2009年05月05日

◆ パニックの弊害1

 豚インフルエンザに騒ぎすぎること(パニックふう)の弊害が早くも現れた。通常のインフルエンザの患者が、病院で診療拒否にあっているという。 ──

 「豚インフルエンザが怖い」と大衆が思っているだけならまだしも、医療関係者まで「怖い、怖い」と過剰に恐れている。そのせいで、普通のインフルエンザの患者が診療拒否にあっているそうだ。
 《 発熱患者の診察拒否 東京で63件 》
 東京都内の病院で、発熱などの症状がある患者が診察を拒否される例が相次いでいることが分かった。都によると、2日朝〜4日朝だけで計 63件に上る。新型への感染を恐れたためとみられるが、感染者が出た国への渡航歴などがない患者ばかりで、診察拒否は医師法違反の可能性がある。大学病院が拒否したケースもあり、過剰反応する医療機関の姿勢が問われそうだ。
 診察拒否のパターンは
 (1)患者が発熱しているというだけで診察しない
 (2)感染者が出ていない国から帰国して発熱したのに診察しない
 (3)自治体の発熱相談センターに「新型インフルエンザではないから一般病院へ」と言われたのに診察しない
 の三つという。
 成田空港に勤務しているとの理由で、拒否した例もあった。友人に外国人がいるというだけで拒否された患者もいたという。
 都感染症対策課の大井洋課長は「診察を拒否する病院が増えれば、『症状を正直に申告しないほうがいい』といった風潮が広まるおそれがある」と懸念している。
( → 毎日新聞 2009-05-05
 ( ※ これは毎日の記事だが、他に 各社報道 もある。新しい情報では、件数は 63件でなく 92件だから、どんどん件数は増えているようだ。)

 ──

 そもそも、豚インフルエンザなんて、万一 感染しても、タミフルで治せる。死ぬわけじゃない。
 なのに、上記では、まるでペストでも扱うような状況だ。過剰反応。頭がイカレているも同然。
 なるほど、「感染者数を最小化する」という医療政策は必要だろう。しかし、末端の医者の一人一人が診療拒否すれば、「感染者数を最小化する」という目的にかえって反してしまう。

 ──

 一般に、伝染病があったとき、医者に求められる態度は何か? こうだ。
 「おのれの人命を危険にさらしても、社会における感染者数を減らす」

 こういう医者の尊い自己犠牲精神の上に、社会は正常性を保てる。逆に、医者がこぞって診療拒否すれば、感染者を治療する人がいなくなり、感染者はどんどん増大していく。

 そして、これは、往時の「ペスト」に似た状況だ。ペストという病気自体は、(現代の水準から見れば)特別に強力な病気ではないのだが、それを治療する人が(昔のように)存在しなければ、感染者数は雪だるま式に増えて、死者は莫大な数に増えてしまう。
 現在では、ペストが実際に大流行することはない。それは、そういう可能性が少しでもあれば、末端の医者がただちに治療するからだ。
 エイズも同様だった。最初は少しは流行したが、その後、医者が自らの感染を覚悟しながらも慎重に治療していったから、エイズの大流行を阻止することができた。

 ──

 はっきり言って、豚インフルエンザなんて、エイズに比べれば問題にならないほど小さな病気だ。とはいえ、豚インフルエンザの話を聞いて、「怖い、怖い」と思って、大騒ぎして、そのあげく、治療する医者がいなくなれば、エイズよりも大量の死者が出ることも考えられる。(豚インフルエンザによってではなく、ただのインフルエンザによって。)
 つまり、病気そのものの強力さではなく、人類の愚かさと臆病さが、死者を増加させてしまうのだ。他の病気を通じて。
 これもまた、パニックの弊害と言えるだろう。(薬剤乱用による耐性化の問題に次いで、第2の問題。)



