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( ※ 本項の実際の掲載日は 2009-09-18 です。)
沖縄にはたくさんの風力発電用の風車があるが、大半は台風で壊れてしまっている。デンマーク製の風車は、台風のことを考慮していないため。( → 風力発電(地理・気候) )
ところが今回、「倒せる風車」というフランス製の風車が沖縄に導入されるという。台風が来たら倒すので、損壊を免れる。
与那国島や宮古島では台風の強風で風車の倒壊やブレードの折損などの被害を受け、この対策のために経済性が確保できない状況となっていた。──
設置予定の可倒式風力発電機はフランスVergnet製で出力は245キロワット。ブレード直径は32メートル(ブレード数2)でハブの高さは38メートル。
可倒式風力発電機は、風車を90度近く倒せるので強風を避けることができる、建設に大型クレーンが不要で丘陵地にも設置可能、メンテナンス時は風車を倒してグラウンドレベルで作業できる、などといった特徴がある。
波照間島は西表島の南約24キロメートルにある日本最南端の有人島で600人弱が居住しており、現在はディーゼル発電機4基(A重油使用。合計出力950キロワット)で発電している。
( → 環境メディアの記事 ,朝日・朝刊 2009-05-05 も同趣旨。)
これを読んで、「おお、すばらしい」と思ったあげく、「だったら日本中で風車を導入しよう」と思う人もいるだろうが、浅はかだ。
この記事で一番大切な点は、最後のことだ。つまり、「ディーゼル発電」がもともとある、という点。これがあるから、これがバックアップ発電となる。バックアップなしには、風力発電は役立たない。( → 太陽光発電のコスト計算 )
今回の報道から得られる結論は、「風力発電は最高だ」ということではなく、次のことだ。
「離島においては、風力発電は有効だ」
ここではあくまで「離島においては」という条件が付く。離島ならば、大規模な火力発電や原子力発電を導入できない。仕方なく現状ではディーゼル発電を使っている。そういう状況では、風力発電が有効なのだ。ライバルは、コストの高いディーゼル発電である。
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結局、今回の方針は、限られた条件下での風力発電の導入をやりやすくする、ということになる。これは、「技術の進歩」を意味する。
このように、「技術の進歩」があれば、風力発電もしだいに実用化に近づいていくだろう。
一方、「技術の進歩」もなく、「台風が来れば壊れる風車」を大量に導入しようとするのは、愚かなことだ。
しかしながら、オバマであれ朝日新聞であれ、「緑の公共事業」を唱える連中は、その愚かしいことをやろうとする。「倒れる風車」を導入するかわりに、「(台風で)壊れる風車」を導入しようとする。……彼らは、頭を使うかわりに、「金を使え」と主張するだけだ。
そういう愚かさが、私の批判の対象となる。
[ 付記 ]
太陽光発電は? 孤島でも、「太陽光発電」も有効かもしれないと思えるだろう。だが、てんで当てにならない。雨の日に発電しないような発電は、頼りにならない。風力発電の方がよほどマシであろう。
【 注記 】
何が言いたいか、ちょっと文章がごちゃごちゃしているので、注記しておく。
肝心のことは、「倒せる風車は素晴らしい」ということではなく、「倒せない風車はダメだ」ということだ。
風車は日本では壊れる。にもかかわらず、現実には、壊れる風車がどんどん導入されている。そのせいで、風車どころか、風車の残骸が日本にあふれる始末だ。この件は、先にも述べた。
→ 風力発電(地理・気候)
肝心なのは、上記の点である。そして、それに対する補足の形で、本項がある。その意味は、
「倒せる風車があるから、風力発電は大丈夫」
ということではなくて、
「倒せる風車ならば、風力発電は大丈夫になることもある」
ということだ。そして、その前提は、「もともとディーゼルでハイ・コストだ」ということだ。
その前提が満たされない限り、一般には、風力発電はまだまだ十分とは言えない。それでも、いくらかは、肯定的にとらえることもできる。
私としては、風力発電も太陽光発電も、完全否定するのではなく、「技術発展を待て」という立場である。当面なすべきことは、クリーン発電のために技術開発をすることである。その一環として、「倒せる風車」もある。(一方、むやみに金をかけてクリーン発電を推進することは、ダメだ。)
【 関連項目 】
→ 風力発電(地理・気候)