2009年05月30日

◆ 電子診察(対面なしの診察)

 ウイルスをまき散らす患者を囲い込むには、発熱外来に誘導する以外に、他の方法もある。電子的に診察することだ。その典型は、電話診察だ。 ──

 ウイルスをまき散らす患者を一般人から隔てるべきだ、という発想から、発熱外来というものが導入されつつある。しかし、発熱外来で診察するという方法は、患者数が増えれば不可能だ。千万人以上の患者を、少数の発熱外来で診察することはできない。( → 前々項

 そこで、前項では、「医者は何もするな」というタイトルで、「医者は軽症者を診察するな」という方針を示した。ただし、そこでは、軽症者をスクリーニングするという意味での発熱外来はあった。

 ただ、それはそれとして、別の発想も考えられる。それは「電子診察」だ。この場合、患者と医師は電子的に接するだけだ。
 この方法なら、伝染の危険はない。医者が感染する危険もないし、病院内の他の患者が感染する危険もない。
 この方法は、スクリーニングでも、発熱外来の診察でも、一般医の診察でも、適用できる。

 ──

 現状では、
 「診察してから、薬を処方する」

 というのが原則だ。
 だが、この原則のせいで、患者は病院でウイルスをまき散らすことになる。また、病院への往復の途中でも、ウイルスをまき散らすことになる。さらに言えば、患者本人も、高熱のまま動くことで、病状を悪化させる。
 とすれば、この原則は、ない方がいいだろう。
 逆に、次の原則の方がいい。
 「診察しないで、薬を処方する」

 その方法として、電子診察という方式が考えられる。

 ──

 電子診察というと、いかにもハイテクな感じがするかもしれないが、もともと「電話診察」という古典的なものがある。それもひっくるめて、次のようなものが考えられる。
  ・ 電話診察
  ・ テレビ電話診察 ( → 実例
  ・ ケータイを通じた診察(カメラ撮影つき)
  ・ ネットを通じたパソコン診察


 会話としては、次の二通り。
  ・ 直接の会話 (電話・ケータイ)
  ・ 文字ベースの会話 (パソコン・ケータイ)


 いずれにしても、基本は、次のことだ。
 「定型化された問診票に記入する。患者は数字の記入だけをする。(症状は選択式)。例外的に、記述式(文字または会話)」


 問診票の処理は、機械化(ソフト化)することもできるし、看護婦ならぬ事務員に委嘱することもできる。
 特別なソフトがあってもいいが、このくらいのソフトならば簡単につくれるだろう。

 こうして、電子診察ができれば、さまざまな問題がなくなる。熱の出た患者がいちいち医者に行く手間がなくなる。他の患者が病院で感染する危険も減る。医者や看護師としても、自分が感染する危険が減る。

 ──

 なお、この医師は、人間の医師でなくてもいい。ただの定型的な問診ならば、機械でもできるから、電子的なバーチャル医師が問診してもいい。
 たとえば、次のように。
    ・ 熱はどのくらいありますか?
    ・ 咳は出ますか? 
    ・ 鼻水は出ますか?  
    ・ 鼻は詰まっていますか?


 このようなことは、発熱外来に行かなくてもできる。だから、「ネットで仮想ドクターが診察する」ということでも可能だ。……こうなると、かなりハイテクですね。

 どうです? うまいアイデアでしょう。仮想ドクターの利用による、バーチャル病院を使った、ハイテク医療。   (^^);
 これに比べると、いちいち患者が病院に行って、ウイルスを運搬してウイルスをまき散らす、という方法の、何と原始的なことか! 



