2009年05月23日

◆ 豚インフルエンザの重症度

 豚インフルエンザの感染者は現在、3百余名。しかし、重症者や死者はゼロ同然だ。このことから、豚インフルエンザについては特に危険視しなくていい、とわかる。 ──

 (1) 感染者数

 豚インフルエンザの感染者は現在、3百余名。近畿圏だけで3百名程度になっている。大阪府は「一斉休校」という措置を取ったが、感染者はどんどん増えている。(本項を書きはじめたあとでも、その日のうちにどんどん増えている。もはや止めようがない。)
 橋下知事は「一番重要なのは7日間一斉休校し、(感染を)ばしっと止めて通常のインフルエンザ対応にかじを切ること」と述べたが、あっけなく、その狙いははずれたわけだ。
 だが、当り前のことである。私の予想通り。( → 病気よりもパニックの拡大

 (2) 重症者

 感染者は急増しているが、重症者や死者はいまだ出ていないようだ。出ていれば、マスコミが大々的に報道するだろうから。3百名ほどいて、重症者や死者が出ていないとしたら、予想よりは少ない、とも言える。季節性インフルエンザならば、重症者や死者はもっと出ていただろうから。
 では、なぜ? この件は、「若者に感染者が多い」ということと、いくらか関係するかもしれない。行動量の多い若者が感染するのが先で、家に閉じこもりがちな高齢者・幼児・病人は感染しにくい、ということだろう。感染者数が少ないうちは、こういうことは起こる。

 (3) 病原性

 重症者や死者は出ていないということから、病原性(感染力でなく激しさ)については、次のように言えるだろう。
 「豚インフルエンザは、それ自体では、致死的ではない。特に、発症後、数日以内にタミフルを飲めば、容易に治癒する。ただし、高齢者や慢性疾患の患者では、死ぬこともある。その理由は、豚インフルエンザ自体の病原性ではなくて、豚インフルエンザが『最後の一撃』を加えることだ」

 つまり、もともと健康が衰えていて、死にかけている人ならば、あとちょっと健康を悪化させることで、死んでしまう。「最後の一撃」が加わる。
 そういう作用を、豚インフルエンザがもたらすことはある。しかしそれは、豚インフルエンザが致死的な病気だということとは違う。
 つまり、病気で死者が出るということと、病気が致死的であることとは違う。……混同しないようにしよう。(ここを混同して、「豚インフルエンザは致死的だ」と毒薬扱いする人もいるが。)
 当然ながら、健康な人は、豚インフルエンザにかかって死ぬことはない。また、「最後の一撃」の作用で死者が多数出るということは、季節性インフルエンザの場合と同様である。

 (4) 統計のインチキ

 豚インフルエンザの病原性を計るために、しばしば次の数値が計算される。
 「感染者のうち、死亡した人の数」

 この比率を計算して、「致死率が5%」というような数字が一人歩きする。
 しかし、この計算は、おかしい。というのは、「感染者」の数が曖昧だからだ。病院に来ない人もいるし、病院に来ても「豚インフルエンザ」と判定されない人もいる。
 日本では死者が出ていないので、メキシコの例で考えよう。
 メキシコの場合では、遺伝子検査までして「豚インフルエンザ」と判明した人は、重症者ばかりだろう。重症者ばかりを見て、「致死率が5%」と判定するのは、おかしい。実は、このような選別を経た検査であるなら、「致死率が 100%」という数字が出てもおかしくない。
 たとえば、メキシコで、インフルエンザで死んだ人の死体を検査する。すると、豚インフルエンザの患者がいくらか見つかる。たとえば、30人中の 10人。その 10人については、「豚インフルエンザだ」と判明する。検査した豚インフルエンザ患者が 10人で、死者が 10人。したがって、「致死率は 100%」となる。(死者だけ検査したのだから当然だ。死ななかった患者は、遺伝子検査されていないので、豚インフルエンザと認定されない。)
 こうして、「致死率は 100%」という数字が出る。これは統計のインチキだ。そういうインチキが起こりがちだ。

 (5) 正しい統計

 そこで、正しい統計の取り方を示す。次のようにすればいい。
 「感染者、重症者、死者のグループに分ける。それぞれのグループごとに、季節性インフルエンザの患者と、豚インフルエンザの患者との、比率を調べる」

