2009年05月08日

◆ 豚インフルエンザとデマ

 豚インフルエンザの情報は、何でもかんでも、どんどん公表した方がいいのか? それはデマとはどう違うのか? ──

 豚インフルエンザの情報がマスコミをにぎわせている。特に、政府発表の情報として、「豚インフルエンザに感染した容疑者」という情報がどんどん公開されている。ところが、そのほとんどの患者が「感染していない」とあとで判明している。つまり、情報は間違っていたわけだ。
 ここでは、情報は、完全な嘘というわけではないのだが、不正確な情報を不正確なまま、過大に伝達していた。比喩的に言えば、オオカミは来ていないのに、オオカミの声だと錯覚した少年が、「オオカミが来た!」と騒ぐようなものだ。
 こういうことは、正しいことなのか? 

 ──

 政府の方針は、「イエス」だ。「不正確な情報をどんどん流そう」ということだ。このことは、厚労相が正式に表明した。
 舛添厚生労働相は7日の衆院予算委員会で、世界的に感染が拡大している新型の豚インフルエンザ対策について、「一番大事なのは情報の把握と国民に知らせること。隠しておくよりも、正しい情報は明らかにした方がいい」と述べ、今後も新型インフルの疑いがある事例が発生した場合、確定前に国民に知らせていく考えを示した。
 舛添氏は「備えあれば憂いなし。危機管理は過剰なぐらいやっていい」とも述べ、陸上自衛隊などから応援を借りて強化している水際の検疫態勢を当面維持する方針を明らかにした。
( → 朝日新聞 2009-05-07
 この記事のうち、最後の「備えあれば憂いなし。危機管理は過剰なぐらいやっていい」というのは、正しい。政府の行政的な努力としては、それでいいだろう。
 問題は、情報管理だ。情報管理は、記事の通りでいいのか?
  ・ 正しい情報は明らかにする
  ・ 確定前に知らせる

 大臣はこの二つを述べているが、この二つは矛盾する。「確定前の情報」は、正しい情報ではない。「豚インフルエンザに感染した疑いがある」というのは、豚インフルエンザの情報としては、まともな情報ではない。ただの憶測であるにすぎない。そんな憶測(結果的にはすべて虚偽)を、どんどん国民に伝達するのが、良いことなのか? オオカミが来ていないのに、(正しい情報のかわりに)「オオカミが来たようだ!」と憶測を伝えるのは、良いことなのか? 

 ──

 厚労相は、一日前に、こう述べた。
 新型の豚インフルエンザを巡り、発熱などの症状がある患者が医療機関から診療を拒まれた事例が相次いでいるのを受け、舛添厚生労働相は6日、同省幹部の会議で、「(診察拒否について)医師法違反になる」との見方を示し、適切な対応を取るよう指示した。
( → 朝日新聞 2009-05-06
 これは、冒頭の記事の方針と、ほとんど矛盾している。
 世間が勘違いして騒ぐように自分でけしかけておきながら、「勘違いして大騒ぎするな」とたしなめている。自分で「オオカミが来たらしい!」と叫んでおきながら、「オオカミが来たと思ってあわてるな」とたしなめている。立場が矛盾しているでしょうが。
 医療機関が大騒ぎしないで済むようにしたいのであれば、ありもしないオオカミについては黙っていればいい。どうせ、確率的に言って、豚インフルエンザである可能性は非常に少ないのだから、黙っていてもいいのだ。
 また、「危機管理」ということであれば、「危険性が大きければ警告の意義はある」と言えるが、「危険性が小さければ警告の意義はない」とも言える。汽船性の小さいことについて、いちいち針小棒大に大騒ぎで警告する必要はないのだ。
 実際、豚インフルエンザは、普通のソ連風邪よりも、危険性はずっと小さい。(タミフルで治る分、致死率は低いはずだ。……ちゃんと治療すれば。医者が逃げ出さなければ。)
 つまり、危険性が小さいものについて、危険性が大きいかのごとく情報伝達するのは、ただのデマである。そんなことは、やるべきではないのだ。

