新聞報道を引用しよう。
インフルエンザ治療薬タミフルを服薬した10歳以上の子どもは、服薬しなかった子どもに比べ、飛び降りなどの深刻な異常行動をとるリスクが 1.54倍高いという分析結果が 18日、厚生労働省研究班の最終報告書で明らかになった。──
研究は、2006年度からインフルエンザと診断された18歳未満の患者約1万人を集め、解析した。このうち、急に走り出すなどして死亡やけがに結びついた深刻な異常行動に限定して調べたところ、服薬した場合、リスクが1.25倍高くなった。特に注意喚起の対象となっている10歳以上の場合、リスクは 1.54倍になった。
一方、うわごとを言うなど軽症のものも含めた異常行動を起こす全体のリスクは、飲まなかった場合に比べて 0.62倍と低かった。
( → 読売・朝刊 2009-04-19 )
ここから得られる知見は、四つある。
(1) 異常行動の存在
異常行動が存在することは、これでもはやはっきりと判明しただろう。
これまでは、「異常行動は、存在すると証明されていないから、存在しないのだ」という屁理屈を述べる人々がいた。あるいは、「タミフルをのまなくても異常行動は起こるから、タミフルを飲んで異常行動が増えたことにはならない」と屁理屈を述べる人もいた。
しかしもはや、異常行動の存在については、公的にちゃんとお墨付きが与えられたことになる。
(2) 既知であること
とはいえ、この事実は、初期から判明していたことだ。私も最初から述べていた。下記で。
→ 統計の嘘(タミフル)
事情は、このころから何もか変わっていない。データ自体も、ほぼ同等のデータは出ていた。今回のデータは、同じ結果となるデータを追認したにすぎない。(追実験?)
要するに、最初からグダグダと屁理屈をこねないで、私(や他の人)の言ったとおりに信じれば良かった、というだけのことだ。
( ※ 浜六郎という人が厚労省の「異常なし」という報告に噛みついたが、すると、「浜六郎はトンデモだ、トンデモだから間違いだ、ゆえに厚労省は正しい」という屁理屈を述べたトンデモマニアが多かったが。どっちがトンデモなんだか。)
(3) 量と質
量と質についても注目しよう。
上記の記事からもわかるとおり、「軽度の異常行動はかえって減っている」という統計的事実がある。とすれば、数だけを見て「異常行動は多くない」と述べても駄目なのだ。
ここでは、「重度のものが増えている」ということに着目するべきだ。「何の被害ももたらさない、うわごとのような異常行動など、どうでもいい。命にかかわる重度な異常行動についてのみ重視するべきだ」というふうに。
そして、そのことを強調したのが、私の先の項目だった。しかしながら、それを理解できずに、「軽度のものも含めれば量的に増えていない。ゆえにタミフルは異常行動をもたらさない」と主張する人が多かった。こういうのは、私の主張自体を読めていないことになる。(例によって読解力不足。トンデモマニアに多い勝手読み。)
(4) 程度の問題
以上は、知ったかぶりの医学関係者に対する皮肉であった。あるいは、ジャーナリスティックな話題。このあと、重要な医学的知見を述べよう。記事にも政府報告にも書いていないらしいので。
報告では、「重度の異常行動が増えている」と述べている。これは、何を意味するか? 単に「トップレベルのものが増えている」ということか? 違う。
ここで意味されることは、次のことだ。
「タミフルは異常行動を増進する」
つまり、トップレベルものが増えているというよりは、個々の患者の副作用を増大させているのだ。
統計的な分類では「トップクラスが増えた」というふうに量的に認識されるが、個々の患者では「副作用の症状が重くなった」というふうに質的に認識される。
タミフルを飲まなければ軽度の異常行動で済んだのに、タミフルを飲むことで重度の異常行動を起こすようになる。具体的に言えば、うわごとか寝返りで済んだ異常行動が、窓から飛び降りて命を失うような異常行動に変わる。……こういうふうに質的な違いが起こる。これがポイントだ。
ここでは、異常行動を起こすか否かが問題なのではなくて、異常行動を深刻化させることが問題なのだ。
ここでは、量と質の問題に着目しよう。統計は「重度の異常行動が増えた」というふうに報告するが、そのまま認識するべきではない。むしろ、一人一人の国民にとっては、「飲むと異常行動がひどくなる」と認識するべきだ。より正確に言えば、「異常行動の量(頻度)は減るが、命を失うような異常行動をなしやすくなる」と認識するべきだ。
このような認識が正しい。そして、それこそが、私が前に述べたことの核心でもある。
【 関連項目 】
→ 統計の嘘(タミフル)
→ タミフルと異常行動
( ※ 最初のころに述べた項目)
→ タミフルと夢遊病
( ※ 異常行動の原理を考える。)
( ※ コメント欄に、次の仮説を記述しておいた。
「十代の子供は、成長期にある。成長期にあると、細胞の間隔が
ゆるみやすい。そのせいで、脳の関門がゆるゆるになりやすい。
そのせいで、タミフルが脳に入ってしまう。」)
→ リレンザを飲むべきか? (改)
( ※ リレンザにもタミフルと同様の問題がある、という話。)
→ その他の関連項目 一覧
【 追記 】
「タミフルよりもマスクの方が有効だ」
という見解がある。風邪を引いたあとでも、マスクは相当有効だ。
→ マスクで予防 2
少なくとも予防については、マスクの方が圧倒的に有利であることは実証済み。
→ マスクで予防
【 参考 】
医療政策として重要なことがある。
「一人がタミフルを使うと、その人は有利だが、全員がタミフルを使うと、全員が不利になる」
という「合成の誤謬」が成立するのだ。ウイルスが耐性をもってしまうせいだ。この件は下記で述べた。
→ リレンザを飲むべきか? (改)
ともあれ、タミフルは大多数が使ったせいで、もはや「役立たずの薬」と化しつつある。リレンザも遠からず、そうなるだろう。
となると、これらの薬は、「風邪を治す効果はないのに、死ぬリスクばかりは高まる」というふうになる。
タミフルはさっさと「使用中止」の措置を取るのが最善であろう。そうすれば耐性ウイルスがやがては消えそうだ。そのころ、タミフルは、パンデミック対策として備蓄するだけにしておく。
いつもは批判ばかりする厚労省について
お墨つきを得た,って大喜びしているところが.
