iPS細胞の研究が、いよいよ最終点(いわば山頂)に到達しつつある。
「遺伝子から作られたタンパク質だけを使ってiPS細胞をつくる」
という方法(遺伝子を使わない方法)を、米独が研究レベルで実現しつつあるからだ。( → 朝日・朝刊 2009-04-24 ,毎日新聞 )
今回の方法は、胎児の細胞から作るものなので、再生医療にただちに応用できるわけではない。たとえば、あなたの何らかの器官がケガで失われたとき、かわりの器官をつくりたくても、あなたは胎児ではないから、「胎児の細胞から iPS細胞をつくる」という今回の方法は、そのままでは使えない。
とはいえ、「(遺伝子を使わないで)タンパク質だけを使ってiPS細胞をつくる」という基本原理は成立しつつあるから、やがていつか、大人の細胞(たとえば皮膚細胞)からも、「遺伝子を使わない」という方法が可能になるだろう。
今回の研究成果は、その最終的な到達点にいよいよ王手をかけた、ということを意味する。(最終決着はまだ。)
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iPS細胞自体の話は、これでおしまい。詳しくは、記事を読んでほしい。
このあとの話題は、別の話題。
iPS細胞の用途は広い。再生医療一般に使えるから、ものすごく用途が広い。将来的には、かなり広範な用途があるだろう。たとえば、「ヤケドの治療」とか、「外傷の治療の短縮」とか、さらには、「シミの除去」という美容外科も考えられる。
範囲は広範だが、その特許のほとんどは、米国のものとなりそうだ。山中教授の方法は、「4遺伝子を使う」というものだが、これは、基礎原理を示しただけで、「遺伝子を使わない」という今回の方法には影響しない。
山中教授は、ノーベル賞はもらえるだろうが、特許料は1円も入手できないことになりそうだ。そして、日本人を含めて世界中の人々は、多額の特許料を払うことになりそうだ。(今回の方法を実現した米国関係者その他に。)
なお、「遺伝子を使わないで、遺伝子から作られたタンパク質だけを使ってiPS細胞をつくる」という方針も、(その原理自体は知られていたが)そのための基本的な方法は、日本人が開発したという。
というのは、今回の米独チームの「タンパク質を細胞に導入する」という方法は、熊本大の富沢一仁教授が開発したものだからだ。2001年。( → 上記の朝日記事。ネットにはない。紙の新聞だけ。)
要するに、アイデアも原理も日本が出したのに、最後の最後で、トンビに油揚げをさらわれた、というわけ。最後の最後で、ガス欠になったから。ガス欠とは? 研究費の不足。つまり、研究人員の不足。(ほぼ同義。金がなければ研究人員がいなくなる。)
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こういう事情の背景には、国家的な研究体制の欠如がある。記事によると、こうだ。
- 「これまでの iPS細胞作りの研究は、すべてはこの『遺伝子ゼロ』に行きつくためのものだった」(関係者談)
- 「今回の方法で、人の iPS細胞がつくれれば、iPS細胞の作成法として、ほぼ完成ということになる。このままでは、日本が連敗しているといわれる」(関係者談)
- なお、研究費はこうだ。
- 米国のNIHの研究予算は、年間 900億円から5割アップ。
- 州も、カリフォルニア州は 10年間で3000億円の助成。
- オバマ大統領は、さらに研究開発の方向を推進。
- これに対し、日本の研究費は、今年度 55億円だけ !
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結論。
日本は、研究開発予算の不足のせいで、宝の山を米国に奪われる結果となった。
山中教授を初め、日本の研究者は世界最先端のレベルにある。にもかかわらず、(研究者がいくら優秀でも)国が研究予算を出さないから、成果をすべて奪われてしまう。そのあとで、国全体で、莫大な特許料を支払うハメになる。
つまり、1円玉を惜しんで、1万円札を失う。馬鹿丸出し。
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なお、肝心の話は、このあとだ。
国が研究予算を出さないのはどうしてかというと、金がないせいじゃない。金なら、たっぷりとある。次のように。
・ 高速道路定額化(無料化)のために数千億円。
・ ハイブリッド車や省エネ車のために数千億円。
・ 太陽光発電や風力発電のために数百億円。
・ 省エネ家電への買い換えのために数百億円。(エコポイント)
馬鹿げたことをやるための金なら、たっぷりとある。なぜ馬鹿げているかというと、これによって次のようになるからだ。(いずれも、無効または逆効果。)
・ 高速道路定額化(無料化)は、莫大なガソリン浪費をもたらす。
・ ハイブリッド車は、生産台数が上限だから、減税で1台も増えない。
・ 太陽光発電や風力発電は、バックアップ発電を減らさない。
・ 家電補助は、不必要な家電を買って、古い家電の大量廃棄。
こうして、馬鹿げたことをやるための金なら、ひっくるめて 1兆円近くも出す。
その一方で、必要な基礎研究をやるための金は、たったの 55億円しか出さない。スズメの涙。焼け石に水。
阿呆も極まれり。それというのも、省エネ教の狂信者が、やたらと『省エネ」という名目で、大金を浪費をするからだ。(その典型が朝日。)
[ 付記 ]
しかしまあ、iPS 細胞の研究費が足りないぐらいは、まだマシかもしれない。なぜなら「阿呆」で済むからだ。もっとひどいのがある。それは「阿呆の自殺」だ。具体的には、次の記事。
《 公立病院、3割が病床削減や削減検討 》ここでは、人間の生命が脅かされている。特に産婦人科はひどい。赤ん坊は「生まれること」が脅かされる。たとえると、「生きる前に死ぬ」というようなものか。
公立病院の3割が入院ベッドの削減を決めたり、検討したりしていることが、朝日新聞の全国アンケートで分かった。医師不足や診療報酬の抑制に伴う減収で、地域医療の中核を担ってきた公立病院の縮小が進んでいる。
ベッドが減ると、入院患者の受け入れに支障が出る恐れがある。ベッドを置かない診療所に転換すると、医師が一人だけになったり、夜間診療に制約が出たりすることが考えられる。
( → 朝日・朝刊・1面 )
( ※ 詳細は、紙の新聞の3面にある。)
だから、「人間の生命を最重視せよ」というのが、私の主張だ。しかし朝日は例によって、「省エネこそ世界の最優先の原理」と述べる。LED の項目 の記事でも、次のように書く。
「とてつもなく莫大な金をかけて、LED 照明を配備したところがある。省エネのために莫大な金をかけるとは、何とすばらしいことなのだろう! エコ万歳!」
頭が根本的にイカレている。エコ教に染まりきっているせいで、「自分の宗教のためにたくさん寄進することが立派なのだ」と思い込んでいる。そのせいで家族が飢え死にしようが、生活が破綻しようが、一切構わない。ただひたすら、教祖様のために寄進しようとする。
朝日のように省エネ教を盲信することは、これほどにも危険なのだ。……そして、その愚かさの一例が iPS細胞における日本の敗北という話題からもわかる。

無能なトップのせいで有能な若手が食いつぶされるという構図は。
昔は血気盛んで頭の足りない軍部上層で、今は無能でグズな政党ですか。
本当、何のために太平洋戦争の失敗を教科書に載せているのか分かったもんじゃありません。