 ──

 では、どうすればいいか? 正解を示そう。
 情報というのは、むやみやたらと伝達すればいいのではない。そういう軽薄な態度であってはならない。むやみやたらと軽々しく情報を伝達すれば、情報は自己肥大してデマとなる。そんなことはしてはならないのだ。(特に、政府は。)
 では、どうするべきか? むやみやたらと軽々しく情報を伝達するかわりに、情報をきちんと判断して伝達すればいい。
 今回の場合で言えば、「感染した疑いのある人が出ました」というような形で軽々しく伝達するのではなく、きちんと医学的に判断を加えた情報を伝達するべきだ。すなわち、次のように。
  • 感染した容疑者が出ました。
  • しかし99%以上の確率で、豚インフルエンザではないでしょう。
  • 仮に豚インフルエンザだとしても、タミフルで治療すれば、あっさり治るでしょう。致死的になることはないでしょう。
  • たとえ放置しても、通常の季節性インフルエンザと同等の結果になるでしょう。つまり、自然治癒するでしょう。(例外的に、死にそうな場合には、タミフルで治療すれば大丈夫。)
  • 豚インフルエンザによる死者数は、世界中で数十人程度です。特に騒ぐ必要はありません。
  • 季節性インフルエンザによる死者は、毎年数万人です。昨冬も、死者数は×万×千人でした。
 このように伝達すれば良かった。そうすれば世間は、「何だ、ただの季節性インフルエンザよりも軽い病気なのか、騒ぐことはないんだな」と安心して、落ち着くはずだ。人々は、
 「考えてみれば、人間はいつか死ぬんだし、インフルエンザで死者が出たぐらいで大騒ぎすることはないな。どうせ騒ぐなら、事故死や経済自殺者の方が、はるかに問題だな」
 と思うはずだ。こうして、社会は落ち着くだろう。
 ところが、政府がやっていることは、その正反対だ。デマを流布させている。そのせいで、勘違いした病院が、診療拒否をするありさまだ。「豚インフルエンザにかかったって、どうってこともない」ということも理解しないまま。
( ※ オマケで言えば、そのせいで、医者さえも、デマ情報を信じて、まともな情報を得られない始末だ。情けない。)

 ──

 結論。

 情報は、やたらと伝達すればいいのではない。
 情報の伝達にあたっては、正しい評価がともなっている必要がある。正しい評価なしに、不正確な情報をやたらと過大に伝えれば、それはデマの伝達と同じだ。そして、デマは、パニックをもたらす。
 関東大震災のときには、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマゆえに、パニックが起こった。
 現時点では、「豚インフルエンザは致命的で危険だ」という妄想がひろがっており、そのせいで、もっと危険な季節性インフルエンザの方をないがしろにしている。季節性インフルエンザは、タミフルが効かない分、もっと危険なのだが。また、現実に、死者数は、数万人規模になっているのだが。それについての正確な医学的知識は、すっかり見失われている。(医者さえも。)

 人は、怯えると、視野狭窄症になる。特定の一点しか見えなくなり、広い視野を見失う。そのせいで、他の危険が迫ってきても、その危険を見過ごしてしまう。
 不正確な情報伝達をすることは、デマを通じて、パニックをもたらし、多大な死者をもたらすのだ。豚インフルエンザそのものよりもはるかに危険なのは、豚インフルエンザによるパニックなのだ。

( ※ その例は、すでにいくつか示した。特に重要なのは、医者のパニックだ。第1に、医者による診療拒否。第2に、豚インフルエンザ用のワクチンを作ること。これは、季節性インフルエンザ用のワクチンを減らすことを意味するので、かえって死者を増大させる。季節性インフルエンザはタミフル耐性がないからだ。……こういう方針が駄目であることは、ワクチン専門家も指摘しているのだが、パニックになった中途半端な医学関係者は、それを理解することができない。)
 


 [ 付記1 ]
 「豚インフルエンザに騒ぐな」というのが私の趣旨だが、これは別に、「人命をないがしろにせよ」ということではない。
 豚インフルエンザの死者数は、当面は数十人。秋冬には、数万人以上で、数十万人になるかもしれない。しかし、騒ぐことはない。どうせ日本でも米国でも毎年、季節性インフルエンザのせいで数万人が死んでいる。どっちみち、同じことだ。
 また、世界中には、もっと多大な死者がある。それは「貧困」ないし「不衛生」を理由とする死者だ。特に最貧国の途上国では、乳児死亡率が高い。実を言うと、きれいな水を飲める地域は、世界ではそんなに多くない。ふだん泥水を飲んでいる途上国はたくさんある。そこに簡易性の浄水器を作る知恵をもたらすだけでも、莫大な死者を減らせるだろう。(ただしその場合は、人口大爆発という、別の問題が生じるが。  (^^); )
 日本で言うなら、豚インフルエンザなんかよりももっと怖いのは、不況だ。これによる経済自殺は、毎年1万人レベル。死ななくても、人生を破壊されて、人生を無にされてしまう人は多い。
 アホな国民は、怖くもない豚インフルエンザに大騒ぎして、別のところでより大きな被害を出す。しかも、そのことに気づかない。……その愚かさを指摘するのが、私の趣旨だ。

