2008年12月08日

◆ 新常用漢字と読売社説

 新常用漢字について、読売の社説(珍説?)があったので、コメントしておこう。 ──

 まずは、読売の社説を一部抜粋する。
 《 常用漢字 IT時代踏まえ議論深めよ 》
 「俺(おれ)」「串(くし)」「鬱(うつ)」「彙(い)」など 191字を追加候補とし、現在の常用漢字表から「錘」など5文字を削除する案が内定した。今後、一般から意見を求めてさらに吟味し、2010年に答申をまとめる方針だ。
 「鬱」や「彙」などは、読むことは出来るが書けないという人が多いのではないか。現実に国民が漢字の読み書きをどの程度できるのか、早急に実態調査を行う必要もある。
 字体も、重要な焦点となっている。常用漢字以外の主な漢字の印刷標準字体について、国語審議会が答申した表外漢字字体表は、伝統的な字体を基本としている。
 例えば、新常用漢字の候補となっている「謙遜」の「遜」は、表外漢字字体表では、点二つの「遜」が用いられている。しかし、点二つの「しんにゅう」で常用漢字表に掲載されれば、「遠」などと字体の整合性がとれなくなる。
( → 12月7日付・読売社説

 ──

 この社説には、誤解がある。最後の一文だ。
 “ 点二つの「しんにゅう」で常用漢字表に掲載されれば、「遠」などと字体の整合性がとれなくなる。”


 これは正しくない。整合性は「とれなくなる」のではなくて、もともと「とれていない」のだ。
 読売新聞は、常用漢字について、勘違いしているようだ。「字体は略字体で統一されている」というふうに。
 しかし、それは間違いである。
 たとえば、次の例がある。
    
    燈 → 灯  / 登 → 丁 ?
    龍 → 竜  / 襲 → 竜+衣 ?
    盡 → 尽  / 書 → 尺+日 ?
    國 → 国  / 或 → 玉 ?  ( 域 も?) 
    佛 → 仏  / 沸 → シ+ム ?
    區 → 区  / 品 → メ ?


 もし字体の統一が取れているのであれば、左の例にならって、右のようになるはずだ。しかしながら、現実には、そうはなっていない。というか、そんなことをしようとするのは、馬鹿げたことだ。
 仮に、そんなことをすれば、「鐙」(あぶみ)という文字は、「釘」(くぎ)という文字になってしまう。また、「澄」(すむ)という文字は、「シ+丁」(なぎさ・みぎわ)という文字になってしまう。さらに、「品切」(しなぎれ)は、「メ切」(しめきり)になってしまう。これでは何が何だか、わからなくなってしまう。

 読売新聞は、漢字のことをよくわかっていないようだ。麻生首相並み? 



 [ 付記 ]
 読売の漢字力のいい加減さを示す。
 「読」という字は新字体で、その旧字体は、 である。
 ここで、右半分は 「士」 の下に 「買」 があるようだが、正しくは 「買」 ではなく、その上半分が 「四」 になっている。(この字は 「買」 とは別字である。漢和字典を見ればわかる。)

 しかしながら、読売新聞のロゴでは、これが 「買」 になってしまっている。
   → http://www.sntec.com/news/20070830.html
   → http://www.434381.jp/26/

 さらに言えば、「売」の方も、正字の とは別の字になってしまっている。
 いずれも、困ったことだ。

 ただ、ひょっとして、とても古い字体で、異体字なのかもしれない。朝日の異体字のように。
   → http://stat001.ameba.jp/user_images/50/ac/10009104453.jpg
 とすれば、特に「間違い」というほどではないのかもしれない。

 しかし、である。このような差異があることは、読売社説の論旨とは異なる。
 読売は、新常用漢字の字体の統一性なんかを主張するより、自分の会社のロゴを、まともな(正規の)正字体に変えた方がいいですね。それでこそ、統一性ないし整合性が取れるというものだ。

 ついでに、イヤミを一つ。
 読売の社説は、論旨の整合性が取れていない。(理由は前述。)
 字体の統一性を取ろう、という馬鹿げたことをするより、論旨の統一性を取ってほしい。そっちの方が、よほど大事だ。




 [ 余談 ]
 余談だが、「しめきり」の「〆」という字については、下記サイトに説明がある。
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%80%86
 → http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1020178195



 【 関連サイト 】
 本項には、元ネタがある。昔、私が書いたページだ。
   → 略字侃侃諤諤
 関連する話は、ここにいろいろと書いてある。

 ※ 新常用漢字についての過去記事は、下記のカテゴリから。
    → カテゴリ「文字規格」

 ※ 次の記述は、すでに述べたことがある。
   (1) 「鬱」という字は、難しすぎる。もし採択するならば、略字体(簡易慣用字)の「欝」にしてもいいだろう。
   (2) 「鬱」「彙」などのように、画数の多い字は、「書けなくても読める字」の扱いにするといいだろう。常用漢字とは別の扱いにして、常用漢字には採択しないわけだ。(常用漢字は、読めて書けることが必要。)
posted by 管理人 at 23:19| Comment(0) |  文字規格 | 更新情報をチェックする
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