

 なるほど、感染範囲のみによって指定をするのであれば、豚インフルエンザはフェーズ6の要件を満たしている。
 しかし、である。同じことは、季節性インフルエンザにも当てはまる。Aソ連型、A香港型も、同様の要件を満たす。
 ただ、Aソ連型、A香港型も、過去においては「パンデミック」と認定されてきた。( → 解説1解説2
 だから、このような意味では、「パンデミック」と認定して差し支えない。

 ──

 ところが、その一方で、近年にしばしば言われてきた「パンデミック」とは、次の意味だった。
 「大流行し、かつ、被害が大きい(死者数が大きい)」

 つまり、感染力と病原性が、ともに大きいタイプだ。特に、鳥インフルエンザ由来のものが、危険なものとして想定されてきた。

 ──

 ここまで見ると、「パンデミック」という言葉に、両義性があることがわかる。
  ・ 大流行するもの  …… 専門用語の「パンデミック」
  ・ 大流行&大被害 …… 世間用語の「パンデミック」


 言葉に両義性があるのだから、「パンデミック」と呼ぶことの是非は、どうにでも判定できる。つまり、どちらも可能だ。
 専門用語で言うなら、「パンデミック」と認定して、フェーズ6に指定するのが妥当だろう。
 世間用語で言うなら、今回の豚インフルエンザは、これまで「パンデミック」という用語で危険視されてきたものではない、ということを強調するべきだろう。何しろ、いまだに、豚インフルエンザをものすごく危険な病気だと見なして、感染者を隔離する、ということが、しばしばなされているからだ。誤解のさなかで、火に油を注ぐようなことはするべきではない。

 ──

 私としては、フェーズ6に指定かどうかは、WHO の勝手だが、それをいちいちマスコミが大々的に報道するべきではない、と思う。
 なぜなら、マスコミは、本項で述べたような解説を、補足説明しないからだ。逆に、単に「フェーズ6に指定された! 大変だ! 世界的大流行で、大事件だ!」と大騒ぎの記事を書くからだ。

 本当を言えば、WHO は、「フェーズ」という用語を使うべきではない、と思う。「重度」と「範囲」という、両方の尺度を同時に示すべきだ、と思う。その場合、今回の豚インフルエンザは、次のようになる。
  ・ 重度 …… ステージ2 (軽度)
  ・ 範囲 …… フェーズ6  (ほぼ世界的流行)

 その上で、次のように結論したい。
  ・ 警報 …… アラーム2 (注意の必要性は小さい)


 要するに、範囲だけを見て、フェーズだけを論じるなんて、馬鹿げている。また、それを針小棒大に報じるマスコミも、馬鹿げている。WHO もマスコミも、ともに馬鹿げている。
 狂気の二重奏、という評価が、最も妥当か。警告するなら、豚インフルエンザそのものではなくて、豚インフルエンザをめぐって頭がパニックになっている連中へ警告する方がいいだろう。
  ・ パニックへの警報 …… アラーム6 (重大な警告)






 【 関連項目 】
  → パンデミックとは
    http://openblog.meblog.biz/article/1705887.html
posted by 管理人 at 20:44| Comment(1) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
記事の引用。
 ──
《 「フェーズ6」宣言へ…WHO緊急委員会、引き上げを勧告 》
 マーガレット・チャン事務局長に対し、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高の「フェーズ6」への引き上げを勧告した。
 チャン事務局長は同日夕(日本時間12日未明)、記者会見で引き上げを宣言する。
 病原性の強弱を表す新たな尺度の必要性も認識された。WHOは今回は「重症」「中度」「軽症」の3段階のうち「中度」としている。
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090611-OYT1T01024.htm

 ──

 私見。
 「中度」というのは疑問。だったら、香港風邪やアジア風邪はどうなんだ?

 ※ そもそもこの翻訳は変ですね。真ん中だけに「度」がついている。三つとも「症」にそろえたら? 原文は medium かもしれないが。
Posted by 管理人 at 2009年06月11日 23:20
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