2009年05月01日

◆ インフルエンザの名称(豚/新型)

 「豚インフルエンザ」のかわりに「新型インフルエンザ」と言い換える動きが出ている。なぜか? 学術的に正しくない、という専門家の指摘があるからだ。その妥当性を論じる。 ──

 「豚インフルエンザ」のかわりに「新型インフルエンザ」と言い換える動きが出ている。読売や毎日は、「新型インフルエンザ」と呼ぶのをやめて、「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」というふうに冗長に言い換えている。
 なぜか? 「学術用語として不適切だ」という専門家の指摘があるからだ。
 実は、同様のことは、「豚インフルエンザ」だけでなく、「恐竜」「桜」という言葉にも当てはまる。この問題は、一般論として論じることができる。

 豚インフルエンザ

 豚インフルエンザについては、「豚インフルエンザではなく、新型インフルエンザと呼ぶべきだ」という主張がある。学術的な立場からの主張。「最初に見つかったのは豚からじゃないぞ」というような出自についての批判。(朝日・朝刊 2009-05-01 )
 なるほど、学術的には、「豚インフルエンザ」と呼ぶのは不適切かもしれない。しかし、そういうふうに学術的な立場から主張するのは、おかしい。それが本項の趣旨だ。
(このような馬鹿げた方針は、厚労省の方針でもあるが。)

 ──

 なお、「豚インフルエンザ」が駄目だとしても、「新型インフルエンザ」というのは全然おかしい。
 そもそも、「新型インフルエンザ」では、固有名詞でなく普通名詞だから、これでは何のことかさっぱりわからない。これは新型のインフルエンザであるとしても、数年もたてば旧型になるし、そのころはまた別の新型のインフルエンザが登場する。そのころには、今回の「新型インフルエンザ」というのは、旧型のインフルエンザを意味することになる。馬鹿馬鹿しい。

 ──

 ついでに言おう。「スペイン風邪」だって、スペインが最初ではない。当時は戦争中だったから、各国は軍事的に国内情報を隠していたが、スペインは参戦していなかったから、情報がどんどん出て、スペインの風邪ばかりが報道された、というのが実状だ。スペイン由来であるわけではない。また、そもそも、これは学問的には、風邪ではなく、インフルエンザだ。
 だから、いちいち細かいことにこだわる必要はない。「スペイン風邪」は、「スペイン」+「風邪」ではなくて、「スペイン風邪」というひとまとまりで新語になっている。
 同様に、「豚インフルエンザ」は、「豚」+「インフルエンザ」ではなく、「豚インフルエンザ」というひとまとまりで新語になっている。

 こんなことは、日常語を理解していればすぐにわかることだ。ところが、専門バカの連中は、日本語をまともに理解できない。ここに根本的な難点がある。国語力の低下。そして、それに唯々諾々として従う読売や毎日は、頭がイカレているとしか思えない。まともな言葉遣いをしてもらいたいものだ。
 
 [ 参考1 ]
 次の記事もある。
 世界保健機関(WHO)は30日、新型の豚インフルエンザの呼称を「インフルエンザA(H1N1)」とすると発表した。関係者によると、各国の養豚業者などからWHOに対し、「豚」という言葉を使わないよう申し入れがあったという。
 というわけで、どうせ学術用語で書くなら、「インフルエンザA(H1N1)」と書くべきだろう。   (^^);

 なお、「養豚業者の要求」なんて、馬鹿げている。それは風評被害だが、「メキシコ発」という理由で「メキシコ料理店の来客が激減」という風評被害もある。
 とすれば、「メキシコのインフルエンザ情報を報道するな」というメキシコ料理店の要求も正当になる。そんなのをいちいち聞いていられるのか? 