 [ 付記1 ]
 なんだか話がSF的で、実現性が欠けている、と感じられるかもしれない。しかし、さにあらず。その一部はすでに実現している。それは「電話診察」だ。
 実を言うと、「電話診察」という形でなら、ほぼ同趣旨の方針がすでに出ている。ただし、対象は、慢性疾患の患者のみ。引用しよう。
  厚生労働省は新型インフルエンザ対策の一環として、院内感染を防ぐために医療機関に、慢性疾患を持つ患者らの電話診療とファクスによる処方せん発行を認める通知を、都道府県などに出した。
 定期受診をしている慢性疾患患者が通常服用している薬が必要になった時、医師は電話で状態を確認したうえで、希望する薬局に処方せんをファクスで送れるとした。こうした患者にインフルエンザ症状がある場合は、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を処方することもでき、家族も含めた外出自粛が必要なことから、薬局が患者宅に薬を届ける。
( → 毎日新聞 2009-05-25
 これは私の提案と似ているが、次の点で異なる。
  「対象は、慢性疾患の患者のみ」

 こんな制限は、はずした方がいいだろう。あちこちに発熱外来の新設備をするくらいなら、電話相談所でも作る方がマシだ。特に、「タミフルなどの薬は処方しない」という前提があるのであれば。(電話相談所でやることは、薬の処方ではなく、スクリーニングだけだ。たいていの軽症者には「寝て治せ」と言うだけ。)

 なお、電話診療の場合、「電話診療の料金」というのが請求される。タダで診察してもらえるわけではない。この点では、前項で述べた「医者は何もしないで金だけ取れ」というのを実践していることになり、好ましいと言える。

 [ 付記2 ]
 患者が動けないで医者に行けない、という場合もある。この場合も、電子診察は有益だ。

 患者が電子的な装置を持っていない場合がある。その場合は、どうするか? 
 その場合は、発熱外来において電子診察をすればいい。発熱外来の一室に患者を入れて、そこで電子診察を受ける。患者と医師は、テレビカメラで結ばれていて、電子的に問診がなされる。これもまた電子診察の一種。
 あるいは、家族が代理で出向いてもいいし、家族が代理で問診票に答えてもいい。いろいろと考えられる。
 特に、患者が寝て動けないときには、家族が代理で問診票に答えるといい。
 
 電子診察は、料金請求がちょっと難しいことから、誰かが病院に行く必要があることもある。その場合にも、家族が病院で電子診察を介在する、ということも考えられる。
 患者はあらかじめ、定型的な問診票に答えておく。家族がそれをプリントアウトして、病院に持っていく。医者はそれを見て、診断する。軽症ならば、「寝て治せ」と言う。重症ならば、往診するか、救急車を回す。
 ま、発症して二日目ぐらいで、熱で動けないのなら、普通のことだ。三日たっても症状が大変な場合にのみ、リレンザなどを処置すればいい。

 [ 余談 ]
 余談だが、仮想医者(バーチャル医者)というものがある。ただのソフトだが。私も持っている。「家庭の医学」という電子版のソフト。
 画面上で質問に答えると、
 「これこれの病気の可能性が××パーセントです」
 というふうに答えてくれる。(昔は「人工知能」と呼ばれていた技術。)
 
 これで風邪の症状を入力したら、次の三つの病気の可能性が高い、と出た。
  ・ 慢性鼻炎
  ・ 急性鼻炎(鼻かぜ)
  ・ かぜ症候群

 この三つだったら、区別はたぶん容易だろう。区別するポイントはあるからだ。
 とすれば、問診票にちゃんと答えて、それを医者に持っていけば、医者はきちんと処置できるはずだ。
 


 【 追記 】
 この話題は、「薬の通販規制」の問題と似ている。(施策の方向は逆だが。)
 政府は薬の通販を禁止した。そのせいで、離島にいるお年寄りが、漢方薬を入手できなくなった。そういう問題が発生した。その一方で、対面販売であれば、コンビニでさえ販売できるようになった。( → 朝日・社説 2009-06-01 )
 政府の言い分は、「きちんと説明することの必要性」だ。だが、きちんとした説明なら、ネットでも電話でもできる。
 一方、対面ならば大丈夫かというと、そうとは言えまい。コンビニあたりの店員では、たとえ資格があったとしても、ろくな説明は期待できまい。(低賃金ゆえに、まともな人材がいるとは思えない。)
 要するに、薬の販売では、電子的な処理が可能なのだが、頭の古い役人の発想だと、それを拒む。「人的に対面することだけが大切だ」という発想になって、物事の本質(説明の有無)を見失う。そのあげく、「電子販売を禁止して、薬を客に売らなくすれば物事が解決する」と思い込む。
 いかにも馬鹿げた話。だが、現状は、その方向に進みつつある。ITの進む時代に逆行している感じ。

