2009年05月02日

◆ 豚インフルエンザ4 (耐性化の問題)

 豚インフルエンザに大騒ぎしても、たいして意味はない。むしろ、豚インフルエンザの耐性化(ウイルスが薬剤耐性をもつこと)こそ、阻止するべきだ。 ──

 本項で示すのは、次の二点だ。
  ・ 豚インフルエンザに大騒ぎするべきでない。
  ・ むしろ耐性化を阻止する努力をするべきだ。


 しかしながら、現実には、その逆である。その結果、
 「豚インフルエンザに大騒ぎしたせいで、ウイルスが耐性化して、そのせいで、被害はかえって大きくなる」
 というふうになるだろう。

 世間の大騒ぎ

 世間は豚インフルエンザに大騒ぎしている。しかし、大騒ぎする必要はない、というのが私の見解だ。
  ・ このインフルエンザは、弱毒性である(らしい)。
   ゆえに、被害の規模は、Aソ連型やA香港型と、大差ないだろう。
  ・ いくら騒いでも、しょせんはある程度は流行するだろう。


 前者は、すでに指摘されたとおり。「初めて罹患する人が多い」というが、初めてであろうがなかろうが、Aソ連型やA香港型と大差ない結果になるだろう。
 後者は、新たに説明しよう。インフルエンザというものは、いくら騒いでも、しょせんは完全に阻止することはできない。流行を遅らせることはできるが、しょせんはいつかは流行するものだ。水際で阻止しようが何をしようが、遠からずいつかは流行するはずだ。そしてまた、豚インフルエンザが流行しないとしたら、それは他のインフルエンザが流行した場合だ。どっちみち、被害の規模は同程度であろう。……つまり、いくら騒いでも、結果は大差ないのである。赤痢やペストとは違って、インフルエンザ(その全体)というものはしょせんは流行を阻止できないのだ。

( ※ 「それでも少しでも被害を減らしたい」という関係者の意図はわかる。しかし、それなら、「ウイルスそのものを阻止する」という無駄な対策を取るよりは、「一人一人が免疫力を高める」という有効な対策を取る方がよほど有効だ。免疫力については、「マスク」および「疲労回復」という二点が最重要となる。)

 なお、現時点(5月初旬)では、気候が温暖になっているので、流行の懸念はないと思う。身近にもインフルエンザにかかっている人はいるのだが、だからといってそれが流行するわけでもない。(インフルエンザにかかるのは、仕事で過労になっている人が多い。他の人には影響しない。)
 騒ぐのならば、現時点で「阻止しよう」と騒ぐよりは、次の秋冬の時点で「流行の拡大を防ぐ」と騒ぐ方がいい。「水際で阻止する」のではなく、「流行の拡大を防ぐ」という方針だ。そして、そのためには、「残業規制」「営業時間規制」のような過労の阻止が有効となる。

 耐性化の問題

 いくら大騒ぎしても、ウイルスの侵入を阻止することはできない。また、ある程度の流行を阻止することもできない。(上記)
 とすれば、そのような策を取っても仕方ない。「ウイルスを完全阻止せよ。一滴も水漏れさせるな」というような方針を取っても、無駄である。やがてはいつか、豚インフルエンザは侵入するし、流行する。(ソ連形や香港形と同じ結果になる。)
 ただし、本当に怖いのは、その次だ。「ウイルスの耐性化」という問題が起こる。この問題は、すでに昨冬において現実化しつつある。タミフルに耐性をもつウイルスが多くなり、リレンザを処方するようになった。来年あたりには、リレンザに対して耐性をもつウイルスも出現するだろう。そうなると、タミフルもリレンザも無効になる。
 豚インフルエンザも同様だろう。今年の冬は、タミフルやリレンザで流行を阻止することができるだろうが、一年ぐらいするうちに、耐性ウイルスが出現する。そうなると、豚インフルエンザに対しては、タミフルもリレンザも無効になる。(将来的に。)
 その結果は? 高齢者や幼児で死者が多発する、ということだ。普通の大人は、タミフルやリレンザが聞かなくなっても、「どうせ元の木阿弥さ」と思うだけで、損失は医薬代だけで済む。しかし、高齢者や幼児は、医薬代でなく命を支払わなくてはならない。

 豚インフルエンザの耐性化 ── これこそが最も危険な問題なのだ。豚インフルエンザそのものは、弱毒性である(らしい)から、大騒ぎする必要はあるまい。しかし、豚インフルエンザの耐性化は、救えるはずの人命が救えなくなるということだから、大いに問題なのだ。
 そして、豚インフルエンザの耐性化が起こるとしたら、それは、人々が大騒ぎして、やたらとタミフルやリレンザを乱用したからだ。とすれば、ここでは、
 「豚インフルエンザに大騒ぎしたせいで、かえって死者が激増する」

