2009年05月26日

◆ 秋には何もするな

 秋にはふたたび、豚インフルエンザの感染者数が急増するだろう。そのとき、どうするべきか? 実は、何もしないのが、最善だ。 ──

 前項で述べたように、秋には感染者数が急増するだろう。その理由は、海外からの感染者が流入することだ。(たとえ国内のウイルスが絶滅したとしても、だ。)
 では、秋には、何をなすべきか? 

 舛添や橋下の説だと、「自分のやったことは立派だった」という自慢をしているのだから、秋になれば、ふたたび同じことをしたがるだろう。次の二点だ。
  ・ 水際対策(検疫)
  ・ 一斉休校


 では、その二点を、本当にやるべきなのか?
 これには、「ノー」というのが、私の主張だ。つまり、
 「秋には何もするな」(普通のインフルエンザ並みのことだけやれ)

 と。
 以下では、理由を示す。

 ──

 (1) 水際対策

 水際対策は、やるべきではない。5月の初期になら、水際対策の効果も少しはあっただろうが、秋になれば、水際対策の効果は消滅する。やるだけ無駄だ。せいぜい数日間、ピークを遅らせるだけの効果しかない。( → 前項「南半球では大流行する」)
 なのに、無意味な水際対策をすれば、感染者が無意味に隔離されたりして、人権侵害になる。また、感染者が犯罪者扱いされて、社会的パニックをもたらす。かえって有害だ。
 感染者が出たら、個別に自宅静養すればいい。それだけのことだ。季節性インフルエンザと同様に扱えばいい。

 (2) 一斉休校

 一斉休校も、やるべきではない。そもそも、やれるはずがない。仮に、やり始めたら、冬の間ずっと休校しっぱなしだ。そんな馬鹿げたことは、やれるはずがない。
 やるとしたら、「学級単位」または「学校単位」で、一時的に閉鎖することだ。そして、それは、季節性インフルエンザの場合と同様である。
( ※ 一斉休校の馬鹿らしさは → 豚インフルエンザの現状

 (3) 区別不可能

 水際対策であれ、一斉休校であれ、「豚インフルエンザだけに対処しよう」としても、無理である。豚インフルエンザは季節性インフルエンザと区別がつかないからだ。
 なるほど、5月の段階でなら、豚インフルエンザだけを検出することは可能だった。しかし、それは、感染者数が少なかったからだ。実際には、感染者数の総数は、20日ごろまでの段階で 200名程度だったが、それでも、検査数が急増して、保健所はパンクしそうになった。
 これが、秋冬になれば、感染者数は激増する。そうなれば、確実にパンクする。つまり、豚インフルエンザをいちいち遺伝子検査で検出することは、態勢的に不可能だ。そんな態勢は整備されていない。ゆえに、豚インフルエンザと季節性インフルエンザとを、区別することはできない。
( ※ できることはせいぜい、簡易検査で「A型」とわかることぐらいだ。しかしながら、そんな検査には、ほとんど意味はない。また、さらに言えば、簡易検査では検出漏れが3割もある。
  → 簡易検査、感染でも3割が「陰性」

 (4) メリット(トレードオフ)

 流行を阻止できないだけでなく、阻止しない方がいい、とすら言える。
 そもそも、季節性インフルエンザよりは、豚インフルエンザの方がマシなのだ。タミフル耐性がないからだ。
  ・ 季節性インフル …… タミフルで治癒しない → 重症化する
  ・ 豚インフルエンザ …… タミフルで治癒する → 重症化しない

 こういう違いがあるのだから、季節性インフルエンザよりは、豚インフルエンザの方がマシなのだ。
( ※ メキシコで死者数が多いのは、タミフルを処方されなかったから。)
( ※ 「両方ともかかるかも」という危険を危惧する人もいるだろうが、そんなことはない。両者は同じタイプだから、トレードオフの関係にあるのだ。つまり、豚インフルエンザの感染者が増えるほど、季節性インフルエンザの感染者が減る。トレードオフ関係。)
( ※ 詳しくは → 豚インフルエンザを促進せよ(!?)