 ただし、馬鹿なのは政府だけではない。インフルエンザ患者の診察についても、「電子診察するぐらいなら、診察をやめよ」というような発想をして、電子診察に反対する医者さえいる。下記の 【 蛇足 】 参照。

 【 蛇足 】
  ※ 以下はあまりにも馬鹿馬鹿しい話なので、読む必要はありません。
    トンデモマニアの話。

 またトンデモマニアが勝手に誤読して、イチャモンを付けてきたので、解説しておく。(よくもまあ誤読ばかりするものだ、と呆れるが。)
 「薬が必要な重症例こそちゃんとした診察が必要だろう。」
 という批判。ひどい誤読だ。
 
 (1) 薬が必要であることと重症者とは、同じではない。大部分の軽症者は、薬が必要でないのに、薬を要求する。また、虚弱者は、重症者とは異なる。
 (2) 重症者か虚弱者か軽症者かは、診察しなくては、わからない。そのための初期診察が電子診察だ。軽症者・虚弱者には、薬の処方をすることもできる。ケースバイケース。医師の判断。
 (3) 重症者は、診察するだけでなく、治療する。方針としては、「重症ならば、往診するか、救急車を回す」と、ちゃんと記述済み。(もっと詳しい話は、前項 に記述済み。頭の悪い人は、読んでも翌日には忘れてしまうのだろうが。)
 どうやら、「重症者を見つけたとき、薬だけを処方して、それでおしまい。はいサヨナラ」というふうに勝手に誤読しているらしいが、どこからそういう発想が出てくるのか、ほとほと感心する。まともな人間の発想ではないですね。およそ常人の域を超えた発想だ。
 こういう発想をする医者というのは、普段からそういうことを考えているんでしょうねえ。「重症者を診ても、薬だけ処方して、あとはほっぽり出そう」と。……まったく、私には想像もできない発想だ。よくまあ頭に浮かぶもんだと、ほんとに感心しますよ。
 でもって、自分の妄想の上で、他人を「トンデモ」と呼ぶとは。ここまで誤読できれば、ギネスブックにも載れそうだ。「誤読王」の世界チャンピオン。

 なお、「そもそも電子診察でどうやって診断するの?」という質問もあったが、それは私でなくて、厚労省に聞きなさい。すぐ上に、厚労省の記事があるでしょ? 質問する相手を間違えている。これも誤読。
 ま、普通の医師なら、そのくらい自分で考えればわかるだろうに。タミフルの処方の仕方もわからない医師、というのが存在するんですね。呆れた。

( ※ 彼の主張だと、千万人の患者が押し寄せたとき、処理しきれなくなるので、たいていの患者は病院からあぶれる。あぶれた患者は野垂れ死にさせよ、ということらしい。「病院に入れた患者だけを処理します。それが良心的な医者です」というわけ。病院内のことしか目に見えないわけ。)




 【 参考記事 】

 http://sankei.jp.msn.com/life/body/090526/bdy0905260806003-n1.htm
 「感染症の蔓延(まんえん)を防ぐという意味で、妊婦さんも、かかりつけ医ではなく、発熱外来を持つ病院に電話相談した上で行っていただくことになっています」

 http://mainichi.jp/area/miyazaki/news/20090527ddlk45040689000c.html
 「自身や家族に38度以上の発熱やせきなどの症状が出たらどうすればよいのか。医療機関に駆け込む前に、県はまず、24時間対応の発熱相談センターに電話するよう呼びかけている。」
 
 以上は、電話診察ではなくて、診察前の相談。このあと、発熱外来で診察を受ける、というのが現状の方針。だが、それは、患者数が千万人以上になれば、破綻する。どこかを変えなくてはならない。なのに、現状は、変える準備ができていない。このまますれば、秋には医療が破綻する。
 


 【 関連情報 】

 →  Google 検索「電子診察」 

 【 追記 】
 上記の Google 「電子診察」は、ほとんど役立たずのようだ。院内の電子カルテがほとんど。ヒット率が悪すぎ。
 どちらかと言えば、次の方がちゃんとヒットする。

  → Google 「電話診察」
posted by 管理人 at 17:02| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