2009年05月11日

◆ 強制的な隔離の弊害

 強制的な隔離が実行されている。だが、これには弊害もある。「十日間も隔離されるのならば、申告をやめたい」と思う人が出るだろう、ということだ。 ──

 前項で述べたように、現在、感染容疑者に対し、強制的な隔離が実行されている。もちろん、感染容疑者だけでなく、感染者もだ。
 しかし、このように十日間も隔離することは、本来、必要ない。なのに、十日間も隔離されると、本人には経済的な損失( or その他の損失)が生じる。その損失を、国が補填してくれるわけではない。
 とすれば、
 「十日間も軟禁されるのはイヤだから、感染の疑いがあっても、申告をやめよう」
 と思う人が出るだろう。全員がそうだとは言わないが、何割かの人々はそう思うだろう。……これが私の懸念だ。
( ※ たとえば、高校生の場合、十日間の隔離が理由で、大学受験に失敗し、1年間の浪人を余儀なくされるかもしれない。そういうのを嫌がるのは当然だ。)

 とすれば、むやみやたらと過剰に「隔離」の措置を取ることには、弊害がある。隔離をしようとすればするほど、かえって「漏れ」が出て、隔離が困難になる。
 何事にも、「ほど」というものがある。受忍できるような「ほど」を越えて、過剰に負担を押しつければ、人々はその押しつけを嫌がって、逃げ出すだろう。やたらと厳しく処置すれば、人は逃げ出すものだ。それでは逆効果。
 この意味でも、前項で述べたように、隔離の程度を軽くすることが好ましい。

 [ 付記1 ]
 予想すれば、今秋以降は、風邪気味でも申告しない人がどんどん増えるだろう。そのことで、感染者は、こっそり隠れて、どんどん流入するだろう。
 「風邪気味だけど、きっと豚インフルエンザじゃないさ。ただ喉が渇いて、熱っぽいだけさ。ここで十日間も軟禁されたら、仕事が滅茶苦茶になる。そんなことはできない。それに、万一豚インフルエンザだとしても、タミフルをのみながら直せばいいだけさ」
 と思う人が、続出するはずだ。そして、そういう態度は、実に合理的である。もともと十日間の隔離というのが、非合理的であるからだ。
 前項で述べたように、感染初期ないし発症以前にタミフルを飲めば、十日間の隔離は必要ない。そういう合理的な処置を取らないと、対策はかえって無効になるだろう。何事も、「過剰」よりは「適度」にするべきなのだ。

 [ 付記2 ]
 今は温暖湿潤な時期だから、(寒冷地を除いて)二次感染の危険は非常に小さい。とすれば、十日間の隔離は、必要ない。
 一方、今秋以降は、いくら防止しても、感染は阻止できないだろう。感染を少し遅らせる、というぐらいの効果しかない。とすれば、特定の人だけに十日間の隔離を強制しても、実効性はあまりない。むしろ、漏れを減らすことの方が、よほど実効性がある。……それが本項の趣旨だ。

 [ 付記3 ]
 それでも反対する立場の人もいるだろう。
 「社会厚生のためには、一部の人が犠牲になるのはやむを得ない。少し過剰気味に対処した方がいい」
 しかし、そういう発想がとんでもないことをもたらした歴史的な例がある。それは「ハンセン病患者の隔離」だ。これがどうであったかは、医者ならば誰もがよく知っているだろう。
 とにかく、合理性を欠いた過剰な隔離は、人権を侵害する。いくら多数の人のためであっても、許されることと許されないことがある。
 しかも、ここでは「多数決」の原理は、正義を意味しない。なぜなら、パニックに陥った人々は、しばしば魔女狩りのようなことをなすからだ。
 この事実を警告するのが、本項の意図だ。
 
 ────────────

 【 後日記 】 ( 2009-05-14 )
 政府は、隔離日数を 10日間から7日間に短縮した。(13日発表)
 これは・伏期間が最大でも7日間だという米国の調査を受けてのもの。
 ( ※ この件、前項の 【 後日記 】 で論じる。)



  ※ 以下は、参考としての話。読まなくてもよい。

 [ 参考 ]
 「ハンセン病患者の隔離」は、ひどいものであった。Wikipedia に記述がある。
  ・ 男子への断種手術、女子への堕胎手術。
  ・ 夫婦の行為のための部屋がない。(大部屋でするしかない。)

 特にひどいのは、治療できても、あえて治療を拒否されたことだ。
 隔離政策の崩壊を危惧する意見も多かったため、各療養所に十分な量のプロミンの配布が行われず、使用が制限されていた。そのため、プロミンという特効薬があるにもかかわらず、大風子油による治療の継続を余儀なくされていた。
( → Wikipedia
 隔離政策が何よりも優先され、そのために患者の治療がつぶされる。社会がパニック状態になると、こういう滅茶苦茶がなされるようになるのだ。
posted by 管理人 at 19:00| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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