2009年01月11日

◆ 物理学者による完全犯罪

 「シュレーディンガーの猫」の毒殺装置で、でなく人間を殺したら、どうなるか?
 「観測が状態を決定する」という説に従って、観測者(= 殺人の発見者)が殺害したことになるのか? ──

 この話題は、ほとんどジョークである。(あらかじめお断りしておく。)
 ただし、コペンハーゲン解釈のナンセンスさを指摘するには、とても役立つ。冗談交じりに、「糸屋の娘は目で殺す」という言葉を思い出してほしい。  (^^);
 ともあれ、この「殺人事件」のあらましは、次の通り。

 ──
 
 シュレーディンガーの猫の毒殺装置では、猫を毒殺する。
 天才的な物理学者 X がいた。彼は、シュレーディンガーの猫の毒殺装置で、猫のかわりに人間を据え付けた。人を睡眠薬で眠らせたあとで、猫の毒殺装置に、人間を据え付けたのだ。
 その後、自分は外に出掛けて、アリバイを用意しておいた。
 しばらくして、遊びに来た子供が、毒殺装置にいる人間が死亡しているのを確認した。「人が死んでいるよ! おまわりさん!」
 翌日、物理学者 X は、殺害の疑いで逮捕された。彼は「容疑者 X 」と呼ばれた。
 容疑者 X は、まさしく自分がそういうふうに設置したことを認めた。しかし彼は、「自分は殺していない」と容疑を否認した。
 「コペンハーゲン解釈ゆえに、私は犯人ではない」
 警察は、どういうことか、と質問した。すると、容疑者 X は、次のように説明した。
 「観測が状態を決定したのだ。観測が猫の生死を決定したように、観測が人間の生死を決定した。被害者である人間の死が決定した時刻は、観測した子供が観測した瞬間だ。そのときまでは、人間は生死が未確定だった。つまり、生きているとも死んでいるとも言えない状況だった。つまり、死んでいなかった。……観測が生死を決定したのだから、真犯人は、観測者である。つまり、死体を発見した子供だ。子供が被害者の死を決定した。それまでは、当人は死んでいなかったのだ。ゆえに、私には責任はない。逮捕するならば、被害者の死を決定した観測者である子供を逮捕するべきだ。子供こそが真犯人なのだ」

 ──

 その後、「探偵ガリレオ」と呼ばれる、別の物理学者が登場した。彼は、数々の殺人事件で活躍して、「名探偵」という声価が高かった。探偵ガリレオは、警察に呼ばれて、容疑者 X と対面した。そして、その話を聞いた。
 警察は、探偵ガリレオに尋ねた。「いかがですか?」と。
 探偵ガリレオは、こう答えた。「常識的には、容疑者 X が真犯人ですね。しかし、物理学者としての私は、コペンハーゲン解釈を信じます。ゆえに、真犯人は、容疑者 X ではなくて、発見者である子供ですね」
 警察は驚いた。「そんな馬鹿な!」
 探偵ガリレオは、肩をすくめた。「しょうがないでしょう。現代物理学は、そうなっているんですから。物理学に従えば、犯人は子供なんですよ」

 ──

 こうして、容疑者 X は釈放された。
 つまり、史上初めて、完全犯罪としての殺人が成立したのである。
 以後、日本では、殺人事件では必ずシュレーディンガーの猫の毒殺装置を使うことが常識となった。日本では、殺人犯は逮捕されず、かわりに観測者が逮捕されることになった。殺人天国。



 [ 付記 ]
 本項と同じ話題は、すでに別のページでも述べた。(2箇所)

  → 猫の生死(本編2)
  「被害者を殺したのは、発見者である。ゆえに発見者を監獄にぶち込め」

  → 観測の意味
  「死亡を決定したのは、発見者であって、殺人者ではない。」

   ※ このページには、「正解」が記してある。このページを読めば、本項を
     読んで疑問を感じていた人々も、真相を理解できるようになるだろう。
     (つまり、本項が詭弁なのではなく、コペンハーゲン解釈が詭弁なのだ。
      詭弁でない物理学解釈を取れば、馬鹿げた謎はもともと生じない。)

 


 ※ コメントを歓迎します。下らないコメントでも構いません。
   どうせ本項は、下らない話題なので。  (^^);
posted by 管理人 at 23:30| Comment(11) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
野暮を承知でマジメにコメントすると、この場合、容疑者χには明確に「未必の故意」があったとみなされるんじゃないでしょうかね。

未必の故意とは、「ある行為が必ずしも犯罪としての結果を生じさせると確信しているわけではないが、もしかしたら結果が生じるかもしれないと思いながら、その結果が生じてもかまわないと思いつつ行為を行った場合」のようですから、たぶん該当するでしょう。で、未必の故意は故意犯ですから、当然処罰の対象になります。

