2009年05月23日

◆ 高齢者と免疫

 「中高年ならば、ソ連風邪にかかった経験があるから、同じ型(H1N1型)の豚インフルエンザにも免疫がある」と言えるか? ──

 前項では、「若者には罹患の経験がなく、免疫がない」と述べた。
 では、「中高年ならば、罹患の経験があるから、免疫がある」と言えるか?

 ある程度はそう言えるだろう。だが、すっかりそう言い切ることもできないようだ。免疫のある中高年は、3分の1にすぎない、という調査がある。
 米疾病対策センター(CDC)は21日、季節性インフルエンザの予防接種は新型インフルエンザに対して効果が薄いことを示唆する研究リポートを発表した。
 CDCは、2005〜09年の間に、普通の季節性インフルエンザの予防接種を受けた大人と子供計約 350人の血清を欧米の研究機関から収集。人間の免疫がウイルスに反応してできる抗体が含まれているか調べた。
 その結果、60歳以上では、33%が新型にも反応する抗体を持っていた。一方、若年層では6〜9%にしか見つからなかった。
( → 読売新聞 2009-05-22
 この記事は、前項の記事に似ているが、別の情報を示している。
 前項の記事では、「 1957年生まれ以降(52歳以上)の大部分が免疫を持っている」という趣旨だった。
 今回の記事は、「60歳以上では、33%が新型にも反応する抗体を持っていた」ということだ。高齢者には免疫が残っていたのだが、それでも、たったの 33%にすぎない。半分にも満たない。これは、前回の記事に反する。

 どちらかと言えば、今回の記事の方が妥当だろう。サンプル数が多いし、ちゃんと調査している。

 ──

 さて。33%という数字がある。これを、どう評価するべきか? 
 私としては、「これは予想通り」と言える。そもそも、A型の免疫は、残りにくいからだ。(B型、C型とは違う。)
 前項の記事の主張について、私は先にいくらか否定的な評価を与えたが、そのことは、今回の記事からも裏付けが取れる。
 とはいえ、前項の記事が全面否定されるわけでもない。33%という数字は、ゼロではなく、かなり高い数字だからだ。
 また、若者の数字(数%)と比べても、4倍ぐらい高い数値だ。その意味で、「若者には免疫がなく、若者が罹患しやすい」という傾向は、ちゃんとあるわけだ。
 本項の記事(上記)では、前項の記事が少し修正された、と言えるだろう。

 結論。

 「若者と違って、中高年については、過去の免疫が残っている」
 という説がある。これについては、全面肯定でもなく、全面否定でもなく、部分肯定と見なしていいだろう。3分の1ぐらい正しい、となる。



  ※ 以後は読まなくてよい。

 [ 付記1 ]
 閑話休題。
 冒頭の記事の趣旨は、本項の話題とは別のことだ。「季節性インフルエンザのワクチンは、新型インフルエンザにも有効か?」という問題への回答だ。
 結果は「ノー」だ。朝日の記事から引用しよう。
 8歳以上では季節性ワクチンの接種で新型ウイルスに対する免疫ができるものの、そのレベルは低く、9歳までの子どもは免疫反応がほとんど見られなかった。
 一方、60歳以上の高齢者の約3割は、季節性のワクチン接種を受ける前から新型ウイルスに対する一定の免疫を持っていることがわかった。
( → 朝日新聞 2009-05-22
 つまり、記事の主題は、ワクチンの話。この調査でついでに、次のことが示された。
 「季節性インフルエンザへの免疫があるとしても、豚インフルエンザへの免疫にはなりにくい。ただし、免疫になりにくいのだが、免疫になる人もいて、それは高齢者に顕著に窺える」
 これを本項は扱った。

 [ 付記2 ]
 では、その理由は? 私見では、
 「A型インフルエンザに何度もかかった経験のある人ほど、免疫の幅が広範になる」
 ということかもしれない。これは仮説だ。
 一方、別の仮説も成立する。こうだ。
 「高齢者では、ウイルスのタイプに合わせてきっちりと免疫ができるのでなく、ついでにさまざまな免疫がいっしょにできてしまう。粗雑な免疫。そのせいで、同種のウイルスが一網打尽で、免疫対象となる」
 これも仮説。
 いずれも仮説だから、正しいかどうかは、全然わからない。
posted by 管理人 at 18:24| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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