ではWHOは未だに否定していることは?
日本の厚労省はとっても優秀で,WHOは
くずばっか?
ソースは?
「否定している」じゃなくて、別の表現では?
それから、もうちょっと大人ふうの文章にしてください。まるで小学生みたいな幼稚な文章だと、書いた人の信頼度がゼロです。
なお、記事に書いてあるとおり、厚労省というのは、厚労省の委嘱した研究班のことです。大学教授など。厚労省という官庁ではありません。ここでも誤読しているようなので、喚起しておきます。
「タミフルの製薬会社から金をもらっている教授が、前回はタミフルを安全だと示すためにデータを捏造していたが、それも叶わず、今回はとうとうタミフルの危険性を認めた」
政府が言っているから正しい、という意味ではない。タミフル安全派の急先鋒の人々さえ危険性を認めた、ということです。国民をタミフル漬けにして儲けようとしていた連中が白旗を掲げた、ということです。
インフルエンザ治療薬タミフルを服用した子どもに異常な行動が相次ぎ、交通事故による死者も出ていることを受けて、米食品医薬品局(FDA)は13日、異常行動に対する注意喚起の表示を製薬会社に求める方針を明らかにした。ロイター通信などが報じた。
報道によると、FDAは薬と異常行動との因果関係を立証したわけではないが、「潜在的な危険性を緩和するため」に、服用直後からの監視が必要だとした。
(出典:毎日新聞 2006年11月)
南堂さんの読売記事(ネット)は最後の解説が抜けています.
解説まで読むと,
「タミフルはシロとは言えない(無罪放免ではない)ので気を付けろ.(ただ,完全にクロともまだ言えない.)」
でしかないでしょう.
新聞に載ったものを私は先に読んでいたので,南堂さんはなにを早とちりしてここまで断定しているんだろうと思いました.もっとも,実際に最終報告をみないとどちらのニュアンスで書かれているかはわかりませんが.
> 、「タミフルをのまなくても異常行動は起こるから、タミフルを飲んで異常行動が増えたことにはならない」と屁理屈を述べる人もいた。
これは屁理屈ではないでしょう.「タミフルが異常行動の原因」を否定しているだけです.
ただたしかに,タミフルが異常行動のアシストをしている可能性までは否定できないですね.(というか,私もそう思う)
ただ,新聞記事に関して「お墨付きを得た」というのはとてもそうは読めません.
揚げ足取りですが.
それが屁理屈なんですよ。次の一文を参照。
「無意味な実験から無意味な結論を引き出しているだけだ。」
詳しくは下記ページ。
「タミフルと異常行動」
http://openblog.meblog.biz/article/153196.html
もともとリンクは本文中に示してあるんですけどね。
> なにを早とちりしてここまで断定しているんだろうと思いました.
説明の必要はないと思ったので説明しませんでしたが、ここで説明しておきます。
新聞が慎重な書き方をしているのは、新聞の公的性格によります。新聞は断定するのに慎重であるべきでしょう。調査の意味も良くわかっていないでしょうし。それは仕方ありません。
私の方は、報告から独自に結論を下しました。下記の通り。
「 1.54 倍というのは、統計上の統計誤差の範囲を明らかに超えており、明白に関連性を見出してよい。はっきりと有意の差となる」
私が引用したのは、事実の部分。新聞に対する解釈は、新聞と私とでは異なります。新聞は慎重。私は明瞭。
ま、あと何年かすれば、新聞も私と同じことを報道するはずです。あくまで慎重にしたいのであれば、あと何年か待つといいでしょう。ただし、待てない人のために、私が先んじて結論を示すわけです。
一般に、それが本サイトの方針。既存情報の後追いがしたければ、ニュースサイトだけ読んでください。世間に先んじたい人だけが、本サイトを読めばいい。
つまり、本サイトは、アマ向けではなくて、高度な知識人向けです。アマの人(自分で考える能力をもたないで教わるだけの人)は、本サイトを読まない方がいいでしょう。というか、読む気にならないと思いますが。
しかし,1.5倍,0.6倍で統計的に有意差ですか.よっぽどサンプル数をたくさんとったいい論文なのでしょうね.
いちいち難点は指摘しません。本欄は「さらしあげ」の場ではないし。
他人がタミフルやリレンザを使用している(したいと思っている)のも邪魔しないでくださいね。
管理人と違って効用と副作用のメリットデメリットを判断して使用しているわけですから。
タミフルやリレンザの使用を迷ってる人に対しても、ことさらに副作用をあげつらって誘導しないでくださいね。人命第一ですから。
くだらないコメントを何度も寄せないでください。私があなたの話を理解できないわけじゃない。あなたが私の話を理解できていないんです。
> 「他人のタミフル等の服用を邪魔するな」
と何度も書いていますが、私はそんな趣旨のことはまったく述べていません。個人の行動については個人の自由だとはっきり明示しています。国家の医療政策と個人の行動を混同しないでください。
今後は馬鹿げたコメントお断り。あなたが私の話を読んでいないことは明白です。(たぶん一部だけのつまみ食いで、勝手に誤読して妄想しているのでしょう。)