 [ 付記2 ]
 大騒ぎの例。
 「うちの病院にはタミフルがないから、診察できないのは当然だ」
 と騒ぐ医者までいる。タミフルを緊急的に必要な血清か何かと、勘違いしているようだ。
 実は、タミフルは発症後 72時間以内に飲めばいいのだから、急ぐ必要は全然ないのだが。そもそも、タミフルなんて、飲む必要もないのだが。むしろ、飲めば下痢でひどい目にあう危険さえある。(前出。)

 「季節性インフルエンザが怖いから、季節性インフルエンザの患者を診られない」
 と言うような医者(特に内科医)は、さっさと医者をやめるべし。ついでに、季節性インフルエンザの存在しない国に行くべし。日本は全部、感染の危険がありますからね。どこもかも。病院からだけ逃げ出しても、無意味です。
 一方、豚インフルエンザなら、致死性ではないのだから、安易に感染してもちっとも問題ない。タミフルは 3000万人分以上もあるのだから。

 [ 付記3 ]
 いささか暴論を覚悟で言えば、次のように言える。
 「医者はみんな、豚インフルエンザにかかればいい」

 なぜか? 遅かれ早かれ、日本中の全員がいつか豚インフルエンザにかかるはずだ。だったら、あっさり諦めた方がいい。医者は、自分が率先して最初の方で感染して、免疫を得ればいい。そして、免疫を得たあとで、豚インフルエンザの患者を次々と診ればいい。
 これは暴論のように見えるが、別に、暴論と言うほどでもない。ソ連風邪や香港風邪では、だいたい似たことをしてきたはずだ。ソ連風邪や香港風邪にかかったことのない人とは、ほとんどいないだろう。誰もが一度はかかり、誰もが何らかの免疫を得たことがあるだろう。そして、そういう経験を得た人々が、今も医者をやっている。(医者になる前に感染した人も多いはずだ。)
 たかが豚インフルエンザなんて、ちっとも怖くない。さっさと感染して、さっさと免疫を得るのが、医者として あるべき姿だろう。
 ま、「そんなのイヤだ」という臆病者もいるだろうが、そういう臆病者は、後になって感染すればいい。その場合、人より遅れて感染するだけのことであって、どっちみちいつかは感染は避けられないはずだ。
 私の知人は、一年に五度か六度も風邪を引く。そうなっても、別に死ぬわけじゃない。単に高熱を出している間、仕事ができなくなるだけだ。普通の内科医は、季節の初めごろにインフルエンザを移されて、高熱を出して寝込んで、その後、免疫を得て、患者を診療すればいい。それでいいでしょ。

( ※ ただし、タミフルを使うと、免疫が不十分であるせいで、以後、何度もインフルエンザにかかる可能性がある。それで何度もタミフルを使っていると、そのうち耐性ウイルスが出現するかも。……耐性ウイルスを生み出された場所は、やたらとタミフルを飲む医者だった、という皮肉が成立するかも。  (^^); )
 
 [ 付記4 ]
 ともあれ、大事なのは、豚インフルエンザではなく、季節性インフルエンザである。特に、高齢者や幼児の死者である。この死者は、数万人レベルにのぼる。
 とすれば、その命を救うためには、「タミフル耐性ウイルス」を消すことが最も有効なのだ。にもかかわらず、現実には、「タミフル耐性ウイルス」をのさばらせ、逆に、「タミフル非耐性ウイルス」を撲滅することばかりに熱中している。やることが正反対。倒錯的。

