花粉症の患者は、かなり多いそうだ。Wikipedia によると、自覚症状のある人が 40% だという。先日の朝日週末版によると、読者の報告では 45% が自覚症状がある患者だという。
もはや国民病だと言えそうだ。いや、人間様だけでなく、犬や猫まで花粉症になっているそうだ。(ネットで検索するとわかる。)
ただし、である。近年、「症状が大幅に緩和した」という人が多い。新聞にもそういう声が多い。
ディーゼル
花粉症の症状が近年緩和しつつある。なぜか?私が思うに、これは、「ディーゼル規制が進んだため」であろう。ディーゼル粒子が疑わしいということは、かなり前から言われていたからだ。
ただし、例によって、トンデモ・マニアが、文句をつけたこともある。
「ディーゼル粒子が花粉症の原因だというのは、トンデモだ! 科学的に証明されていないのだから、ディーゼル粒子を犯人だと見なすことはできない!」
という理屈。つまり、「黒だと証明されていないから、白だ」という理屈。
ま、法律の世界ならば、「疑わしきは無実に」ということは成立するが、科学の世界にまでそういう屁理屈を持ち込むのが、トンデモ・マニアだ。例によって例のごとし。
( ※ タミフルの異常行動のときにもありましたね。「タミフルは有害だとまだ証明されていないから、タミフルは安全だ」という主張。水俣病,カネミ油症,薬害エイズの当初と同じ理屈。 (^^); )
ただし、現実には、科学的な研究もいくらかは出ている。たとえば、簡単な実験で、次のもの。
→ http://www.geocities.co.jp/Beautycare/3309/dizeru.htm
次の記事もある。
スギ花粉症の患者さんにとって朗報がある。最近、硫黄分が10ppm以下の「サルファーフリー(超低硫黄)」の軽油の供給がスタートしたことである。ともあれ、生理学的な過程の解明はともかくとして、「ディーゼル規制をしたら花粉症が和らいだ」という現実があるわけだ。
どうしてサルファーフリーの軽油がスギ花粉症にとって朗報になるのかというと、実はスギ花粉症の原因がスギの花粉だけではないからだ。その証拠に、日本には昔からスギ花粉症があったわけではない。歴史上の人物にスギ花粉症に悩んだ人はいない。1970年に医学部を卒業した私は、スギ花粉症の講義を受けていない。日本で初めてスギ花粉症が発生したのは64年のことだった。
スギ花粉症の原因がディーゼル車の排ガス中に含まれている「ディーゼル排気粒子(DPE)」という可能性が高いことが、最近の研究によってわかってきた。
( → http://www.yukan-fuji.com/archives/2009/03/post_17280.html )
「日本中の杉を伐採せよ」なんていう過激な暴論に比べれば、「ディーゼル排気ガスの規制」というまともな方法で空気をクリーンにすることの方が、よほど有益だった、というわけ。
無花粉杉
「無花粉杉を導入しよう」という動きもある。花粉を生じない杉(雄性不稔)を、挿し木のような形で増やして、現在の杉と交替させる、というもの。(朝日新聞はこれに熱心だ。朝刊 2009-03-27 に記事がある。)
しかし、私はこれには反対だ。「日本中の杉を伐採せよ」というのは暴論だが、「日本中の杉を伐採してから、さらに日本中に杉を植え直せ」というのは、暴論の二重だろう。「穴を掘ってから埋める」という無駄に似ている。
では、どうすればいいか? 何もしないのが一番だ。現状のまま放置して、杉の伐採時期になったら、伐採する。その後は、できたハゲ山に、(杉でなく)広葉樹に植え替える。
そして、広葉樹になれば、以後はずっと維持コストがゼロになる。(間伐の必要もないので、放置すればいいから。)
一方、無花粉杉に植え替えた場合には、莫大な維持コストがかかる。間伐などのコストだ。
一般に、杉の収支は、次のようになる。
・ 予想 …… 杉の成長で年利1%ぐらい(黒字)
・ 現実 …… 間伐のコストがかかり、年利マイナス1%以上(赤字)
つまり、無花粉杉に植え替えた場合には、年利マイナス1%以上という赤字が毎年出る。その分、日本中で、大幅なコストがかかる。
さらには、保水量の減少により、洪水などの危険性も増える。台風が来れば、一挙に水が流れて、下流では堤防決壊や氾濫などの問題が起こりやすい。
一方、広葉樹林にすれば、これらの問題はない。
つまり、杉をやめて広葉樹林に植え替えることには、大幅なメリットがある。(巨大なマイナスを消すというメリットが。)
一方、杉を無花粉杉に植え替えることには、花粉減少以外、何もメリットはない。そんなことのために巨額の金をかけるというのは、あまりにも馬鹿らしい。それだったら、ディーゼル対策の方がよほどマシだ。(花粉症以外の面でも、空気もきれいになるし。)
──
ただし、朝日のようなマスコミは、「広葉樹林にしよう」というふうに唱えることはない。なぜか? 次の思想にとらわれているからだ。
「生長量の少ない成熟した広葉樹林よりも、次々と伐採して交替する杉林の方が、二酸化炭素の吸収量が大きい。だから、二酸化炭素の吸収のために、広葉樹林よりは杉林の方がいいのだ!」
こういうふうに、「二酸化炭素削減」という発想にとらわれて、広葉樹林よりも杉林を好むわけだ。
で、本当に、二酸化炭素を削減できるか? それはかなり怪しい。というのは、いくら杉林が二酸化炭素を吸収しても、その杉はいずれは燃やされるか腐るかして、二酸化炭素に還元されてしまうからだ。元の木阿弥。
ま、その分、化石燃料の利用量が減少すればいいのだが、杉を燃やして得られる熱量というのは、微々たるものであろう。それだったら、原発でも導入した方が、圧倒的に多くの効果がある。
結論
杉を無花粉杉に植え替えても、巨額の金がかかり、無駄である。
環境のためには、保水量維持のために、広葉樹林に植え替えればいい。ただし、その時期は、現在の杉が成長して伐採を迎える時期でいい。そのときまでは、花粉症対策のためには、ディーゼル規制をすればいい。
[ 付記 ]
ちなみに、「花粉症の緩和のためにディーゼルの排ガスを規制せよ」というのは、私の年来の主張だった。
→ 過去記事(花粉症 ディーゼル)
【 追記 】 ( 2009-03-31 )
「杉を伐採せよ」という暴論を紹介したが、新たに、次の記事が出た。
《 スギ300万本伐採で花粉症も雇用も対策 自民中間報告 》暴論が国策として推進されるかもしれない。げっ。
自民党は30日、追加経済対策の中間報告をまとめた。
首都圏近郊のスギの年 100万本(3年で 300万本)伐採などで、3年間に5千人程度の雇用を創出できるとしている。
※ 以下は読まなくてもよい。
[ 余談1 ]
花粉症の症状の緩和のためには、甜茶(てんちゃ)が有効であるようだ。個人差はあるようだが。
[ 余談2 ]
患者の割合が 45% というが、街中でマスクをしている人は、そんなに多くはないですね。軽い症状の人が多いということなのかも。
【 関連項目 】
広葉樹林と針葉樹林(と保水量)については、次の項目でもいろいろと述べたので、そちらを参照。
→ 陸地温暖化説 (緑地減少説)
→ 陸地温暖化への対策
→ 開墾による森林消失

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