2009年05月09日

◆ 豚インフルエンザの流行後の対策

 前項の続き。 豚インフルエンザの流行は不可避だろう。
 では、どう対策すればいいか? 無為無策でいいのか? ──

 「無為無策でいいのか?」
 という質問には、たいていは反射的に、「駄目だ」と答えるだろう。しかし、そういう反射的な反応は、かえってパニックを引き起こしがちだ。かえってまずい。

 結論から言えば、次のように言える。
  ・ 国家政策としては、流行を止める(遅らせる)ことが必要だ。
  ・ 個人レベルでは、予防は必要だが、治療は(特に)必要ない。


 前者(国家政策)については、言わずもがなだろう。少なくとも是非については、論じるまでもない。また、その具体的な処置については、前項を参照。
 後者(個人レベル)については、「予防」の必要性は論じるまでもあるまい。ただし、「治療」の必要性については、論じる必要がある。これが本項の眼目だ。

 ──

 豚インフルエンザが(遅かれ早かれ)いつか流行するだろう、ということは、おおむね合意ができつつある。「いかにそれを遅らせるか」ということだけが問題となりそうだ。(朝日・夕刊 2009-05-09 など。)
 問題は、流行したあとの、治療だ。これについて、朝日は次のように論じる。
 《 早期発見・治療が必要 》
 私たちは、新型ウイルスに免疫を持っていないため、数千万人が感染する可能性がある。病院などに多くの患者が来ても十分に治療できるよう準備するなど、やるべきことは多い。
( → 朝日・夕刊 2009-05-09 )
 呆れた。
 次の二点は、論理的にはともかく、現実的には矛盾する。
  ・ 数千万人が感染する(可能性がある)
  ・ 多くの患者が来ても十分に治療できるよう準備する

 この二つは両立しない。
 現在の病院は、すでに満杯状況だ。医者は過労死寸前になっている。そこへ新たに(年に)数千万人の患者が押し寄せたら、どうなるか? たかが風邪の治療をするために、莫大な人手を奪われ、肝心の重大な病気を診ることが不可能になる。大したこともない病人がわんさと押し寄せて、医療が完全麻痺するわけだ。……これはつまり「医療パニック」である。そして、そのことを、朝日はあえて推進する。狂気の沙汰だ。
( ※ これを書いた人はよほどの阿呆だろう、と思って、著者の「浅井文和」という名前を検索してみたら、朝日で医療問題を扱っている医療専門記者らしい。素人でもないのにこんなことを書いている。愕然。)

 ──

 マスコミがなすべきことは、何か? 「医療パニック」を引き起こすことではなく、「医療パニック」を起こさないようにすることだ。そして、そのためには、朝日の報道と正反対のことを述べればいい。次のように。
 「数千万人の人々が感染するだろうが、それは大事件ではない。なぜなら、新たに数千万人の人々が感染するわけではないからだ。毎年毎年のインフルエンザで数千万人の人々が感染するのとまったく同様のことにすぎない。違いはウイルスのタイプがほんのちょっと変わるというだけのことだ。騒ぐようなことは何一つない。したがって、その数千万人が、病院に行って治療を受ける必要など、さらさらない。タミフルを処方してもらう必要もない。自然治癒(免疫力)で治すことができる。自宅で寝ていればいい。それだけだ」


 こう述べた上で、補足的に、次のことを述べればいい。
 「 48〜72時間たっても症状が良くならない場合と、高齢者・幼児の場合にのみ、病院に行けばいい」

 
 ──

 はっきり言って、やたらと病院に行ってタミフルを処方してもらう、というのは、とてもまずいことだ。理由は、次の二点。
  ・ タミフルを大量に処方すれば、必ず耐性ウイルスが出現する。
  ・ タミフルを大量に処方すれば、タミフルの備蓄がなくなる。


 そのどちらも、非常にまずいことだ。最悪の場合、次のようになる。
 「耐性ウイルスが出現したあとで、それと鳥インフルエンザ・ウイルスが混じりあって、パンデミックの新型が出現する。それに対しては、タミフルがもはや有効ではない。また、たとえタミフルを使いたくても、タミフルはすべて在庫切れ」


