2009年05月12日

◇ [ 補足 ] 黄金週間の一斉休診

 病院は、黄金週間に一斉休診をしている。これについて論じる。
 ( 前項前々項 の補足。) ──

 本項では、黄金週間の一斉休診を取り上げる。(豚インフルエンザに関連して。)
 ただし、注意。ここでは、医師の悪口を言いたいわけではない。「医師には社会医療政策の視点が欠落している」というふうに、医師の視野の狭さについて論じるだけだ。
 そして、そのことに医師が気づいてくれれば、それでいい。医師を非難する意図はない。

 一斉休診の事実

 黄金週間には、医師の一斉休診が見られる。まずはその事実を例示する。
 ネットで「連休 休診」を検索すると、たくさんの情報が得られる。上位から例を取って適当に示す。以下はいずれも、黄金週間の連続休診だ。(いちいちリンク先を見る必要はない。)

  → http://hamamoto.st.wakwak.ne.jp/news/14-90234f11306e4f118a3a65e5
  → http://totsuka-hp.cocolog-nifty.com/sakura/2009/04/post-415c.html
  → http://www.odawara.kanagawa.med.or.jp/golden%20week.pdf
  → http://www.tsukuba-kinen.or.jp/info/20090427_renkyu.htm


 三番目の PDF ファイルでは、たくさんの例が出ていて、表になっている。これを見ると、5/3〜5/6 の4日間は、(その地域で)医師全員のストライキに近い。5/2 も半数近くが休診。 4/29 もやはり同様で、医師全員のストライキに近い。(医師というより病院だが。)
 普段の週末もわかる。日曜日は医師全員のストライキに近い。ただ、土曜日は半分ぐらいは開いているらしい。とすれば、一日我慢すればいいから、何とかしのげそうだ。
 一方、四日間の連続休診というのは、相当にきつそうだ。この四日間に急病になった人は、かなり悲惨だろう。

 実際に困った患者の例もある。かわいそうに。
  → 知恵袋

 社会医療政策の問題

 この問題の本質は、どこにあるか?
 「医師が休みを取ることはけしからん」というようなことではない。医師だって人間なのだから、休みを取ることは必要だ。
 問題は、休むこと自体ではなく、一斉休診ということだ。つまり、医師全員のストライキだ。そして、その本質は、次のことにある。
 「医師は、自分の医院のことしか考えない。半径1キロぐらいのことしか考えない。その際、社会全体を見通す視野が欠けている。つまり、社会医療政策の視野が欠けている」


 これはどういうことかというと、「ミクロのことは考えるが、マクロのことは考えない」ということだ。その意味は、次のことだ。
 「自分が休診することで近在の患者に迷惑がかかることはわかるが、医師たちの全員がいっせいに休診することで社会全体に途方もなく迷惑がかかることを考えない」


 具体的に言おう。医師というものは、次のように考えるものだ。
 「自分が休んだって、それで迷惑を受ける患者は数十人に限られる。その数十人は、他の医者が引き受けてくれればいい。他の医者に任せて、自分は休もう」

 なるほど、普段ならば、それで問題はない。しかし、世の中の医者が全員そういうことをしたら、どうなるか? 「他の医者が引き受けてくれる」ということが成立しないから、患者は行き場所がなくなる。
 これがつまり、「ミクロのことは考えるが、マクロのことは考えない」ということだ。換言すれば、社会医療政策のことを理解しない、ということだ。ここには、医師の視野の狭さがある。

 医師の尊大さ

 この問題は、心ある医者なら、気づいている。だから、連休の当番医というような制度で解決しようとする動きもある。確かに立派な医者は少なからず存在する。頭が下がる思いだ。(私も感謝している。)
 しかしながら、残念なことに、大多数の医者はそうではない。その証拠が、社会的な「一斉休診」という事実だ。
 しかしまあ、ここには、「マクロ的な社会医療政策には気づかない」という医師の無知もあるだろうから、ある程度は仕方ない。悪意があるとは言えない。
 とはいえ、まさしく悪意があると思えるような、ひどい例もある。それが、豚インフルエンザにおける診察拒否だ。

 この件は、前項・前々項で述べたとおり。世の中には、ひどい医者がいて、ああだこうだと弁解したあげく、診察拒否の自己正当化ばかりをしている。そして、そこでは、「自分が診察拒否をしてもいい」ということばかりを述べていて、「社会全体の医者が診察拒否をしたらどうなるか」ということがまったく考えられていない。
 そこには、「自分の医院さえよければいい」という発想だけがある。「医者が全員、なすべきことをしないで、診察拒否をしたら、社会的にどうなるか」という視点はない。