 (5) メリット(免疫)

 メリットは、もう一つある。どうせ全員が豚インフルエンザにかかるのであれば、感染するのはなるべく早い方がいいだろう。下手をすると、豚インフルエンザが強毒化するかもしれない。そのとき、いきなり初めて感染すると、死ぬかもしれない。それよりは、弱毒であるうちに感染した方がいいだろう。( → パンデミック対策と免疫力

 まとめ

 今秋以降、豚インフルエンザは流行するだろう。だが、政府は、何もしないでいい。水際対策であれ、一斉休校であれ、そんなことはしないでいい。というか、してはならない。やればやるほど、大騒ぎになって、対策の弊害が生じるからだ。
 「何もしないでいい」と言ったが、「本当に何もしないでいい」ということではなく、「特別なことは何もしないでいい」ということだ。なすべきことは、ある。それは、「季節性インフルエンザ対策と同じことをやれ」ということだ。
 そして、それだけで十分なのである。特に豚インフルエンザに絞った対策は、必要ない。やれば、無駄な騒ぎばかりを生むし、「百害あって一利なし」に近い。

  ────────────

 [ 補足 ]
 「大阪の一斉休校は有効だった」
 という記事がある。( → 朝日新聞 2009-05-23
 また、その趣旨で、「一斉休校は効果的」と主張する人もいる。
 だが、こういうのは我田引水というものだろう。「季節の温暖化」による収束を、一斉休校のせいにしてしまっている。
 仮に、これが事実だとすれば、大阪以外のことは、どう説明するのか? 大阪以外でも、同時期の北半球各地で、鼻風邪や季節性インフルエンザや豚インフルエンザの数が減っている。これも、大阪が一斉休校したおかげなのか? 大阪で一斉休校したから、東京やニューヨークでも、豚インフルエンザが収束しつつあるのか? まさか。
 一斉休校というものは、拡散速度を遅くする効果があるだけで、ウイルスを抑止する効果はほとんどない。ウイルスを抑止するのは、温度と湿度だ。そのことは、冬の場合を考えるとわかる。冬に一斉休校したら、インフルエンザを収束させられるか? まさか。学校だけ休校しても、しょせんインフルエンザは冬には流行する。温度と湿度という条件を満たさない限り、一斉休校なんてほとんど無意味なのだ。

 《 注記 》
 「一斉休校をしていない世界各国でも、豚インフルエンザは大阪と同様に収束した」ということを裏付けるデータがある。下記。
  → Wikipedia のグラフ
 (増加が頭打ちになっていることがわかる。)



 [ 付記1 ]
 「秋には何もするな」
 というのは、風変わりな意見に思えるかもしれないが、これは私の独自の見解ではない。実は、はっきりとは言わないが、同じことを実施している国は、他にもある。というか、世界中のほとんどの国がそうだ。「十日間の強制隔離」だの、「一斉休校」だの、そんなことをやった国は、日本ぐらいだろう。
 現在、オーストラリアでは、感染者が急増しているが、政府はまさしく「何もしない」のである。( → 前項の最後 )
 ちょっと毛色の変わった季節性インフルエンザみたいなもので、あたふたと騒ぐのは、世界広しといえども、東洋の島国の愚民だけだ。

 [ 付記2 ]
 「にはどうするか?」
 という話題もある。「秋には何もしないでいい」として、冬にはどうなるか? 
 実は、本項では、「冬にはどうするか?」という話題を、あえてはずしておいた。タイトルも「秋にはどうするか」だけであり、「秋冬にはどうするか」ではない。ここでは、「冬」という文字が抜けている。
 では、なぜか? なぜ、「秋冬には何もするな」と書かず、「秋には何もするな」と書いたのか? 
 実は、「冬にはどうするか?」というのは、話題にならない。回答だけを言うならば、「冬には何もするな」と言える。
 だが、その回答の前に、「冬にはどうするか?」という質問は、上がらない。その質問は、呈示する価値がない。
 なぜか? いちいち呈示して考えても考えなくても、「冬には何もしない」という方針が自動的に取られるからだ。

 秋にどんなに対策をしても、必ず感染者は増える。その間、感染者は奇異の目で見られるだろうが、とにかく、感染者はどんどん増えていく。冬になる前に、相当の数になる。そして、冬になると、さらに莫大な数に増えて、大流行になる。
 こうなると、政府のなせることは、もはや何もなくなる。つまり、「冬には何もしない」という方針が自動的に取られる。何かをなしたくても、何もなせない、ということが、否応なしに判明するのだ。

 そして、それは、普通の季節性インフルエンザの場合と同様だ。普通の季節性インフルエンザに対して、政府がなせることは、何もない。せいぜい、「うがいをして、手を洗って、マスクをしましょう」と言うことぐらいだ。だが、ガキじゃあるまいし、そんなことをいちいち教わるまでもない。