 [ 参考2 ]
 実は、専門用語としては、「インフルエンザA型(H1N1)」というのはまったく不適切である。というのは、この名称で示す範囲はあまりにも広すぎるからだ。たとえば、ソ連型インフルエンザや、スペイン風邪も、この仲間だ。
  → Wikipedia
 だから、どうせ学術用語で書くなら、「インフルエンザA型(H1N1)」ではなく、「インフルエンザA2009」もしくは 略称で「A2009」と書く方が好ましい。
 やたらと専門用語を使おうとするから、かえって専門用語として不適切になる、という見本。専門馬鹿の見本。

 [ 参考3 ]
 とはいえ、「インフルエンザA型(H1N1)」も、「インフルエンザA2009」も、日常用語としては覚えにくい。まるで炭酸ガスを「シーオーツー」と呼ぶようなもので、不便だ。
 そこで、私は新たに提案したい。それは「メキシコ風邪」だ。これなら覚えやすい。
 「インフルエンザは風邪じゃないぞ」
 という批判をする人もいるだろうが、そういう連中は、「学術用語バカ」だ。学術用語と日常語との使い分けができないわけ。
 その件については、下記で説明する。(次項でも詳しく論じる予定。)
 

 他の例

 同様のことは、他にも当てはまる。
 「豚インフルエンザ」だけでなく、「恐竜」「桜」という言葉がある。これらは、新聞などの日常生活の場でしばしば現れるが、これを批判する専門家の見解があるのだ。「それは学術的に正しくない!」と。

  ・ 恐竜
   ……「翼竜は、恐竜とは別系統だから、『恐竜』と呼ぶべきではない」
  ・ 桜
   ……「学術的にはカタカナで『サクラ』と書くべきだ。


 まったく、うざいですねえ。偉ぶった学者の尊大さの現れ。
 日常語における言葉遣いは、専門論文とは違うのだ。人々は学術論文を書いているわけじゃない。単に日常語のレベルで話しているだけだ。とすれば、いちいち学術用語を使う必要などは、まったくない。
 
 「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」

 本居宣長のこの和歌を読んで、「すばらしい」と感嘆するならともかく、「カタカナで『ヤマザクラ』と書け」と文句を付けるのは、阿呆のすることだ。本居宣長は、学術論文を書いていたわけじゃないんだが。

 ──

 実を言うと、こういうふうに難癖を付ける連中は、物事を正反対に曲解している。たとえば、ここでは、学術用語が先にあったのではなく、日常語が先にあったのだ。
 植物学なんてものは明治時代よりも前には存在しないも同然だった。文明開化以降、日本でも植物学がだんだん確立されていくにつれて、「山桜」という日常語から、「ヤマザクラ」という学名が制定された。「山桜」が主で、「ヤマザクラ」は従だ。なのに、「ヤマザクラが正しくて、山桜は間違いだ」などと述べるのは、本末転倒というものだ。

 こんなことは世間の常識だろう。にもかかわらず、最近のマスコミでは、植物をやたらとカタカナで書くことがまかり通っている。「学問的にはそれが正確だから」という理屈で。
 つまり、日常用語と専門論文との区別がつかなくなっているわけだ。マスコミで一般人向けに報道しているくせに、専門論文を書いているつもりになっているわけだ。……こういる混同は、ほとんど精神倒錯的だ。
 それが今回の「豚インフルエンザ」を「新型インフルエンザ」と言い換える動きからもわかる。「桜が咲いた」という文書を見て、「『サクラ』と書け!」と騒ぐようなもの。日常用語と専門論文との区別がつかなくなっている。

 ──

 「恐竜」という言葉もそうだ。Wikipedia の「翼竜」には、次の説明がある。
 一部メディア等では今も「空を飛ぶ恐竜」などと紹介されることがあるが恐竜ではない。
 これは間違いだ。正しくは、次の通り。
 日常的には「空を飛ぶ恐竜」などと紹介されることがあるが、専門用語では「恐竜」とは別のものだ。
 ちなみに、英語版 Wikipedia では、次のように説明される。
 Pterosaurs are sometimes referred to in the popular media as dinosaurs, but this is incorrect.
 ここでは、翼竜を「恐竜」と呼ぶことを incorrect(不適切)と表現している。それならば、(学術的な観点からは)妥当であろう。
 一方、日本語版では、「恐竜ではない」と述べているが、馬鹿げている。日常語では、陸上の恐竜と翼竜とをひっくるめて「恐竜」と呼んでいるのだから、そういう日常語レベルの用語をいちいち批判しても仕方ない。また、批判するなら、日常語と専門語との用語の違いを指摘するべきであって、「翼竜は恐竜ではない」などと言い張るのは、あまりにも行き過ぎだ。
 どうせなら、翼竜と恐竜をひっくるめた用語を提出するべきだろう。そして、それを提出できないのであれば、両者をひっくるめた包括的用語として、「恐竜」(広義)という用語があっていい。それを「恐竜」(狭義)と区別すればいい。
 ここで必要なのは、あくまで、用語法だ。なのに、学問レベルの観点から、日常語を批判するのは、「山桜と書くのは間違っている!」というのと同様で、本末転倒というものだ。