 [ 余談 ]
 冗談を一つ。
 人類の病気で一番重い病気は、ペストでもインフルエンザでもエイズでもない。では何か? 次の病気だ。……「臆病
 
 [ 注記 ]
 ネットで調べたところ、上記の記事を読んで、誤読している人が多い。
 「豚インフルエンザの治療は一般病院にはできない」
 というような理由。これまた、ひどい誤読。
 記事の趣旨は、「豚インフルエンザの危険性がない場合」の診療拒否だ。「豚インフルエンザの危険性はないのに、病院が勝手に過剰反応して、普通のインフルエンザの患者を診療拒否する」という事例だ。
 記事を読んでも誤読する人が多いのだから、インフルエンザの患者を見て、病気を別の病気に誤認する医者(ヤブ医者?)が多いのも、当然か。
 イカレた頭を正常化させる方が、先決かも。インフルエンザにかかっている前に、誤解病にかかっている。認知障害?   (^^);
posted by 管理人 at 23:12| Comment(9) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「諸君、担当医は、院長命に背き患者の診察を放棄した。受け入れ態勢がないから医療は出来んと言って患者の診察を勝手に断りよった。これが病院か。病院は受け入れ態勢がなくても受け入れをしなければならないのだ。検査キットがない、やれタミフルがない、リレンザがないなどは診察を放棄する理由にならぬ。

(中略)

担当医には応召義務があるということを忘れちゃいかん。病院は公立である。市長が守って下さる・・・」

以下、訓示は一時間以上も続いたため、当直明け通常勤務後の残業の連続で、抵抗力の落ちている医師がウイルスに罹り、病気で抵抗力の落ちた入院患者および外来患者に伝染する事態となった。

…。
……。
………。

感染者や感染者疑いを受け入れる、院内感染を防ぐための態勢が整ってないのに、「応召義務云々」で無理に患者を受け入れたら、院内感染が起きて「病院自体が感染源」になってしまう危険性があるんだけど?

感染者を受け入れるための準備が整っている「発熱外来」ならともかく、検査キットも無い、リレンザが無い、タミフルも無い、院内感染を防ぐための設備も整えられてない一般病院では、患者を受け入れられなくても仕方が無いだろう。
Posted by 牟田口症候群乙 at 2009年05月06日 16:31
普段から「当病院は満杯です」とか「当病院はインフルエンザの受付をしません」と言っているならともかく、豚インフルエンザが流行した直後になって急に診療拒否をするのでは、その理屈は成立しませんね。
 だいたい、満杯や能力不足なら、そのことをちゃんと患者に告げて、他の病院を紹介するので、患者が文句を言うことはありえません。
 医師法違反をする犯罪者が、自己正当化のために嘘を言っても、見透かされるんですよ。
 病気が怖くて、医師法違反をしたいのであれば、見え見えの嘘をついて逃げるかわりに、医師免許を返上しなさい。そうすれば、患者と接触しないで済みます。少なくとも、嘘をつく罪は免れます。
 
> 院内感染を防ぐための設備も整えられてない一般病院では、患者を受け入れられなくても仕方が無いだろう。

そんなこと言い出したら、たいていの診療所(特に皮膚科)は、患者を一人も受け入れられなくなります。

> 感染者

 記事の誤読を指摘されても、まだ誤読だということがわからない?
 記事は、豚インフルエンザの感染者じゃなくて、季節性インフルエンザの感染者ですよ。お間違えなく。
Posted by 管理人 at 2009年05月06日 16:39
本項の趣旨を誤読している人がいるようだが、本項の趣旨は、「医者は自己犠牲せよ」ということではない。
「豚インフルエンザは、ただの季節性インフルエンザ並みの病気なのに、エイズみたいに危険な病気だと勘違いするな」ということだ。つまり、「医学知識もなしに大騒ぎしないで、ちゃんとしたまともな医学知識を持て」
ということだ。特に、医者が。
医者が不正確な医学知識しか持たないようじゃ、お話にならない。紺屋の白袴。
Posted by 管理人 at 2009年05月06日 21:38
はじめまして。

季節性インフルエンザについてですが、この時期は元々検査キットの在庫がない(消費期限が短い製品の為)との話で、GW前にタミフルとリレンザの出荷制限がかかっている事を考慮に入れると…一般の病院では対応が困難ですね。