 たとえば、医師のうちには、「豚インフルエンザかどうかわからないから、診察拒否する。保健所へ行け」と応じる人もいる。
 しかし、医師たちの全体がそんなことをしたら、どうなるのか? 季節性インフルエンザの患者は多数になるのに、「豚インフルエンザかどうかわからないから、季節性インフルエンザの患者はみんな保健所へ行け」と言い出したら、どうなるのか? 
 そういうことが全然わかっていない。「自分一人が診察拒否をして患者を保健所に回しても問題ない」とだけ考えて、「全員がそうすればどうなるか」ということを理解できない。
 このような医師の視点の狭さが、本項の主題だ。

 なお、この主題から、次の二つの問題が導き出される。
  ・ 黄金週間における一斉休診
  ・ 豚インフルエンザにおける診察拒否


 前者(黄金週間における一斉休診)については、このあとで述べる。(ただし読まなくてもよい。)
 後者(豚インフルエンザにおける診察拒否)については、前出項目で述べたとおり。本項では繰り返さない。
 ただし、後者(豚インフルエンザにおける診察拒否の問題)について、ちょっとだけ加筆しておこう。
医者はインフルエンザの患者を恐れるべきではない。患者が季節性インフルエンザであろうと、豚インフルエンザであろうと、どっちでも診察すればいい。
 患者が豚インフルエンザである可能性は、万に一つぐらいしかない。そして、万に一つの可能性にぶつかっても、全然構わない。温暖な現時点では、感染する可能性はほとんどない。
 また、感染したって、どうってことはない。豚インフルエンザなんて、ちっとも怖くないのだ。ありふれた季節性インフルエンザの変種みたいなものについて、大騒ぎをする必要は全然ないのだ。

 黄金週間の一斉休診

  ※ 以下は、特に読む必要がありません。
    豚インフルエンザの話でなく、社会医療政策の話です。

 前項で示したように、
  「医者にストライキは許されない」
 という原則は、黄金週間の一斉休診で踏みにじられている。これについて、詳しく論じよう。細かな話を順々に述べる。
( ※ 面倒臭い話なので、医療関係者以外は読まなくてよい。医療関係者からツッコミが来ることが予想されるので、そのツッコミへの釈明をあらかじめ説明しておくだけだ。普通の人には、あまり関係のない話。)