 という皮肉なことになるわけだ。そして、その皮肉をもたらす理由が、「ウイルスの耐性化」という問題なのだ。

 だから、今なすべきことは、「豚インフルエンザの耐性化をいかにして避けるか」ということなのだ。短期的には、タミフルやリレンザを服用すれば、豚インフルエンザの罹患者を減らすことができる。しかし、数年後を見れば、タミフルやリレンザの広範な服用のせいで、かえってを死者を増やすことになる。
 ここでは、(全国民の)罹患者を減らすことが大切なのではなく、(高齢者や幼児の)死者を減らすことが大切なのだ。
 しかしながら、現実には、人々はそのことに気づかない。「おれの命が大切だ」とだけ大騒ぎして、タミフルをわれ先に服用しようとする。そのせいで、ウイルスがやがて耐性化して、高齢者や幼児の死者が続出するようになる。

 ──

 この問題を避けることができるのは、政府の医療政策だけだ。一般に、医者というものは、目先の患者を救うことを、拒否できない。「それぞれの医者が目先の一人を救うことで、将来的にはかえって多量の死者が出ることになる」とわかっていても、それでも目先の患者を治療することを拒否できない。それが医者の倫理だ。……医者の倫理は、善意であればこそ、かえって多大の死者をもたらす。善をなそうという善意のせいで、かえって社会的には害悪をもたらす。
 これは一種の「合成の誤謬」だ。そして、それを避けることができるののは、政府の医療政策だけだ。
 「タミフルやリレンザは、高齢者や幼児だけに使用制限して、一般の人にはなるべく使用しない。特に、10代の若者には、なるべく使用しない」
 こういう方針を取ることで、被害を少しでも減らすことができる。というか、被害の最大化を阻止することができる。

 しかしながら、現実には、そういう政策は取られない。「一人一人の患者を治療する」ということだけが最優先となり、結果的にはウイルスの耐性化が起こるだろう。それが2〜3年後に起こることだ。

 そして、さらに、最悪の事態も予想される。次のことだ。
 「豚インフルエンザに大量のタミフルやリレンザを処方することで、備蓄が大幅減になる。さらに、さまざまなインフルエンザが耐性化するようになり、タミフルやリレンザが無効になるので、無効なまま、消費量が大幅に増える。やがて、備蓄が底を突く。……そして、そのとき、鳥インフルエンザから変異した、強毒性のパンデミック・インフルエンザが出現する。しかしそのときにはもはや、タミフルやリレンザは底を突いているから、なすすべもなく、大量の死者が出る。パンデミックに対しては、高齢者や幼児の死者が出るだけでなく、青壮年の死者も出る。しかしながら、そのとき、なすすべがない。人々ができることは、ただ一つ。「豚インフルエンザのときに、タミフルやリレンザを乱用しなければ良かったなあ」と後悔することだけだ。
 阿呆の末路。

( ※ もっとひどい事態も、予想できなくもない。タミフルやリレンザが底を突いたあとで、残されたタミフルやリレンザをめぐって、ぶんどりあいが起こることだ。当面は、価格が急騰して、金持ちだけが救われるようになる。その次に、強盗が頻発して、奪い合いが起こる。国家的なバトル・ロワイヤル。ぶんどりあいの殺しあい。……その死者は、ひょっとして、インフルエンザの死者数を上回るかも????   がく〜(落胆した顔) )



 【 追記 】
   耐性化についての参考記事
 《 インフルエンザH1N1型、98%がタミフル耐性 》
 (2008-2009の)今シーズン日本で分離されたインフルエンザのH1N1型ウイルスの98%が、タミフルの効かない耐性ウイルスであることが1月19日、国立感染症研究所の発表で分かった。全国の地方衛生研究所から国立感染症研究所に送られ、解析が完了したH1N1型ウイルス52株のうち、51株がタミフル耐性ウイルスだった。
 タミフル耐性ウイルスは、遺伝子の突然変異でインフルエンザのH1N1型ウイルスを構成するタンパク質の一部が変質したことにより、タミフルへの耐性を得たもの。2007年に北欧で増加傾向が確認されて以来、世界的に増加している。今シーズン分離されたH1N1型ウイルスのうち、米国では97%、欧州連合 (EU)諸国では95%、オーストラリアや中米、アフリカ諸国では80-100%がタミフル耐性だった。
( → Yahooニュースの孫引き

 ──

 インフルエンザウイルス株/薬剤耐性サーべイランスの一環として、07年9月30日から08年5月17日までと、08年9月28日から09年2月19日までの期間に、米国内の公衆衛生ラボで同定され、CDCに提出されたA/H1N1ウイルスを検査した。
 2008〜09シーズン中に検査を行ったインフルエンザA(H1N1)ウイルスのうち、オセルタミビル耐性株が98.5%を占めた。耐性株の割合は2007-2008シーズン12.3%から2008〜09シーズン98.5%に大幅増加した。
( → 個人翻訳
posted by 管理人 at 13:36| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