 ──

 他にも、「進化」とか「下等生物」とか、そういう用語についても、「日常語の用法は間違っている!」と主張する学問バカが多すぎる。そういうことを言う連中は、日常語は学術論文ではない、ということを理解できていないわけだ。

 ──

 世の中には、こういう連中が多い。専門バカ。専門オタク。専門領域に閉じこもって、日常レベルにおける生活能力をなくしている。こういう連中は、一般人との会話能力もないはずだ。次のように。

 例。大学院生が美女とデートした。
 「この公園、きれいね」
 「そうだね」
 「あっちもこっちも、桜がきれい。桜ってみんな素敵ね」
 「駄目だ。それは正確じゃない。ソメイヨシノとヤマザクラは違うんだ。ちゃんと区別する必要がある。正しくは『ソメイヨシノは素敵で、ヤマザクラも素敵だ』と言うべきだ。それぞれ名称はカタカナで書く必要がある」
 「あ、そう。あなたお利口ね。じゃ、サヨナラ。カタカナで言うわ」

 ──

 Wikipedia を見ると、専門用語バカによる記述が多すぎる。特に、生物学の分野で顕著だ。物理学者なら、アトムやウランという用語が、漫画の世界で特定のロボットを指すことを知っても、「それは不正確だ!」なんて文句を言うことはない。数学者だって、「この道路は直線になっている」という言葉を聞いても、「それは不正確だ!」なんて文句を言うことはない。だが、生物学の連中は、その手の文句をやたらと言いがちだ。
 Wikipedia で「間違いだ」と指摘されている用語理解が、さまざまな国語辞典では、ちゃんとそのように記述されているのがわかる。なぜか? 日常語は専門語とは違うからだ。
 こういうことさえ理解しない専門バカが、あまりにも多すぎる。特に、日本では。……常識をなくしたオタクは、各所であまりにものさばりすぎている。あげく、「オタクが正しくて、一般人は間違いだ!」と主張する始末。どうしようもないね。

( ※ ま、同じようなことを言う人々は、精神病院の病棟に行けば、いっぱいいるが。  (^^);  )
 


 [ 付記1 ]
 本項から、教訓を得ることができる。
 「自分は専門家だから偉いんだ。世間の連中は素人だからバカなんだ。バカな素人はは専門家に従え」
 というふうに尊大に偉ぶっていると、たかが用語のことで真偽を論じるようになり、物事の本質を論じようとしなくなる。「豚インフルエンザとはどういうものか」という事実レベルの専門研究をするのをなおざりにして、素人の俗世間の領域に飛び出して、用語レベルの正誤を論じるようになる。
 なぜか? 威張りたがる連中というのは、専門領域では他の研究者と競争しても負けるだけだ。そこで、専門家のいない素人の領域に出て、威張りたがるわけだ。
 例。プロ野球の落ちこぼれが、解雇されたあとで、アマ野球に進出して、そこで「おれ様は偉い」と威張る。威張れば威張るほど、まわりの素人連中からはバカにされているのだ、と気づかずに。
 その一方で、功成り名遂げてから引退した名選手は、アマ野球でも謙虚に教える。それゆえ、声望を高める。(例。川上哲治。)

 専門領域には、素人を相手に攻撃したがる連中(トンデモマニア)がいて、専門家にまで歯向かったりする。こういう連中は、さんざん威張って悪口を振りまきながら、世間からどういうふうに見られているかも気づかない。
 彼らは、良い反面教師になる。悪口ばかりをがなり立てているトンデモマニアを見たら、「自分はこうなってはいけない」「こうなっちゃおしまいだな」と留意できるだろう。
 他山の石。