 (1)
 現実に、このこと(黄金週間の一斉休診)は成立している。事実関係については、特に論じない。誰もがわかるはずだからだ。
 (2)
 ただし、(真に)医者全員のストライキというわけではなくて、休みでない病院もある。特に、救急医療はちゃんとやっているようだ。その意味で、完全な同盟罷業(スト)ではない。
 (3)
 とはいえ、完全な同盟罷業(スト)ではなくても、それに近い状態にある。とすれば、社会的には問題がある。
 なるほど、「病院が休むときには、自然に患者も減る」という事実はある。しかし、患者が減るとしても、病気や事故の数が減るわけではない。とすれば、患者は病気や事故を我慢しているだけだ。そのことを勘違いしてはならない。問題は確かにある。
 (4)
 問題はあるが、あまり顕在化しない。なぜなら、被害は致死的ではないからだ。致死的な場合には、救急医療があるから、大丈夫。問題は、それ以外だ。
 (5)
 最大の問題は、患者が「死ぬこと」ではなくて、患者が「病状を悪化させること」だ。病院が休んでいれば、患者は我慢する。我慢すれば、(死ぬことはなくても)病状は悪化する。
 一般に、病気というものは、早期医療が原則だ。病気になったら、治療は早ければ早いほどいい。悪くなるまで我慢していればいるほど、治療に多大な手間がかかるので、本人も損するし、社会的にも損をする。
 にもかかわらず、黄金週間には、医者全員のストライキに近い問題が起こっている。この問題は、何とかして、解決するべきだ。
 (6)
 とはいえ、医者に対して、「休むな」というだけでは、問題は解決しない。ろくに休みも取れないのでは、医者のなり手がいなくなる。だから、「休むな」という結論は出さない。
 (7)
 では、どうするか? 次の二点が条件となる。
  ・ 一斉休診という全員ストライキ状態をなくす。
  ・ 医者はちゃんと休みを取れる。
 この二点を満たす方針を取ればいい。
 (8)
 では、そのような方針は、あるか? ある。次のことだ。
 「一斉休診ではなくて、半分ずつの休診」
 黄金週間の前半は半分の医者が休み、黄金週間の後半は残り半分の医者が休めばいい。そうすれば、常に半分の医者が勤務している。そのことで、医者全員のストライキの状況は解消される。
 (9)
 半分だけで足りるか、と言えば、何とか足りるだろう。一斉休診の今でさえ、形の上では足りているのだから。ま、連休中は、旅行に出掛けたりして、不要不急の病院通いを休みたがる患者も多いだろうから、半分の医者がいれば、何とかなりそうだ。
 (10)
 ただし、このような施策をするに当たっては、医者の一方的な犠牲を求めるべきではない。国民の便利さのために医者が犠牲になるべきではない。(医者ばかりを犠牲にするのは悪い癖だ。)
 では、どうすればいいか? 金で片付ければいい。次のように。
 「休日の診療には、割増金を取る」
 具体的には、次の案がある。
 「休日の診療には、1回につき 1000 〜 2000円程度の割増金を追徴する。この分は、保険による補填をしないで、全額を個人負担とする」
 このことで、医者を増やし、患者を減らす。
 (11)
 これは、うまい案だ。
 患者である私としても、これはこれで異存ない。ふだん忙しいときに治療できないことを、黄金週間にまとめてやってもらえるのならば、こんなにありがたいことはない。 1000 〜 2000円程度の割増金ならば、喜んで支払う。旅行で1万円も使うくらいなら、病院で待たされないために 1000 〜 2000円を払う方が、よほどいい。待たされないという利益が得られるのなら、5000円払ってもいい。
 医者は医者で、ありがたいだろう。一人あたり 2000円を余分にもらって、6分間診療。1時間で 2万円。1日で 15万円。それを看護婦や病院と分けあっても、5万円の休日手当になる。しかも、患者の数は、いつもより少ないので、気楽だ。個人診療所なら、1日で 10万円の増収になる。黄金週間には、旅行するより、仕事をした方が得だ、と思うだろう。そして、黄金週間に働いて、かわりに、その前後の週日を特別休診として、ハワイでバカンス。
 (12)
 要するに、医者は、みんなでストライキなんかをするよりも、みんなで休みをうまく分かちあう(調整する)方が、ずっと得なのだ。だから、そういうことができるように、政府に働きかけるといいだろう。「休日割増金」という形で。
 (*)
 結局、何が言いたいかというと、「医者は社会医療政策の視野をもて」ということだ。自分の病院のことだけを考えているのでは駄目だ。もっと広い視野が必要だ。そして、その際、特に自己犠牲をする必要はない。上記のように工夫すれば、同じ日数を休めて、かつ、多くの収入を得ることができる。それでいて、患者も喜ぶ。しょせん、「一斉休業」というストライキは、誰もが損するのである。そんな馬鹿げたことをするよりは、もっと頭を使うべきだ。……そういう趣旨。

  ────────────

 【 追記 】
 上述のことについて、読者から正誤訂正の指摘が来た。
 「休日・夜間の特別加算料金は、すでに実現済み」
 ということだ。
 そこで、調べたところ、このことはたしかに実現している。ただし、部分的に。
 以下、記事を紹介しよう。(いずれも新聞から孫引き)
 岡山赤十字病院(岡山市青江)は、夜間や休日に受診した軽症患者に、医療費に加えて一律3150円の特別料金(時間外選定療養費)を負担してもらう制度を岡山県内で初めて導入する。過密となっている救急診療の患者数を抑制し、重症者への治療体制を維持するとともに、医師の負担軽減を狙う。
 都市圏などを中心に一部の医療機関がすでに実施しており、同病院の取り組みが効果を上げれば、県内の他の医療機関でも追随する可能性がある。一方で患者が受診を控えかねないとの懸念や重症・軽症の線引きの難しさから、適切な運用が求められそうだ。
 特別料金は、12月1日午前零時から適用。
( → 山陽新聞 2008年10月13日

 正規の診療時間外の夜間、休日に救急外来を受診する軽症患者から数百−数千円の「特別料金」を徴収する動きが一部の公的病院などで始まっている。
 医師不足が深刻化する中、軽症患者の安易な受診を抑制して重症患者の診療に一層力を入れ、勤務医の過重労働も軽減する狙い。円滑な実施には地域住民の理解と協力が欠かせず、地方議員からは重症患者まで受診を控えることを心配する意見も出ている。
 特別料金徴収は以前から認められており、厚生労働省によると、2002-04年には全国で約 150の医療機関が実施。徴収を近年始めた公的病院などは、公的医療保険に本来請求できる診療報酬の「時間外加算」分を患者の自己負担とする考え方で特別料金を徴収。金額は、導入前年度の時間外軽症患者の平均受診料とする病院もある。
( → 共同通信 2008/10/20

