2009年06月01日

◆ 発熱外来は使うな

 全国各地で、発熱外来ができている。ただし、発熱外来はできても、まともに使うべきではない。(形骸化するべきだ。) ──

 全国各地で、発熱外来ができている。(ニュースで報道済み。)
 このこと自体は、問題ない。どんどん作っていい。ただし、作っても、まともに使うべきではない。つまり、「無用の長物」のようにして、形骸化するべきだ。

 なるほど、現時点では、発熱外来はそれなりに有益だ。というのは、患者の発生数が少ないからだ。発熱外来の医師は、患者がろくに来ないまま、手持ち無沙汰でいるのだろう。あるいは、内科などで診療しているのだろう。
 つまり発熱外来は、開店休業だ。まさしく「無用の長物」になっている。それなら、問題はない

 しかし、秋以降では、どうか? 患者が大量発生する。そのとき、大量発生した患者をいちいち診ていたら、発熱外来はパンクする。処理能力の何十倍もの患者が押し寄せたら、どうやっても処理できない。とすれば、「患者を受け入れます」と宣伝するべきではない。できもしないことを「できます」と宣伝するべきではない。それでは詐欺同然だ。パニックが起こる。
( ※ 比喩。東京ディズニーランドには、1日あたり数万人しか入園できない。なのに、「いくらでも入園できます」と宣伝して、何十万人も押し寄せたら、どうなるか? それと似た事情。)

 だから、秋以降、インフルエンザ患者が大量発生したときになってあわてふためかないように、
 「発熱外来では患者を治療しない」
 という方針を、あらかじめ立てておくべきだ。
( ※ これは「医者を何もするな」という項目に合致する。)

 結論。

 発熱外来を作るのはいいが、「作ったあとで、発熱外来は使わない」という原則を、ちゃんと立てておくべきだ。

 ──

 なお、発熱外来は使わないとしても、発熱外来の設備自体はあっていい。重症者を治療するための施設として、あればあったで、役立つだろう。
 ただ、そうだとしても、「発熱外来」という看板は必要でない。
 まとめると、次の通り。

 (1) 発熱外来をつくって、発熱外来で患者を診る   → 駄目。(パニック)
 (2) 発熱外来をつくって、発熱外来で患者を診ない → OK。(重症者の治療)


 つまり、発熱外来は、診察のための施設ではなく、治療のための施設とするべきだ。診察は、発熱外来とは別のところでやるべきだ。( → 前出。スクリーニングの施設。)



 [ 付記 ]
 本項では「何をするべきか」を示したが、どちらかと言えば、その裏の形で、「何をするべきでないか」を理解して欲しい。

 してはいけないことは、次のことだ。
 「発熱外来をたくさんつくって、そこで豚インフルエンザの患者を診察・治療する」

 こんなことは、してはいけない。なのに、現状では、このことをめざしている。狂気の沙汰だ。

 どこが問題か? 重症者の治療だけならいいが、軽症者の診察をしてはいけないのだ。なぜなら、できないからだ。
 秋以降、インフルエンザの患者は、千万人以上になる。その大量の患者は、豚インフルエンザなのか、季節性インフルエンザなのか、区別がつかない(遺伝子検査の処理能力が足りない)。とすれば、豚インフルエンザの患者だけを治療しようとしても、区別ができないから、無理なのだ。また、たとえ区別がついたとしても、数百万人にものぼる豚インフルエンザ患者をすべて診察することはできない。(病院はすでにほぼ満杯だ。)……この問題は、先に述べたとおり。
  → 発熱外来で診察可能か?
 
 豚インフルエンザの患者をすべて診察することは、できない。現在、発熱外来の施設は 300程度あるが、このあといくら増やしても、たかだか 1000程度だろう。しかし、それっぽっちでは、とても足りない。最低でも 10000は必要だ。また、10000 も発熱外来を作ったら、他の診療科がパンクする。
 だから、「発熱外来で診察・治療します」という方針は、根本的に捨てる必要がある。
 政府の「発熱外来で診察・治療します」という方針は、ただのパフォーマンスにすぎない。「真面目にやっていますよ」というパフォーマンス。しかし、その実効性は、皆無に等しい。焼け石に水。スズメの涙。多勢に無勢。…… 千万人の患者を、300ぐらいの発熱外来ですべて処理しようというのは、根本的に狂った政策なのだ。
 だから、そういうことをしてはいけない、というのが、本項の趣旨だ。(「医者は何もするな」という項目と同様。)

 本項の趣旨は、「狂気の政策を取ってはいけない」ということであり、「バベルの塔を築こうとしてはいけない」ということだ。
 そして、われわれは今こそ、声を上げて叫ぶ必要がある。
 「王様は裸だ」
 と。

( ※ それがどういう意味かは、いちいち解説しませんが。)



 [ 参考1 ]
 発熱外来を利用する場合、「公共交通機関を使わないように」という勧告がしばしば なされた。(5月の騒ぎの最中。)
 すると、電車やバスは駄目。タクシーも(他の人があとで乗るので)駄目。大丈夫なのは、自家用車と救急車ぐらいか。いや、救急車も駄目か。
 ここまで考えると、発熱外来というのがいかに現実離れしているか、よくわかる。「高齢者・幼児・妊婦・慢性病患者」に向かって、「自家用車で」という政府方針。

 [ 参考2 ]
 次のニュースがある。日本医師会が政府に要望した。
 《 季節性インフルエンザと同等の扱いを要望 》
 理事は、「一般の季節性インフルエンザと同等に扱いたい」という現場の声に賛意を示し,マスクの装着等による院内感染対策をしっかり行うことを前提として,行動計画を緩和するよう,厚労省に要望したことを明らかにした.
( → 日医ニュース



 【 関連項目 】

  → 発熱外来で診察可能か?
  ( ※ 発熱外来で診察しよう、というのは画餅にすぎない。)

  → 次項 (オーストラリアの状況)
 ( ※ オーストラリアでは、狂気の政策のかわりに、正気の政策が取られている。)
posted by 管理人 at 20:01| Comment(2) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これを書いた翌日、さっそく、医学界から同趣旨の声明が出たという報道があった。以下、ニュースの引用。

 ──

 《 日本小児科学会、小児科「発熱外来」廃止求める提言 》

日本小児科学会(東京都文京区)は2009年6月1日、新型インフルエンザへの対応に関する提言を発表した。その中で、感染が疑われる患者を最初に診察する「発熱外来」について、「季節性インフルエンザと新型インフルエンザを小児科診療上区別することは困難」として、新型インフルエンザも一般の小児科での診療に改めるように求めている。
http://www.j-cast.com/2009/06/02042386.html

 ──

 報道によると、上記の提言は 01日の昼間だから、夜に述べた私よりも、そっちの方が早かった。
 しまった。先を越された! アップロードするのが1日遅すぎた! 
 しかし、5月28日には、私が似た趣旨のことを書いていたから、やはり私の方が早かったのかもね。 (^^)v

→ 5月28日
http://openblog.meblog.biz/article/1565010.html
Posted by 管理人 at 2009年06月02日 20:55
朝日にも同趣旨の記事が出ていた。分量はやや多い。(日付は6月2日)
 一部抜粋。

   ──

 提言は、
▽新型、季節性の区別をなくし、通常の季節性インフルの診療態勢を維持する
▽すべての小児科診療施設が新型インフルの診療に参加できるようにする
▽地域ごとに新型を含むインフル疑い症例の重症度に応じて診療施設を決めるといった態勢を整備する、
などとしている。

http://www.asahi.com/national/update/0601/TKY200906010426.html
Posted by 管理人 at 2009年06月07日 08:48
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