 こうして得られる数値は、「季節性インフルエンザの患者と、豚インフルエンザの患者との、比較」だけである。そこから得られる結論は、
 「豚インフルエンザ自体は、どれだけ危険性が高いか」

 ということではなく
 「豚インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて、どれだけ危険性が高いか」

 ということだ。
 つまり、絶対的な危険性でなく、相対的な危険性だ。
 
 (6) 推定

 では、その結果はどうなるか? まだ調査されていないから、結果はわかっていない。ただし、推定はできる。私の推定では、次のようになるはずだ。
 「豚インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて、危険性は同程度である」

 さらに言うなら、統計の効果で、逆のことが出るはずだ。
 「豚インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて、危険性は低い」


 現実には危険性は同程度でも、統計の効果によって、「危険性は低い」という統計結果が出るはずだ。その理由は、次のことだ。
 「豚インフルエンザについては、免疫のない若者が感染しやすい。そのせいで、感染者数が増える。その一方、若者は重症化しにくいので、死者数は増えない。分母は大きくなるが、分子は変わらないから、比率は下がる」


 一般に、インフルエンザで重症化したり死んだりするのは、高齢者や慢性疾患の患者だ。そういう人々は、若者のなかには少ない。だから、重症化したり死んだりする人は、あまり増えない。その一方、若者は感染しやすい。こういうことから、統計の効果によって、「危険性は低い」という結論が出るはずだ。たとえ現実には危険性は同程度であるとしても。
( ※ 流行の初期に起こる現象。)

 逆に言えば、現状のように、「感染者が3百余名で、重症者や死者の数がゼロ同然」という状況があっても、「だから豚インフルエンザは季節性インフルエンザよりも軽い病気だ」と即断するべきではないのだ。重症者や死者の数がゼロ同然というのは、統計の効果にすぎないからだ。
 当然ながら、冬になれば、高齢者や慢性疾患の患者が感染して、「最後の一撃」を加えられるから、死者数は多大になるだろう。数百名から数千名が死ぬと予想される。……だが、それをもって「危険だ」と即断するのも、やはり勘違いだ。同様のことは、季節性インフルエンザでも成立するからだ。

 ──

 結論

 豚インフルエンザの感染については、感染者数や重症者・死者の数について、いろいろと情報が流れる。ただし、その情報の意味を、正しく理解するべきだ。即断して勘違いしてはならない。
 「5月中に感染者が増えたから危険だ」
 「5月末まで死者が出ていないから安全だ」
 「冬になったら死者がたくさん出るから危険だ」
 というふうに、数字を見て即断して、勘違いしてはならない。数字には数字の意味がある。マスコミは、数字だけを速報して、「危険だ」と騒ぎ立てるだろうが、数字の意味を正しく理解する必要がある。
 そして、そのために必要なのは、医学的知識ではない。統計の知識であり、科学的合理性の知識だ。



 [ 付記1 ]
 大切なのは、統計の知識であり、科学的合理性の知識だ。
 だが、悲しいかな、その知識のある人は少ない。「タミフルと異常行動」という例を見ても、そうだった。「タミフルを飲まなくても異常行動は起こる。ゆえにタミフルは異常行動を引き起こさない」と結論した医者が多かった。
 医者の方がかえって医学について正しい結論を出せない、ということはあるのだ。「医者は医学の専門知識がある」と自惚れている医者ほど、自分の科学的合理性の欠如に気づかないものだ。

 [ 付記2 ]
 しばしば見るが、医者には、二通りある。
  ・ 尊大で、患者に威張り散らす医者。
  ・ 謙虚で、患者に優しい医者。

 前者は、「おれは利口だ」と自惚れているがゆえに、かえって間違いをすることが多い。
 後者は、「おれは利口じゃない」と常に自己反省をするがゆえに、かえって間違いを犯さない。
 医者にかかるときは、その医者がどちらのタイプであるか、よく見極めておいた方がいいだろう。

  《 参考 》

 二通りの医者という件は、前にも述べた。
   → この項目の [ 余談 ]
   → この項目の [ 付記2 ]
 
 ※ それにしても、どうしてこういうふうに極端に二分されるのか?
   不思議ですね。医者というのは。一般人とは違う。
posted by 管理人 at 18:25| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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