 徳島赤十字病院(小松島市)が4月1日から、夜間や休日に受診に訪れた軽症患者から「時間外料金」を徴収し始めたところ、今年4、5月の時間外に訪れた患者は3409人で、前年同期の半分以下に減少したことがわかった。今のところ、患者側からの苦情やトラブルは出ていないという。
( → 読売新聞 2008年7月3日
 というわけで、全国的には まだまだ であるが、一部ではちゃんと実現しているわけだ。
 とすると、制度的には問題がないようだ。あとは普及だろう。普及させることが必要だ。
 せっかく増収のチャンスがあるのだから、病院側も、せっかくの制度を利用してもらいたいものだ。

 ※ 制度はあるが、現実には、この制度はほとんど利用されていない。
   その結果が、「一斉休診」という現状だ。その意味で、本項の趣旨は、
   特に書き改める必要はないと思う。ただ、若干、注記を加えたわけ。
 ※ なお、加算金額は、かなりバラツキが見られる。2000円〜5000円程度。
   自由料金に近いようだ。



 [ 参考 ]
 オマケふうに、関連する話題を述べる。参考として。
 次の報道がある。
 医者がストライキをすると、死者数はかえって減ってしまった

 これはびっくり、意外な出来事。
 では、なぜ? 医者は次のように理由を推察しているそうだ。 
 「救急患者に限って診察したので、労力を重症患者の治療に集中することができたからだ」

  → http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/ishagadamasu/185sutoraiki.htm

 以下は、私の考察。特に読まなくてもよい。
「医者がストライキをすると、死者数はかえって減った」というのは事実だろう。ただ、本当は、次のことが理由だと私は思う。
 「手術の件数が大幅に減ったのが理由。そのことで、手術の失敗による死者も減ったが、それより何より、手術を受けるような重症の患者がそろってストの市外へ逃げ出した」
 つまり、既存の患者をうまく治療できたからではなく、新たな患者が来なくなった。その患者たちは、市外に行って、別の病院で死んだ。ストをしているAという市では死者数が激減したが、その分、ストをしていないB,C,Dという各市ではいずれも死者が激増した。
 つまり、統計のトリック。そういうことじゃないですかね? 全体での死者数は同じであるわけ。

 ま、仮に、全体での死者数が減っていたとしても、医者のストライキが正当化されないのは、当然だ。たとえば、次の患者がいる。「花粉症」「高血圧」「皮膚病」「ヤケド」「外傷」「異常出産」……これらは、特に生命には影響しないとしても、人の健康を損ねる。その意味で、「死ななきゃいい」ということにはならないのだ。「殺さなければ、ぶんなぐってもいい」ということにはならないのだ。
 その意味で、「死者を減らすためには、医者がストをすればいい」というような珍説は、成立しない。当り前だけど。
( ※ この珍説は、上記リンクで示されている。) 
posted by 管理人 at 18:59| Comment(4) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
開業医の診察時間や曜日が横並びなのは、日本医師会の顔色を伺っているから。GWの休みも横並び感覚ではないでしょうか。

しかし開業医の優遇税制が続くのも日本医師会のおかげなので、足並みが揃ってしまう訳です。

一方、時間外の対応等は救急病院の勤務医(医師会の対象外)にしわ寄せが。時間外や休日に、割増料金を個人負担する案には大賛成です。2000円じゃ足りないかも知れませんが...
Posted by らんま at 2009年05月13日 00:03
> 2000円じゃ足りないかも知れませんが...

そう言われてみるとそうかな、という気もしたので、よく考えてみると……

これは市場原理で決めるのが一番ですね。どうせ健保で負担するわけじゃないから、自由料金にしてしまえばいい。高すぎれば患者は来ない。低くすぎて患者が来すぎたら、今度は高くすればいい。市場原理でうまく決まるでしょう。人気のある大病院ほど高額になるとしても、別に問題はない。ただのサービス料金だから、どっちだって構わない。治療費はどうせ従来通りだし。
 私が医者だったら、軽症の患者には、応急手当てしてから、「急がなくていいから、明日また来てください」と言うだけにする。それで 2000円余計に取れれば、言うことなし。
Posted by 管理人 at 2009年05月13日 00:11
休日夜間時間外は元々割増料金になってますけど。

それから、たいがいの病院は完全閉店するわけじゃ
なく、緊急対応用にドクター以下スタッフを配置し
てます。念のため。
Posted by えむ at 2009年05月13日 13:30
最後のあたりに 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2009年05月13日 19:14
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