 こうして、「冬には何もするな」と言わなくても、自動的に政府は、「冬には何もできない」という結果に至る。
 だから、「冬には何もするな」と私がいちいち言うまでもないのだ。政府はそのことを、否応なく、知るハメになるのだ。秋の終わりごろには。
( ※ 馬鹿な政府は、秋になる前には真実には気づかないだろうが、秋の終わりには、さすがの馬鹿でさえ気づくようになるだろう。……そして、それは、この5月に起こったのと、同様だ。舛添も橋下も、さんざん大きなことを言っていたが、五月下旬には腰砕け。「一斉休校なんて、たとえやったとしても、いつまでも継続するのは無理」ということを、否応なく知るハメになった。)

 [ 付記3 ]
 政府とは別の話題を述べよう。余談ふうの話題。
 国家ではなく企業レベルでなら、「なすべきことは何もない」とは言えない。なせることは、ある。たとえば、次の機器
  → http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090522/330426/
 これは、人を熱線感知するサーモグラフィだ。このことで、体温を推定して、感染の疑いのある人を探り当てる。

 さて。これはいかにも人権侵害みたいな感じもするので、私の批判を期待する人もいるだろう。しかし、私としては、企業がこれを導入することに、賛成する。
 なぜか? これは、豚インフルエンザに限らず、あらゆるインフルエンザに適用していいことだからだ。

 この機器のなすことは、
 「風邪気味の人は会社から締め出す」

 というふうにとらえると、人権侵害みたいにも思えるが、実は、
 「風邪気味の人は出社するな(病欠しなさい)」

 ということなのだ。とすれば、それは、かえって親切だ。(日雇いでなければ、病欠は給与が保証されるし。)

 そもそも、豚インフルエンザでなくて、季節性インフルエンザであっても、「風邪気味の人を休ませる」という方針は、結構なことだ。逆に、熱の出た社員を無理に働かせる方が、よほど非合理的だ。社員がみんな感染するかもしれない。
 だから、豚インフルエンザを期に、「風邪気味の人は出社するな」という方針を立てるといいだろう。

 ただし、そのためには、サーモグラフィは必要ない。そんなものはなくても、各人が自分で体温を感じて、そのあとは体温計で測ればいい。できれば職場に体温計を常備するといいだろう。

 ともあれ、会社レベルでなら、なすべきことはある。また、個人レベルでも、うがいや手洗いなど、なすべきことはある。国民のレベルでは、なすべきことはある。
 そういうことは、国が「何もしない」というのとは、話の次元が異なる。ここでは、「何もするな」というタイトルを読んで、誤読しないよう、注意してほしい。日本人全員に向かって、「何もするな」と述べているわけではない。

( ※ いちいち子供に噛んで含めるような書き方をして、ごめんなさい。というのは、トンデモマニアというのが、勝手に誤読して文句を言うから、いちいち解説してあげないと、彼らにはわからないんですよね。読解力のせいでしょうけど。  (^^); )
posted by 管理人 at 21:02| Comment(3) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。いつも貴ブログは興味深く拝読いたしております(太陽光発電の件や今回のインフルエンザの件など)。

そこで一読者としての愚問があるのですが、南条さまは当ブログの各所で、今後高温多湿になる夏期になれば、豚インフルエンザは自然に収束するというようなことをお書きになっていらっしゃいますが、一方で数年前より強度の致死性から恐れられている鳥インフルエンザは、インドネシアから東南アジアといった典型的な熱帯〜亜熱帯の高温多湿地帯で多発している事実はどのように整合性を見出したらよいのでしょうか?

私としても、今回の厚生労働省や首相官邸主導としか思えないパニック騒ぎは、明らかな行き過ぎであり、「こんな大騒ぎには惑わされまいぞ!」と冷ややかに見ていたのですが、一方で本当に高温多湿に向かうという気候的な条件のみで収束するのかという現実的な不安もまた抱いているものでして・・・
Posted by 三河屋 at 2009年05月27日 10:00
既にご覧にになっておられるかもしれませんが、ご参考まで。

「厚生労働省の新型インフルエンザ対策は誤りであるどころか、犯罪的ですらある、と医師であり現役の厚生労働省医系技官である木村もりよ氏は告発する。・・・」

http://diamond.jp/series/tsujihiro/10071/
Posted by 中村 at 2009年05月27日 15:01
> 三河屋

 鳥インフルエンザは人間には原則、感染しません。Wikipedia 参照。
 別の病気だし、別のウイルスですから、気にしないでいいでしょう。冬だろうが夏だろうが、「そんなの関係ねえ」。

> 中村

 ご連絡ありがとうございました。別項に記します。
Posted by 管理人 at 2009年05月27日 18:42
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