 これは次のことを意味する。
 「タミフルをさんざん使うことで、大量死をもたらすパンデミックをあえて出現させた」

 つまり、大量の命を救うためでなく、大量の死者をもたらすために、タミフルを大量利用することになる。これは狂気の沙汰だ。……そして、それを、朝日の記者は推進しようとしている。

 現在、やたらとタミフルを利用しているのは、世界中で日本だけだ。世界のタミフル消費の圧倒的多数を日本が占めている、という話もある。( 2005年で 75%である → Wikipedia
 世界の大多数は、タミフルを購入しても、備蓄のために使う。しかし日本だけは、タミフルをどんどん消費してしまう。そして、そのあげく、耐性ウイルスを出現させる。さらには今後、備蓄を食い尽くそうという動きに出ている。狂気。

 ──

 もちろん、マスコミのすべてが朝日のように阿呆であるわけではない。
 読売の同日記事によれば、まともな策を述べている。次のように。
 「感染者の多くは発熱や咳など季節性インフルエンザとほぼ同じで、基本的な対策も同じでいい」


 これは日本語としては主語述語の関係がおかしいが、それは別として、書いてあることは妥当である。つまり、季節性インフルエンザと場合と同じように対処すればいいのだ。大あわてで病院に行く必要もないし、必ずタミフルを処方してもらう必要もない。騒ぐ必要は全然ない。

 読売は具体的な対策として、次の二点を勧める。
  ・ なるべく人込みを避け、手洗いを励行する。
  ・ 他人に感染させないためにはマスク着用も有効だ。


 これはおおむね妥当だ。ただ、正確には、次のように修正するべきだ。
 「自分自身に対する予防策として、マスク着用は非常に有効だ。他人のためでなく自分自身のために、マスクをして予防しよう」

 理由は前出。( → マスクで予防マスクで予防2

 ──

 ともあれ、マスコミの役目は、正しい情報を伝えることであり、虚偽情報(デマ)を伝えることではない。
 しかしながら、マスコミは、その務めを果たしていない。そこで、私がここであれこれと書くわけだ。嘘ばっかり書くマスコミのかわりに。
 


 [ 付記 ]
 お医者さん向けに注記しておこう。
 豚インフルエンザが重症化して、何らかの治療が必要になることもある。治療しなければ患者が死ぬこともある。
 ただし、その場合の最大注意点は、「下痢」だ。下痢ゆえに、栄養分と水分が欠落して、患者が死ぬことはあり得る。メキシコの場合も、それが理由だったのではないか、と私は推定する。
 そして、下痢の場合の処置として、なすべきことは、「点滴」である。その目的は、ブドウ糖の補給と水分の補給だ。(水分が必要量の 75%ぐらいにまで落ちることはしばしばある。)
 一方、何らかの治療が必要だからと言って、やみくもにタミフルを与えることは、かえって状況を悪化させる場合がある。というのは、タミフルの副作用には「下痢」があるからだ。(個人差あり。)
 とにかく、下痢の患者に、下剤(になりかねないもの)を与えるのでは、病気を治療するどころかかえって悪化させる。
 だから、インフルエンザの患者に対しては、下痢になっているか否かを見極めるのが最優先だ。下痢ならば、点滴をする。タミフルよりも点滴が優先だ。場合によっては、下痢止め薬を処方する。
 タミフルを処方するかどうかは、ケースバイケース。衰弱の理由が下痢だけであれば、タミフルは特に処方しない方がいいだろう。そこから先は、医師の判断だ。私としては、特に口を挟まない。

( ※ ただし、患者の体験によると、タミフルに「下痢」という副作用があることも知らないので困った、という患者の例が報告されている。彼は下痢で困っているのに、医者がタミフルの副作用を知らないので、途方に暮れてしまったそうだ。)
( ※ というわけで、患者としても、「病気のことは医者に頼ればいい」ということにはならない。患者は自分で情報を取って武装しておく必要がある。命が惜しければ。)
posted by 管理人 at 19:59| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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