 [ 付記2 ]
 医者にも二通りがあるので、注意しよう。
 (1) やたらと専門用語で患者に説明する。だが、患者に理解されない。
   「おれは患者に伝えたから、おれは正当だ」と主張するだけ。
   インフォームド・コンセントという言葉を形骸化させてしまう。
 (2) 患者に理解される範囲で、ていねいに説明する。問い直して、
   もし患者が理解できていなければ、もっと平易に説明し直す。また、
   話すだけでなく、手書きまたはプリントの文書を、患者に渡す。

 つまり、「自分は正しいことをしている」と言い張りたい自分本位の医者と、「患者の健康を重視する」という患者本位の医者。
 前者の医者は、「自分は一生懸命頑張っているんだぞ」と威張りたがるし、人から批判されると怒り狂う。
 後者の医者は、「自分は患者のために役立ちたい」と奉仕したがるし、他人から忠告を受けると「教えてくださってありがとう」と感謝する。
 本サイトにもさっそく、前者のタイプから文句が来た。「おれたち医者を批判するのか! おれたちを侮辱するとはけしからん!」と。……こういう連中には、近づかないのが「触らぬ神に祟りなし」だ。  (^^);
 ( ※ 似た話 → http://openblog.meblog.biz/article/1515500.html

 [ 付記3 ]
 ちょっと話の筋がズレた気配があるが、本項の批判の矛先は、そこらの専門馬鹿自体ではなくて、そういう専門馬鹿の意見を拝聴して従うマスコミ連中だ。特に、読売と毎日が駄目だ。朝日は、現時点では「豚インフルエンザ」と書いているが、そのうち「新型インフルエンザ」と書くようになるかもしれない。
【 後日補記 】 こう書いた翌日には、朝日はさっそく「新型インフルエンザ」と呼び替えるようになった。それでいて、それが「豚インフルエンザ」と同じだという注記はない。読者は混乱してしまうだろう。)
posted by 管理人 at 13:23| Comment(3) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
別に今回のインフルエンザに限った話ではありませんが、やはり、名前と言うものは、見ただけで本質が分かるように命名しないといけませんね。感情や利害に左右された命名では何が何だかさっぱりわけが分からなくなります。
「H1N1型」や「新型ウイルス」では、範囲が広すぎて今回のウイルスの特性を表現できていません。
豚インフルエンザウイルスが変異して今回の感染になったのだから、「変異性豚インフルエンザ」とでも名付け、これでは言い難いので略して「豚インフルエンザ」と呼んでおけばいいと思います。
もしくは、管理人様に先を越されましたが、発祥地の名をとって「メキシコインフルエンザ」と呼ぶのが妥当でしょう。
名前をいい加減に付けると、例えば、医者が従来タイプのインフルエンザと新型インフルエンザを勘違いして誤った処方箋を出し、結果、患者が死ぬ、なんてことに最悪なりかねません。WHOは患者の命より養豚業界の利益の方が大事なのか?
Posted by アルネチズン at 2009年05月01日 19:56
Aソ連型あるいはA香港型なんていうのが既にあるわけですから、
Aスペイン型、としておけば済むことだと思います。
Posted by GAT at 2009年05月01日 22:06
朝日新聞は、新たに変な用語を使い出した。
 「新型豚インフルエンザ」
 だって。
http://www.asahi.com/international/update/0502/TKY200905020170.html

 おいおい。豚インフルエンザはいつのまにか、「旧型豚インフルエンザ」と「新型豚インフルエンザ」とに分離してしまったのか?  (^^);

「新型の豚インフルエンザ」
 という表現もある。
http://www.asahi.com/politics/update/0501/TKY200905010327.html

 ──


 かと思えば、日経には次の表現もある。
 「豚インフルエンザから変異した新型インフルエンザ」
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090502AT1G0200A02052009.html

 もう、滅茶苦茶。
Posted by 管理人 at 2009年05月03日 00:20
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