私や管理人さんより詳しいブログをご参考までに

天漢日乗: 「マスコミたらい回し」とは?(その141)毎日新聞江畑佳明記者の「発熱患者診療拒否」記事の波紋 ただの風邪だとしか思えないのに「新型インフルエンザですか?」一点張りのお悩み患者に「新型インフルエンザは診られません」と答えたのも「診療拒否」に入ってるのか?
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/05/141-ff34.html

インフルエンザ対策 - 新小児科医のつぶやき
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20090507

ssd’s Diary » Blog Archive » 痛恥
http://ssd.dyndns.info/Diary/?p=3932
Posted by blocru at 2009年05月07日 19:11
↑ のリンク先は、パニックになった見本でしょうか。こうなっちゃ駄目、という反面教師? 
 その間違いがわからない人は、本サイトの各項を熟読してください。明日分でも、大事な話を示す予定。

 なお、最初のリンク先は、タミフルの備蓄量さえ知らないらしい。

 それぞれのリンク先で、「厚労省は駄目だ」という指摘は正しいが、だからといって「医者は間違っていい」という理屈にはならない。医者と厚労省のことばかり考えていて、患者のことを全然考えていないのが見え見え。
Posted by 管理人 at 2009年05月07日 20:04
> 季節性インフルエンザについてですが、この時期は元々検査キットの在庫がない(消費期限が短い製品の為)との話で、GW前にタミフルとリレンザの出荷制限がかかっている事を考慮に入れると

タミフル耐性のある季節性インフルエンザにタミフルを使っても、意味がないでしょう。勘違いしているのでは? 「季節性インフルエンザが怖いから、季節性インフルエンザの患者を診られない」というのなら、さっさと医者をやめるべし。ついでに、季節性インフルエンザの存在しない国に行くべし。日本は全部危険ですからね。どこもかも。

豚インフルエンザに使う分のタミフルなら、たっぷりあります。患者は今のところゼロ人で、タミフルは 3000万人分以上ありますから。ついでだが、病院に備蓄する必要は皆無。
Posted by 管理人 at 2009年05月07日 20:15
医者は処方箋書くだけだから、どこの薬局に行けばタミフルが有るのか把握しておけばOKですよね。プロならば、厚生労働省の備蓄を実際に使用する方法を知っておいて欲しいな。
Posted by らんま at 2009年05月08日 05:59
私はある大学の医学生ですが、申し上げておかなければならない事が二点。「正確な情報とは何か」という事と、「事の背景や事情も考えず無闇に他人を罵倒しない」という事です。
前者から、貴方は毎日新聞記事の「診療拒否」の現状について鵜呑みにされているようですが、その記事自体に捏造や誤報がないという保証はあるのでしょうか。自分の気に食わないブログやサイトにある記述の信憑性を疑うのはご自由ですが、もしかすると自分の信じている情報にも誤りや過大表現があるかもしれない、という目を持っておくのは重要だと思います。 そうでなければ、自国の歴史教科書の記述を鵜呑みにしておきながら日本の歴史教科書を『捏造だ』と非難する中国人、韓国人らと同レベルだということになりますよ。我々が入手する情報とは常に何かしらのバイアスがあるものだということを認識しておいて下さい。 
また貴方は、「診察拒否」したお医者さんや、他ブログの管理人をアホだの認知症だのと記述されていますが、ご自身はさぞ正確な医学的知識と豊富な臨床経験をお持ちの上でそうおっしゃっているのでしょうね。もちろん、インフルエンザウイルスの侵入、増殖機序や抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザの作用機序、ひいては認知症の原因や症状、治療法などを空で他人に説明出来るほどに。 そうでないなら偉そうに他人を罵倒するのは止めましょう。現場も知らず、偉ぶっているだけの者として貴方自身、他人から見下されるような人間になってしまいますよ。
Posted by 通りすがりの者ですが at 2009年05月08日 19:14
これ以後、コメントの受付を中止します。

本サイトの他の項目を読まない人からのコメントが多すぎるので。(はてな の悪影響だと推察される。)
Posted by 管理人 at 2009年05月08日 21:53
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