 [ 付記5 ]
 ちょっと細かな話。
 なお、薬剤を飲むなら、「症状が消えたあとでも、薬剤を飲み続けること」が必要となる。さもなくば、生き残ったウイルスが存続し、そこから他者に感染することで、社会全体の感染リスクを高めるからだ。そのことで結果的に、耐性ウイルスの出現可能性も高める。
 ところが、「症状が消えたあとでも、薬剤を飲み続けること」を、医療機関は「推奨」の形で示すだけだ。しかも理由は、「自分のため」でなく、「他者のため」であるから、「そうしてください」と言われても、「面倒だからいやだ」とか、「薬剤がもったいないから、次回のために取っておこう」とか、そう思う人が続出する。
 だから、「症状が消えたあとでも、薬剤を飲み続けること」を、医療機関は「絶対義務」の形で示すべきだ。どうせ薬剤を処方したのなら、治療のためでなく、社会的な感染を低めるために処方するべきだ。
 ところが、医療機関には、そういう概念がない。「目先の患者を救うこと」という視野があるだけで、社会的な医療政策の視野がない。……結果的に、社会の感染を低めることができない。これではまるで、医者が耐性ウイルスの出現を促進しているようなものだ。
 ろくに知識もない医者に、はっきりと情報を伝えることこそ、インフルエンザの流行を阻止する方法となる。デマばかり流布させず、まともな情報を流布させるべきなのだ。……特に、なすべきことを知らない医者に。(医療知識と薬剤知識はあっても、社会医療政策を知らない医者に。)
posted by 管理人 at 20:28| Comment(6) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。豚インフルエンザパニック収まりそうもないですね。
これは私の想像ですが、病院や企業は豚インフルエンザの危険性を重視しているのではないと思います。恐らく、「日本第1号」をおそれているのだと思います。マスコミのおかげであっという間に風評被害が出ることは必至なので、一時的な汚名を着ても、長期的な風評被害を避けたいのだと思います。
企業も出張などで空港を避けているようで、長時間電車移動など、訳のわからない対策をとっているところも多く聞きます。
電車の場合、乗車時間が長い分、「豚インフルエンザ感染」の可能性が上がっても、「日本第1号」の可能性は飛行機利用に比較して低いと考えられるからです。
お役所の狂った方針と、マスコミの狂った報道はいつものことなので、病院や企業は案外冷静なのかも知れません。
Posted by yochi at 2009年05月08日 23:17
上のコメントは、翌日項目に対するコメントになっています。ちょっとびっくりしましたが、私が明日公開する項目を見抜いたわけじゃないですよね?   (^^);
Posted by 管理人 at 2009年05月08日 23:37
取り敢えず、「日本第1号」は高校生でしたね。あまり騒ぐと可哀想ですよね。もしくは悪のりする!?
どちらにしても、ただの弱毒性インフルエンザ以上の猛威を振るいそうな予感です。

ところで、管理人様の翌日分と同じところに着目できるようになったのは、このサイトのおかげで少し広い眼で見ることができるようになったのだと感謝しております。
Posted by yochi at 2009年05月09日 12:14
「ブタインフルエンザ マスコミ」で検索してたまたまたどり着いて読ませてもらいました。
書かれている内容に賛成です。
結構前から電車に乗るたびにマスクをしている人を数えていたのですが、
みんなブタインフルエンザに関する過剰報道を見抜いていたのか、意外に少なかったです。
過小すぎる報道は確かに問題ですが、最近のマスゴミの過剰報道は目に余ります。
そういった人間がさっさと感染すればいいのですがね。
そしたら「ブタインフルエンザは実はそんなに危なくないですよ」と報道されだすでしょうに。
Posted by TK at 2009年05月16日 14:49
「医者はみんな、豚インフルエンザにかかればいい」とは、すばらしいご意見、感銘しました。
私も遅かれ早かれいずれ全員かかるものと思いますし、息子は既に免疫、抗体を持っています。
おそらく国内感染が発覚する前に旧A型インフルエンザと診断されたり、あるいは医者にも行かずに完治した方が多数いたんだろうと思います。
たまたま国内感染のニュースが出て、疑われると迷惑かけるから受診しろと、近所のクリニックに出向いたら、あれよあれよと新型感染が判明することになり、関係者に迷惑をかけたことに申し訳なく思っています。
が、症状としては普通の風邪と大差ありません。普通の人なら抗インフルエンザ薬の処方がなくとも数日で治るように思えます。
現実を見ずに「新型」という妄想に怯えて騒ぐ人々が、いかにも日本人、言い換えれば馬鹿にしか見えません。
もちろん今移されたら困る方は別ですが、そうでない人はさっさと感染し、馬鹿騒ぎとマスクにおさらばした方がマシだと思うんですがねぇ。
行政はそれを知りながら、H5N1型のシミュレーションとして訓練させているのかな?私も典型的な日本人なので、多少痛い目にあわないと備える気持ちになれないし...
お陰さまで、鳥対策として強制入院まで視野に入れた準備が出来るようになりました!
Posted by 通りすがり at 2009年05月23日 16:06
「医者はみんな、豚インフルエンザにかかればいい」
 というのは「釣り」の意味があって、トンデモマニアたちが「けしからん!」と文句を言って引っかかるのを期待していたのですが、あんまり引っかからなかったですねえ。残念。当てがハズレた。  (^^);

 感染学会は、同じことを、次のように言っています。
 「新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です」
 「過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1〜2年以内に25〜50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。」
 「今回の新型インフルエンザ(S-OIV)の罹患を避けることは難しいのです。」
 文句を言う連中がいたら、この言葉を教えてあげたのだが。  (^^);
Posted by 管理人 at 2009年05月23日 16:44
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