したがって、容疑者χは釈放されないでしょう。話としてはまったくおもしろくありませんが (^^;
Posted by 深海 誠 at 2009年01月15日 22:28
なかなか面白いですね。詭弁的で。 (^^);
 法律で言うと、「不能犯」は、故意があっても罰されません。たとえば、「あいつを呪い殺してやる」という故意があって、藁人形を五寸釘で打ったり、まじないを唱えたりしても、それで人を殺すことはできないので、その人は無罪になります。
 今回も同様でしょう。たぶん。殺すつもりがあっても、その前に子供が殺してしまったのであれば、真犯人は無罪です。  (^^);
Posted by 管理人 at 2009年01月16日 14:47
まぁ、微妙なところでしょうね。そもそも法の想定外ですから、罪刑法定主義(ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則)や推定無罪の原則からすれば、無罪と解釈するほうが「無難」かも知れませんね。

ただ、「不能犯」とみるのは無理じゃないですかね。現実に人が死ぬ確率を有意味に高めていることは事実なんだから。

裁判官がどうさばくか見物ですね。あ、殺人容疑だからこれからは裁判員制か。ますます話は厄介だな (^^;

ただ、蛇足ながら
>観測者が逮捕される
のはないでしょ。
「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」(刑法38条1項)で、観測者は故意犯じゃないもの。

業務上過失致死傷罪でも適用しますかね (^^;
Posted by 深海 誠 at 2009年01月16日 21:34
大学の理学部で物理を学んでいます。
で、趣味で法学の授業にもまぎれています。
なんだか、いろいろと物理を勘違いされてしまいそうな話ですよね。物理をある程度好きな人間はこの話は好きになれないと思います。
で、法律のほうですが、殺人罪やそのたの犯罪において、その状態を決定した人間が裁かれるのではなくその状態に追いやった人間が裁かれるのでしょう?
この論理だと、生きた(寝かせた)状態でいずれ沈むのが分かっている船にのせて海に流しても罪にならなくなってしまいますよね。
物理を知らない人に間違った物理学者のイメージが付いてしまうのがこわいです。
Posted by 菊池 at 2009年06月29日 00:50
> いずれ沈むのが分かっている船にのせて

 それは勘違い。本項で述べる話に即するのであれば、「生死が半々となるようにするシステム」です。システムの設計者自体は、死を決定していません。
 だから正しくは、

 「生死が半々となるような、半分だけ壊れた船に乗せて、漂流させた。その場合、殺人罪になるか」
 です。(決定するのは観測者。)

 もし「殺人罪」ならば、実際に死ななかった場合にも殺人罪になる。それは変でしょ? 
 仮に死刑になったら、誰も殺していないのに殺人罪で死刑になることになる。冤罪です。
Posted by 管理人 at 2009年06月30日 00:44
釣られます
子供だけが捕まるのはおかしいです。死を発見した時点で警察官も発見者になるはずでは?死体見た人全員捕まえるべき。
それか、死亡診断を下した医師が観測者として死を確定するわけだから医師が逮捕されるべきでは!ご臨終です。医師は殺人者だ!
となると思いますがどうでしょう(笑)
Posted by 物理素人 at 2011年03月08日 14:50
シュレーディンガーの猫の毒殺装置が人を殺すことができる以上、観測によって決定するのはXが殺人罪になるか殺人未遂罪になるかでしょう。
Posted by 文系の人 at 2011年05月16日 00:27
> 人を殺すことができる以上

 それは論理不足。直感だけで、論理なしだと、理系では通用しません。
Posted by 管理人 at 2011年05月16日 00:51
例えば核ミサイルのボタンをその辺に落としておいて、そのボタンを押した人が人類を絶滅させたのだと言い張ることができますかね。(人類が絶滅する確率は50%です)

あるいは、ドアを開けると人が半分の確率で死ぬようにしておいて、ドアを開けた人が殺人犯だと言うことができるでしょうか。

観察したことで生死が決定するのと、ドアを開けることで生死が決定するのは同じことでしょう。

「観察効果などなくてもこのトリックは使える」と思いますがどうでしょう。
Posted by 小澤英明 at 2011年05月18日 05:34
> 〜させたのだと言い張ることができますかね。

反語法がわかりませんか? 
本項の趣旨は「観測が猫を死なせたのだと言い張ることができます」というコペンハーゲン派の解釈を批判することです。
本項が皮肉によって何を言わんとしているか、理解してください。「インチキ論理のインチキさを露見させること」ですよ。「インチキ論理は正しい」と本サイトが主張しているわけではありません。
Posted by 管理人 at 2011年05月18日 18:35
>本項が皮肉によって何を言わんとしているか、理解してください。「インチキ論理のインチキさを露見させること」ですよ。「インチキ論理は正しい」と本サイトが主張しているわけではありません。

完全に理解していると思うのですが。

つまり、管理人様の論法は成り立たないことになるはずです。

観測が猫を死なせたのだと言い張ることができても無意味だと私は言っているのです。

犯罪者になることはないからです。

私が出した例が犯罪者になるのであれば話は別ですが。
Posted by 小澤英明 at 2011年05月19日 08:10
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